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ハッピーエンド

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「人間を一時的に猫にする魔法か……。ミーシャの存在がなければ絶対に信じないところだがなぁ」

 すっかり元気になったユリウス様と王城の中庭のベンチにいる。

「ここに現れたんです。黒いフードをかぶった怪しい人が」

「人……」

「えっ?」

「いや、人間にそんな魔法が使えるだろうかと思ってな。もしかしたら人を超えた存在だったのかもしれない」

「それは、神様ってことでしょうか?」

「少なくとも、俺にとっては神様だよ。ミーシャが猫にならなければ、関わることもなかっただろう。そして、人石病に侵されて死んでいた筈だ」

 それは、そうかもしれない。

「ところでユリウス様」

「なんだ? ミーシャ」

「違います」

「えっ、何が違うんだ?」

「私の名前はミーニャです! ミーシャじゃありません! 何度もお伝えしたでしょ!」

「ははは! すまない。つい、呼んでしまうのだ」

 ユリウス様は頭を掻いて誤魔化す。初めて会った時の冷たい印象はもう、何処にもない。

「ミーシャは猫の方です! 私は侍女、ミーニャですから!」

「あぁ。そうだ。その件で話があるのだった。君に侍女をやらせることは出来ない」

「えっ……」

 侍女をクビってこと? 確かにずっと行方不明扱いだったらしいけど!?

「教会から話があって、ミーニャを聖女として認定するそうだ」

「ちょっと待ってください!! なんでそんなことに!!」

「君の身体に流れている血は聖なるものなんだよ。だから、君は聖女だ」

「そんな! 急過ぎますよ!!」

「そしてもう一つ。聖女を我が国から逃さない為に、君には王族と婚約してもらう」

「婚約……!?」

 どうしよう。胸がバクバクして口から飛び出してしまいそうだ。

「といっても、二人の兄は既に婚約者がいるからな。必然的にミーニャは俺と婚約することになる」

「えええぇぇぇっ!!」

「そんなに嫌だったか……」

「違います! 嬉しいです! 嬉しいですけど!! でも展開が早過ぎて!! ちょっと、あっ!!!!」

 興奮し過ぎた私は鼻から血を出した。つまり鼻血だ。

 その様子を見てユリウス様が「これも……聖なる血なのか……」とボソッと呟く。

 とても恥ずかしい。

 やはり私の人生は波瀾万丈。婚約一つとってもドタバタなのだ。きっとこれからも問題続きだろう。

 でも、これからは私の隣にはユリウス様がいる。パッと見は冷たそうだけど、実はとても気さくで真面目で少し寂しがり屋で優しい。きっと何があっても大丈夫。

「ですよね?」

「あぁ」

 私は鼻を押さえながら、ユリウス様にもたれ掛かる。すると、猫だった頃を思い出したのか、そっと背中を撫でられるのだった。
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