俺様御曹司に飼われました

馬村 はくあ

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第三章~悪魔の気持ち~

真実

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『……はい?』



スマホから聞こえてきた少し戸惑いがちの男の声。



「恩田先輩ですか?」



俺はなぜだかその声にピンときて、そう名前を聞いた。



『そうだけど……君は?』


「たぶん、俺のこと先輩は知らないと思います」



大学1年とき。
一つ上にあのとき、車によりかかって待っていた心海の彼氏を見つけた。

……ここの大学だったのか。
そう思った俺は心海も同じ大学にくるのではないかと、次の年の入学式に探してはみたけど見つからなかった。



『ん……?で、何のよう?』


「心海がどうして全てを忘れているのかを知りたくて」


『……心海?お前もしかして……』



恩田先輩は俺と心海のことを知っているようだった。
あのあと、心海は恩田先輩に話したのだろうか。



「先輩のもしかしてがどれの事言ってるのかはわかりませんがたぶん、合ってます」


『お前のせいだろ……全部』


「俺の……」



先輩の言葉が頭の中をかけずりまわる。



『なんで傷つけるくせに、あいつの心乱そうとしたんだよ』


「俺だってそんなつもりは……」



……なかった。
本当に好きだった。

でも、離れなきゃならないことを分かっていて心海に好きと言わせた。
どうしても心海の心が欲しくて。



『あのまま心海の心を奪わないでくれれば、今頃俺と幸せに暮らしてたよ』


「……っ」


『お前にズタズタに傷つけられて、でもアイツは俺にどうしても別れを告げたかったみたいで……会いにきてお前のことを全部話したあとに急に過呼吸になり出して……俺の前で心海は倒れた』


「倒れ……」



すごく苦しそうに話す先輩に俺も苦しくなってくる。

目の前で好きな女が苦しむ姿をみた先輩はどんなに辛かっただろうか。



『病院につれてって目を覚ました心海は、俺のこともお前のことも自分のことさえも忘れてた』


「そんな……」


『医者がいうには精神的なものだろうって。ただ、勉強とかそういうことだけは覚えてたから受験とかには影響がなかった』


「……そうなんですか」



当時を思い出すように話す先輩にそう口にするしかなかった。



『俺が知ってるのはそこまでだよ。それから先は1度も会ってないから、さ……』


「そうですか。ありがとうございます」


『いや……でもなんで今更?』


「この前偶然会った心海が全く俺のこと覚えてなかった風だったんで気になって」



ただ、気になっただけじゃない。
やっぱり俺はどうやっても心海が好きだと思い知らされた。

ずっと頭の隅に心海はいた。
でも、無理やり閉じ込めてた。
そうしないとならないと思ってたから。



『今さらなにもすんなよ。前に思い出させそうとして、本当に大変なことなりそうだったみたいで。それから先はそういうの一切してないから、心海は自分が記憶喪失ってことも知らない』


「……わかりました」



素直に頷いた。

でも、素直にはなれなかった。
忘れてるならまた取り戻せばいい。

先輩がそれをしなかったのは、優しさなのかもしれない。
でも、俺はそんなできた人間なんかじゃない。



「受かってくれてないかな……心海」



幸いにも、親父には心海の顔も見られてないし、名前も言っていない。
俺が素直に従ったからなにもする必要がないと親父も何も調べなかったようだ。



「まずは受かってくれ……」



受かってくれれば、心海は親父の会社に入る。
そうしたら、俺と心海の出会いも作れる。

──俺ともう1度。
出会ってくれればいいんだ。

本当なら、出会わないのがいちばん波風立てなくていいのだろう。
でも、そんなことはできない。

だって、俺は欲しいものは必ず手に入れてきたから。
もう一度、手に入れる。

手放した後悔をなくすくらい。
今度はたくさん愛してやりたい。

まぁ、性格上素直になるのはなかなか難しいけど。
でも、心海の性格も変わってないと思うから。
いつかはまた、俺のことを理解してくれるはずだと思ってる。


あの時の後悔を、すべてのエネルギーにかえて。
俺は、心海が親父の会社に就職することを願った。
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