身体強化って、何気にチートじゃないですか!?

ルーグイウル

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第2章 迷宮都市と主の脅威

作戦開始

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(グリンジャーと隆人の話し方が似ている……なるべく書き分けるようにしますが紛らわしかったらすみません汗)



 作戦会議を行った翌日午前9時、大迷宮ディアラの入り口は物々しい雰囲気に包まれていた。


 普段から人のごった返す場所ではあるのだが、今日はその入り口にDやC、果てはBを超える者などの中堅~一流の冒険者が何パーティも集まっているのだ。そんな者達は当然発する圧力は並みじゃなく、しかも空気はピリピリと張りつめられていて表情は硬い。


 ここにいるのは冒険者がほとんどであり、事情を知っているものも多い、だからこそのこの空気である。


「よし、全員揃っているね」


 その集団の先頭に立つ男ーーグリンジャーが振り向き、集まった冒険者達をみて言う。


「それではこれより、下層魔物討伐作戦を開始する。昨日の会議での説明通り、先ずは各パーティごとに迷宮に潜行してもらうよ。そして30階層で合流しそこに仮設拠点を設置する。いいな!」
「「「おう」」」


 そのグリンジャーの号令に冒険者達の声が重なる。そしてその勢いのまま、各パーティがどんどん迷宮へと入って行く。


 これが昨日の会議で提案された今回の作戦の第一段階である。そもそもこの依頼に参加した冒険者の数は14パーティ48人。そんな大所帯が一斉に迷宮に潜ってしまってはいくらそれぞれが手練れの冒険者とは言え、足並みを揃えなければならず、進行速度は大幅に遅くなる。それに現在迷宮にいる他のパーティの邪魔になる。


 そのため出た案が現地までは各パーティが個別に向かい、異常が起きている階層の手前30階層に拠点を作るものであり、その案が採用されることとなったのだ。


「それで、グリンジャーさんだっけ?なぜここにいるのかな」
「そうですよ、パーティの皆様はもう出発されましたよ?」


 隆人が疑うような視線を言葉と共に目の前に立つグリンジャーに向ける。ティナも不思議に思っており隆人の言葉に追随する。
 既に入り口に集まっていたパーティのうち3分の2近くは迷宮の中に入っており、グリンジャーがリーダーである『太陽の剣』もとっくに迷宮の中である。


「僕は君達に同行しようと思ってね。それに『太陽の剣』はそんなにヤワなパーティじゃないよ。下層に行く程度なら何も問題ない。これでもこの都市のトップパーティだからね」
「らしいね、でもだからといってあなたが俺達についてくる理由にはならないんじゃないかな?」


 昨夜、気になってティナに話を聞いた隆人は『太陽の剣』というチームがどのようなものかを知っていた。
 曰く50人近くものメンバーを抱えるマンモスパーティであり、各依頼に合わせてメンバーを選出するシステムを取っている。一方で保有する戦力も群を抜いており、数少ないAランク冒険者『両断』のグリンジャーを筆頭にBランクも数人所属している。C.Dランクも充実しており、更に定期的に下層での戦闘演習も行なってるらしい。
 まさに規模実力共に、トップチームなのである。


 事実、今回の作戦にも『太陽の剣』からは動けるメンバーの中から10人近くが参加しており、今回の主戦力も半分近くはこのメンバーである。
 そのため、問題ないというグリンジャーの言葉は紛れもなく事実であり、むしろ参加パーティの中で最速で30階そうに着くのが順当と言えた。


 だが、隆人の言う通り、パーティの実力とグリンジャーが来るのとは関係がない。隆人は疑惑の目を更に強める。


「今回唯一のFランク冒険者を有するパーティの助っ人要員。……てのは建前で、サイクロプスを倒したことになっている新人の情報を集めるのが目的かな」
「っ」


 そう言ってニヤッと笑うグリンジャー。その笑みは温厚とした雰囲気とは違い、まるで獲物を見るような笑みであり、凄みが感じられる。
 Aランクの片鱗が感じられるようなその圧力に、ティナは思わず息を飲んでしまう。更に、本人は気づいていないが体も一歩後ずさっている。


「……流石だね、一切動じないか」
「なんのつもりかは知らないけど、その殺気をしまってくれないかな?話はそれからだよ」


 グリンジャーから向けられた殺気だったが、隆人の方は身じろぎすらしていなかった。事実、隆人が数年間生き抜いてきた迷宮の最奥ではこのクラスの殺気を浴びることは頻繁であり、慣れたものであった。


 だが、グリンジャーからしてみれば100%ではないとは言え自分の殺気を受け、更にそれに気づいていながらもなびくことすらない。そんな隆人に対して、何か底知れぬものを感じていた。


「……とりあえず、話はわかった。ここで文句を言っても仕方ないし、同行することは認めるよ。ただ、変なことをしたらそれ相応のことを覚悟してもらうよ」


 そう言ってお返しとばかりに殺気をグリンジャーに向け返す。そこに込められた圧力にグリンジャーが今度は息を飲むことになり、無意識に愛剣に手をかけていた。


(これ程とはね……。これは敵対したくはない男だね)



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「はぁはぁ……。す、すごい……」


 ティナは息を上げながら目の前で巻き起こるものを驚愕の目で見つめていた。


 いざ迷宮に入った隆人達+グリンジャーは猛スピードで迷宮を駆け抜けていた。
 メインウェポンが大剣であり鈍重そうな印象があったグリンジャーだがその戦い方は俊敏であり。とんでもない速度で接敵したと思った次の瞬間には豪快な一撃で敵をガンガン屠って行く。
 そして隆人の方も、あまり自分の能力を見せる必要はないと言うことで身体強化やスキルを一切使わないと言う制約を自分に課しているが、それでも高いレベルから生まれるその速度は目を見張るものがあり、敵の討伐速度だけで言えば全力のグリンジャーすら超えていた。


「リュートくんだっけ?やるね!」
「そっちも流石Aランクだけある、これでもスピードには自信があったんだけどね」


 そうして隆人達『暁の風』+グリンジャーの一行は前に進んでいた他のパーティすら抜き去り、本来数日を予定していた30階層までの日程をほぼ1日で踏破したのであった。
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