俺様御曹司に飼われました

馬村 はくあ

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第三章~悪魔の気持ち~

再会

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「はぁ、なんで俺が……」



あの時、心海を手放した後悔だけがつきまとって、それでも時は普通に過ぎていくもので。
気づけば、大学3年になっていた。



「めんどくせぇ……」



今日は親父の会社の入社試験。
面倒だけど、将来の勉強でもしとけと手伝いをすることになっていた。

大学2年の最初までは、親父のことを無視していた俺も卒業後のことを考えるとそういうわけにも行かず、いまは親父と普通に接している。

あんなんでも俺の親だ。

あれからほどなくして、母さんが病に倒れて死んだ。



『暁のこと、お父さんも本当は心配してるから。本当はあなたたちを引き裂いたあと、ひとり泣いてたのよ』


死んでから一年後にやっと見れた母親からのビデオレター。
それを見て、親父のことをちゃんと見ようって思った。

親父に話しかけたとき、珍しく嬉しそうな顔をしたのを見て、あぁこの人もちゃんと父親なんだって初めて思った。



「あれ?ここじゃない」



会社の近くの交差点で、なぜか行き交う人を見とけと言われた俺は、何回も何回も同じ場所を通ってるひとりの女性を発見する。



「あのスーツに髪型……さっきも見たよな」



俺が30分くらいここにいるだけで、もう3回は見てる。

たぶん、親父のいう仕事はここで迷子の人とかいないかを見とけということなんだと勝手に解釈してる。



「あの……」



俺は彼女の前に回り込む。



「はい……?」



突然話かけられてびっくりした顔をするその彼女。



「……っ」



初めて前から彼女のことを見て、俺の心臓が止まるかと思った。



「こ……」



心海と声が出そうになる。
でも、彼女は俺を見て首を傾げてるだけでそんな素振りも見せない。



「あの……?」



何も言わない俺にキョトンとした顔で尋ねる。



「あ、ごめん……さっきから何回もここを通ってるけど迷ってる?」


「あ……はい」



顔を赤くして恥ずかしそうに頷く。



「違ってたらごめん、もしかして進藤コーポレーションの面接?」


「あ……そう、です」


「じゃあつれてってあげるよ。おいで」



彼女の腕を掴んで歩き出す。



「あ、の……ありがとうございます」



行動が表情がすべてが心海としか思えなくて、今にも心臓が飛び出してしまいそうなほどだった。

でも、この子は何も言ってこないしきっと他人の空似なのだろうと自分の心を静めた。



「あなたは……社員さんですか?」


「いや、俺は身内」


「身内……」



そんなことを話してるうちに会社の前につく。



「ほら、ここだよ」


「ありがとうございます!助かりました」



俺にぺこっと頭を下げる。



「いや、じゃあ面接頑張って」


「はい!」



俺の言葉に笑顔で頷いて、会社の中へと入っていく。



「茅ヶ崎心海です!」



中に入って受付に自分の名前を告げる声にびっくりしてもう1度、会社の中を見る。



「……まじかよ」



心海に似ていて、どうしても放っておけなかった。
この子が入社してくれれば、もしかしたら新たな恋ができるかもなんて考えた。

でも、やっぱりその相手は心海でしかないようだ。



「なんで、俺を見て何も言わない……?」



そりゃあたしかに3年前の出来事だけど、忘れられたとか有り得るか?

忘れてくれとは思った。
でも、やっぱり本当は忘れてなんて欲しくなかった。

恨んでもいい。
それだけ心海の中に残るなら。



「草太に電話しよ……」



ポケットからスマホを取り出して、草太の連絡先を出す。



『暁?どした?』



すこし久しぶりに話すその声はいつものように明るかった。

草太とだけはあの後もずっと連絡をとっていた。
いつの間にか、俺にとって草太は1番の理解者になっていたのかもしれない。



「草太……さっき、心海に会った」


『……え?』



草太の声はどこか上ずっていて。
やっぱり、心海になにかあったんだとわかった。




「なぁ、あいつ俺のこと覚えてないみたいなんだけど……」


『誰のことも覚えてねぇよ。自分のことも』


「……は?」



草太の言ってることが理解できなかった。

ダレノコトモ オボエテ ナイ??
ジブンノ コトモ オボエテナイ??

言葉はわかるけど、意味が理解出来なかった。
いや、出来なかったんじゃない。
したくなかったんだ。



『俺は詳しくはわかんねぇ』


「そ……か……。誰かわかるやついねぇの?」


『んー。いるね』


「そいつと話させてくんねぇ!?」



藁にもすがる思いだった。
あのあと心海がどうしていて、いつ何があって記憶を失ったのかを知りたかったんだ。



『じゃあ、番号送っとくからかけてみたら?』


「おう、さんきゅ」



草太との電話を切ってすぐに、LINEで電話番号が送られてくる。



「つーか、これ誰の番号なのか聞き忘れた」



それほどまでに慌ててた。
どうしてもはやく理由が知りたくて。
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