身体強化って、何気にチートじゃないですか!?

ルーグイウル

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第2章 迷宮都市と主の脅威

激戦の後に

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(アルラウネ戦終わりました!次回はもしかしたらステインサイドを挟むかもしれません)



 グリンジャーがアルラウネの花弁の守りを引き裂き、弱点である本体が露わになった瞬間、上空にいた隆人は天躯により空中を蹴り、急降下する。


 そうして振るわれたショートソードは落下の勢いも合わさり、アルラウネの胴体をほぼ抵抗なく切り裂いた。


   ドサッ

「ギャァァァ………  」


 一拍遅れて響く落下音。体が2つに分かれたアルラウネは断末魔の声を上げたのを最後に動かなくなった。


「やりましたねリュートくん」
「うん、なんとかなったね」


 言葉をかわしつつ合流するグリンジャーと隆人。それを待っていたように、アルラウネの死体が淡く輝き始める。そして一際まばゆく輝いた後、弾けるように光の玉がアルラウネの死体から飛び出る。
 光の玉ーー経験値は隆人達に吸い込まれていった。


「いやぁ、流石にこれほどの魔物となると〈魂の残滓〉の量も相当ですね。レベルアップなんて久しぶりです」


 同じく光の玉をいくらか得たグリンジャーが満足そうに言う。隆人はその言葉の中の単語に違和感を受ける。


「〈魂の残滓〉?」
「?あぁ、魔物を倒した時に出る光の玉のことですよ。死した魔物から出るので彼らの魂の残滓だと言われているんですよ」
「へぇ、これそんな名前だったんだ」
「まぁ、呼び方は1つでは無いようですがね。〈魂の残滓〉が主流ですが、地方では恵みや加護のように扱われていたり、経験値?とか呼んでいる人もいるらしいですよ」


 なるほど、と隆人は納得する。たしかに魔物を倒したら光が現れるという幻想的な光景、量に応じてレベルアップ、つまり強くなるという効果。神格視する理由には十分だろう。
 そして最後の経験値 は恐らくこの世界にきた他の転生者達が広めたのだろう。


 そこまで考えて、隆人は〈魂の残滓〉に関する思考を終え、次の関心に意識を向けた。


「そういえば、俺のレベルも上がったのかな」


 ここまでの道中、久々に相当数の魔物を狩ったしアルラウネはかなりの強敵だった。そう考えて脳裏でステータスと念じる。



 隆人/人間族 LV. 275 job なし

 HP   1131/1446  MP    519/739  (95)

  STR  727
  MND  650
  VIT  683
  AGI  707
         魔法適正 風
 スキル 
  ユニークスキル 身体強化 LV.10☆
 〈神速〉〈剛力〉〈鉄壁〉〈転魔〉〈霊装〉

  パッシブスキル 危機回避 LV.3
          状態異常耐性 LV.5☆
          各種属性耐性 LV.4

  習得スキル   天駆 LV.3☆
          ストレージ LV.4
          HP回復 LV.4 
 〈ヒール〉〈ハイヒール〉〈メガヒール〉
          換装 LV.3



「おぉ!上がってるね」


 ステータスを見るとレベルの欄の数字が上がっていた。それをみて隆人は思わず歓喜の声を上げる。


 しばらくまともな戦いがなく、レベルが高いほどレベルが上がりづらいという特徴もあってか、ここ最近レベルアップがなかった隆人にとっては久しぶりのレベルアップであり、喜びも大きかった。


「スキルは……変化なしか。そろそろ新しいスキルを得てもいい頃だとは思うんだけどな」


 ステータス欄からスキルの欄に意識を移した隆人は少しだけ嘆息する。隆人はこれまでの経験でスキルというのは2種類の習得方法があるということがわかっている。
 それは、スキルの習得に必要な条件を満たすことか、レベルアップによるものである。隆人のスキルでは、危機回避や天駒がレベルアップで耐性や換装は条件によるものの例である。


 しかし、条件達成によるスキルはレベル関係なく得られるが条件が不明の為、隆人はレベルアップでのスキル習得に少し期待をもっていたのだ。


「まぁ無かったものは仕方ないね、それよりも……」


 レベルアップ関連の思考をそこで打ち切った隆人は再びステータス欄--のHP欄をみて一転して苦い顔になる。HPの数値が最大値から300程減っていたのだ。
 アルラウネ戦は激戦であり、また最後の攻撃でグリンジャーからアルラウネの意識をそらす為に特攻を仕掛けた際にいくらか被弾していた。
 

 もちろん今の隆人にとっては300のダメージは致死には程遠いが、それでも被弾が多かったのは事実である。


「戻ったらまた鍛錬しなきゃかな。とりあえず、『ヒール』」
「……リュートくん、回復スキルも使えるのですね」
「あっ」


 しまった、と隆人は焦りを覚える。つい気が抜けてスキルを使ってしまった。以前はソロだったので被弾が多かったり長い戦闘の後は『ヒール』系のスキルで回復する癖がついていたので、無意識にやってしまったのだ。
 どうするか、と誤魔化し方を隆人が考えていると。


「羨ましいですね、僕には回復系のスキルは無いのですよ。いつもパーティの治癒師ヒーラー任せで」
「あ、うん。そうだね」


 隆人が言い訳をするまでもなく、グリンジャーの方が勝手に納得してくれた。どうやら回復のスキルというのはそれなりに一般的なスキルであるようだ。
 隆人はほっと胸を撫で下ろしつつ、話題を変える事にした。


「そ、そういえばグリンジャーさん、さっきアルラウネの花弁を真っ二つにしたあれ、一体何なのかな?」
「あぁ、あれですか。あれは『一刀両断』と言うスキルですよ。効果は攻撃した対象に限りどんなものでも文字通り両断する、と言うものです。私の二つ名もこのスキルが元になっています。」
「へぇ、それはかなり強力だね」
「確かに強力なんですがその分制限も厳しいのですよ。力を込めるので攻撃が大振りですし、効果があるのは当てた部位、例えば敵が鎧を着ていたら鎧だけ、とかですね。それに消費MPは膨大ですし、発動後は反動でステータスがかなり落ちるんですよ」


 そう言って苦笑いするグリンジャー。この世界のスキルと言うのは複雑で強い効果程厳しい制限が課せられている場合が多い。どんなものでも切れるという超が付くほど強力な効果にはこれくらいの制限があっても当然と隆人は納得した。


「リュート様~」


 そこにティナから声がかけられる。2人はそこで会話を切り上げることにした。


「それじゃあ、ティナ達の方に行こうか」
「そうですね、あちらも終わったようですし」


 そういって隆人とグリンジャーは足をティナ達、通路からくる魔物を討伐する組に向ける。といっても元凶であるアルラウネが討伐された時点で魔物を呼ぶ効果は切れており、隆人達が話している間に既に最後の群れを倒し切っていた。
 

「お疲れ様」
「お疲れ様です、リュート様!こちらも先程終わりました」
「そうみたいだね、ステインとロイドさんもお疲れ様」
「はい!」
「うむ、思いの外疲れたのぅ」


 そちらもかなりの激戦だったようでティナとステインは疲労の色を滲ませていた。口の割にロイドはさほど疲れた様子ではなかったが。
 ティナも少し前線に出たのか細い傷がいくつか見受けられたので、隆人はティナに向け回復スキルを発動する。


「『ヒール』」
「あ、ありがとうございます、リュート様」
「うん、そっちの2人は?」
「いらん!俺は回復スキルヒールが使えるからな!」
「ワシもそこまで傷を負っておらんからいらんぞ」


 ティナは隆人の回復スキルを知っているので自然に回復を受ける。知らなかったステインは少し驚いた顔をしたが、すぐに自分で回復した。


「ステインは前衛ですが、回復や魔法も使えるんですよ」
「なるほど、役にたつというのは本当のようだね」


 そんな他愛ない会話を少ししたのち、みんなの回復が終わったところで、アルラウネと戦ったフィールドから出る。予想外に元凶を倒したとはいえ、作戦はまだ続いている。これから下層組と合流し作戦に復帰しなければならなかった。


 とは言え、元凶アルラウネを倒したからか、魔物の数は目に見えて減っており、統率もなくなった魔物達はそれぞれ勝手に暴れたり殺りあっていた。


 その為作戦は予想よりも圧倒的に早く進み、1日が終わる頃には、魔物が粗方倒し終わり30階層の拠点に全パーティが帰投していた。


「それでは、これを持って下層魔物討伐作戦を終了する。後は最初と同様に各々で地上に戻ってくれ、報酬については依頼主であるギルドから追って連絡が来るだろう」


 グリンジャーの宣言で作戦が終了した。参加していたパーティはそれぞれ準備してすぐに地上へ戻っていく。


「では、僕も報告があるので『太陽の剣』のみんなとこのまま地上に向かいます。リュートくん、今回はありがとうございました」


 終了宣言の後、各パーティがいそいそと出発している中グリンジャーが隆人のところにやってきた。そして一言伝えるとすぐにパーティメンバーと共に地上への階段を上っていった。


「初依頼、終わりましたね。リュート様」
「うん、ちょっと初依頼って言うには特殊な依頼だったけどね。とりあえず俺たちも戻ろうか」
「はい!」


 ティナの明るい返事と共に隆人達『暁の風』も地上への帰還を開始した。
 そして、登ることしばし、11階層。


「た……たす、け…………の……」


 そんな声を隆人の高い聴力が拾う。
 隆人はまだまだ休む事はできないようである。


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