身体強化って、何気にチートじゃないですか!?

ルーグイウル

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第2章 迷宮都市と主の脅威

真骨頂

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(第30話です!ここまで読んでくれている皆様に感謝を!これからもよろしくお願いします)



 変異したアルラウネを前にたたずむ隆人、これまでと違いその顔には余裕が浮かんでおり、集中力は爆発的に高まっている。そして地を蹴りアルラウネに向け駆ける。
 未だ身体強化・Ⅲの働いている隆人の身体能力は一歩ごとに彼我の距離を詰めていく。


「ギャァァアァァァァァ」


 変異前を含めると何度目かの交戦、アルラウネも隆人のことを近づけまいと蔦を使い攻撃を仕掛ける。一見して分かるほどに太くなったその蔦の威力は先ほど目にしている。重たく鋭い攻撃は身体強化中の隆人でさえダメージを受けるほどである。
 その蔦が何本も風切り音を立て隆人に迫る。対する隆人はそれを認識し――笑う。


「もうその攻撃は見飽きたよ!」


 そう言って隆人はなんと、さらに加速する。そのまま高速で迫る蔦に正面から突っ込んでいく。そして2つが交錯する瞬間隆人の身体がブレ、蔦の数ミリ横を通過する。
 もはや回避という次元を超えた無駄の極限まで排除した移動。


 それは、身体強化ブーストによる身体能力と感覚の大幅な強化に加え、隆人自信の戦闘経験と集中力があって初めて実現する離れ業。
 一瞬の遅滞が死を呼ぶ迷宮の中で身につけた技能である。


「お前の攻撃は確かに早いし強い。その威力は脅威だよ。でも。当たらなければどうということはないよ」


 アルラウネの猛攻の中を突き進む隆人、蔦による突きや薙ぎ払いを必要最低限の動きですり抜けていく。



 アルラウネに近づいていくに連れて、攻撃の手数も増え苛烈になっていく。全周囲から迫る蔦の嵐、それを隆人は針の穴を通すような精密さで抜けていく。


「ギェァァァァ!!」


 するとアルラウネはその巨大な口を更に膨らませる。種攻撃の挙動。そして口を開きいくつもの種が放出される。
 種はその全てが赤く、これまでと違い一点を狙うのではなく、隆人を中心にばら撒くように吐き出される。


「全部爆裂の種バーストか……なるほどね、直接狙っても当たらないから再生可能な蔦ごと絨毯爆撃で焼き払うつもりみたいだね!なら、『鉄壁』!」


 直後、アルラウネから吐き出された爆裂の種が地面に落ち爆発する。その爆発は更に地面に着いていない種達の爆発を誘発し連鎖爆発を生む。
 爆発が爆発を生むその空間は一瞬にして爆炎に埋め尽くされた。


「ふぅ、危なかったね」


 そして、爆発が収まった後辺りに焼けた蔦が落ちている中、その中心には傷1つついていない隆人が何事もなかったように立っていた。
 その隆人の体は、身体強化の青白いオーラが通常よりも薄くしかし高密度で包んでいる。


「『鉄壁』。それくらいの攻撃じゃ俺の守りは抜けないよ。」


 そういって無傷の隆人はニヤリと笑った。
 隆人が使用したのは身体強化の派生スキルの1つ『鉄壁』である。



  身体強化派生 鉄壁 消費MP +50%
   発動句「鉄壁」
 身体強化の派生スキル。追加でMPを消費し使用可能
 強化の能力をVITに集中させ、大幅に強化する
 このスキル使用中は行動不能
 使用後一定時間同スキル及び他の身体強化派生スキル
 使用不可



 つまり、鉄壁は動けなくなる代わりに身体強化による効果を全て守りに集約し、一瞬の間超防御を得るスキルである。
 そして今の身体強化・Ⅲを使用した上での鉄壁状態では隆人のVITは2000を超え、その耐久力は鍛えられた鋼にすら迫る程である。


 鉄壁が解除され、膜のように隆人の体を包んでいた身体強化特有の青白いオーラが再び溢れるようにたなびく。


「さて、そろそろ終わらせようかな」


 そして隆人は蔦の大多数が燃えて本数の減ったアルラウネを一瞥すると、一気に距離を詰める。


 アルラウネも蔦によって迎撃するが、先程の爆撃でその数を減らしており、種の攻撃も制限があるのか撃ってはくるもののその数は少ない。
 そんな攻撃が今の隆人に届くはずもなく、その尽くが対処され、無効化される。


 そしてついに、攻撃網をかいくぐりアルラウネの元に到着する。


「喰らえ!!」


  キンッッ


 胴体に向けた隆人の突き、しかしそれは届く事がなかった。見るとアルラウネの胴体部分を花弁が蕾のように包んでいる。
 花弁は分厚く、隆人の刃は深々と突き刺さっているが、貫通した手応えはない。


「何っ!?ぐっっ」


 予想外の出来事ごとに一瞬隆人の動きが止まる。その瞬間をアルラウネは逃さず、燃え残っていた太い蔦の一本が隆人を強かに打ち据えた。
 隆人は攻撃をもろに受け、錐揉みしながら駆け抜けた地面を逆に飛ばされる。


 隆人は空中で姿勢を取り戻し着地するが、アルラウネから少し距離を取られてしまう。その隙に燃えて無くなった分の蔦も数本再生される。


「全く、本当にしぶとい……。それにしてもあの花弁の壁、あの守りはかなりやっかいだね」


 隆人はアルラウネを見て苦々しい顔をする。もちろん方法がないわけではない。身体強化の深度をあげたり、ストレージに入った装備にも使えるものがある。
 しかしそれを使用するのには少し悩む。既にやむなくいくつか使ってしまっている為にこれ以上グリンジャー達に見せるのに躊躇いが出ていた。


 どうするか、そう悩んでいるとアルラウネの更に右側から声がした。


「リュートくん!あの蕾は僕に任せてください、なんとかしてみせますから!リュートくんは本体を!」



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 Aランク冒険者グリンジャーは驚いていた。


 隆人に言われた通りフィールド中に発生した蕾から出てきた魔物達を大剣で処理する。最初はわらわらと発生していた魔物達だが、ある時ぱったりと湧かなくなった。
 疑問に思ったグリンジャーは沸いていた最後の1匹を倒した後、蕾の元凶であるアルラウネに視線を向ける。そこでは恐るべき光景があった。


 変異したアルラウネの蔦、一本一本が人間の頭部近い太さを持ち、そんな蔦が高速で振り回される。当たれば相当のダメージであることが予想されるそんな緑の檻の中を凄まじい速度で駆け抜ける隆人。


 一歩間違えれば直撃するのでと思える程スレスレの回避で走っていく。
 恐らく魔物の発生が止まったのは隆人との戦闘で他に向ける余裕がなくなったからであろう。


 しかしグリンジャーは援護に向かうことができない。その戦闘があまりにも自分次元を超えていたからである。こんな戦闘に自分が混ざっても一瞬と持たないであろう。
 Aランクになりそれなりに強さに自負のあったグリンジャー、そんか彼でもこの戦いはレベルが違ったのである。
 グリンジャーはそんな隆人にわずかに畏怖すら抱いた。


「リュートくん、底が見えない……」


 と、アルラウネが再びの種攻撃をする。その種達は広範囲に広がり、地面に落ちると爆発した。
 大量の種が連鎖したその爆発は凄まじく、いくら隆人とは言えひとたまりも無いのではと思えた。


「!?リュートくん!」


 グリンジャーは思わず駆け寄ろうとする、しかし爆風の晴れたそこには無傷の隆人がおり、そのまま蔦の減った隙を抜き突撃する。


 しかしその攻撃は防がれる。アルラウネの下部にあった花弁がアルラウネを包んだのである。その硬度はかなりのようで隆人の攻撃を防いでいる。
 そして隆人はその隙に蔦を受け飛ばされる。


 「ここしかない」とグリンジャーは決意した。そして隆人に向けて声を上げる。


「リュートくん!」


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 隆人はグリンジャーの事を見た後、頷く。 
 その表情を見て、グリンジャーに託してもいいと思たのだ。


「じゃあ、任せるよグリンジャーさん!『神速』!」


 そして、再び体を屈め、突進する。さらにインターバルを終えた身体強化派生、その中の神速を発動し更に速度を上げる。


「ギャァァァ!」


 アルラウネも再生した蔦達を使い、隆人を迎え撃つ。本数が減ったせいか、蔦の動きはより細かくなっており、隆人の進行方向を塞いでいく。


「なら、上だよ!」


 アルラウネの蔦が隆人に直撃する直前、隆人は上空に飛ぶ。そして天躯を発動し追撃の蔦を回避する。


 LV.3まで成長した天躯は空中で3歩まで蹴ることができる。その天躯を駆使し、追撃の蔦を足場にしてその回数を回復しては更に飛ぶ。


 これまでと違う3次元的な動きにアルラウネは翻弄される。そして隆人はアルラウネの真上に着く。その口は何やら動いていた。


「『風よ、我は空間を支配せしもの。風は集いし吹き下す。暴威よ全てを押しつぶせ』〈ダウンバースト〉」


 そして魔法を唱える。大量にMPの注ぎ込まれたそれによって発生したのは強力な下方気流。吹き下すその空気の流れはアルラウネに直撃すると放出され、隆人に向かおうとしていた蔦を全て撃ち落とし、散らす。


「今です!『瞬歩』!」


 その隙を見て、グリンジャーが瞬歩のスキルを使い一気に詰める。蔦は弾かれコントロールはなく、アルラウネの注意は隆人に向いている。そんな中グリンジャーはアルラウネの懐に立ち、構える。


「残存MPは50%弱ですか、十分!我が剣万象を断て『一刀両断』っっ!!」


 そして砲声。アルラウネが気づくがもう遅い、全身全霊が込められたが如く振り下ろされる。

  ズバァァァァァァァン!!!


 盛大な音が響き渡ったと同時、アルラウネを包んでいた花弁が真っ二つに裂け、中からアルラウネ本体が露わになる。


 「これで、最後だ!!」


 隆人はその隙を見失わない。花弁が割れた瞬間、再び天躯を使い上空から一気に落ちるように向かう。


 そして、いつの間にか短剣をストレージにしまっていた隆人は愛剣のショートソードを両手で持ち、振り下ろす。


 隆人のショートソードはむき出しになったアルラウネの肩口の部分に吸い込まれるように入り、そのまま斜めに切り裂いた。


 隆人が着地したのち、アルラウネの体は斜めに分かれそのまま滑り落ちた。
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