2人の未来〜今まで恋愛感情を抱いたことのなかった童貞オタク受けがゲイだと勘違いした周りに紹介されてお見合いする話〜

ルシーアンナ

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後輩の白井くん

舌舐めずりすらしかねないギラギラとした彼の目に、俺はもしかしてとんでもない人を紹介してしまったのではないだろうか?と思った。

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「ラウンジで明原あきはらチャン見たとき、世界が変わった」

 そしてどこかうっとりとするような目で言われ、俺は飲みかけていたコーヒーを吹き出しかけた。


「世界が…」

「すげェ可愛いけど、臆病そうで。俺なんか会って5秒でごめんなさいされそうだろ?」

「はぁ」


 オタクくんと元ヤンじゃ完全ビビられて終わりかも知れませんね、たしかに。


「だからチッとでもマジメに見せようと、テメーのメガネ借りたンだよ」


 真面目イコール眼鏡のテンプレの安直さはこの際黙って飲み込むとして、それでも元ヤンからインテリヤクザにガラの悪さ的に下方修正された感じがありましたけどね。


「おかげで明原チャンの顔ほとんど見られなかったけど‪――‬テメーのメガネ度が強すぎッだろ?」

 言いながら睨まれたけど、それは完全なる自業自得な八つ当たりだ。


 ちなみに名須さんの視力を聞いてみたら、

「両眼とも2.5」

 と、かなり野性的な回答が返ってきた。


「ハゲの用事は割と早く済んだから、メシは終わってても酒くらい……とは思ったんだけどよ」

 名須さんの話はまだ続くらしい。

 仕方ないから頷きで相槌をしながら、俺も冷蔵庫からビールを取り出した。


「酒なんか入ったら絶対ラブホ連れ込む自信あったから、やめといた」

 おかげで一番美味しい開けたてのひと口目を、今度こそ吹き出してしまった。


「汚ねーな、拭けよほら」

 名須さんは言いながら、まるで自分の部屋のように箱ティッシュを投げて寄越すけど、ほんと誰のせいだと思ってるんだ。


「さすがに会ったその日にそれはねーな、と」

 一応分別というものもあったらしいのは感心したけれど、彼が割と下半身ゆるめなタイプだというのを忘れてはならない。


 舌舐めずりすらしかねないギラギラとした彼の目に、俺はもしかしてとんでもない人を紹介してしまったのではないだろうか?
 と思った。


 だって相手もゲイだって言うし、大学生のガキとか言うならいざ知らず二十代半ばだっていうならそれなりに経験もあるかと思ったし、なんだかんだそういう相性とか性格のアレとかは本人たち次第だし、名須さんは名須さんでそろそろ身を固めたい的なことボヤいてたからちょうどいい機会かと思ったし、そしたら俺も暇つぶしやクダ巻きに付き合わされないで済むし、彼女とか作りやすくなるかも知れないし。


 なのになんでだろう?

 このとんでもない野獣を放ってしまったんじゃないだろうか?
 って焦りは。

「白井ぃ」


 ソファから立ち上がったかと思った名須さんは二本目の缶ビールを勝手に出してきて、彼のスマホを俺に向かってヒョイと放り投げた。


 何でも投げるな、この人は。

 俺はスマホを受け取って、

「何ですか?」

 尋ねたことを、

「代わりに明原チャンへのメッセ考えて」

 後悔した。


「そんなの自分で考えてくださいよ!」

「まだマジメくんで居たいンだよ、俺は」


 つまり、猫かぶり続行と言うことだ。

 猫ってより、羊の皮を被った狼だけど。
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