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訓練所
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「おい、なんでグレゴリさんが訓練所なんかにいるんだ?」
「さあな。あの子供達に稽古でもつけるんじゃないか」
「あの子供達はなんだ?グレゴリさんて子供いたのか?」
「馬鹿!グレゴリさんは真性魔法使いだぞ!子供なんているわけないだろ」
俺達の姿を見て冒険者達があれこれ話をしている。グレゴリはやはり有名人らしい。
「ジル、シシー。周りの声は気にするな。今日から少し危ない魔法を教えるから気を引き締めるように」
「「はい!!」」
周囲に人がいることもあってかグレゴリはいつもより師匠然としているし、シシーもふざけてはいない。
「早速だが、ジル。先ずは体験してもらうぞ!腹に力を入れろ!」
「はい!」
「行くぞ!हवा काझोंका」
ズバン!
グレゴリの詠唱と同時に俺の腹に衝撃が走り、背中へと抜けていった。立っていられないほどではないが、数拍の間は行動できなかっただろう。それにしても驚くのはその隠密性だ。俺の周りに魔力を放出していたのが全く分からなかった。レガスで一番の魔法使いは伊達じゃない。
「今の魔法はエアハンマーと言う。非常に手軽で効率のよい魔法として知られている。ただ、当然のことだが、遠くでエアハンマーを発動させるなら、その分の魔力を遠くに放出しなければならない。そしてその上で発動のタイミングで魔言と同調させる必要がある。魔法の得意、不得意というのはだいたいこの辺りで決まってくる。自分の身体から離れたところで魔法を発動させないと、魔法使いは名乗れない。まずは安定して魔力を体外に……」
グレゴリの話に頷いていると、いつの間にか俺から距離をとっていたシシーから声が上がった。
「お兄ちゃん!腹に力を入れて!」
「いや、待てよ!話の途中だろ!」
「行くよ!シシーちゃん式エアハンマー、風神の拳!」
ズバババン!
「ぐはっ」
俺の身体は風の塊に吹き飛ばされて、強かに壁に打ち付けられた。グレゴリと違って若干は空間に放出された魔力を感じることは出来たが魔法の発動範囲が広過ぎて躱せなかった。
「いやっほい!成功!師匠、褒めて!褒めて!」
「よ、よくできました」
グレゴリは呆気に取られながらもなんとか再起動して尋ねる。
「シシー。どうやってエアハンマーを無詠唱で成功させたんだ?エアハンマーは初めてだろ?」
「風神の拳」
「え?」
「風神の拳」
「すまない。やり直す。シシー。どうやって風神の拳を無詠唱で成功させたんだ?風神の拳は初めてだろ?」
「うーんとねー、師匠が詠唱して発動させたエアハンマーの魔力の動きを感じて、それを真似っこしただけ」
「まさか!シシーは他人の魔力操作の流れをはっきり感じることが出来るのか?」
「外に放出された魔力の動きはわかったよ!流石に体内での操作は見えないけどね!さっきの師匠のエアハンマーはま!る!み!え!」
風神の拳って言え!自分発だろ!そもそも無詠唱で魔法を発動してるのに、なんでいちいち独自の魔法名を言うんだ?完全に無駄だろ。
「嘘だろ……」
不味い。師匠が自信を失い始めている!なんとかしなくては。
「シシーが魔力を放出すると、なんとなくだけど魔力の存在を感じたんだ。師匠の場合はそれが一切なかった。実戦を想定したら、師匠の魔法の隠密性はかなり有効ですよね」
「それ!そうなんだ!ジルは良いとこに気が付いたな!体外に放出された魔力は気付かれやすい。それを如何に相手に気付かれないようにするかも大事な技術だ。発動前に魔法の気配を感じたら人だって魔物だって躱そうとするからな。当たらなくては意味がない」
よし、この調子だ。がんばれ師匠!自信を持って。
「……地味。師匠は魔力も地味だから気づかれない」
「ぐはっ」
シシーの心ない言葉がグレゴリを貫いた。グレゴリは訓練所の地面に膝をつき項垂れている。
「魔力が地味…地味な魔力…」
グレゴリはうわ言のように繰り返す。
「シシー!なんてことを言うんだ!師匠に謝…」
「てめえら!グレゴリさんに何をしやがった!」
俺の言葉に被せるような怒鳴り声が訓練所の入り口から響いた。見ると燃えるような赤髪の若い男がこちらを睨みつけている。
「ダツマ、どうしてここに」
立ち上がったグレゴリが若い男に声をかけた。
「それはこっちのセリフですよ!なんなんですか?こいつ等は」
ダツマと呼ばれた男がこちらにやってきて、俺とシシーに明らかな敵意をみせた。これは絶対、厄介事だ。
「さあな。あの子供達に稽古でもつけるんじゃないか」
「あの子供達はなんだ?グレゴリさんて子供いたのか?」
「馬鹿!グレゴリさんは真性魔法使いだぞ!子供なんているわけないだろ」
俺達の姿を見て冒険者達があれこれ話をしている。グレゴリはやはり有名人らしい。
「ジル、シシー。周りの声は気にするな。今日から少し危ない魔法を教えるから気を引き締めるように」
「「はい!!」」
周囲に人がいることもあってかグレゴリはいつもより師匠然としているし、シシーもふざけてはいない。
「早速だが、ジル。先ずは体験してもらうぞ!腹に力を入れろ!」
「はい!」
「行くぞ!हवा काझोंका」
ズバン!
グレゴリの詠唱と同時に俺の腹に衝撃が走り、背中へと抜けていった。立っていられないほどではないが、数拍の間は行動できなかっただろう。それにしても驚くのはその隠密性だ。俺の周りに魔力を放出していたのが全く分からなかった。レガスで一番の魔法使いは伊達じゃない。
「今の魔法はエアハンマーと言う。非常に手軽で効率のよい魔法として知られている。ただ、当然のことだが、遠くでエアハンマーを発動させるなら、その分の魔力を遠くに放出しなければならない。そしてその上で発動のタイミングで魔言と同調させる必要がある。魔法の得意、不得意というのはだいたいこの辺りで決まってくる。自分の身体から離れたところで魔法を発動させないと、魔法使いは名乗れない。まずは安定して魔力を体外に……」
グレゴリの話に頷いていると、いつの間にか俺から距離をとっていたシシーから声が上がった。
「お兄ちゃん!腹に力を入れて!」
「いや、待てよ!話の途中だろ!」
「行くよ!シシーちゃん式エアハンマー、風神の拳!」
ズバババン!
「ぐはっ」
俺の身体は風の塊に吹き飛ばされて、強かに壁に打ち付けられた。グレゴリと違って若干は空間に放出された魔力を感じることは出来たが魔法の発動範囲が広過ぎて躱せなかった。
「いやっほい!成功!師匠、褒めて!褒めて!」
「よ、よくできました」
グレゴリは呆気に取られながらもなんとか再起動して尋ねる。
「シシー。どうやってエアハンマーを無詠唱で成功させたんだ?エアハンマーは初めてだろ?」
「風神の拳」
「え?」
「風神の拳」
「すまない。やり直す。シシー。どうやって風神の拳を無詠唱で成功させたんだ?風神の拳は初めてだろ?」
「うーんとねー、師匠が詠唱して発動させたエアハンマーの魔力の動きを感じて、それを真似っこしただけ」
「まさか!シシーは他人の魔力操作の流れをはっきり感じることが出来るのか?」
「外に放出された魔力の動きはわかったよ!流石に体内での操作は見えないけどね!さっきの師匠のエアハンマーはま!る!み!え!」
風神の拳って言え!自分発だろ!そもそも無詠唱で魔法を発動してるのに、なんでいちいち独自の魔法名を言うんだ?完全に無駄だろ。
「嘘だろ……」
不味い。師匠が自信を失い始めている!なんとかしなくては。
「シシーが魔力を放出すると、なんとなくだけど魔力の存在を感じたんだ。師匠の場合はそれが一切なかった。実戦を想定したら、師匠の魔法の隠密性はかなり有効ですよね」
「それ!そうなんだ!ジルは良いとこに気が付いたな!体外に放出された魔力は気付かれやすい。それを如何に相手に気付かれないようにするかも大事な技術だ。発動前に魔法の気配を感じたら人だって魔物だって躱そうとするからな。当たらなくては意味がない」
よし、この調子だ。がんばれ師匠!自信を持って。
「……地味。師匠は魔力も地味だから気づかれない」
「ぐはっ」
シシーの心ない言葉がグレゴリを貫いた。グレゴリは訓練所の地面に膝をつき項垂れている。
「魔力が地味…地味な魔力…」
グレゴリはうわ言のように繰り返す。
「シシー!なんてことを言うんだ!師匠に謝…」
「てめえら!グレゴリさんに何をしやがった!」
俺の言葉に被せるような怒鳴り声が訓練所の入り口から響いた。見ると燃えるような赤髪の若い男がこちらを睨みつけている。
「ダツマ、どうしてここに」
立ち上がったグレゴリが若い男に声をかけた。
「それはこっちのセリフですよ!なんなんですか?こいつ等は」
ダツマと呼ばれた男がこちらにやってきて、俺とシシーに明らかな敵意をみせた。これは絶対、厄介事だ。
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