俺様御曹司に飼われました

馬村 はくあ

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第三章~悪魔の気持ち~

もう一度出会いをつくりたい

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「あった……」



最終面接日からしばらくたった日。
姉ちゃんに聞いてみると、もう結果が出てるってことだったので姉ちゃんのいる総務に足を運んで内定者リストに目を通す。

そこに連なる名前の中に

〝茅ヶ崎 心海〟
その名前を見つけて、心が踊る。
心海は、札幌の短大に進んでいたようだった。



「……あれ」



内定者リストを見ているともう1人、見覚えのある名前。

〝恩田 音哉〟
同姓同名かと思ったがうちの大学の4年になっているため間違いない。



「いつまでもこうなんのかよ……」



なにも変わらない立ち位置。
あの頃からなにも変わってない。

ふたりは、同期として今度は出会ってまた恋におちるんだろうか。



「なぁ、姉ちゃん」


「なに?」



パソコンから目を離さず、俺の呼びかけに答える。



「俺の部屋あんじゃん」


「社員寮の最上階のね」



俺は実家を出て一人暮らしをしてる。
といっても親父に与えられたタワーマンションの最上階で。



「そこ、こいつの部屋に当ててくんね?」


「は?あんたは?」



怪訝な顔をしてやっとパソコンから目を離す。



「俺もそこに住む」


「は!?何言ってるの!?」


「ひとりで住むには広いからさ」



最上階だけ、ワンフロアぜんぶがつながっていて、俺の家はひとりで住むにはありえない広さだった。



「広いからって……この子女の子じゃない」



信じられないというような顔で俺を見る。



「姉ちゃん覚えてる?俺が厚岸で惚れた女」


「忘れるわけないでしょ。あれは大騒ぎだったんだから」


「……こいつなんだ。だから本当お願い!」



姉ちゃんに頭を下げる。

ありえないお願いだってわかってる。
でも、同期である恩田先輩より近くにいくなんてこんなことくらいしかできない。



「まぁ、やっとくけど……」


「よっしゃ!」


「ただ、新入社員は半年間合宿研修だからその後だよ」


「なっが……」



親父の会社だというのに、そういうことは何一つ知らなかった。



「まぁ、仕方ないか……」



入社式であの二人はまず出会ってしまう。
そして、合宿だって同じだ。

あの二人が先に出会いをやり直してしまうんだ。



「俺はまた……奪うのかな」



あの二人がまた付き合うことになれば、俺はまた奪うことになる。
でも、奪わないなんて選択肢はなかった。

もう、一緒にいられない選択肢なんてありえない。
もう、子供じゃない。

まだ、親父の金で暮らしてる俺だけど。
自分の地位なんてもうどうでもいいというくらいに想いは募っていた。

だから、願ったんだ。
もう1度俺を好きになりますようにって。

どんな形だっていい。
最初の出会いは最悪だっていい。

とにかく、心海の頭が俺でいっぱいになればいいんだ。



「あんた手に入れれるの?その子。傷つけたんじゃなかったっけ?」



〝傷つけた〟
その言葉に胸が痛む。

傷つけたってのはずっとわかってるつもりだった。
でも、あとから知った事実は想像以上のものだった。


なんで、あの時手を離してしまったんだろう。
あんなふうにしかできなかったのだろうか。

なにもせず、離れればよかったんじゃないか。
事実を知れば、そう思うことが多くなった。

でも、あの頃の俺はまだ幼くて。
あぁいう形でしかできなかった。
どうしても、欲しくて欲しくてたまらなかった。



「うん。傷つけた、ボロボロにした」


「それでよく手に入れようとするわね」



姉ちゃんは呆れ顔。



「あいつ、俺のせいで記憶がないんだ」


「え……?」


「だから、今度こそちゃんと一緒にいたいんだ。やり方は汚いかもしれないけど……出会いを作りたい」


「ま、それだけ真剣に誰かを想うのはいいことよ。可愛い弟に協力してあげるか」


「姉ちゃん、さんきゅ」



それから少し早い部屋割りをして、半年後の社宅に入る場面に備えていた。

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