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第1章~2人の奇妙な関係~
俺のこと好きだったもんね
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「社長は……息子さんがあたしを気に入ってるって……」
昨日きいたままを口にする。
後退りしながら。
「俺、写真も名前も見てないよ。親父が結婚しろってうるさいからこの子気に入ったって1枚引き抜いただけ」
あたしの後退りにも構わずに、それでも歩みを止めない。
「そ、そうなんだ」
そうだよね。
あたしのことを、学くんが気に入るわけがない。
それに、あたしのことなら写真を見てすぐに気づくはずだ。
でも、少しでも期待した。
入った瞬間に見えた顔に。
やっぱり同じ気持ちなんだって。
「期待した?」
その言葉と同時にあたしの背中は壁に行きつく。
もう後ろはなかった。
「期待なんか……「するでしょ?君、俺のこと好きだったもんね?」
意地悪そうに笑ってあたしの言葉を遮る学くんになにも言えなかった。
期待したのは事実だから。
「どうして……」
なんていう運命なのだろうか。
でも、それでも。
諦めた人生に、好きな人と結婚して幸せになれるという未来があるなら。
それでもいいと思った。
「何か言いたいことはある?」
あたしが逃げ出すとでも思っているのだろう。
でも、いい。
あたしはこのままここいる。
だってあたしはこの人のことがずっと好きだった。
会えなかった期間は5年半くらい。
1度も忘れたことなんてなかった。
「あたしを選んでくれてありがとう」
言いたいことはこれだけだった。
「へ?」
あたしの言葉が予想外だったのだろう。
彼から飛び出した変な声。
「あの時もそんなセリフだったね」
意地悪そうにしてるけど、たぶん彼は変わってない。
「あの時……?」
「あたしが好きって言ったとき」
「……っ」
あたしの持ち出したあの頃の話に、学くんの顔が歪む。
「あたしあれから、学くんのこと忘れたことなんてないから」
「そうか……」
学くんがあたしに背を向けて、離れていく。
詰め寄られてた距離は一気に広くなった。
広げられた距離に少し寂しくも感じるけど。
ずっと好きだった人とひとつ屋根の下にいるこの状況に心の中は踊っていた。
あたし、鈴野ちとせ
今年23歳になる現在22歳の新卒社会人。
今年からMMマネジメントの医務室で勤務する産業保健師。
そして、同じ部屋にいる彼は
遊佐学。
たしか、今年28歳はず。
誕生日は知らないからいまが27なのか28なのかはわからないけど。
MMマネジメントの社長令息であり、副社長。
……今日まで知らなかったけど。
「俺の顔をみたらすぐにいなくなると思ったんだけどな」
失敗したと頭をガシガシとかく。
「え?」
その言葉は、適当になんか選んでないことを意味する。
「あの時のことも持ち出してくるとは思わなかった」
「あたしにとってはいい思い出ですよ?遊佐先生?」
「メガネ……外せ」
また、あたしに近づいてきてそっとあたしのメガネに触れる。
──ドクンッ
既視感のある光景にドキドキと心臓のあたりが騒がしくなる。
「言ったじゃん、なんでメガネかけるんだよ」
あの時と同じ、優しい笑顔で言う。
「そうやって言ってくれる人がいなくなったから」
「いるだろ。霧島とか」
「なんで……燿くんが出てくるの」
霧島燿。
高校のひとつ上の先輩でずっとおなじ生徒会にいたから自然と仲良くなっていた。
イケメンで頭脳派なくせに社交的で。
そんな燿くんのファンに呼び出されたこともあったっけと懐かしく思う。
「今あいつのこと考えてるだろ?」
気がつけば、学くんの顔がすぐ側にあった。
「だって学くんが燿くんの名前出したんでしょ」
「妻になるやつがほかの男のこと考えてもいいと思ってんの?」
「いや、だから……んっ」
そういうわけじゃなくて!って反論をしたかったけど。
その言葉は、学くんの唇によって遮られた。
「俺の奥さんになるためにここに来たんだよな?」
「そうだね」
好きでもない人でもいいと思ってた。
好きな人にはもう会えないと思っていたから。
「だったらよそ見するな。妻でいるうちは」
「はい……」
最後の言葉に違和感を覚えたけど。
でも、ずっとこの人をみていたい。
その思いのほうが強かった。
昨日きいたままを口にする。
後退りしながら。
「俺、写真も名前も見てないよ。親父が結婚しろってうるさいからこの子気に入ったって1枚引き抜いただけ」
あたしの後退りにも構わずに、それでも歩みを止めない。
「そ、そうなんだ」
そうだよね。
あたしのことを、学くんが気に入るわけがない。
それに、あたしのことなら写真を見てすぐに気づくはずだ。
でも、少しでも期待した。
入った瞬間に見えた顔に。
やっぱり同じ気持ちなんだって。
「期待した?」
その言葉と同時にあたしの背中は壁に行きつく。
もう後ろはなかった。
「期待なんか……「するでしょ?君、俺のこと好きだったもんね?」
意地悪そうに笑ってあたしの言葉を遮る学くんになにも言えなかった。
期待したのは事実だから。
「どうして……」
なんていう運命なのだろうか。
でも、それでも。
諦めた人生に、好きな人と結婚して幸せになれるという未来があるなら。
それでもいいと思った。
「何か言いたいことはある?」
あたしが逃げ出すとでも思っているのだろう。
でも、いい。
あたしはこのままここいる。
だってあたしはこの人のことがずっと好きだった。
会えなかった期間は5年半くらい。
1度も忘れたことなんてなかった。
「あたしを選んでくれてありがとう」
言いたいことはこれだけだった。
「へ?」
あたしの言葉が予想外だったのだろう。
彼から飛び出した変な声。
「あの時もそんなセリフだったね」
意地悪そうにしてるけど、たぶん彼は変わってない。
「あの時……?」
「あたしが好きって言ったとき」
「……っ」
あたしの持ち出したあの頃の話に、学くんの顔が歪む。
「あたしあれから、学くんのこと忘れたことなんてないから」
「そうか……」
学くんがあたしに背を向けて、離れていく。
詰め寄られてた距離は一気に広くなった。
広げられた距離に少し寂しくも感じるけど。
ずっと好きだった人とひとつ屋根の下にいるこの状況に心の中は踊っていた。
あたし、鈴野ちとせ
今年23歳になる現在22歳の新卒社会人。
今年からMMマネジメントの医務室で勤務する産業保健師。
そして、同じ部屋にいる彼は
遊佐学。
たしか、今年28歳はず。
誕生日は知らないからいまが27なのか28なのかはわからないけど。
MMマネジメントの社長令息であり、副社長。
……今日まで知らなかったけど。
「俺の顔をみたらすぐにいなくなると思ったんだけどな」
失敗したと頭をガシガシとかく。
「え?」
その言葉は、適当になんか選んでないことを意味する。
「あの時のことも持ち出してくるとは思わなかった」
「あたしにとってはいい思い出ですよ?遊佐先生?」
「メガネ……外せ」
また、あたしに近づいてきてそっとあたしのメガネに触れる。
──ドクンッ
既視感のある光景にドキドキと心臓のあたりが騒がしくなる。
「言ったじゃん、なんでメガネかけるんだよ」
あの時と同じ、優しい笑顔で言う。
「そうやって言ってくれる人がいなくなったから」
「いるだろ。霧島とか」
「なんで……燿くんが出てくるの」
霧島燿。
高校のひとつ上の先輩でずっとおなじ生徒会にいたから自然と仲良くなっていた。
イケメンで頭脳派なくせに社交的で。
そんな燿くんのファンに呼び出されたこともあったっけと懐かしく思う。
「今あいつのこと考えてるだろ?」
気がつけば、学くんの顔がすぐ側にあった。
「だって学くんが燿くんの名前出したんでしょ」
「妻になるやつがほかの男のこと考えてもいいと思ってんの?」
「いや、だから……んっ」
そういうわけじゃなくて!って反論をしたかったけど。
その言葉は、学くんの唇によって遮られた。
「俺の奥さんになるためにここに来たんだよな?」
「そうだね」
好きでもない人でもいいと思ってた。
好きな人にはもう会えないと思っていたから。
「だったらよそ見するな。妻でいるうちは」
「はい……」
最後の言葉に違和感を覚えたけど。
でも、ずっとこの人をみていたい。
その思いのほうが強かった。
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