29 / 38
第5章
第5話
しおりを挟む
家に帰ると、玄関先でばったりお姉ちゃんと出くわした。
「あ……」
お姉ちゃんとは、あの夜以来ずっと喧嘩したままだ。いい加減ちゃんと話さなきゃと思いつつ、すれ違い続けていた。
お姉ちゃんは動揺する私にさらりとした声で「おかえり」と言うと、私の横を通り過ぎて靴を履く。
「うん……ただいま」
靴箱のほうへ身体を寄せて、お姉ちゃんが靴を履いているのを見下ろしていると、ふと視線を感じたらしいお姉ちゃんが顔を上げた。
「柚香、あとで、時間ある?」
「え?」
「来週末とか。ちょっと付き合ってほしいんだけど」
「あ……うん。大丈夫だけど」
「じゃあ、週末ね」
お姉ちゃんはそれだけ言うと、振り返りもせずに家を出ていった。
***
朝、部屋のカーテンを開けると、しとしとと雨が降っていた。
衣替えは済んでいるが、今朝は少し肌寒い。
私はブラウスの上からサマーセーターを着て、家を出た。
雨の街を見ていると、音無くんのことを思い出す。以前、音無くんとの会話の中で、雨の話題が出たからだろうか。
あのときの話は本心だった。
雨はもともと好きだった。でも、あれから雨がもっと好きになった。
傘を鳴らす雨音も、田んぼの水面に広がる波紋も。くすむビルの影も、そのなかでも色彩鮮やかな草花も。
ぜんぶ、音無くんとの思い出にリンクするからだろう。
私は少し早歩きで学校へ向かった。
「おはよう」
校門前に差し掛かったところで、ビニール傘を差した音無くんが向かいから歩いてきた。
「おはよう」
挨拶をすると、音無くんがしみじみと言う。
「やっと会えたわ」
「え?」
「最近清水、俺のこと避けてただろ?」
「あ……ごめん。なんか、邪魔したくなくて」
「邪魔?」
音無くんが眉を寄せる。
「その……梓ちゃんと仲良いみたいだったし……」
「えっ! なにそれ」
「なんか、ふたりがよく一緒にいるとこ見たから」
「まぁ、小林とはそりゃ同じ部活だから、仲はいいけど。でも、朝勉は一緒にやるって約束してたじゃん。ずっと待ってたんだよ」
「そうだけど……私はそうしたかったけど、でも、もしかしたら音無くんにとっては迷惑だったかなって思って」
「あー、また勝手な解釈!」
ハッとする。
「あっ……ごめん」
そうだ。
私はまた勝手に、じぶんの想像で音無くんから離れようとした。音無くんはきっとこう考えていると思い込んで。
「……そうだよね、ごめん」
「いいよ。癖っていうのは、そう簡単に変わらないよな。俺もそうだし」
「……音無くんも変えたいところがあるの?」
「あるよ、たくさん」
「意外……」
「清水は俺のことなんだと思ってんの? てか、じぶんがめちゃくちゃ好き! なんてひといないと思うけどな」
本当、そのとおりだ。
「ごめん」
ぺろりと舌を出して謝ると、音無くんは「もう」と、ぽりぽりと頬をかいていた。
「べつにいいけどさ。俺も、もしかしたらまたなにかして清水にきらわれたのかもって落ち込んでたし」
ハッとした。私はまた、先入観に縛られていた。
「そんなわけないよ!」
「本当?」
「……う、うん。本当」
――むしろ……私は。
途端に音無くんの目をまっすぐに見るのが恥ずかしくなって、私は俯きがちに歩く。
ちらりと隣を見て、覚悟を決める。
「……あのさ。私、ずっと音無くんに言いたいことあったんだ」
「なに?」
音無くんが不思議そうに振り向く。
「あのね、私……音無くんのおかげで葉乃と美里とちゃんと話せた。ずっと、だれにも言えなかったことも言えた。だから、ありがとう」
「……そっか。それは、よかったな」
「うん」
話しながら、肩を並べて昇降口に入っていく。
今まで学校は、勉強するための場所だと思っていた。
でも今は、音無くんに会える学校が、美里や葉乃と笑い合える学校が純粋に楽しみに感じている。
***
「そういえば、梓が音無に告ったって噂になってたけど、あれガチかな?」
「えっ、そうなの?」
昼休み、三人でお弁当を食べていると、葉乃がちらりと言った。
「さぁ……」
たぶん、葉乃は私が音無くんと仲がいいことを知っているから、わざと言ってくれているのだろう。葉乃のちょっとした優しさに気づけるようになったことが嬉しい。
「本当かどうかは知らないけどね」
音無くんがモテることは知っていた。
それから、梓ちゃんが音無くんに好意を抱いているということも。
ふたりでいるところはよく見かけたし、梓ちゃんが音無くんに教科書を借りに来ることも多々あったから。
――音無くんはなんて返事したんだろう……。
もし、梓ちゃんと付き合い出したのだとしたら、もう今までのように電話したり、会うことはできなくなるのだろうか。
それは少し寂しい。せっかくやっと仲良くなれてきたのに。
「……ゆず?」
黙り込む私を、美里が控えめに呼ぶ。
顔を上げると、心配そうな顔をしたふたりが私を見ていた。
「あ、なに?」
「あのさ、ずっと気になってたんだけど、ゆずって音無と付き合ってるの?」
「えっ!?」
思わず大きな声が出る。
「つつ、付き合ってないよ!」
否定すると、葉乃はふぅんと小さく呟き、いちごミルクを飲む。
「でも、好きだよね?」
「え……」
どきりとする。
「最近よく、音無と話してるとこ見るし」
「…………それは、そうなんだけど」
隠していたわけではないけれど、なんとなくじぶんの気持ちがまだよく分からなくて、言い出せずにいたのだ。
「その……そもそもなんだけど。好きってどんな感じ?」
「えーそりゃあ、ふとしたときに会いたいなーとか、今なにしてるのかなーとか、気付いたら考えちゃってるって感じよ」
――気付いたら考えてる……?
「どう。気付いたら考えてる?」
葉乃に訊かれ、考える。
「考えてる……かも」
神妙に頷くと、葉乃はしみじみと頷いた。
「そっか。じゃあ好きだね」
「でも、付き合いたいかって言われると、ちょっと違うかも」
「えーなんで? どーゆうこと?」
美里が興味津々に訊いてくる。
「今のままでも私は満足してるというか、もし告白して断られたら今までのようには会えなくなっちゃう。そんなのいやだし、それにこれから受験だし……だれの手も煩わせたくないなって」
「あーまぁね。言いたいことは分かるけど」
葉乃が頷く。
「でもさ、柚香の中で特別なのは間違いないんだね」
「……うん。それはそう」
音無くんがいなければ、私は今頃もひとりで悩んだままだっただろう。
「じゃあ、音無が他の子と付き合っちゃってもいいって思える?」
「それは……」
いやだ、と思う。
でも、それを口にする権利は私にはない。私は、音無くんにとってなんでもないから。
「いやなら、やっぱり思いは伝えたほうがいいんじゃない? 伝えないまま後悔するよりは、言って後悔したほうが、次に進めそう」
「それはあるね。私は結局、不完全燃焼だったから余計、告白には憧れる」
――告白、かぁ。
怖いけれど、踏み出さなければなにも変わらないということを、私はもう知っている。
音無くんの気持ちは、素直に知りたいと思う。
もし、告白をして音無くんも同じ気持ちだったら、どうなるのだろう。
――付き合うってこと?
でも、付き合ったらどうするんだろう。
――デートとか?
ふたりで出かけるのは楽しそう。
でも、それは恋人じゃなくても勇気さえ持って誘えばできてしまう気がする。
それにもし、付き合ってやっぱりダメになってしまったら。そっちのほうが私は怖い。だって、もしそうなってしまったらきっと、今までのような友達関係には戻れなくなってしまう。
それはいやだ。
そんなリスクを負うのなら、今のままでもいいと思ってしまうのは臆病なのだろうか。
――恋って、難しいな……。
もうすぐ期末テストが始まる。そして、期末テストが終わったら夏休みに入る。
毎年楽しみにしていたはずの夏休みが、今年はなぜか、そんなに嬉しくない。
卵焼きを頬張りながら、私は味気のない空を見上げた。
「あ……」
お姉ちゃんとは、あの夜以来ずっと喧嘩したままだ。いい加減ちゃんと話さなきゃと思いつつ、すれ違い続けていた。
お姉ちゃんは動揺する私にさらりとした声で「おかえり」と言うと、私の横を通り過ぎて靴を履く。
「うん……ただいま」
靴箱のほうへ身体を寄せて、お姉ちゃんが靴を履いているのを見下ろしていると、ふと視線を感じたらしいお姉ちゃんが顔を上げた。
「柚香、あとで、時間ある?」
「え?」
「来週末とか。ちょっと付き合ってほしいんだけど」
「あ……うん。大丈夫だけど」
「じゃあ、週末ね」
お姉ちゃんはそれだけ言うと、振り返りもせずに家を出ていった。
***
朝、部屋のカーテンを開けると、しとしとと雨が降っていた。
衣替えは済んでいるが、今朝は少し肌寒い。
私はブラウスの上からサマーセーターを着て、家を出た。
雨の街を見ていると、音無くんのことを思い出す。以前、音無くんとの会話の中で、雨の話題が出たからだろうか。
あのときの話は本心だった。
雨はもともと好きだった。でも、あれから雨がもっと好きになった。
傘を鳴らす雨音も、田んぼの水面に広がる波紋も。くすむビルの影も、そのなかでも色彩鮮やかな草花も。
ぜんぶ、音無くんとの思い出にリンクするからだろう。
私は少し早歩きで学校へ向かった。
「おはよう」
校門前に差し掛かったところで、ビニール傘を差した音無くんが向かいから歩いてきた。
「おはよう」
挨拶をすると、音無くんがしみじみと言う。
「やっと会えたわ」
「え?」
「最近清水、俺のこと避けてただろ?」
「あ……ごめん。なんか、邪魔したくなくて」
「邪魔?」
音無くんが眉を寄せる。
「その……梓ちゃんと仲良いみたいだったし……」
「えっ! なにそれ」
「なんか、ふたりがよく一緒にいるとこ見たから」
「まぁ、小林とはそりゃ同じ部活だから、仲はいいけど。でも、朝勉は一緒にやるって約束してたじゃん。ずっと待ってたんだよ」
「そうだけど……私はそうしたかったけど、でも、もしかしたら音無くんにとっては迷惑だったかなって思って」
「あー、また勝手な解釈!」
ハッとする。
「あっ……ごめん」
そうだ。
私はまた勝手に、じぶんの想像で音無くんから離れようとした。音無くんはきっとこう考えていると思い込んで。
「……そうだよね、ごめん」
「いいよ。癖っていうのは、そう簡単に変わらないよな。俺もそうだし」
「……音無くんも変えたいところがあるの?」
「あるよ、たくさん」
「意外……」
「清水は俺のことなんだと思ってんの? てか、じぶんがめちゃくちゃ好き! なんてひといないと思うけどな」
本当、そのとおりだ。
「ごめん」
ぺろりと舌を出して謝ると、音無くんは「もう」と、ぽりぽりと頬をかいていた。
「べつにいいけどさ。俺も、もしかしたらまたなにかして清水にきらわれたのかもって落ち込んでたし」
ハッとした。私はまた、先入観に縛られていた。
「そんなわけないよ!」
「本当?」
「……う、うん。本当」
――むしろ……私は。
途端に音無くんの目をまっすぐに見るのが恥ずかしくなって、私は俯きがちに歩く。
ちらりと隣を見て、覚悟を決める。
「……あのさ。私、ずっと音無くんに言いたいことあったんだ」
「なに?」
音無くんが不思議そうに振り向く。
「あのね、私……音無くんのおかげで葉乃と美里とちゃんと話せた。ずっと、だれにも言えなかったことも言えた。だから、ありがとう」
「……そっか。それは、よかったな」
「うん」
話しながら、肩を並べて昇降口に入っていく。
今まで学校は、勉強するための場所だと思っていた。
でも今は、音無くんに会える学校が、美里や葉乃と笑い合える学校が純粋に楽しみに感じている。
***
「そういえば、梓が音無に告ったって噂になってたけど、あれガチかな?」
「えっ、そうなの?」
昼休み、三人でお弁当を食べていると、葉乃がちらりと言った。
「さぁ……」
たぶん、葉乃は私が音無くんと仲がいいことを知っているから、わざと言ってくれているのだろう。葉乃のちょっとした優しさに気づけるようになったことが嬉しい。
「本当かどうかは知らないけどね」
音無くんがモテることは知っていた。
それから、梓ちゃんが音無くんに好意を抱いているということも。
ふたりでいるところはよく見かけたし、梓ちゃんが音無くんに教科書を借りに来ることも多々あったから。
――音無くんはなんて返事したんだろう……。
もし、梓ちゃんと付き合い出したのだとしたら、もう今までのように電話したり、会うことはできなくなるのだろうか。
それは少し寂しい。せっかくやっと仲良くなれてきたのに。
「……ゆず?」
黙り込む私を、美里が控えめに呼ぶ。
顔を上げると、心配そうな顔をしたふたりが私を見ていた。
「あ、なに?」
「あのさ、ずっと気になってたんだけど、ゆずって音無と付き合ってるの?」
「えっ!?」
思わず大きな声が出る。
「つつ、付き合ってないよ!」
否定すると、葉乃はふぅんと小さく呟き、いちごミルクを飲む。
「でも、好きだよね?」
「え……」
どきりとする。
「最近よく、音無と話してるとこ見るし」
「…………それは、そうなんだけど」
隠していたわけではないけれど、なんとなくじぶんの気持ちがまだよく分からなくて、言い出せずにいたのだ。
「その……そもそもなんだけど。好きってどんな感じ?」
「えーそりゃあ、ふとしたときに会いたいなーとか、今なにしてるのかなーとか、気付いたら考えちゃってるって感じよ」
――気付いたら考えてる……?
「どう。気付いたら考えてる?」
葉乃に訊かれ、考える。
「考えてる……かも」
神妙に頷くと、葉乃はしみじみと頷いた。
「そっか。じゃあ好きだね」
「でも、付き合いたいかって言われると、ちょっと違うかも」
「えーなんで? どーゆうこと?」
美里が興味津々に訊いてくる。
「今のままでも私は満足してるというか、もし告白して断られたら今までのようには会えなくなっちゃう。そんなのいやだし、それにこれから受験だし……だれの手も煩わせたくないなって」
「あーまぁね。言いたいことは分かるけど」
葉乃が頷く。
「でもさ、柚香の中で特別なのは間違いないんだね」
「……うん。それはそう」
音無くんがいなければ、私は今頃もひとりで悩んだままだっただろう。
「じゃあ、音無が他の子と付き合っちゃってもいいって思える?」
「それは……」
いやだ、と思う。
でも、それを口にする権利は私にはない。私は、音無くんにとってなんでもないから。
「いやなら、やっぱり思いは伝えたほうがいいんじゃない? 伝えないまま後悔するよりは、言って後悔したほうが、次に進めそう」
「それはあるね。私は結局、不完全燃焼だったから余計、告白には憧れる」
――告白、かぁ。
怖いけれど、踏み出さなければなにも変わらないということを、私はもう知っている。
音無くんの気持ちは、素直に知りたいと思う。
もし、告白をして音無くんも同じ気持ちだったら、どうなるのだろう。
――付き合うってこと?
でも、付き合ったらどうするんだろう。
――デートとか?
ふたりで出かけるのは楽しそう。
でも、それは恋人じゃなくても勇気さえ持って誘えばできてしまう気がする。
それにもし、付き合ってやっぱりダメになってしまったら。そっちのほうが私は怖い。だって、もしそうなってしまったらきっと、今までのような友達関係には戻れなくなってしまう。
それはいやだ。
そんなリスクを負うのなら、今のままでもいいと思ってしまうのは臆病なのだろうか。
――恋って、難しいな……。
もうすぐ期末テストが始まる。そして、期末テストが終わったら夏休みに入る。
毎年楽しみにしていたはずの夏休みが、今年はなぜか、そんなに嬉しくない。
卵焼きを頬張りながら、私は味気のない空を見上げた。
10
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
【完結】イケメンが邪魔して本命に告白できません
竹柏凪紗
青春
高校の入学式、芸能コースに通うアイドルでイケメンの如月風磨が普通科で目立たない最上碧衣の教室にやってきた。女子たちがキャーキャー騒ぐなか、風磨は碧衣の肩を抱き寄せ「お前、今日から俺の女な」と宣言する。その真意とウソつきたちによって複雑になっていく2人の結末とは──
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる