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第一章
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あれから一週間、遂に座学ではなく実践形式の魔法の授業が始まった。いやっほう。
この世界には魔法に属性が存在し、個人で得意なものが異なる。属性は炎、水、土、風、雷、光、闇の七属性だ。ちなみに俺の得意属性は水と光で、イヴァは炎と雷だった。
最初は自分の得意な属性の初級魔法を覚えることからだ。
右の手のひらから細い水の柱を発生させ、左の手のひらからまばゆい光の玉を出す。大成功だ。
「こんなものかな。イヴァは…って聞くまでもなかったか。」
皇族は皆強大な魔力を持って生まれる。イヴァングもその例に漏れなかったようだ。
右手には煌々と燃え盛る炎が、左手にはバチバチと弾ける球体の雷があった。
「この感じならば実戦でも使えそうだな、レオン。」
「うん。思ったより簡単でよかったよ。」
どうやら天の神様は俺に魔法の才能も授けてくださったらしい。あざっす!
それから時は過ぎ、五月。俺達は新入生歓迎パーティなるものに強制参加させられていた。
何でもこの学園の伝統行事らしい。サボるわけにもいかないので正装に着替え出席する。イヴァングの説得が大変だったぜ…。
「皆様、本日は我々新入生のため、このようなパーティを催していただき誠にありがとうございます。我ら一同、より一層の研鑽に励み──」
Dクラスの生徒が新入生代表の挨拶をしている。実はこの挨拶、俺にも「やってみないか?」と声が掛かっていたのだが辞退した。めんどい。
一通りの挨拶が終わり乾杯の音頭がなされる。立食式であとは適当に喋って終わりのパーティだ。
「あ、あの!スティルヤード様、ですよね。」
女の子に声を掛けられた。胸に付けられたバッジを見るに三年生のようだ。(バッチは強制でつけさせられているもので、学年と学科が分かるようになっている。)
「はい、先輩。声を掛けていただいて光栄です。」
何故か俺の名前を知っているのは…まあ俺が有名だからだろう。総代の挨拶で一度全校生徒の前に立ったしな。
「私、ローザ・アルケ・ミレクサンっていいます。このミレクサン学園の理事長の娘です。よろしくね。」
「ご存じかもしれませんが、僕はレオンハルト・アルム・スティルヤード。こちらこそよろしくお願いします。」
この学園の権力者キター!!それにミレクサン家は侯爵位持ちの立派な貴族だ。これはぜひ親しくならねば!
「新入生総代だったあなたに挨拶をしておきたくって。突然ごめんなさいね。」
「いえ、あなたのような素敵なお嬢さんに声をかけて頂けるなんて光栄の極みです、総代の役得ですね。」
「ふふ、お上手ね。」
「真実ですから。」
にっこりとどの角度から見ても美しいとっておきの笑顔で応対する。結い上げられたハニーブラウンの髪が美しいご令嬢だ。翡翠のような瞳がこちらを見つめてにこりと笑う。か、可愛い…!これが美人の上目遣いの破壊力…!
「噂には聞いていたし遠目では見たことがあるけれど、本当に美しい人ね、スティルヤード様。」
ぽつりとローザ先輩が呟いた。そうだろう、俺は美しい。良く分かっているじゃないか。
「私じゃ、釣り合わないか。」
小さく呟かれた言葉を、俺は聞き逃さなかった。確かに絶世の美女ではないが、こんなに可愛いのだからもっと自信を持っていいんだぞ?
「どうかしましたか、ミレクサン先輩?」
「いいえ、何でもないの。私、他にも挨拶しなきゃいけない人がいるから、このあたりで失礼しますね。」
行ってしまうのか…だが理由が理由だ、引き止められない。
「そうですか…残念です。また気軽に声をかけてくださいね、それでは。」
「ええ。ありがとう、楽しんでね。」
ひらひらと手を振ると、そわそわとしている女子生徒の集団がこちらを見ていることに気が付いた。これは来るか…?
期待して笑顔の準備をしていると、思わぬ横槍が入った。
「よ、レオン。」
「ヨルハ。アレクも。会えて嬉しいよ。」
準備していた笑顔はこいつらに使われることになってしまった。野郎に媚びてどうするんだ、俺。
「それがレオンの礼服か。よく似合っているな。」
アレクはいつも唐突に俺を褒めてくる。まあ俺くらいの美人であれば褒めたくもなるのだろう。
「ありがとう。アレクもよく似合ってる、かっこいいよ。」
「レオン俺は? 」
「ヨルハもかっこいいよ。まるで物語の騎士様みたいだ。」
ヨルハは俺に褒められたがる。まあ美人に褒めて欲しい気持ちも分かる。男だけどな。
「…レオン。」
そのまま二人と会話していると、いつの間にか後ろにイヴァングが立っていた。挨拶回りの相手が終わったらしい。皇族も大変だな。
「殿下。お疲れ様です、お水飲みますか?」
流石にこのような場では殿下に敬語を使わなければならない。俺の立場的に。
「ああ。」
「肩でも揉んで差し上げたいところですが、ここではそうもいきませんね。一旦寮へ帰られますか?」
「いい。どうせもうすぐ終わるだろう。」
「そうですね。ではせめて壁際のソファへ移動しましょう。」
さっさと四人で移動する。様々な視線がこちらを見ているのが分かる。好奇心旺盛なヤツらめ。
それから四人で歓談していると、急に肩を組まれた。グレイだ。
「よオ、お坊ちゃん。お友達も一緒かァ?こりゃまたイイご身分のヤツらだなア。」
お前ほどじゃねーよ、というツッコミを飲み込んで笑顔で応対する。こんなところで絡んで来んじゃねー!
「これはこれはグレイ王子。楽しんでおられるようでなによりです。こちらは僕の友人で──」
「知ってる。ここの宰相の息子と男爵家のお坊ちゃんだろ?俺様、情報通だからな。」
…なんで俺の交友関係を調べていたのかはつっこまないでおこう。
「…いつまで肩を組んでいるんだ。」
不機嫌そうな声でイヴァングが唸った。どうしたんだ、人見知りかな?
「あ?こないだ喧嘩の邪魔してくれた皇子様じゃねェか。」
その一言に、その場にいた誰もが──特に俺たちが─凍りついた。
誤解を招くような言い方をするなこのバカ王子め!
「ちょっと、変な誤解される言い方しないでよ。遊んでただけでしょ?殿下も、そんなに怒らないでください。一体どうなさったんですか?」
「ケケッ。遊んでた、ねェ。だとよ皇子様、何をそんなにキレてんだ?」
「怒ってなどいない。不愉快なだけだ、今すぐその手を離せ。」
イヴァングはどうやら俺の肩にあるグレイの腕が気に入らないらしい。何故だ、嫉妬か?
「見苦しいねェ、嫉妬かア?随分と皇子様は心が狭くていらっしゃる。お前も大変だな、レオン。」
言い終わると俺からパッと手を離す。わざわざ挑発するんじゃないよこの不良王子め…。
「……。」
ああほら、イヴァングがグレイを睨みつけている。まさに一触即発の雰囲気だ。不味い。
こんな所で第二皇子と第一王子が喧嘩とか冗談じゃない。
「イヴァ、落ち着いて。あんな見え透いた挑発に乗っちゃダメだよ。グレイも殿下を煽るのはやめてくれ、頼む。」
必殺の困ってます顔をして二人の説得を試みる。美人の困り顔は大変絵になる上、悲壮感や儚さがあり「言うこと聞いてあげるべきだな…」と思わせることができるのだ。
「…悪い。」
「チッ、仕方ねェな。」
例に漏れずこの二人にも効いたらしい。流石は俺。
張りつめていた空気が緩やかで騒がしいものに戻ってゆく。これで一安心だ。
「…なあレオン。」
ヨルハが声を潜めて問いかけてくる。なんだ?
「デートって…本当か?」
「違う、比喩だよ比喩。本気にしないで。」
ヨルハはあからさまにホッと息を吐いた。そんなに俺が男とデートしてたら嫌なのか?
「はあ…良かった。もしもレオンがその男とデートなんかしてたら…ショックで倒れてたぜ。」
「あはは、大げさだよ。」
まあ、俺も隣国の第一王子とデートなんてすることになったら驚きのあまり卒倒するだろう。あり得ない。
…今思えば、この時こんな風に考えていたのがフラグだったのかもしれないな…。
何の話か、だって?
パーティが終わった翌日、何故か俺はグレイと正真正銘のデートをすることになったのだ。
───どうしてこうなった!!
この世界には魔法に属性が存在し、個人で得意なものが異なる。属性は炎、水、土、風、雷、光、闇の七属性だ。ちなみに俺の得意属性は水と光で、イヴァは炎と雷だった。
最初は自分の得意な属性の初級魔法を覚えることからだ。
右の手のひらから細い水の柱を発生させ、左の手のひらからまばゆい光の玉を出す。大成功だ。
「こんなものかな。イヴァは…って聞くまでもなかったか。」
皇族は皆強大な魔力を持って生まれる。イヴァングもその例に漏れなかったようだ。
右手には煌々と燃え盛る炎が、左手にはバチバチと弾ける球体の雷があった。
「この感じならば実戦でも使えそうだな、レオン。」
「うん。思ったより簡単でよかったよ。」
どうやら天の神様は俺に魔法の才能も授けてくださったらしい。あざっす!
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「皆様、本日は我々新入生のため、このようなパーティを催していただき誠にありがとうございます。我ら一同、より一層の研鑽に励み──」
Dクラスの生徒が新入生代表の挨拶をしている。実はこの挨拶、俺にも「やってみないか?」と声が掛かっていたのだが辞退した。めんどい。
一通りの挨拶が終わり乾杯の音頭がなされる。立食式であとは適当に喋って終わりのパーティだ。
「あ、あの!スティルヤード様、ですよね。」
女の子に声を掛けられた。胸に付けられたバッジを見るに三年生のようだ。(バッチは強制でつけさせられているもので、学年と学科が分かるようになっている。)
「はい、先輩。声を掛けていただいて光栄です。」
何故か俺の名前を知っているのは…まあ俺が有名だからだろう。総代の挨拶で一度全校生徒の前に立ったしな。
「私、ローザ・アルケ・ミレクサンっていいます。このミレクサン学園の理事長の娘です。よろしくね。」
「ご存じかもしれませんが、僕はレオンハルト・アルム・スティルヤード。こちらこそよろしくお願いします。」
この学園の権力者キター!!それにミレクサン家は侯爵位持ちの立派な貴族だ。これはぜひ親しくならねば!
「新入生総代だったあなたに挨拶をしておきたくって。突然ごめんなさいね。」
「いえ、あなたのような素敵なお嬢さんに声をかけて頂けるなんて光栄の極みです、総代の役得ですね。」
「ふふ、お上手ね。」
「真実ですから。」
にっこりとどの角度から見ても美しいとっておきの笑顔で応対する。結い上げられたハニーブラウンの髪が美しいご令嬢だ。翡翠のような瞳がこちらを見つめてにこりと笑う。か、可愛い…!これが美人の上目遣いの破壊力…!
「噂には聞いていたし遠目では見たことがあるけれど、本当に美しい人ね、スティルヤード様。」
ぽつりとローザ先輩が呟いた。そうだろう、俺は美しい。良く分かっているじゃないか。
「私じゃ、釣り合わないか。」
小さく呟かれた言葉を、俺は聞き逃さなかった。確かに絶世の美女ではないが、こんなに可愛いのだからもっと自信を持っていいんだぞ?
「どうかしましたか、ミレクサン先輩?」
「いいえ、何でもないの。私、他にも挨拶しなきゃいけない人がいるから、このあたりで失礼しますね。」
行ってしまうのか…だが理由が理由だ、引き止められない。
「そうですか…残念です。また気軽に声をかけてくださいね、それでは。」
「ええ。ありがとう、楽しんでね。」
ひらひらと手を振ると、そわそわとしている女子生徒の集団がこちらを見ていることに気が付いた。これは来るか…?
期待して笑顔の準備をしていると、思わぬ横槍が入った。
「よ、レオン。」
「ヨルハ。アレクも。会えて嬉しいよ。」
準備していた笑顔はこいつらに使われることになってしまった。野郎に媚びてどうするんだ、俺。
「それがレオンの礼服か。よく似合っているな。」
アレクはいつも唐突に俺を褒めてくる。まあ俺くらいの美人であれば褒めたくもなるのだろう。
「ありがとう。アレクもよく似合ってる、かっこいいよ。」
「レオン俺は? 」
「ヨルハもかっこいいよ。まるで物語の騎士様みたいだ。」
ヨルハは俺に褒められたがる。まあ美人に褒めて欲しい気持ちも分かる。男だけどな。
「…レオン。」
そのまま二人と会話していると、いつの間にか後ろにイヴァングが立っていた。挨拶回りの相手が終わったらしい。皇族も大変だな。
「殿下。お疲れ様です、お水飲みますか?」
流石にこのような場では殿下に敬語を使わなければならない。俺の立場的に。
「ああ。」
「肩でも揉んで差し上げたいところですが、ここではそうもいきませんね。一旦寮へ帰られますか?」
「いい。どうせもうすぐ終わるだろう。」
「そうですね。ではせめて壁際のソファへ移動しましょう。」
さっさと四人で移動する。様々な視線がこちらを見ているのが分かる。好奇心旺盛なヤツらめ。
それから四人で歓談していると、急に肩を組まれた。グレイだ。
「よオ、お坊ちゃん。お友達も一緒かァ?こりゃまたイイご身分のヤツらだなア。」
お前ほどじゃねーよ、というツッコミを飲み込んで笑顔で応対する。こんなところで絡んで来んじゃねー!
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「知ってる。ここの宰相の息子と男爵家のお坊ちゃんだろ?俺様、情報通だからな。」
…なんで俺の交友関係を調べていたのかはつっこまないでおこう。
「…いつまで肩を組んでいるんだ。」
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「怒ってなどいない。不愉快なだけだ、今すぐその手を離せ。」
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「……。」
ああほら、イヴァングがグレイを睨みつけている。まさに一触即発の雰囲気だ。不味い。
こんな所で第二皇子と第一王子が喧嘩とか冗談じゃない。
「イヴァ、落ち着いて。あんな見え透いた挑発に乗っちゃダメだよ。グレイも殿下を煽るのはやめてくれ、頼む。」
必殺の困ってます顔をして二人の説得を試みる。美人の困り顔は大変絵になる上、悲壮感や儚さがあり「言うこと聞いてあげるべきだな…」と思わせることができるのだ。
「…悪い。」
「チッ、仕方ねェな。」
例に漏れずこの二人にも効いたらしい。流石は俺。
張りつめていた空気が緩やかで騒がしいものに戻ってゆく。これで一安心だ。
「…なあレオン。」
ヨルハが声を潜めて問いかけてくる。なんだ?
「デートって…本当か?」
「違う、比喩だよ比喩。本気にしないで。」
ヨルハはあからさまにホッと息を吐いた。そんなに俺が男とデートしてたら嫌なのか?
「はあ…良かった。もしもレオンがその男とデートなんかしてたら…ショックで倒れてたぜ。」
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まあ、俺も隣国の第一王子とデートなんてすることになったら驚きのあまり卒倒するだろう。あり得ない。
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※♡、ブクマ、エールありがとうございます!すごく嬉しいです!
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