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ダンジョン
和久津という男
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「根岸パイセン、お久しぶりす!」
ファミレスで向かいの席に座っているのは大学の後輩、顔はイケメンなのに若ハゲの和久津だ。
「それでパイセン、相談ってなんですか?まさかパイセンも」
和久津は俺の頭をチラッと見る。
「いや、髪の相談じゃない。見た通りフッサフサだ」
「ぐはっ!あっ、血が」
和久津がわざとらしく腕で口元を拭った。
「和久津、あっちの世界のこと詳しかったよな?」
「ああ、そっちのことですか。まぁ、一応、僕もエクスプローラーですからね。それなりに、それなりだと思いますよ」
「なら、刻印も詳しいよな?ちょっとこれを見てくれないか?」
俺はマフラーをほどいて首に現れた凶々しい刻印?を和久津に見せる。
「パイセン!トライバルを、入れた、わけではないんですよね?」
「自分でタトゥー入れておいて、相談するやつがいるか?俺は何だ?承認欲求の塊か?」
「すません!つまり、あっちの神様に加護をもらったってことですね?」
「だと思われ」
「しかし、全然見たことないやつですよ!その刻印!めっちゃレアだと思われ!」
和久津は興奮した様子でスマホを弄りだす。
「今エクスプローラー専用の情報交換サイト見てるんですけど、なかなかパイセンの刻印の情報ないっすねー。ちょっと掲示板に投稿するんで写真撮ってよいですか?」
和久津は了解を待たずにスマホからシャッター音を響かせた。情報収集の為だ。仕方ない。
「で、どーいう刻印がメジャーなんだ?」
「例えば美の神の刻印なんかはメジャーですよね?アイドルグループもあるぐらいなんで」
「ああ、あれだな。テレビ出てるやつ。あの刻印、なんか意味あるのか?」
「パイセン、なんも知らないすねー。加護の効果はもはや常識になりつつあるんですよ!?」
「知らん。勿体ぶらずに話せ」
「くっ、相変わらず容赦なし。分かりましたよ!まず、どの刻印にも共通した効果の一つが身体能力の底上げです!」
「ほう」
「どんな神様に加護をもらったとしても、身体能力は1.5倍以上にはなるんじゃないですかね」
「和久津くん、握手をしようか?」
右手を差し出すと、和久津も同じようにする。
「パイセン!僕はこー見えてもエクスプローラー歴5年ですよ!無印とはいえ、一般人とは比較にならないすからね!いざ、尋常に!」
和久津の手を握り、ぎゅっと力を込める。
「あちょあわわわ、、痛い!痛いっす!」
和久津が面白い声を出した。
「がぎょごごご!痛い!痛いって言ってるのに!」
更に力を込める。
「いひゃいひょひいいい!」
フッと力を抜いて和久津の手を解放する。
「ちょっとパイセン!酷すぎですよ!途中からわかってたでしょう!格の違いを!これは虐めの構図です!」
「ははは。すまんな。つい、楽しくて」
「ちょっと真面目な話をしますけど、いいですか?パイセンには分からないと思いますけど、僕のダンジョン最到達階層は6階層なんです。これは初心者から中堅に差し掛かっているエクスプローラーってことなんです」
「続けて」
「無印、僕みたいに異界の神様の加護がない人間でもダンジョンに入ってモンスターを倒していたら身体能力は底上げされるんです。中堅エクスプローラーはダンジョンに入らない一般人に比べて身体能力が1.5倍程度だと言われています」
「んで?」
「パイセンはダンジョン入ったことありますか?」
「ねーよ」
「にも拘らず、パイセンは中堅エクスプローラーの僕を遥かに超える握力をしていたんですよ!分かります!これ!これが加護の力なんですよ!」
だんだん熱くなってきた和久津がウザイ。
「そして加護による身体能力の向上とダンジョンでモンスターを倒したことによる身体能力の向上は別枠なんです!例えば、加護の力で身体能力が1.5倍の人間がダンジョンに5年も潜って入れば更に身体能力は1.5倍になるんです!」
「お、おう」
「もはやチート!ずるい!せこい!」
「お、おう。なんだかすまん」
「それが、パイセン達のような刻印持ち、加護持ちなんですよ!」
和久津がどこからかハンカチを取り出して、歯で引っ張っている。
「まぁ、貰ったもんは仕方ないよな」
「その余裕!が!憎い!憎い!」
「まぁ、落ち着けよ。さっきから取り乱してハゲてるぞ」
「元からハゲてるんです!元ハゲ!」
「元カレみたいになってるぞ」
「童貞なんですけど……」
「すまんかった」
ファミレスで向かいの席に座っているのは大学の後輩、顔はイケメンなのに若ハゲの和久津だ。
「それでパイセン、相談ってなんですか?まさかパイセンも」
和久津は俺の頭をチラッと見る。
「いや、髪の相談じゃない。見た通りフッサフサだ」
「ぐはっ!あっ、血が」
和久津がわざとらしく腕で口元を拭った。
「和久津、あっちの世界のこと詳しかったよな?」
「ああ、そっちのことですか。まぁ、一応、僕もエクスプローラーですからね。それなりに、それなりだと思いますよ」
「なら、刻印も詳しいよな?ちょっとこれを見てくれないか?」
俺はマフラーをほどいて首に現れた凶々しい刻印?を和久津に見せる。
「パイセン!トライバルを、入れた、わけではないんですよね?」
「自分でタトゥー入れておいて、相談するやつがいるか?俺は何だ?承認欲求の塊か?」
「すません!つまり、あっちの神様に加護をもらったってことですね?」
「だと思われ」
「しかし、全然見たことないやつですよ!その刻印!めっちゃレアだと思われ!」
和久津は興奮した様子でスマホを弄りだす。
「今エクスプローラー専用の情報交換サイト見てるんですけど、なかなかパイセンの刻印の情報ないっすねー。ちょっと掲示板に投稿するんで写真撮ってよいですか?」
和久津は了解を待たずにスマホからシャッター音を響かせた。情報収集の為だ。仕方ない。
「で、どーいう刻印がメジャーなんだ?」
「例えば美の神の刻印なんかはメジャーですよね?アイドルグループもあるぐらいなんで」
「ああ、あれだな。テレビ出てるやつ。あの刻印、なんか意味あるのか?」
「パイセン、なんも知らないすねー。加護の効果はもはや常識になりつつあるんですよ!?」
「知らん。勿体ぶらずに話せ」
「くっ、相変わらず容赦なし。分かりましたよ!まず、どの刻印にも共通した効果の一つが身体能力の底上げです!」
「ほう」
「どんな神様に加護をもらったとしても、身体能力は1.5倍以上にはなるんじゃないですかね」
「和久津くん、握手をしようか?」
右手を差し出すと、和久津も同じようにする。
「パイセン!僕はこー見えてもエクスプローラー歴5年ですよ!無印とはいえ、一般人とは比較にならないすからね!いざ、尋常に!」
和久津の手を握り、ぎゅっと力を込める。
「あちょあわわわ、、痛い!痛いっす!」
和久津が面白い声を出した。
「がぎょごごご!痛い!痛いって言ってるのに!」
更に力を込める。
「いひゃいひょひいいい!」
フッと力を抜いて和久津の手を解放する。
「ちょっとパイセン!酷すぎですよ!途中からわかってたでしょう!格の違いを!これは虐めの構図です!」
「ははは。すまんな。つい、楽しくて」
「ちょっと真面目な話をしますけど、いいですか?パイセンには分からないと思いますけど、僕のダンジョン最到達階層は6階層なんです。これは初心者から中堅に差し掛かっているエクスプローラーってことなんです」
「続けて」
「無印、僕みたいに異界の神様の加護がない人間でもダンジョンに入ってモンスターを倒していたら身体能力は底上げされるんです。中堅エクスプローラーはダンジョンに入らない一般人に比べて身体能力が1.5倍程度だと言われています」
「んで?」
「パイセンはダンジョン入ったことありますか?」
「ねーよ」
「にも拘らず、パイセンは中堅エクスプローラーの僕を遥かに超える握力をしていたんですよ!分かります!これ!これが加護の力なんですよ!」
だんだん熱くなってきた和久津がウザイ。
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「お、おう」
「もはやチート!ずるい!せこい!」
「お、おう。なんだかすまん」
「それが、パイセン達のような刻印持ち、加護持ちなんですよ!」
和久津がどこからかハンカチを取り出して、歯で引っ張っている。
「まぁ、貰ったもんは仕方ないよな」
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「まぁ、落ち着けよ。さっきから取り乱してハゲてるぞ」
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「童貞なんですけど……」
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