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最終章王立才華魔法学園 願いと絆と後悔と
第九話すれ違いと変化を求める一歩
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☆☆☆
寮に帰ったプラティーを待っていたのは腕を組み、ベッドに腰掛けるリンデンだった。
リンデンはプラティーに目を向けると、口を開く。
心配している、という様子ではない。
まだ、課題を忘れたことを怒っているのだろうか?
「あ、あの…」
「ねぇ、プラティー。何故あなたがコリアンダーと共にいるの?」
「え?」
コリアンダー?
何故、ここで、コリアンダー公爵令嬢の名前が出てくるのか?
コリアンダー公爵家については当然知っている。知っているが、コリアンダー公爵令嬢と共にいたことなんてない。
そこまで考えて、先程のやり取りを思い出す。
プラティーの話をちゃんと聞いてくれた貴族。彼女がコリアンダー令嬢だとすれば…。
パズルが頭の中で組みあがっていく。リンデンの怒りの理由《いみ》が分かる。
「え、あの、コリアンダー公爵令嬢だと知らなかったんです。とても優しい方でしたし…」
「優しい!
あなたアレが優しいというの!?
ビバーナム商会を貶したあの女が!!」
リンデンはベッドから立ち上がる。背丈の関係上丁度、リンデンがプラティーを見下ろす形になる。思わず後ずさるプラティー。その少女の抵抗を胸倉を掴むことで阻止した。
「私の目を見てもう一度言ってみなさい。
コリアンダーがなんですって?」
「え、えっと、ごめんなさい」
「あなた、直ぐそれね。謝れば済むと思ってる?
というか、あなた直ぐ謝るから本当に反省しているのか、分からないんだけど」
「え、は、反省してます」
「口では何とでも言えるのよ。課題にしろ。コリアンダーと会ったことにしろ。」
「…ごめんなさい」
「ほら、また謝った。」
冷たい瞳でプラティーを見据えるリンデン。息が詰まるような雰囲気。この場にいたくないと本能が告げている。現実逃避だとしても、この場を、お茶を濁せるものはないか。
プラティーは懸命に考え、あるものを思い出して口を開いた。
「わ、わたし、課題を終わらせないとなので」
リンデンの胸倉を掴む手を自身の手で解くと、リンデンから背を向けて机を目指す。
「待ちなさい」
肩に手を置かれ、前に進めない。恐怖を感じながらも仕方なくリンデンの方を振り向くと同時、プラティーの頬を衝撃が走った。鈍い痛みが襲った。
呆気に取られながらもリンデンに視線を向けると、手を振りぬいたのが分かった。
振りぬいた掌がプラティーの頬に当たり、じんじんと痛みを訴えているのだと分かった。
「え?」
「話が終わっていないわ」
「で、でも、課題が」
「私とあなたの将来のことなんだから課題よりも大切でしょ」
明らかに何時もと様子が違う。
コリアンダーがリンデンにとっての地雷であることは知っていたが、まさかここまで態度を豹変させるとは思っていなかった。
プラティーは防衛本能からか、いつの間にかリンデンを押しのけてまたしても寮を飛び出していた。
(私、何してるんだろう。寮を飛び出しても行くところなんてないのに…)
自嘲しながらも、今更足を止めることは出来なかった。
走って走って、まともに前をみずに下ばかり見て走っていたからか、誰かにぶつかってしまう。
「きゃっ」
「す、すいません」
駆け寄ろうとして、漸く上を向いて気づく。
今ぶつかった相手が先ほど話を聞いてもらった貴族。アイリス・コリアンダーであることに。
「あ…」
「前を見て…ってあなたさっきの」
少しの間見つめ合う両者。
けれど、プラティーは我に返るとともに、その場を後にしようと踵を返す。
走ってこの場を去るのが最善。彼女がどれだけ自分に良くしてくれたとしてもリンデンとビバーナム商会に酷いことをした人間であるという事実は変わらない。
なのに、思うように足が動かなかった。急に震えて、涙が零れ、そのまま膝をついてしまう。
「ど、どうしたの?」
アイリスが急いで、彼女に駆け寄る。
涙を流す姿。先程までは少し元気になったように見えたのに、分かれた後一体何があったのか?
アイリスはプラティーの背中を撫でながらも、場所を変えるべく、お付きのメイドであるノエルに目配せをした。
プラティーをおんぶするアイリス。本当なら、拒まなくてはいけないのに、感情が入り乱れて、心が疲弊して、プラティーには拒否する力も残っていなかった。走り疲れたプラティーにはここから移動する意思すらも残ってはいなかった。
☆☆☆
寮は寮でも平民の寮とは違う寮。ベットにソファ、勉強机とは別に置かれた丸テーブルと四脚の椅子。広い一人部屋の椅子の一つに座らされたプラティーはアイリスのメイドにお茶とお茶菓子を振舞われていた。
「少しは落ち着いた?」
心配気に聞いて来るアイリスにプラティーはこくりと一つ頷いた。
「それなら、なんで泣いていたか聞いてもいいかしら?」
「…それは」
「ダメ?」
駄目かどうか、プラティーにはもう良くわからなかった。アイリスは聞いていたよりもずっといい人で、こんな人が本当にビバーナム商会に酷いことを言ったのか、言ってなかったとしてもこの状況、リンデンと関係を修復できるのか、分からない。一つ予感があるとすれば、この人に話したら何かが変わりそうな気はするのだ。
(でも、リンデンさんのことは裏切りたくない。)
リンデンと関係の修復をしたい。何か大きく現状を動かす要因が欲しいと思うプラティーと、それでもリンデンとの関係をこれ以上悪くするくらいなら言いたくないと思うプラティー。心の中で二人のプラティーが争っていた。
傍から見ていたアイリスにもそれが分かったのだろう。
「言いたくないのならそれでもいいわ。」
「…ありがとうございます」
「ええ、どういたしまして。
ただ、一つだけ答えて頂戴」
「?」
「寮には帰りたい?」
「それは…」
ハッキリと言える。帰りたくなんてない。今のリンデンは怖い。一緒にいたくない。リンデンのことは大好きな筈なのに、それはハッキリと分かった。
「帰り、たくないです。」
「そう、なら、ここで私と一緒に寝泊まりしない?
ほら、ベッドも大きいし、二人で寝てもへっちゃらよ?」
「で、でも」
今のリンデンは確かに怖い。けれど、プラティーはリンデンの良い所をいっぱい知っている。
真面目で常に結果を求め続けて努力するところ。あれでいて教えることが以外と上手いこと。こちらのことを常に気に掛けてくれること。話をちゃんと聞いてくれること。
いっぱいある。いっぱいあるのだ。
リンデンを忘れて生きていくなんて出来ないくらいにリンデンから沢山の物を貰ったのだ。
「別に縁を切れって話じゃないわ。ルームメイトと喧嘩しちゃったんでしょ?
だったら離れて仲直りする時間が必要だと思っただけよ」
「仲直り?」
「そ、一度離れた方がいい時もあるでしょう?」
「離れた方が?」
「一緒にいると相手の良い所が見えなくなって、悪い所ばかりが目に付くようになったりするじゃない。
それに、感情的になっている時は冷静な対応が出来なくなったりね。」
「離れれば、また仲良くなれますかね?」
「それは只離れただけじゃだめよ。仲直りしようと努力しないと」
「…努力。あ、あの」
プラティーは何時も持ち歩いているポシェットから持っているお金をアイリスに渡す。
「あら?宿泊費なんていいのよ?」
「あ、え、そ、そっか宿泊費も払うのが本来なら筋ですよね。え、えっと、でもこれはそうではなくて、その、欲しいものがあって」
「欲しいもの?」
「はい、実は――、」
「いいじゃない!ノエル手配の方お願いできる?」
「かしこまりました。お嬢様」
プラティーはリンデンと仲直りするために、一度彼女の下を離れることを決めた。
☆☆☆
プラティーと喧嘩をしてから一日が過ぎた。
リンデンは誰も眠っていない隣のベッドに目を向ける。
(昨日は私もカリカリしてしまって言い過ぎたわね。
それにしても、あの子。どこで寝泊まりしてるのかしら。外…ではないわよね?)
リンデン自身、プラティーが何時になっても帰ってこないため、中々寝付けずにいた。一度心配過ぎて、寮を抜け出そうとしたほどだ。
結局、寮長に見つかり、探しに行かせては貰えなかったのだが、
(寮長も寮長よ。
プラティーが何処にいるか、なんで教えてくれないの?)
寮長の態度から、寮長がプラティーの居場所を知っているのは明白だった。
にもかかわらず、リンデンには教えてはくれない。寮長も自分とプラティーの関係を知っている筈なのに一体なぜなのか、リンデンには皆目見当もつかなかった。
(まぁ、いいわ。寮長が教えてくれないのなら、Aクラスの人間に聞いて回ればいいだけだわ。)
Aクラスには貴族の子息、令嬢が多く在籍している。情報通の人間がプラティーのことを知っていても可笑しくない。
実際。その考えは間違っていなかった。
むしろ、予想以上に簡単に情報が入ったと言った方が正しかった。
教室についたとともに、ちょっとした騒ぎになっていたのだ。
「ねぇ、聞いた?コリアンダー嬢が一般生徒を自分の部屋に呼んだんだって?」
「一体何が目的だ?酷いことされていないといいがな」
「それが、泣いている生徒を保護したって話よ」
「泣いてたってどういう状況だ?そもそも、あのコリアンダー嬢が人助けだと?寝言は寝ていえ」
「いや、それが、最近のコリアンダー嬢は心を入れ替えたらしくて、以前よりかは他者に優しく接しているらしい。
漸くノブレスオブリージュを理解したんだろうな」
「へぇ、俄かには信じ難いな。そもそも、元々の態度が最悪だし、その話も何処まで鵜呑みにしていいんだ?
うん?おはようビバーナム嬢」
「え、ええ、ごきげんよう。先程の話、少し聞かせて貰ってもいいかしら」
リンデンは近くにいた生徒に先程の話。
アイリス・コリアンダー公爵令嬢が一般生徒を保護したという内容について尋ねた。
「あ、ああ、そのままだよ。
一般生徒、名前、何て言ったかな?」
「たしか、Cクラスのプラ、プラ…」
「プラティー・コウドン?」
「そうそう、その名前。ビバーナムさん、良く知ってるなぁ」
「ええ、まぁ」
「そのコウドン嬢のことをコリアンダ―公爵令嬢が保護したって話なんだよ。
信じられないよな」
「そうね。」
「何か裏があるのか、そうでなくても、コリアンダー嬢が保護したっていうコウドン嬢がどんな子かって話で今クラスは持ち切りさ」
(どういうつもりなの?プラティー。
アイリス・コリアンダー!)
他の生徒からすれば、只の世間話。
けれど、リンデンからすれば最愛の妹が憎き相手の手に渡ったも同じ。
内心穏やかではいられなかった。
寮に帰ったプラティーを待っていたのは腕を組み、ベッドに腰掛けるリンデンだった。
リンデンはプラティーに目を向けると、口を開く。
心配している、という様子ではない。
まだ、課題を忘れたことを怒っているのだろうか?
「あ、あの…」
「ねぇ、プラティー。何故あなたがコリアンダーと共にいるの?」
「え?」
コリアンダー?
何故、ここで、コリアンダー公爵令嬢の名前が出てくるのか?
コリアンダー公爵家については当然知っている。知っているが、コリアンダー公爵令嬢と共にいたことなんてない。
そこまで考えて、先程のやり取りを思い出す。
プラティーの話をちゃんと聞いてくれた貴族。彼女がコリアンダー令嬢だとすれば…。
パズルが頭の中で組みあがっていく。リンデンの怒りの理由《いみ》が分かる。
「え、あの、コリアンダー公爵令嬢だと知らなかったんです。とても優しい方でしたし…」
「優しい!
あなたアレが優しいというの!?
ビバーナム商会を貶したあの女が!!」
リンデンはベッドから立ち上がる。背丈の関係上丁度、リンデンがプラティーを見下ろす形になる。思わず後ずさるプラティー。その少女の抵抗を胸倉を掴むことで阻止した。
「私の目を見てもう一度言ってみなさい。
コリアンダーがなんですって?」
「え、えっと、ごめんなさい」
「あなた、直ぐそれね。謝れば済むと思ってる?
というか、あなた直ぐ謝るから本当に反省しているのか、分からないんだけど」
「え、は、反省してます」
「口では何とでも言えるのよ。課題にしろ。コリアンダーと会ったことにしろ。」
「…ごめんなさい」
「ほら、また謝った。」
冷たい瞳でプラティーを見据えるリンデン。息が詰まるような雰囲気。この場にいたくないと本能が告げている。現実逃避だとしても、この場を、お茶を濁せるものはないか。
プラティーは懸命に考え、あるものを思い出して口を開いた。
「わ、わたし、課題を終わらせないとなので」
リンデンの胸倉を掴む手を自身の手で解くと、リンデンから背を向けて机を目指す。
「待ちなさい」
肩に手を置かれ、前に進めない。恐怖を感じながらも仕方なくリンデンの方を振り向くと同時、プラティーの頬を衝撃が走った。鈍い痛みが襲った。
呆気に取られながらもリンデンに視線を向けると、手を振りぬいたのが分かった。
振りぬいた掌がプラティーの頬に当たり、じんじんと痛みを訴えているのだと分かった。
「え?」
「話が終わっていないわ」
「で、でも、課題が」
「私とあなたの将来のことなんだから課題よりも大切でしょ」
明らかに何時もと様子が違う。
コリアンダーがリンデンにとっての地雷であることは知っていたが、まさかここまで態度を豹変させるとは思っていなかった。
プラティーは防衛本能からか、いつの間にかリンデンを押しのけてまたしても寮を飛び出していた。
(私、何してるんだろう。寮を飛び出しても行くところなんてないのに…)
自嘲しながらも、今更足を止めることは出来なかった。
走って走って、まともに前をみずに下ばかり見て走っていたからか、誰かにぶつかってしまう。
「きゃっ」
「す、すいません」
駆け寄ろうとして、漸く上を向いて気づく。
今ぶつかった相手が先ほど話を聞いてもらった貴族。アイリス・コリアンダーであることに。
「あ…」
「前を見て…ってあなたさっきの」
少しの間見つめ合う両者。
けれど、プラティーは我に返るとともに、その場を後にしようと踵を返す。
走ってこの場を去るのが最善。彼女がどれだけ自分に良くしてくれたとしてもリンデンとビバーナム商会に酷いことをした人間であるという事実は変わらない。
なのに、思うように足が動かなかった。急に震えて、涙が零れ、そのまま膝をついてしまう。
「ど、どうしたの?」
アイリスが急いで、彼女に駆け寄る。
涙を流す姿。先程までは少し元気になったように見えたのに、分かれた後一体何があったのか?
アイリスはプラティーの背中を撫でながらも、場所を変えるべく、お付きのメイドであるノエルに目配せをした。
プラティーをおんぶするアイリス。本当なら、拒まなくてはいけないのに、感情が入り乱れて、心が疲弊して、プラティーには拒否する力も残っていなかった。走り疲れたプラティーにはここから移動する意思すらも残ってはいなかった。
☆☆☆
寮は寮でも平民の寮とは違う寮。ベットにソファ、勉強机とは別に置かれた丸テーブルと四脚の椅子。広い一人部屋の椅子の一つに座らされたプラティーはアイリスのメイドにお茶とお茶菓子を振舞われていた。
「少しは落ち着いた?」
心配気に聞いて来るアイリスにプラティーはこくりと一つ頷いた。
「それなら、なんで泣いていたか聞いてもいいかしら?」
「…それは」
「ダメ?」
駄目かどうか、プラティーにはもう良くわからなかった。アイリスは聞いていたよりもずっといい人で、こんな人が本当にビバーナム商会に酷いことを言ったのか、言ってなかったとしてもこの状況、リンデンと関係を修復できるのか、分からない。一つ予感があるとすれば、この人に話したら何かが変わりそうな気はするのだ。
(でも、リンデンさんのことは裏切りたくない。)
リンデンと関係の修復をしたい。何か大きく現状を動かす要因が欲しいと思うプラティーと、それでもリンデンとの関係をこれ以上悪くするくらいなら言いたくないと思うプラティー。心の中で二人のプラティーが争っていた。
傍から見ていたアイリスにもそれが分かったのだろう。
「言いたくないのならそれでもいいわ。」
「…ありがとうございます」
「ええ、どういたしまして。
ただ、一つだけ答えて頂戴」
「?」
「寮には帰りたい?」
「それは…」
ハッキリと言える。帰りたくなんてない。今のリンデンは怖い。一緒にいたくない。リンデンのことは大好きな筈なのに、それはハッキリと分かった。
「帰り、たくないです。」
「そう、なら、ここで私と一緒に寝泊まりしない?
ほら、ベッドも大きいし、二人で寝てもへっちゃらよ?」
「で、でも」
今のリンデンは確かに怖い。けれど、プラティーはリンデンの良い所をいっぱい知っている。
真面目で常に結果を求め続けて努力するところ。あれでいて教えることが以外と上手いこと。こちらのことを常に気に掛けてくれること。話をちゃんと聞いてくれること。
いっぱいある。いっぱいあるのだ。
リンデンを忘れて生きていくなんて出来ないくらいにリンデンから沢山の物を貰ったのだ。
「別に縁を切れって話じゃないわ。ルームメイトと喧嘩しちゃったんでしょ?
だったら離れて仲直りする時間が必要だと思っただけよ」
「仲直り?」
「そ、一度離れた方がいい時もあるでしょう?」
「離れた方が?」
「一緒にいると相手の良い所が見えなくなって、悪い所ばかりが目に付くようになったりするじゃない。
それに、感情的になっている時は冷静な対応が出来なくなったりね。」
「離れれば、また仲良くなれますかね?」
「それは只離れただけじゃだめよ。仲直りしようと努力しないと」
「…努力。あ、あの」
プラティーは何時も持ち歩いているポシェットから持っているお金をアイリスに渡す。
「あら?宿泊費なんていいのよ?」
「あ、え、そ、そっか宿泊費も払うのが本来なら筋ですよね。え、えっと、でもこれはそうではなくて、その、欲しいものがあって」
「欲しいもの?」
「はい、実は――、」
「いいじゃない!ノエル手配の方お願いできる?」
「かしこまりました。お嬢様」
プラティーはリンデンと仲直りするために、一度彼女の下を離れることを決めた。
☆☆☆
プラティーと喧嘩をしてから一日が過ぎた。
リンデンは誰も眠っていない隣のベッドに目を向ける。
(昨日は私もカリカリしてしまって言い過ぎたわね。
それにしても、あの子。どこで寝泊まりしてるのかしら。外…ではないわよね?)
リンデン自身、プラティーが何時になっても帰ってこないため、中々寝付けずにいた。一度心配過ぎて、寮を抜け出そうとしたほどだ。
結局、寮長に見つかり、探しに行かせては貰えなかったのだが、
(寮長も寮長よ。
プラティーが何処にいるか、なんで教えてくれないの?)
寮長の態度から、寮長がプラティーの居場所を知っているのは明白だった。
にもかかわらず、リンデンには教えてはくれない。寮長も自分とプラティーの関係を知っている筈なのに一体なぜなのか、リンデンには皆目見当もつかなかった。
(まぁ、いいわ。寮長が教えてくれないのなら、Aクラスの人間に聞いて回ればいいだけだわ。)
Aクラスには貴族の子息、令嬢が多く在籍している。情報通の人間がプラティーのことを知っていても可笑しくない。
実際。その考えは間違っていなかった。
むしろ、予想以上に簡単に情報が入ったと言った方が正しかった。
教室についたとともに、ちょっとした騒ぎになっていたのだ。
「ねぇ、聞いた?コリアンダー嬢が一般生徒を自分の部屋に呼んだんだって?」
「一体何が目的だ?酷いことされていないといいがな」
「それが、泣いている生徒を保護したって話よ」
「泣いてたってどういう状況だ?そもそも、あのコリアンダー嬢が人助けだと?寝言は寝ていえ」
「いや、それが、最近のコリアンダー嬢は心を入れ替えたらしくて、以前よりかは他者に優しく接しているらしい。
漸くノブレスオブリージュを理解したんだろうな」
「へぇ、俄かには信じ難いな。そもそも、元々の態度が最悪だし、その話も何処まで鵜呑みにしていいんだ?
うん?おはようビバーナム嬢」
「え、ええ、ごきげんよう。先程の話、少し聞かせて貰ってもいいかしら」
リンデンは近くにいた生徒に先程の話。
アイリス・コリアンダー公爵令嬢が一般生徒を保護したという内容について尋ねた。
「あ、ああ、そのままだよ。
一般生徒、名前、何て言ったかな?」
「たしか、Cクラスのプラ、プラ…」
「プラティー・コウドン?」
「そうそう、その名前。ビバーナムさん、良く知ってるなぁ」
「ええ、まぁ」
「そのコウドン嬢のことをコリアンダ―公爵令嬢が保護したって話なんだよ。
信じられないよな」
「そうね。」
「何か裏があるのか、そうでなくても、コリアンダー嬢が保護したっていうコウドン嬢がどんな子かって話で今クラスは持ち切りさ」
(どういうつもりなの?プラティー。
アイリス・コリアンダー!)
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