俺のことだけを見てればいいのに。

とらまーる

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第三章

修学旅行三日目 4

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《後ろに気を付けた方がいいよ……》
「ヒィッ……!」
「萊、驚きすぎだよ。」

 おどろおどろしい口調で聞こえるアナウンス。そのたびに俺は隼人にしがみついて止まる。少し遠くでは悲鳴がよく聞こえていて、それさえも驚きの要因。
 隼人はニッコリ笑顔でいつも通り。余裕そうで羨ましい……!

「た……す、け……」

「ギャアアアッ!! 触んなぁぁっ!」

 急に横から伸びてきた手に飛びのき、思いっきり腕を振る。
 当たる直前に隼人に腕を引かれて当たらなかったとは思うが……

「うわっ、危ないってば……
すみません、当たりませんでしたか?」
「あ、いえ……大丈夫です。
お気になさらずお進みください。」

 俺を抱きとめた状態で、脅かし役のスタッフさんを気に掛ける。相手はお化けメイクで顔はわからないけど……いま、雰囲気替わった気がする。こう、一気にネコ被った感じ。今まで隼人の近くにいたけど、こういうやつは隼人を気に入ったやつばっかりだ。いつもは不真面目でも、隼人の前で”だけ”いい子ちゃんぶるやつもいる。
 それに気づきイラッときた俺は、いまだ謝っていた隼人の腕を引き自分から進んでいく。後ろからほんの少しだけ聞こえるはしゃぎ声に、さらに足が速く動いた。

「ふふっ、妬いたの?」
「……別に。」

 その声は嬉しそうで、見透かされたことにもやっとする。……ここで素直に言ったら、可愛いと思われるのかな……?

「ふーん……。」
「……妬いた。妬いて、悪いか」
「っ!」

 ちょっと悩んでから正直に言うと、隼人が驚いたように息をのんで止まった。
 ……止まられると、すごく恥ずかしいんだが。

「止まるなよ。」
「萊、出たらお昼食べてそのあとは俺に任せて。」
「……それくらいいいけど。」
「ふふっ、ありがと。」
「っ……!」

 いつもとは違う、どちらかといえば男らしい口調で言われ、戸惑いながらもうなずけばお礼を言われた。それと共におでこにキスされて顔に熱が集まる。

「それじゃあ、進もうか。」
「っ覚えてろよ……!」

 いつか、いつか絶対に俺が隼人を照れさせてやる……!

「あ、市松人形。」
「え?」

《ギギ、ギ……こ、んに……》

「っヒイイィ!」

 何かあるたびに俺は驚き……出るときにはもうすでにくたくたになっていた。
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