身体強化って、何気にチートじゃないですか!?

ルーグイウル

文字の大きさ
29 / 141
第2章 迷宮都市と主の脅威

開花する支配者

しおりを挟む
(ボスの変異って定番ですよね~!10万文字突破です!感想やお気に入りが来るとモチベーション上がりますのでどしどし!←)



 身体強化・Ⅲを使用した隆人はスキル「瞬歩」を駆使するグリンジャーのサポートを受けながら、アルラウネの攻撃を捌き深く一撃を入れることに成功する。それは致命傷に見え、戦闘終了かと思った一同であった。しかしアルラウネは倒れず、それどころか叫び声を上げ、その身は更に膨張する。


 口は肥大し人型の頭部のうち大部分を占めるようになり、花弁は分厚く、蔦は本数が減ったもののその分何倍にも太くなっている。


(パック○フラワーみたいだね……)


 そんなどうでもいい事を考えていると、近くにグリンジャーが寄り、問いを投げかける。


「リュートくん、これは?」
「わからない。俺もこんな変化なんて初めて見たよ」


 肥大化したアルラウネを下から見上げるようにしていた隆人が、グリンジャーからの問いに戸惑いを漏らす。
 迷宮内で生活していた数年の中で、この魔物とも何度か戦ったことのある隆人であるが、このような形態変化は初めて見る姿である。


 そもそも、本来アルラウネという魔物はもっと深い層に発生する魔物であり、大概は成長しきる前に他の魔物に倒されるか、成長したとしても動けないが故に自らが誘引した魔物の群れに飲み込まれるのが普通である。
 それが下層で生まれ成長しあまつさえ変異したという個体は未知である。


 また、内包している力に関しても、先程とは比較にならないほど高まっている。更に、アルラウネの変化はそれだけではなかった。


「リュート様っ!」


 突然、後方で通路からやってくる魔物の対処をしていたティナから叫びにも似た声が聞こえる。
 

「どうしたんだい、ティナ」
「リュート様、あちらに!」


 ティナの切羽詰まった声をうけ視線をティナの見ている壁の一角に向けると、そこには蕾が存在した。アルラウネの変異と共にこの開けた空間フィールドの壁に張り巡らされた蔓。そこから人間大の蕾が生えている。
 そしてその蕾が開き、中から


「ギシァァァァ」
「えっ!?」


 魔物が這い出してきた。


 "迷宮の主"アルラウネ、この特異な魔物は迷宮の地に根付き力を蓄える。そしてその力が高まった時、主として迷宮の支配者たる力の一端を得るまでに至る。
 すなわち「魔物の創造」である。とは言え何でも自由に生み出せるわけではないが、迷宮の機能の1部を行使できると言うことは事実である。


 みると、蕾は1つではなく、フィールドの至るところに生えてきている。そしてその1つ1つが開き、中からどんどんと魔物が現れる。
 現れた魔物達はアルラウネや他の魔物に構うことなく隆人達に迫ってくる。


「これは……普通の魔物とは違うみたいですね」
「アルラウネの尖兵ってとこかな」


 前線にいる2人、グリンジャーと隆人が苦い表情を浮かべる。現在ティナとステインは未だ絶えることない通路からの敵にかかりきりであり、ロイドはその守護。とても蕾から出た魔物の対処までする余裕はない。
 今までギリギリの人員で戦闘を行っていた為に他に割く余力がないのだ。


「これは厳しいですね、人手が足りていません」
「……仕方ない、か」
 

 状況を把握し戦力差を理解した上で厳しい表情を深めるグリンジャー、その横で隆人は少し思案したのち何か決心したように頷く。
 そのこの場に似合わぬ表情に疑問を感じたグリンジャーが隆人に問いかける。


「どうしました?リュートくん」
「グリンジャーさん。グリンジャーさんは蕾から出た魔物の対処に向かって欲しい、数は多いけどグリンジャーさんなら上手く捌いてくれるよね」
「え、えぇ。周囲の魔物くらいなら見たところ強さもそこまで高くないですし問題はありませんが……それではアルラウネは?」
「アルラウネは俺1人で受け持つよ」


 その隆人の言葉にグリンジャーは驚愕を浮かべる。肥大化し明らかに強化されたアルラウネ、その強さは先程まで2人がかりで戦っていた時の力を遥かに上回る。それを隆人が1人でやると言うのだから当然だろう。


「……正気ですか?」
「もちろん。正気だし本気だよ」
「自暴自棄、というわけではないようですね。わかりました。僕も蕾を一掃したら向かいますので」
「うん、そっちは任せるよ」


 その言葉に送られるようにグリンジャーが飛び出す。彼はその手に持った大剣を己が腕力とスキルを使い振り回し、蕾から現れた魔物をその蕾ごと瞬く間に切り捨てていく。


「あっちは大丈夫そうだね。ティナの方は……」


「『燃え盛る炎よ、ここに集い紅き矢を成せ。我は射手。紅き矢は我が意の元に敵を穿ち、燃やし尽くす』〈炎熱の矢〉」


 そう言ってチラリと後ろを振り向く。そこではティナが通路から溢れてくる魔物に向かって炎の魔法で形作った矢を雨のように振らせていた。
 前衛で立ち回るステインとロイドを避けながらの魔法射撃にティナの技量の高さが伺える。


「あっつ!!」
「当たった訳ではないんじゃから我慢せぃ、これのおかげでなんとか戦線を保っとるんだからのぅ」


 ティナの魔法で的確に魔物の塊を焼き払い、残った魔物をステインとロイドが倒していく。更にロイドは本来の役目であるステインとティナを守るというのも忘れておらず、戦闘の最中も常にアルラウネの方にも注意を払っていた。


「あっちも大丈夫そうだね。じゃあ俺も」


 しっかりと連携も取れているし、余力も残っている。3人共連戦で少し疲労が見え始めているが、まだしばらくは問題ないだろう。


 そう判断した隆人は再びアルラウネの方に体を向けようとしたところで


  ヴゥーーーーー

「っ!」


 隆人の脳に響くアラート音。背後から高威力の攻撃の警報、その音に従いすぐにその場から上に退避する。


   ズガンッッ


 隆人が瞬間前までいた場所に緑色の物体が突っ込んでくる。それはアルラウネの蔦であった。


「ここまで攻撃してくるのか……。それにしても危機感知のアラート、久々に聞いたね」


 先程まではある程度離れていた時はこちらから攻撃しない限りアルラウネも攻撃をしてこなかった。しかし、変異した今ではその範囲も広がっているのか無くなっているのだろう。


 そしてその蔦による攻撃は蔦が太くなり速さも威力も変異前とは段違いであり、これを不意打ちで食らっていたら、いくら隆人でも死なないまでもかなりのダメージを負っていた可能性が高い。
 そう感じるほどの威力であった。


 更に、アルラウネは空中に逃げた隆人を逃すまいと、追撃を加える。
 肥大した口が更に膨らんだと思うと、そこから種を吐き飛ばしてくる。


爆裂の種バースト7つに拘束の種バインドが6つと強酸の種アシッドが2か、大盤振る舞いだね」


 自分に向かって飛んできている種の数と種類を冷静に分析する。


「とりあえず触れたら溶けるアシッドは先に処理しないとね。〈ウインドカッター〉」


 強酸の種はその名の通り、衝撃を加えると中から強酸液が飛び散り受け手や装備を溶かしてしまう種である。隆人はそれを詠唱を破棄し魔法名だけで唱えた魔法で迎撃する。


 詠唱を破棄した為威力は低いが、それでも紡がれた風の刃は強酸の種を含むいくつかの種に当たり、中から出た強酸液は地面に吸われていった。


「ふっ!」


 そして残った種を両手に持った武器で素早く切り裂いていく。それによって爆発や粘液による拘束が起こるが、それを隆人は天躯を使いそれ以上の速さで空中を移動することによって振り切る。
 そして一瞬のうちに飛んできた種を全て落として床に着地した。


「それにしても、最近はまともな戦闘がなかったとはいえ、随分となまったね……。こんな相手に手こずるなんて」


 地面に降りた隆人は悔しそうな顔を浮かべながらその場で立ち止まる。
 当然アルラウネも攻撃を加えるが、そのことごとくがかわされるか、対処される。


「でも、まぁリハビリにはちょうど良いかな。秘密をいくつかバラさなきゃ行けなくなったのはちょっと不安だけど」


 そう、さっき使った天躯もそうだが、隆人は今回基本的にスキルの殆どを隠しておくつもりだった。  
 しかし結果的にいくつか使わなくてはいけなくなった。それが隆人にとって不満の理由である。


 そしてそんな呟きを漏らしながら、隆人の集中力はどんどん高まっていく。


「まぁ、反省は後だね。早いとこアルラウネこいつを仕留めちゃおうか……」


 そう言って、隆人は再び地を蹴った。
しおりを挟む
感想 33

あなたにおすすめの小説

異世界から日本に帰ってきたら魔法学院に入学 パーティーメンバーが順調に強くなっていくのは嬉しいんだが、妹の暴走だけがどうにも止まらない!

枕崎 削節
ファンタジー
〔小説家になろうローファンタジーランキング日間ベストテン入り作品〕 タイトルを変更しました。旧タイトル【異世界から帰ったらなぜか魔法学院に入学。この際遠慮なく能力を発揮したろ】 3年間の異世界生活を経て日本に戻ってきた楢崎聡史と桜の兄妹。二人は生活の一部分に組み込まれてしまった冒険が忘れられなくてここ数年日本にも発生したダンジョンアタックを目論むが、年齢制限に壁に撥ね返されて入場を断られてしまう。ガックリと項垂れる二人に救いの手を差し伸べたのは魔法学院の学院長と名乗る人物。喜び勇んで入学したはいいものの、この学院長はとにかく無茶振りが過ぎる。異世界でも経験したことがないとんでもないミッションに次々と駆り出される兄妹。さらに二人を取り巻く周囲にも奇妙な縁で繋がった生徒がどんどん現れては学院での日常と冒険という非日常が繰り返されていく。大勢の学院生との交流の中ではぐくまれていく人間模様とバトルアクションをどうぞお楽しみください!

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)

みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。 在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

転生先は上位貴族で土属性のスキルを手に入れ雑魚扱いだったものの職業は最強だった英雄異世界転生譚

熊虎屋
ファンタジー
現世で一度死んでしまったバスケットボール最強中学生の主人公「神崎 凪」は異世界転生をして上位貴族となったが魔法が土属性というハズレ属性に。 しかし職業は最強!? 自分なりの生活を楽しもうとするがいつの間にか世界の英雄に!? ハズレ属性と最強の職業で英雄となった異世界転生譚。

召喚物語 - 召喚魔法を極めた村人の成り上がり -

花京院 光
ファンタジー
魔物討伐を生業とする冒険者に憧れる俺は、十五歳の誕生日を迎えた日、一流の冒険者になる事を決意して旅に出た。 旅の最中に「魔物を自在に召喚する力」に目覚めた主人公が、次々と強力な魔物を召喚し、騎士団を作りながら地域を守り続け、最高の冒険者を目指します。 主人公最強、村人の成り上がりファンタジー。 ※小説家になろうにて、990万PV達成しました。 ※以前アルファポリスで投稿していた作品を大幅に加筆修正したものです。

「役立たず」と追放されたが、俺のスキルは【経験値委託】だ。解除した瞬間、勇者パーティーはレベル1に戻り、俺だけレベル9999になった

たまごころ
ファンタジー
「悪いがクビだ、アレン。お前のような戦闘スキルのない寄生虫は、魔王討伐の旅には連れていけない」 幼馴染の勇者と、恋人だった聖女からそう告げられ、俺は極寒の雪山に捨てられた。 だが、彼らは勘違いしている。 俺のスキルは、単なる【魔力譲渡】じゃない。 パーティメンバーが得た経験値を管理・分配し、底上げする【経験値委託(キックバック)】という神スキルだったのだ。 俺をパーティから外すということは、契約解除を意味する。 つまり――今まで彼らが俺のおかげで得ていた「かさ増しステータス」が消え、俺が預けていた膨大な「累積経験値」が全て俺に返還されるということだ。 「スキル解除。……さて、長年の利子も含めて、たっぷり返してもらおうか」 その瞬間、俺のレベルは15から9999へ。 一方、勇者たちはレベル70から初期レベルの1へと転落した。 これは、最強の力を取り戻した俺が、雪山の守り神である銀狼(美少女)や、封印されし魔神(美少女)を従えて無双し、新たな国を作る物語。 そして、レベル1に戻ってゴブリンにも勝てなくなった元勇者たちが、絶望のどん底へ落ちていく「ざまぁ」の記録である。

処理中です...