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第16章 攻城塔対要塞
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翌朝。
帝国軍が、動き始めた。
「敵襲——!」
見張りの声が、要塞中に響き渡った。
匠は、城壁の上に立った。
北から、巨大な影が近づいてくる。
「複合攻城機」——蛭間の最高傑作。
「……来たか」
匠は、「指金」を発動させた。
敵の機械が、透視される。
木と鉄のフレーム。複雑な内部構造。数百人の兵士を収容できる空間。先端には、巨大な衝角。
「師匠、どうしますか」
ガルドが、傍に来た。
「計画通りだ」
匠は、短く答えた。
「全員、配置につけ」
弟子たちが、散っていく。
匠は、昨夜考えた作戦を実行に移す。
「複合攻城機」は、ゆっくりと要塞に接近していた。
蛭間は、機械の最上部に立っていた。
前方に、要塞が見える。蒼鉄樹の城門、補強された城壁。
だが——
「あの程度では、この機械は止められない」
蛭間は、確信していた。
「複合攻城機」には、弱点がない。どこを攻撃されても、致命傷にはならない。
火矢? 鉄板で防ぐ。
投石? 構造が分散されているから、一撃では崩れない。
坑道? 重量が分散されているから、地盤が崩れても傾かない。
「全てを——計算済みだ」
蛭間は、要塞を睨んだ。
あと五百メートル。あと四百メートル。
「衝角、準備」
蛭間が命じると、機械の内部で歯車が動き始めた。
先端の衝角が、前方に突き出される。
あの衝角が城門に当たれば——蒼鉄樹の門でも、持たない。
「あと三百メートル——」
その時——
「何だ?」
蛭間は、前方に異変を察知した。
城壁の上に、何かが並んでいる。
「投石機か? いや、違う……」
蛭間は、目を細めた。
それは——カタパルト(投石器)ではなかった。
もっと小さく、もっと簡素な構造物。
「何をする気だ……」
次の瞬間——
城壁の上から、何かが飛んできた。
石ではない。火矢でもない。
それは——
「油?」
黒い液体が、「複合攻城機」に降り注いだ。
油だ。大量の油が、機械の外装にぶちまけられている。
「馬鹿な……油をかけても、鉄板には火がつかない」
蛭間は、冷笑しようとした。
だが——
「あれは何だ」
城壁の上で、兵士たちが何かを構えている。
弓——ではない。
もっと大きく、もっと複雑な形状。
「投擲器……?」
兵士たちが、それを発射した。
飛んできたのは——壺だ。
小さな壺が、「複合攻城機」に向かって飛んでくる。
壺が、機械に当たった。
割れた。
中から——白い粉が飛び散った。
「粉? 何の——」
蛭間が言い終わる前に——
爆発が起きた。
轟音。閃光。熱風。
「何っ——!」
蛭間は、衝撃で吹き飛ばされた。
匠は、城壁の上から、爆発を見ていた。
「……成功だ」
彼の作戦は、こうだった。
まず、油を撒く。鉄板には火がつかないが、油は付着する。
次に、硝石と硫黄を混ぜた粉末を投げつける。これは、この世界の錬金術師から調達した火薬の原料だ。
油と火薬が混ざり、そこに火が落ちれば——
「爆発する」
鉄板は、火には強い。だが、爆発には弱い。
衝撃波が、鉄板を内側から吹き飛ばす。
「複合攻城機」の外装が、あちこちで剥がれ落ちていた。
「くっ——!」
蛭間は、立ち上がった。
機械の内部は、混乱していた。兵士たちが悲鳴を上げ、煙が立ち込めている。
「被害状況を報告しろ!」
「外装が剥がれています! 火がついた箇所もあります!」
「消火しろ! 進軍は続ける!」
蛭間は、叫んだ。
「この程度で——止まってたまるか!」
機械は、まだ動いている。
外装が剥がれても、骨格は無事だ。
「進め——!」
「複合攻城機」は、再び前進を開始した。
だが——スピードが落ちていた。
爆発のダメージで、車輪の一部が損傷していた。
「構わない……このまま——」
蛭間が言いかけた時——
また、油が降ってきた。
「くそ——!」
また、火薬の壺が飛んでくる。
また、爆発。
また、また、また——
「なぜだ……!」
蛭間は、叫んだ。
「なぜ、こんなに正確に——」
城壁の上を見た。
そこに——一人の男が立っていた。
L字型の道具を手に持ち、こちらを見つめている。
「黒田……!」
匠だ。
匠が、「指金」を使って、機械の構造を分析している。
そして——弱点を作り出している。
「外装が剥がれた場所」が、新たな弱点になる。
匠は、それを見つけ、そこに攻撃を集中させているのだ。
「くそ……!」
蛭間は、歯を食いしばった。
「俺の機械に——弱点なんかない——!」
だが——
爆発は、続いた。
外装が剥がれるたびに、新しい弱点が生まれる。
そこを、匠が的確に突いてくる。
「複合攻城機」は、少しずつ——崩れていった。
一時間後。
「複合攻城機」は、要塞の手前百メートルで、動きを止めた。
炎に包まれ、煙を上げている。
内部から、帝国兵たちが逃げ出していた。
「……勝った」
匠は、城壁の上で、それを見ていた。
「勝ったんですか、師匠!」
ガルドが、駆け寄ってきた。
「ああ……とりあえずは」
匠は、燃える機械を見下ろした。
あの中に——蛭間がいたはずだ。
生きているだろうか。
死んだだろうか。
「……まだ、終わりじゃない」
匠は、呟いた。
「蛭間は、必ず次の手を打ってくる」
「次の手?」
「ああ。あいつは——諦めない奴だ」
匠は、蛭間のことを知っていた。
現実世界で、何度も見てきた。
失敗しても、挫折しても、決して諦めない。
むしろ、失敗を糧にして、さらに強くなってくる。
「俺たちも——準備を続ける」
匠は、城壁を見回した。
「弟子たち、全員集合だ。次の作戦を——考える」
帝国軍が、動き始めた。
「敵襲——!」
見張りの声が、要塞中に響き渡った。
匠は、城壁の上に立った。
北から、巨大な影が近づいてくる。
「複合攻城機」——蛭間の最高傑作。
「……来たか」
匠は、「指金」を発動させた。
敵の機械が、透視される。
木と鉄のフレーム。複雑な内部構造。数百人の兵士を収容できる空間。先端には、巨大な衝角。
「師匠、どうしますか」
ガルドが、傍に来た。
「計画通りだ」
匠は、短く答えた。
「全員、配置につけ」
弟子たちが、散っていく。
匠は、昨夜考えた作戦を実行に移す。
「複合攻城機」は、ゆっくりと要塞に接近していた。
蛭間は、機械の最上部に立っていた。
前方に、要塞が見える。蒼鉄樹の城門、補強された城壁。
だが——
「あの程度では、この機械は止められない」
蛭間は、確信していた。
「複合攻城機」には、弱点がない。どこを攻撃されても、致命傷にはならない。
火矢? 鉄板で防ぐ。
投石? 構造が分散されているから、一撃では崩れない。
坑道? 重量が分散されているから、地盤が崩れても傾かない。
「全てを——計算済みだ」
蛭間は、要塞を睨んだ。
あと五百メートル。あと四百メートル。
「衝角、準備」
蛭間が命じると、機械の内部で歯車が動き始めた。
先端の衝角が、前方に突き出される。
あの衝角が城門に当たれば——蒼鉄樹の門でも、持たない。
「あと三百メートル——」
その時——
「何だ?」
蛭間は、前方に異変を察知した。
城壁の上に、何かが並んでいる。
「投石機か? いや、違う……」
蛭間は、目を細めた。
それは——カタパルト(投石器)ではなかった。
もっと小さく、もっと簡素な構造物。
「何をする気だ……」
次の瞬間——
城壁の上から、何かが飛んできた。
石ではない。火矢でもない。
それは——
「油?」
黒い液体が、「複合攻城機」に降り注いだ。
油だ。大量の油が、機械の外装にぶちまけられている。
「馬鹿な……油をかけても、鉄板には火がつかない」
蛭間は、冷笑しようとした。
だが——
「あれは何だ」
城壁の上で、兵士たちが何かを構えている。
弓——ではない。
もっと大きく、もっと複雑な形状。
「投擲器……?」
兵士たちが、それを発射した。
飛んできたのは——壺だ。
小さな壺が、「複合攻城機」に向かって飛んでくる。
壺が、機械に当たった。
割れた。
中から——白い粉が飛び散った。
「粉? 何の——」
蛭間が言い終わる前に——
爆発が起きた。
轟音。閃光。熱風。
「何っ——!」
蛭間は、衝撃で吹き飛ばされた。
匠は、城壁の上から、爆発を見ていた。
「……成功だ」
彼の作戦は、こうだった。
まず、油を撒く。鉄板には火がつかないが、油は付着する。
次に、硝石と硫黄を混ぜた粉末を投げつける。これは、この世界の錬金術師から調達した火薬の原料だ。
油と火薬が混ざり、そこに火が落ちれば——
「爆発する」
鉄板は、火には強い。だが、爆発には弱い。
衝撃波が、鉄板を内側から吹き飛ばす。
「複合攻城機」の外装が、あちこちで剥がれ落ちていた。
「くっ——!」
蛭間は、立ち上がった。
機械の内部は、混乱していた。兵士たちが悲鳴を上げ、煙が立ち込めている。
「被害状況を報告しろ!」
「外装が剥がれています! 火がついた箇所もあります!」
「消火しろ! 進軍は続ける!」
蛭間は、叫んだ。
「この程度で——止まってたまるか!」
機械は、まだ動いている。
外装が剥がれても、骨格は無事だ。
「進め——!」
「複合攻城機」は、再び前進を開始した。
だが——スピードが落ちていた。
爆発のダメージで、車輪の一部が損傷していた。
「構わない……このまま——」
蛭間が言いかけた時——
また、油が降ってきた。
「くそ——!」
また、火薬の壺が飛んでくる。
また、爆発。
また、また、また——
「なぜだ……!」
蛭間は、叫んだ。
「なぜ、こんなに正確に——」
城壁の上を見た。
そこに——一人の男が立っていた。
L字型の道具を手に持ち、こちらを見つめている。
「黒田……!」
匠だ。
匠が、「指金」を使って、機械の構造を分析している。
そして——弱点を作り出している。
「外装が剥がれた場所」が、新たな弱点になる。
匠は、それを見つけ、そこに攻撃を集中させているのだ。
「くそ……!」
蛭間は、歯を食いしばった。
「俺の機械に——弱点なんかない——!」
だが——
爆発は、続いた。
外装が剥がれるたびに、新しい弱点が生まれる。
そこを、匠が的確に突いてくる。
「複合攻城機」は、少しずつ——崩れていった。
一時間後。
「複合攻城機」は、要塞の手前百メートルで、動きを止めた。
炎に包まれ、煙を上げている。
内部から、帝国兵たちが逃げ出していた。
「……勝った」
匠は、城壁の上で、それを見ていた。
「勝ったんですか、師匠!」
ガルドが、駆け寄ってきた。
「ああ……とりあえずは」
匠は、燃える機械を見下ろした。
あの中に——蛭間がいたはずだ。
生きているだろうか。
死んだだろうか。
「……まだ、終わりじゃない」
匠は、呟いた。
「蛭間は、必ず次の手を打ってくる」
「次の手?」
「ああ。あいつは——諦めない奴だ」
匠は、蛭間のことを知っていた。
現実世界で、何度も見てきた。
失敗しても、挫折しても、決して諦めない。
むしろ、失敗を糧にして、さらに強くなってくる。
「俺たちも——準備を続ける」
匠は、城壁を見回した。
「弟子たち、全員集合だ。次の作戦を——考える」
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