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聖印⑤
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冒険者になるには冒険者ギルドへ行って登録する。この世界に住むものにとっては常識で、それは田舎者の俺でも知っていることだ。だがしかし、その常識が難しい。
「ねえ、ハクロウ。また迷ってない?」
「……」
「これ、絶対迷ってるよね?さっき道を聞いたところまで引き返さない?」
「冒険者は前進あるのみだ」
「まだ冒険者にすらなれてないから!いいから戻るよー!」
当てもなく歩くのは簡単で、何かを求めて行くのは大変だ。俺もマノンも王都については全くの不案内だ。今まで暮らしていた村とは比べ物にならないぐらい広大な街並みを冷静に見渡すと、なんだか眩暈がする。
マノンの方は元の世界でも大きな街に住んでいたそうだが、何せ世界が違う。マノン曰く、「街に対する考え方が違い過ぎてついていけない」だそうだ。
「おい!お前達、まだこんなとこをうろついてんのか?大通りに出て北へ真っすぐって言ったじゃないか」
通りに敷物を広げて手芸品を売っていた男が俺達を見つけて声をかけてきた。さっき道を教えてくれた男だ。
「その大通りってのがよく分からなくて」
「だからよー果物屋のある四角を左に曲がって真っ直ぐ行ったら大通りにぶつかるから」
「果物屋の四角を左に曲がったんですけど、どんどん道が狭くなって大通りにはぶつからなかったんですけど」
「それ、1軒目の果物屋だろ。曲がるのは2軒目の果物屋だぞ」
最初からそう言えよ!
######
ようやっと辿り着いた冒険者ギルドは立派な石造りの2階建ての建物だった。街の一区画が丸々全て冒険者ギルドの建物のようで、知っている人からすればこんな大きな建物を探して道に迷うなんて馬鹿げた話なのかもしれない。
「やっと着いたわねー!疲れたからお茶にしない?」
「何しに来たんだよ!さっさと登録に行くぞ」
「えー。こんなに喉がカラカラじゃ上手く冒険者登録できないって!」
「登録に上手いも下手もないだろ!行くぞ」
俺は腰の重いマノンを促し、重厚な扉を開いて冒険者ギルドの中に入った
冒険者ギルドの中は幾つもテーブルと椅子の並んだ空間が先ず目の前にあり、その奥にはそれは長い長いカウンターがあった。カウンターにはずらりと職員が並んでいる。
カウンターでの業務も大まかに分かれているようで、《登録》《依頼》《買取》と3つの札が立っていた。
《登録》のカウンターだけは職員が2人だけしかおらず、並んでいる人もいない。俺は目の合った職員のいるカウンターの前に足を進めた。
「ねえ、ハクロウ。また迷ってない?」
「……」
「これ、絶対迷ってるよね?さっき道を聞いたところまで引き返さない?」
「冒険者は前進あるのみだ」
「まだ冒険者にすらなれてないから!いいから戻るよー!」
当てもなく歩くのは簡単で、何かを求めて行くのは大変だ。俺もマノンも王都については全くの不案内だ。今まで暮らしていた村とは比べ物にならないぐらい広大な街並みを冷静に見渡すと、なんだか眩暈がする。
マノンの方は元の世界でも大きな街に住んでいたそうだが、何せ世界が違う。マノン曰く、「街に対する考え方が違い過ぎてついていけない」だそうだ。
「おい!お前達、まだこんなとこをうろついてんのか?大通りに出て北へ真っすぐって言ったじゃないか」
通りに敷物を広げて手芸品を売っていた男が俺達を見つけて声をかけてきた。さっき道を教えてくれた男だ。
「その大通りってのがよく分からなくて」
「だからよー果物屋のある四角を左に曲がって真っ直ぐ行ったら大通りにぶつかるから」
「果物屋の四角を左に曲がったんですけど、どんどん道が狭くなって大通りにはぶつからなかったんですけど」
「それ、1軒目の果物屋だろ。曲がるのは2軒目の果物屋だぞ」
最初からそう言えよ!
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ようやっと辿り着いた冒険者ギルドは立派な石造りの2階建ての建物だった。街の一区画が丸々全て冒険者ギルドの建物のようで、知っている人からすればこんな大きな建物を探して道に迷うなんて馬鹿げた話なのかもしれない。
「やっと着いたわねー!疲れたからお茶にしない?」
「何しに来たんだよ!さっさと登録に行くぞ」
「えー。こんなに喉がカラカラじゃ上手く冒険者登録できないって!」
「登録に上手いも下手もないだろ!行くぞ」
俺は腰の重いマノンを促し、重厚な扉を開いて冒険者ギルドの中に入った
冒険者ギルドの中は幾つもテーブルと椅子の並んだ空間が先ず目の前にあり、その奥にはそれは長い長いカウンターがあった。カウンターにはずらりと職員が並んでいる。
カウンターでの業務も大まかに分かれているようで、《登録》《依頼》《買取》と3つの札が立っていた。
《登録》のカウンターだけは職員が2人だけしかおらず、並んでいる人もいない。俺は目の合った職員のいるカウンターの前に足を進めた。
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