身体強化って、何気にチートじゃないですか!?

ルーグイウル

文字の大きさ
24 / 141
第2章 迷宮都市と主の脅威

合流、下層域

しおりを挟む
(いいね200ありがとうごさいます!!評価が貰えるのってやっぱり嬉しくなりますよね!)



「ま、まさか30階層分をたった1日で踏破するなんて……」


 迷宮のゴツゴツとした床に座り込んだティナが荒い息を吐きながら呟きを漏らす。  


 この都市唯一のAランク冒険者グリンジャーと迷宮の未到達領域を単独で生き抜いたFランク冒険者リュート。その2人の進軍速度は常軌を逸していた。
 

 隆人の「仲間ではないやつに背後は任せられないね」という言葉に加え、この中の誰よりも下層域への潜行回数が多く、迷宮の道を熟知しているという理由からグリンジャーが先頭で進むこととなる。
 結果、グリンジャーの知る最短のルートを通ることとなり、そのルートは時にモンスターハウスと呼ばれる魔物の軍発生地を抜け、縦穴のようになった崩落地を飛び降り、という一般の冒険者が避けるような過酷なルートであった。
 そんなルートであったが、グリンジャーと隆人は全く苦にした様子がなく、進んで行く。その速度は非常に早くティナは2人に着いて行くのがやっとというレベルである。


 もちろん迷宮内である為、魔物も頻繁に現れる。だが、この域の魔物などこの一行にとっては敵ではなく、ほとんどの魔物は出現したと思った次の瞬間には先導するグリンジャーによって一刀の元に切り捨てられ、運良く逃れた魔物も隆人によってすぐに首が飛ばされる。その戦闘は一瞬であり、進軍速度に一切の影響がない。


 そうして3人は30階層分を1日で駆け抜けた。ひたすら走り続け疲労困憊のティナとは対照的に隆人とグリンジャーはかなり余裕がある様子であったが。


「それで、ここで合流という話だったけど、俺達はどうすればいいのかな?」
「そうですね……。といっても僕達3人ではできることなんてたたがしれてますからね。明日になれば僕のパーティがくるだろうから拠点作りはその後になると思います」
「わかったよ。じゃあ一先ず、周辺の魔物をあらかた間引いたら休憩にしようかな。ティナも休ませてあげたほうがいいと思うし」
「あ、ありがとうございます……」


 疲労困憊のティナはこの階層に入り少し広まった場所に出たと思うや否や座り込んでしまった為、このまましばらく動けそうにない。どうせ何もやれることがないのであれば休憩にしても問題ないだろうと隆人は考えたのだ。


 ちなみに、間引きというのは周辺の魔物を狩ることである。迷宮という空間では時間が経てば魔物が自然に発生する。一定数を超えると増えることはなくなるが、討伐や魔物同士の戦いで数が減ると迷宮によって減少分が生み出されるのだ。
 だがその魔物の発生も頻繁に起こるものではなく。少量ずつ増えていく性質の為、大多数を一気に狩った場合、その周囲は一時的には魔物が少なくなる。
 それを利用したのが間引きであり、休憩する場所の周囲の魔物を全滅させることで一時的にその場を擬似的な安全地帯にするのである。
 それでも少しずつ魔物は発生するが、その対処程度であれば余程の魔物が生まれるか、冒険者のレベルが低くない限りは番の1人でも事足りる。冒険者の知恵というやつである。ちなみに隆人は迷宮での生活の上でその行動は理解しており、その行動に間引きと名称が付いていることはティナから聞いたのだが。


 閑話休題それはさておき。隆人の提案を聞いたグリンジャーは少しだけ考えるようなそぶりをした後、頷く。


「わかりました、それで構いません。では間引きに関しては私がやりましょう。リュートさんはここで休憩場所の準備でもしていてください」
「いいのかな?」
「はい、この階層程度であれば間引きも私1人で事足りますし、クリスティーナさんが動けない以上だれかついていないと万が一というのもありますしね」
「助かるよ、グリンジャーさん」
「では、いって来ますね」


 そう言って駆け出すグリンジャーは、そのまま通路の一本に入って行く。(ちなみに、隆人達が今いる場所の魔物は既に隆人とグリンジャーが2人で倒していた)


「さて、じゃあ俺の方も準備しなきゃだね」
「リュート様、私も」
「ティナは休んでて、大した作業でもないし……とりあえずこの辺でいいか。『放出』」


 そういいながら、適当な壁際に向かった隆人はストレージのスキルを発動し中から石のような物を4つ取り出す。それに1つずつ魔力を込めていきながら正方形に置いて行く。そして4つ目を置き終わった途端、ふわっと何かに包まれるような感覚になる。見ると、4つの石が淡く光っており、その石に囲まれた空間が薄い膜に覆われている。


 これは結界である。といっても大したものではなく、効果は魔除け。この中に入っていれば魔物達に感知されにくくなるというものである。
 先程隆人がストレージから出した石は「魔除け石」と呼ばれる魔道具の一種であり、魔力を込め、それを四隅に置くと魔除けの結界を作ることができるというものである。
 町には普通に売っており冒険者には必需のアイテムである。隆人も昨日のうちに商業区へ赴き、購入していた。


 先程言っていた間引きに加え、この魔除けの結界を張ることで冒険者達は迷宮の中でもある程度休息を取ることができる。逆に言えばそうでもしなければ魔物の跋扈する迷宮内では十分に休憩なんてできないだろう。
 もちろん迷宮内では何が起こるかわからない為番は必要であるが、それでも常に警戒し続けるよりは幾分マシであろう。


 更に隆人はストレージからティナの簡易テントのような寝袋を取り出し、結界で囲んだ空間の中に置く。隆人は迷宮の中で生活してきた為慣れきっており、このまま床でねるつもりであったが、その話を以前した時にティナに諭されていた為、一応小さな寝袋を準備していた。


「準備は終わってるみたいですね、じゃあこのまま食事にして休憩にしましょうか」


 隆人が休憩場所の準備をしている間、周囲からはグリンジャーによる戦闘音がひっきりなしに聴こえていたが、それも数十分すると収まり、通路の一本からグリンジャーが返り血1つない姿で戻ってきた。戦闘スタイルからして魔物と近距離で接敵する必要があるはずだがこの辺りは流石Aランクと言えるだろう。


 そうして隆人とティナは戻ってきたグリンジャーと共に粗食ではあるが食事をとり、交代で休憩を取ることとなった。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「全員合流したようだね、それじゃあ作戦は第2段階に移行するよ」


 それから3日後、迷宮30階層に設営された簡易拠点に参加する全パーティが合流した。
 グリンジャーの言う通り、隆人達が到着した次の日には彼のパーティ『太陽の剣』は30階層に到着した。先を越されたことに会議で隆人に難癖をつけていたステインは不満そうな顔をしていたが、どうやら彼はグリンジャーによるものだと納得したようで揉め事に発展することはなかった。
 そして隆人達と『太陽の剣』で拠点を設営しながら、残りのパーティの到着を待つこととなった。


 とは言え、他の参加パーティもDランク以上である為大きな遅れはなく。3日目になると全てのパーティが30階層に揃う。
 そしてそれを確認した作戦リーダーであるグリンジャーは作戦の第2段階に移行することにした。


 数パーティをこの拠点防衛に置き、残りのパーティでこの下の階で発生している魔物の大量発生に向かう。そして拠点に帰投することを繰り返すのだ。


 下階層に向かうパーティはグリンジャー達『太陽の剣』を先頭に置き、階段を下っていく。そして


「多いな」
「ここまでとはね」


 先頭に立っていたグリンジャーともう1人の前衛が思わずと言った様子で呟きを漏らす。
 目的の階層にたどり着いた彼らの目の前に広がっていたのは、覆い尽くす程の魔物の群れであった。
しおりを挟む
感想 33

あなたにおすすめの小説

なんだって? 俺を追放したSS級パーティーが落ちぶれたと思ったら、拾ってくれたパーティーが超有名になったって?

名無し
ファンタジー
「ラウル、追放だ。今すぐ出ていけ!」 「えっ? ちょっと待ってくれ。理由を教えてくれないか?」 「それは貴様が無能だからだ!」 「そ、そんな。俺が無能だなんて。こんなに頑張ってるのに」 「黙れ、とっととここから消えるがいい!」  それは突然の出来事だった。  SSパーティーから総スカンに遭い、追放されてしまった治癒使いのラウル。  そんな彼だったが、とあるパーティーに拾われ、そこで認められることになる。 「治癒魔法でモンスターの群れを殲滅だと!?」 「え、嘘!? こんなものまで回復できるの!?」 「この男を追放したパーティー、いくらなんでも見る目がなさすぎだろう!」  ラウルの神がかった治癒力に驚愕するパーティーの面々。  その凄さに気が付かないのは本人のみなのであった。 「えっ? 俺の治癒魔法が凄いって? おいおい、冗談だろ。こんなの普段から当たり前にやってることなのに……」

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

転生先は上位貴族で土属性のスキルを手に入れ雑魚扱いだったものの職業は最強だった英雄異世界転生譚

熊虎屋
ファンタジー
現世で一度死んでしまったバスケットボール最強中学生の主人公「神崎 凪」は異世界転生をして上位貴族となったが魔法が土属性というハズレ属性に。 しかし職業は最強!? 自分なりの生活を楽しもうとするがいつの間にか世界の英雄に!? ハズレ属性と最強の職業で英雄となった異世界転生譚。

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

クラス転移して授かった外れスキルの『無能』が理由で召喚国から奈落ダンジョンへ追放されたが、実は無能は最強のチートスキルでした

コレゼン
ファンタジー
小日向 悠(コヒナタ ユウ)は、クラスメイトと一緒に異世界召喚に巻き込まれる。 クラスメイトの幾人かは勇者に剣聖、賢者に聖女というレアスキルを授かるが一方、ユウが授かったのはなんと外れスキルの無能だった。 召喚国の責任者の女性は、役立たずで戦力外のユウを奈落というダンジョンへゴミとして廃棄処分すると告げる。 理不尽に奈落へと追放したクラスメイトと召喚者たちに対して、ユウは復讐を誓う。 ユウは奈落で無能というスキルが実は『すべてを無にする』、最強のチートスキルだということを知り、奈落の規格外の魔物たちを無能によって倒し、規格外の強さを身につけていく。 これは、理不尽に追放された青年が最強のチートスキルを手に入れて、復讐を果たし、世界と己を救う物語である。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

処理中です...