結婚相手は、初恋相手~一途な恋の手ほどき~

馬村 はくあ

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最終章~ずっと一緒に

昔からずっと

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「ちとせ、今にも泣きそう」



横に座る学くんがあたしの頬をつねる。



「やめてよー」



泣き笑いのような表情になってしまう。



「で、本題に戻るけど。どうして出してなかった?」



テーブルの上の婚姻届を人差し指でコンコンと叩く。



「復讐のつもりだったから」


「で?会社のパーティで発表して本当は結婚してなかったら、社長である俺が恥をかくからってわけ?」


「違う」



お父さんが学くんのことを真剣な瞳でみつめる。
学くんも真剣な瞳で見つめ返して、ゆっくりと首を横に振る。



「じゃあなんだよ」



タマがイライラしたように息を吐く。



「復讐だって分かったら、ちとせが結婚なんてしたくなくなるはずだから」



1度、頷いてからあたしをみつめる。



「あたしが……?」


「いつでもお前が俺から逃げられるように」



「え……?」



学くんの言葉にあたしの目線は婚姻届へと移る。



あたしのため……?

やり方はおかしいけど、あたしのことをはじめから考えてくれていたの?



「こんな復讐してる俺のこと、お前が嫌になったらいつでも手放してやるつもりだった」


「学くん……」


「でも、そんなの無理だった」



学くんの言葉に胸がぎゅうっと締め付けられていく。



「俺と離れて、違うやつの隣にいるちとせなんて考えるのも嫌だった」



あたしの手をぎゅっと握る。



「こんな俺でごめん」



学くんの言葉にあたしは、必死に首を横に振る。



「ははっ、必死すぎ。首痛くなるぞ」



そんなあたしを見て、高校生のときのような本当に笑った顔を見せてくれた。

この顔。
この顔をあたしはずっと見たかった。



「学くんのバカ……」


「ごめんって……」


「これ、突きつけられたとき本当にショックだってんだからね。結婚してるから大丈夫っていう自信があったから」



葉菜さんにこの紙を見せられたときの、胸の痛みはいまだに忘れられない。

このあともきっとずっと覚えているんだと思う。



「まったく……不器用なんだから」



立ち上がったタマがクシャッと学くんの頭を撫でる。



「やめろよ、もう子供じゃねぇんだから」


「いーや、子供のときもさせてくれなかったからな」



なんで言って、タマは何度も何度も学くんの頭を撫でる。



「やめろって、環。俺もう大人だし!」



タマの手を振りほどきながらも、どこか嬉しそうな学くん。



「たまにはお兄ちゃんって呼んでみるか?」


「呼ばねーよ!バカ!」



ずっと〝環〟と呼んできた学くんにとって、今更〝お兄ちゃん〟だなんて恥ずかしくないわけがないだろう。
呼ぼうと思っても呼べないものだと思う。



「ちとせ」



学くんの頭をひたすら撫でていたタマがあたしに向き直る。



「ん?」


「ちとせがすげぇ小さくてまだ母さんが入院してた頃」


「うん」


「病院で学に会ったときにな……「バカ、それ言うなよ!」



言葉を途中で遮って、タマの口に手を当てる学くん。



「え?なに?気になる」



〝ダメ〟と言われれば言われるほど聞きたくなるものだ。

お母さんの病院で会ったことはこの前きいた。
小さい頃に会っていたんだなーくらいの認識しかなかったけど。



「ちとせ、学に〝カッコイイ!結婚する!〟って言ったんだぞ」



「え!?」


「はぁーなんで言うかな」


「ちとせはそんな昔から……」



それぞれが思いも思いに口にしていた。

しかし、小さい頃にそんなことを言っていたなんて。
記憶にないのは当然かもしれないけど、なんとも恥ずかしい。



「学も、わかった結婚しようって言ってたよな」


「だから、それは……」



学くんは見たこともないくらい真っ赤な顔をしてる。

小さい頃の約束なんて、そんなもの守られることなんてそうそうないのかもしれない。

でも、あたしたには約束を果たせたんだ。



「まぁ、その後すぐあんなシーン見たからな」


「そんな気持ちもどっかいったよ。すぐに」



遠い目をしてフッと笑う。



「学くん……」


「大丈夫。いまは、ちゃん気持ちあるから」



ニッコリ笑う学くんに、この笑顔は嘘じゃないということが分かってほっとする。

これからもこの笑顔は守りたい。
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