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2、羽月のおしごと
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自分で言うけど、あたし、羽月は根っからの風俗嬢。
あ、羽月ってのは源氏名ね。
本名? そんなのいらないでしょ。
あたしを本名で呼ぶような人らには、もう立派なオトナなのに、まともな仕事をしろってよく言われる。
けど無理だよねー。
だって、お金、いるじゃん?
遊び、美味しいご飯、たばこ、彼女とのデート……。
「彼女? 彼女ってなんですか? あれ、この間彼氏がいるっていってませんでしたっけ」
仕事の帰り、送迎の車内。
ちょっと前に入店した新人が、あたしの話に突っ込みを入れる。
雪という名で、あたしと同じくらいの年齢だ。まぁこの業界で、ほんとのことなんてなぁんにもわからないけどね。
「聞いて驚け雪ちゃん! こいつはレズなんや!」
送迎のハゲボーイが、ハンドル片手に振りかえる。っておい、前を見んかい。
いろんな風俗店で働いたけどさあ、運転荒いボーイ率、どうにかならないの?
「そ、そうなんですか! 雪には未知の世界です……でも彼氏は?」
「男もOKなのよね、あたしは。いやまあそうじゃなきゃこんな仕事できんけど」
「え、彼氏と彼女がいるんですか」
それって浮気なんじゃと、言葉を濁す雪ちゃんに、あたしは笑った。いや、乙女は可愛いね。なんなら一晩明かしてもいいよ。
「どちらかというと彼女のほうが本命だね~。彼氏ホストだし」
「あー、なるほど」
「なるほどってなによ」
全てに納得したかのような頷きに、思わず突っ込みをいれる。
「すすすすすみません」
「冗談冗談、気にしないで。わかってるしー、ホストなんて結局金だし。あ、でも風俗やめろとかは言われてんのよ?」
それがほんとのとこどういう意味なのかはわからない。心配してるのか、独占欲なのか。
まぁわかったところで、あたしは風俗やめる気はない。
「あんたがあたしを養ってくれるならやめるよって言ってやんのよね。もちろん、遊ぶのはやめないからね、ってね。そしたら黙んの」
ケータイをパカパカしながら笑う。
ーーん、悪いか、今時パカパカケータイで。あたしはなにをやめても、風俗と遊びとタバコと、パカパカケータイだけはやめないからね。
タバコにどれだけ税金をかけられようが、あたしは吸ってみせる!
とまあ、そんなこと言えるのも、風俗やってるからなんだけどね。普通の仕事してたら金が持たんわ。
「ちょー、お腹すいた。ラーメン食べよー」
「ラーメン! いいですね!」
ラーメン屋が目に入った、これは運命でしょ。
「え、それオレのおごりじゃないよな」
不安げなハゲボーイに、あたしは両手を合わせてみせた。
「ありがとう」
「ありがとうございます」
当然のように、雪ちゃんも手を合わせた。
おお、なかなかノリいいじゃん。
「ええええ! 勘弁ーー」
うめきながらも、車はラーメン屋の方へ曲がっていくのだった。なんだかんだでハゲボーイが一番ノリノリだな。
羽月のこんやのおしごとおしまい。
美味しいラーメン食べて、また明日も頑張ろっと。
あ、羽月ってのは源氏名ね。
本名? そんなのいらないでしょ。
あたしを本名で呼ぶような人らには、もう立派なオトナなのに、まともな仕事をしろってよく言われる。
けど無理だよねー。
だって、お金、いるじゃん?
遊び、美味しいご飯、たばこ、彼女とのデート……。
「彼女? 彼女ってなんですか? あれ、この間彼氏がいるっていってませんでしたっけ」
仕事の帰り、送迎の車内。
ちょっと前に入店した新人が、あたしの話に突っ込みを入れる。
雪という名で、あたしと同じくらいの年齢だ。まぁこの業界で、ほんとのことなんてなぁんにもわからないけどね。
「聞いて驚け雪ちゃん! こいつはレズなんや!」
送迎のハゲボーイが、ハンドル片手に振りかえる。っておい、前を見んかい。
いろんな風俗店で働いたけどさあ、運転荒いボーイ率、どうにかならないの?
「そ、そうなんですか! 雪には未知の世界です……でも彼氏は?」
「男もOKなのよね、あたしは。いやまあそうじゃなきゃこんな仕事できんけど」
「え、彼氏と彼女がいるんですか」
それって浮気なんじゃと、言葉を濁す雪ちゃんに、あたしは笑った。いや、乙女は可愛いね。なんなら一晩明かしてもいいよ。
「どちらかというと彼女のほうが本命だね~。彼氏ホストだし」
「あー、なるほど」
「なるほどってなによ」
全てに納得したかのような頷きに、思わず突っ込みをいれる。
「すすすすすみません」
「冗談冗談、気にしないで。わかってるしー、ホストなんて結局金だし。あ、でも風俗やめろとかは言われてんのよ?」
それがほんとのとこどういう意味なのかはわからない。心配してるのか、独占欲なのか。
まぁわかったところで、あたしは風俗やめる気はない。
「あんたがあたしを養ってくれるならやめるよって言ってやんのよね。もちろん、遊ぶのはやめないからね、ってね。そしたら黙んの」
ケータイをパカパカしながら笑う。
ーーん、悪いか、今時パカパカケータイで。あたしはなにをやめても、風俗と遊びとタバコと、パカパカケータイだけはやめないからね。
タバコにどれだけ税金をかけられようが、あたしは吸ってみせる!
とまあ、そんなこと言えるのも、風俗やってるからなんだけどね。普通の仕事してたら金が持たんわ。
「ちょー、お腹すいた。ラーメン食べよー」
「ラーメン! いいですね!」
ラーメン屋が目に入った、これは運命でしょ。
「え、それオレのおごりじゃないよな」
不安げなハゲボーイに、あたしは両手を合わせてみせた。
「ありがとう」
「ありがとうございます」
当然のように、雪ちゃんも手を合わせた。
おお、なかなかノリいいじゃん。
「ええええ! 勘弁ーー」
うめきながらも、車はラーメン屋の方へ曲がっていくのだった。なんだかんだでハゲボーイが一番ノリノリだな。
羽月のこんやのおしごとおしまい。
美味しいラーメン食べて、また明日も頑張ろっと。
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