虫食べる系配信者が退廃未来へタイムスリップ!〜魔物化したゲテモノを食べて超絶バフで生き延びる〜

フーツラ

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東京

凱旋

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 下田中学校からリヤカーを拝借し、エンヤコラとハイオークの死体と鹵獲ろかくした槍などの武器を運ぶ。ハイオークだけで二百キロは軽く超えているだろう。朽ちたゴムのタイヤがギチギチと嫌な音を立てる。

 下田中学校のオーク集落は壊滅した。ルーメンオーク隊の尊い犠牲によって平和が訪れたのだ。

 校庭に隊員の墓を掘り、花を供えると何故かコメント欄が軽く荒れたが、気にはしない。配信者とは、そのような生き物だ。

 リヤカーを引く身体が痛む。これはセルフ・リミッター解除の影響だろう。フナムシのバフではこのような後遺症が出ることはない。全身の全ての制限を解除するのはリスクが伴うようだ。

「腹が減ったな」

 オークの集落からは武器以外の様々ものも戦利品として貰ってきた。今背負っている大きなリュックもそうだ。

 リヤカーを止めてリュックを漁り、手のひら程のカメムシのローストを引っ張りだす。食感の悪い脚を捨て、菓子パンの要領で頬張った。

「甘っ! 疲れが取れるわー」

 なんと甘いのだ。この辺のカメムシは。カメムシは種類によって味が大きく変わる。ホオズキカメムシをデカくしたようなこのカメムシは甘みが強く、フルーティーだ。女子に勧めたい。

 さて、大井町集落までもう少しだ。

 リヤカーを引いて歩き始めると、背後から人の気配がする。狩猟チームだろうか?

「ルーメンさんっ!!」

 振り返ると世奈だ。また狩猟チームに同行していたらしい。

「なんだ。世奈か。いつも同じ格好をして、もう少し配信映えを考えてくれないか?」

「ルーメンさんがいた時代と違って服は貴重品なんです! 糸を作るのも大変なんですからね! って、オーク!?」

 やっとリヤカーの荷物に気が付いた世奈が声を上げる。それを聞いて他の狩猟チームのメンバー達も集まってきた。

「……このオーク、デカくないか?」
「片目の潰れたオーク。もしや……」
「ルーメンさんとやら、まさかオークの集落を?」

 男達は口々にオークについて語る。

「ああ。そうだ。奴等の集落を潰した」

「えええっ!! そんな、ルーメンさん一人で?」

 世奈が調子の外れた声を上げた。よほど驚いたらしい。

「これは一条院さんに報告だな!」
「ちょっと俺、先に集落に戻って伝えてくる」
「こいつは、久しぶりの宴だぞ!」

 身軽そうな男が一人、集落に向かって駆けていった。残った男達はリヤカーに乗せられた武器を興味深そうに見ている。

「ハンマー以外の武器は集落にくれてやる。その代わり、ちょっと運ぶのを手伝ってくれないか? 実は疲れていてな」

 よし来たっ! と男達は競うようにリヤカーに取り付き、グイグイと引っ張っていく。ポツンと世奈だけが残されてしまった。

「あの、ルーメンさん。もしかして、ウチのお母さんのためにオークの集落を……」

 世奈は頬を赤く染めながら上目遣いで言う。

「そんなわけないだろ。配信を盛り上げる為だ!」

「もうっ! ルーメンさんの意地悪っ!!」

 世奈は急に怒ったような顔をして拳を握る。そしてリヤカーの後を追うように走って行ってしまった。

「……よく分からんな。この時代の女子は」

 配信しっぱなしのカメラは世奈の怒った顔をしっかり映していたようだ。


 コメント:ルーメンさん、世奈怒らせた
 コメント:これはセクハラ発言したな
 コメント:世奈ちゃん、顔赤くしてた
 コメント:虫の交尾について説明してそ
 コメント:えぐいセクハラしたな
 コメント:ルーメンさん、駄目ですよ!


 ウオオオオオオー!! 俺は何もしてねえよっ!!

 視聴者達の誤解を解くことに時間を費やしたため、俺が大井町集落についたのはしばらく後のことだった。

 そして、開いたバリケードの先で俺を待っていたのは今まで聞いたこともないような歓声だった。
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