残飯あさりの期待外れ勇者として追放されたけど、何でも食べて取り込む《悪食の聖印》は最強への近道でした

フーツラ

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聖印⑥

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「こんにちは。新規登録かしら?」

黒髪につり目の鋭い女の職員は抜け目なくそう言った。

「その通りです。2人とも新規登録でお願いします」

「そちらの方も?」

女の職員はマノンの方を見ながら尋ねた。マノンを貴族とでも思ったのだろう。

「こいつもです」

俺の物言いに一瞬眉を顰めたが、あー、そっちのパターンねーと1人で納得して話が進み始めた。

「では2人ともこの紙に登録名と年齢を記入して」

「こいつの分も俺が記入しても構いませんか?」

「大丈夫よ。…ということはもしかしてあのパターン?」

「はい?」

「いえ、何でもないわ!気にしないで続けて!」

俺が自分とマノンの分の記入を終えて紙を返すと、女職員は薄い冊子を渡してきた。

「それに冒険者の規約が書かれてあるわ。読んで不明な点や質問があれば言って頂戴」

後ろに並んでいる人もいなかったので、俺はその場で冊子をサラサラと読み終え、女職員に返した。

「質問は、なさそうね。これで登録は完了よ。ハクロウ、マノン。貴方達は今からFランク冒険者よ。活躍を期待するわ」

そう言って女職員はそれぞれの名前と何やら番号の刻まれた金属製の札を渡してきた。これが冒険者としての証らしい。

「よし!ミッションコンプリートよ!お昼ごはんにしましょう!お姉さん、この辺りでお勧めの食堂とかある?」

「は、はい!この辺りですと穴熊亭がお勧めです!煮込み料理はどれも外れがありません!ギルドを出て右手に道なりです!」

「ありがとうー!ハクロウ、行こ!」

マノンに急に話しかけられた女職員は慌てながらも店を教えてくれた。

「わかった。せっかくだから食事にしよう。依頼を受けるのはそれからだ」

何故か顔を紅潮させている女職員を尻目に俺達は一旦ギルドを後にした。


✳︎✳︎✳︎


「ほれで、はの冊子にはなんてかいへあったの?」

「食べながら喋るな!まぁ、内容は当たり前のことばかりだ。ざっくりいうと、冒険者は自己責任。依頼中の怪我や盗難なんかの被害にもギルドは関与しない。ただし冒険者同士の争いには冒険者ギルドが介入するから、喧嘩するなってよ。あんまり酷いと冒険者ランクの降格や登録抹消なんてのもあるらしい」

「依頼については何か書いてあった?」

「依頼にもランクがあって、自分の冒険者ランクの1つ上までしか受けられないって。依頼には一般、指名の2種類があって、掲示板に張り出されるのは一般の依頼だけ。指名依頼は基本的にCランク以上の冒険者に対して依頼元が指名するものらしい。今のところ俺達には関係ないな」

「買取については?」

「魔石みたいに常に需要のある一般的な素材については買取額が掲示板に載ってるらしい。とりあえずは依頼を受けないで素材を集めて売るので良いかもな」

「それもそうね。ハクロウにはさっさと魔物を倒して強くなってもらわないといけないし、当面は素材集めにしましょう!それにしてもハクロウが食べてる兎肉の煮込み、美味しそうね!ちょっと頂戴」

マノンは自分が頼んだ料理をペロリと平らげた上で俺のまで狙ってくる。

「こら!返事する前に勝手に食べるな!」

「いいじゃない!減るもんじゃあるまいし」

「減るんだよ!」

「これ、美味しいね!おねーさん!兎肉の煮込みおかわり!」

早く稼がないとまずいな。
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