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第1章~2人の奇妙な関係~
過去の人
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〝もうすぐ着く〟
時刻は18時ちょっと前。
学くんがメッセージをくれたから、あたしもホテルの前で待ってみようとエントランスを抜けて外に出る。
「あれ?」
声と視線を感じ、聞こえた方向に目をやる。
「……っ」
見た瞬間、見なければよかったと後悔をした。
大学生のとき、好きだなと思ったひと。
1年間くらいつきあってた。
「ちとせ……だよね?」
あのころのことなんて、水に流したかのように爽やかそうに笑ってあたしに近づいてくる。
隣の女の人の肩を抱いて。
「人、待ってるので」
あたしは彼から視線を外して、学くんを待つ。
「へぇ。その格好は誰かの結婚式?」
あたしの態度も気にすることなく、変わらずに彼は話かけてくる。
「関係ないです」
「えー?そう?まぁ、いっかー。俺ね、彼女と結婚するんだよ」
隣にいる彼女は、くすくすと笑ってあたしを見てる。
彼女はあたしを知っている。
だって、同じサークル内であたしから彼を奪っていったから。
さぞかしいい気分だろう。
自分が勝ったのだから。
彼を手に入れて、そして結婚まで行き着いて。
でも、あたしだって……。
「ちとせ、待たせたね」
二人から逃れたくて、俯くあたしの肩をふわりと後から包み込まれた。
優しい声で。
「学くん……」
学くんの顔を見て、堪えていた涙が出そうだった。
でも、絶対にこの二人の前では泣きたくなかった。
「俺たちも結婚したんだよ」
学くんはあたしを自分の腕の中へと包み込んだ。
〝泣いてももう見えないよ〟ってコソッと言ってくれた。
その優しさが嬉しくて、あたしは学くんの腕の中で涙を流した。
「君たちが浮気してくれたから、俺たちが結婚できたんだ。ちとせ共々、君たちには感謝しかないよ」
どうしてなのだろう。
あたしはこの二人のことを学くんに言ったことがない。
高校時代の話ならわかるが、学くんと一切関わってない大学時代の話だ。
「じゃあお幸せに」
それだけ言うと、学くんはあたしの手を引いてホテルの中へと入った。
去り際にみた彼の顔は心底悔しそうだった。
隣にの彼女は、学くんに見とれていた。
どうみても、彼よりも学くんのほうが顔面偏差値が高い。
学くんは高すぎるのだ。
「あいつの顔みたか?」
学くんが面白そうに言う。
「うん、見た。でもなんで……?浮気のこと」
「んー、なんとなく?そんな雰囲気だったから。あの女も勝ち誇ったような顔してたし」
「そっか……」
それだけで瞬時に判断できる学くんはやっぱりすごい。
「お前のほうがいい女だよ」
「……え?」
「さっきのやつ、もったいないことしたよな。絶対お前の方がいいのに」
あーあと言って、ポンポンっとあたしの頭を撫でてくれる学くんに心が暖かくなる。
「そろそろ時間だ」
腕時計をあたしに見せてくる。
「あ、本当だ。ちょっとメイク直してくるね」
「あぁ、早くしろよ」
少し泣いてしまったから、崩れてしまったメイクを直すべくトイレにかけこんだ。
時刻は18時ちょっと前。
学くんがメッセージをくれたから、あたしもホテルの前で待ってみようとエントランスを抜けて外に出る。
「あれ?」
声と視線を感じ、聞こえた方向に目をやる。
「……っ」
見た瞬間、見なければよかったと後悔をした。
大学生のとき、好きだなと思ったひと。
1年間くらいつきあってた。
「ちとせ……だよね?」
あのころのことなんて、水に流したかのように爽やかそうに笑ってあたしに近づいてくる。
隣の女の人の肩を抱いて。
「人、待ってるので」
あたしは彼から視線を外して、学くんを待つ。
「へぇ。その格好は誰かの結婚式?」
あたしの態度も気にすることなく、変わらずに彼は話かけてくる。
「関係ないです」
「えー?そう?まぁ、いっかー。俺ね、彼女と結婚するんだよ」
隣にいる彼女は、くすくすと笑ってあたしを見てる。
彼女はあたしを知っている。
だって、同じサークル内であたしから彼を奪っていったから。
さぞかしいい気分だろう。
自分が勝ったのだから。
彼を手に入れて、そして結婚まで行き着いて。
でも、あたしだって……。
「ちとせ、待たせたね」
二人から逃れたくて、俯くあたしの肩をふわりと後から包み込まれた。
優しい声で。
「学くん……」
学くんの顔を見て、堪えていた涙が出そうだった。
でも、絶対にこの二人の前では泣きたくなかった。
「俺たちも結婚したんだよ」
学くんはあたしを自分の腕の中へと包み込んだ。
〝泣いてももう見えないよ〟ってコソッと言ってくれた。
その優しさが嬉しくて、あたしは学くんの腕の中で涙を流した。
「君たちが浮気してくれたから、俺たちが結婚できたんだ。ちとせ共々、君たちには感謝しかないよ」
どうしてなのだろう。
あたしはこの二人のことを学くんに言ったことがない。
高校時代の話ならわかるが、学くんと一切関わってない大学時代の話だ。
「じゃあお幸せに」
それだけ言うと、学くんはあたしの手を引いてホテルの中へと入った。
去り際にみた彼の顔は心底悔しそうだった。
隣にの彼女は、学くんに見とれていた。
どうみても、彼よりも学くんのほうが顔面偏差値が高い。
学くんは高すぎるのだ。
「あいつの顔みたか?」
学くんが面白そうに言う。
「うん、見た。でもなんで……?浮気のこと」
「んー、なんとなく?そんな雰囲気だったから。あの女も勝ち誇ったような顔してたし」
「そっか……」
それだけで瞬時に判断できる学くんはやっぱりすごい。
「お前のほうがいい女だよ」
「……え?」
「さっきのやつ、もったいないことしたよな。絶対お前の方がいいのに」
あーあと言って、ポンポンっとあたしの頭を撫でてくれる学くんに心が暖かくなる。
「そろそろ時間だ」
腕時計をあたしに見せてくる。
「あ、本当だ。ちょっとメイク直してくるね」
「あぁ、早くしろよ」
少し泣いてしまったから、崩れてしまったメイクを直すべくトイレにかけこんだ。
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