身体強化って、何気にチートじゃないですか!?

ルーグイウル

文字の大きさ
120 / 141
第5章 森王動乱

X treme

しおりを挟む
「くそぉっ」


 間に合わない。『神速』の加速の中で隆人が歯噛みする。
 視界の先では暴走したラルフが今、大剣を振り下ろさんとティナの前に立つ。抗おうとするティナだが、先程の謎の咆哮と波動により脱力感に襲われていてその動きは鈍い。そしてそれ以上にラルフの速度は埒外でありその刃先は既にわずかまで迫っている。


 そして死の一撃がティナへと落とされる。


「がるぅぅぅぅぅぅ!」
『グァォ!?』


 無慈悲なる一撃、しかしそれはティナの命を奪うことはなかった。
 弾丸のように飛来した何かがその大剣を弾く。


「ロロノ!?」


 その何かとはロロノと、そして銀羽槍である。ティナに大剣の刃が届く寸前、その体を槍そのものにしたかのような勢いで突撃したのだ。


「その姿は……!飛竜の時のっ」


 ラルフの大剣を弾いたロロノ、牙は伸び手足は大きく爪も鋭くなっている。血走った目が爛々と輝く。獣のように喉を鳴らす。


 かつて大迷宮ディアラの85層、ティナとロロノが巨大な飛竜の一体と対峙した際、強大な飛竜の力に窮地に陥ったティナを見たロロノがこの姿に変わった。
 獣人族が持つ「獣化」のスキルに似てはいるが、それにしては中途半端。それに理性も失っている。


「がるぅ……」
「ロロノ!」


 勢いそのまま、大剣を弾いたロロノであったが、それまでであり、すぐにぱったり倒れる。身体的変化も消え、元のロロノに戻る。  
 先程の脱力はロロノも同様に受けており、今の攻撃も最後の力を振り絞ったものであったようだ。


 攻撃を弾かれたたらを踏んだラルフだが、それもほんの一時、すぐに体制を立て直し大剣を構えて振り下ろす。
 

「ありがとうロロノ、おかげで間に合った!」
「リュート様!」


 突如走り抜ける突風。ロロノが一瞬の時間を稼いだ間に隆人が追いつき、「神速」の速度で2人を小脇に拾っていった。
 一瞬遅れて大剣が垂直に振り下ろされ、空を切りそのまま地面へと突き刺さる。


 その隙に隆人はラルフから距離を取り、2人を下ろした。


「リュート様、助かりました」
「ロロノのおかげだよ。よくティナを守ってくれたね」
「?どういたしましたのです?……」


 隆人の労いの言葉に力なく答えるロロノ。既に正気に戻ったようだが、先程の出来事については憶えていないようである。
 その様子はヘロヘロでありあまり戦える様子ではない。


「リュート様、先程の脱力感は」
「うん、周囲の生力か何かを奪う範囲系スキルの類だと思う。それにその範囲も少しずつ広がっているみたいだ」


 隆人の視線の先ではラルフが地面に突き刺さった大剣を引き抜いている。周囲では未だ木々が生力枯渇により枯れ続けており、その規模も徐々にではあるが大きくなっている。


「『放出』っと。2人とも、しばらく休んでてね……回復したら周囲の魔物達を。身体強化・Ⅴフィフス
「リュート様は?」
「俺はラルフをなんとかしてくるよっ!」


 隆人がストレージからポーションをいくつか取り出してティナ達に渡し、同時に休息を命じる。ポーションは連続使用では効果が薄いとは言え、ラルフの範囲外であれば多少雑多な魔物との戦闘はあれど回復に努めることができるであろう。
 そして自らは数本のポーションを飲み干し、効果の切れた身体強化を再度展開、大剣を引き抜いたラルフへと突貫する。


「リュート様!っ……身体が」


 一人で攻勢に転じた隆人を追いかけようとするティナだが、その動きは鈍い。体の力が抜けたようにへたり込んだ。
 魔族バイサールとの戦いは激戦であり、一度ポーションを服用したとは言えその状態は全快には程遠い。加えて一連の出来事ですでに限界を迎えていた。


 精魂尽きたティナは悔しげに、隆人の姿をただ見つめていた。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



『グラァッ』


 地面に突き刺さった大剣を抜いたラルフは接近する隆人へ視線を向け、また消える。

  ヴゥーーーー


「右かっ!」
『ガアッ!』


 
 危機感知のアラートに従い直感的に回避を選択する。素早く体を傾けた隆人の右側の地面がラルフの大剣により爆ぜる。
 ラルフが接近した事で、再びラルフの渇きの圏内に入った事で隆人を脱力感が襲う。


 そのまま横薙ぎへと切り替えたラルフの大剣を隆人のセロと氷河の剣が受け止める。二剣を滑らせうけ流そうとするが、ラルフの馬鹿げた力は、小手先の技をひねり潰すには十分で、隆人の体は宙を舞う。


 そのまま空中にいる隆人を仕留めようとラルフが大剣を振るう。ゴウと鈍い風切り音と共に迫る剣を前に隆人が剣をクロスする。


「『押しつぶせ』〈ダウンバースト〉」


 詠唱短縮により魔法を発動。大量のMPを消費し詠唱分を補うことで発動した強風が隆人ごとラルフを上から吹き付ける。
 急激な下方気流によってラルフの動きが鈍る。


 大幅に減速したがなお進むラルフの大剣を隆人が防ぎ後退する。


「強い。フィフスでも追いすがるのがやっととはね……。使うしかないか」


 距離をとった隆人が嘆息しながら呟く。何やら意味深な言葉も漏らしたかと思うと、ふいに周囲を見回す。ラルフの咆哮に釣られたのか、先程よりも魔物の数は増えている。
 そしてさらに視線を回しティナとロロノの方を向く。ラルフの渇きの範囲外に出ているのもありポーションによって徐々に回復しており、その周囲の魔物達を少しずつ削っている。


 その様子を見て、隆人が笑う。


「あの2人ならきっと大丈夫だね。心置きなくラルフにを尽くせる」


 ニヤリと笑ったまま再び視線をラルフの方へと向ける。既にダウンバーストより抜け出だし、隆人へと狙いを定めている。動きを封じられた怒りからかもう一度咆哮する。
 ラルフの魔力が高まり周囲の渇きがさらに強くなる。木々の枯れは進行し隆人の体がより重く感じられる。


 だが、その隆人の笑みは崩れずむしろ楽しげですらある。


「久しぶりだね。これを使うのは大迷宮の最下層以来だ」


 ラルフが地を蹴る。また消えるような速度まで加速したラルフは一瞬のうちにその距離を0にする。
 目の前にラルフが現れても隆人は驚く様子はない。セロと氷河の剣をだらりと下げたまま瞑目し、魔力を急激に高めていく。。


 その隆人へと大剣が振り下ろされる。その瞬間、隆人が爆発的な魔力の奔流と共に目を見開く。


「いくよ。『身体強化・ーーブースト・ーー
『ガァァァァァ!!』

 

「ーーXエクストリーム』!!!」



 大剣の一撃、同時に隆人の体から膨大なオーラが吹き出した。



(隆人の身体強化、この話の開始当初から存在しているのに、その最高段階が登場するまで長かったですね……)
しおりを挟む
感想 33

あなたにおすすめの小説

弟に裏切られ、王女に婚約破棄され、父に追放され、親友に殺されかけたけど、大賢者スキルと幼馴染のお陰で幸せ。

克全
ファンタジー
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。

処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。  だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。 かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。 だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。 「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。 国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。 そして、勇者は 死んだ。 ──はずだった。 十年後。 王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。 しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。 「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」 これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。 彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様

コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」  ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。  幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。  早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると―― 「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」  やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。  一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、 「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」  悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。  なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?  でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。  というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!

帰国した王子の受難

ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。 取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜

サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」 孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。 淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。 だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。 1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。 スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。 それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。 それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。 増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。 一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。 冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。 これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。

処理中です...