身体強化って、何気にチートじゃないですか!?

ルーグイウル

文字の大きさ
131 / 141
6章 大闘祭

夜道で

しおりを挟む
「思ったより遅くなっちゃったね」


 王都の街路、日も暮れて暗くなりつつあり、人気も薄くなり始めた中を一人歩く隆人。それでも王都だけあり喧騒は止まず、隆人は少し急ぎ足でかけていく。



 時は遡りトーマス商会を後にした隆人達は当初の予定通り王都の冒険者ギルド、グランザム連合王国にある全てのギルドの中心、本部へと足を運んだ。
 といってもその目的は、新たに仲間になったシルヴィアの冒険者登録をするためである。冒険者ギルドに登録をして初めて、「暁の風」の一員として迎えられる。ある種通過儀礼のようなものである。


 ーーとはいえ、冒険者登録の手続き自体は大して難しいものではなく、事故が起こる心配もない。あくまで単純作業である。


 結論を言うと、シルヴィアの冒険者ギルドへの登録はつつがなく終了した。それこそ問題という問題は全くと言っていいほど発生する事なく、シルヴィアは新たにFランク冒険者としての身分を得、隆人達パーティメンバーとして記録された。
 

 ちなみに、王都に着いたという事でシルヴィアだけでなく、隆人達3人も冒険者カードを更新した。身分証明書としての役割も持つ冒険者カードは安全上定期的に更新する必要があるが、その手続きも大した手間ではなく、すぐに済む。
 前回冒険者カードを更新したのは公都シャリエを出発するときであり、あれ以降冒険者としてギルドを経由した依頼は一つも受けてない。


 一応大森林の一件は体裁を整える意味で冒険者として指名依頼の形で受注したが、それはあくまで非公式な依頼である。そのため今回はパーティメンバーのランクがあがるというイベントは無かった。
 新たにFランクのシルヴィアが加入したが、これでパーティメンバーのランクはCティナD隆人Eロロノ、そしてFシルヴィアである。その為パーティランクもDのまま据え置き、あまり変化のない更新であった。
 ーー本来はそれが普通なのだが。


 何か特出する事があるとすれば、隆人達「暁の風」の所属が、迷宮都市ディアラから外れていたという事くらいだろう。おそらくオズワルドの呼び出しを受けて出発した段階で、シャリエ公爵家の手で外されたのだと思われる。前回の更新時には既に所属は消えていたのだろうが、今になって気づいた。


 再びディアラに所属を指定する事も出来たが、これから世界中を回ることを考えて一度保留することにした。


 
 そうして冒険者ギルドでの用を終えた隆人達だったが、思いのほか時間に余裕ができた、なので宿に向かうまでの時間を自由時間にする事に決めたのであった。
 4人にとって初めての王都、グランザム連合王国の中心都市はやはりたくさんの魅力に溢れており、せっかくだから少し回るのもいいのではないか、というシルヴィアの言葉がきっかけである。


 そして、夕食までには宿に向かうとして、各々が自由に王都へと繰り出したのである。ちなみにしっかりしているとは言えまだ幼いロロノはティナと一緒に行動している。


 そんなこんなで、久々の単独行動で王都を巡っていた隆人だったのだが。


「流石王都、どこのお店も美味しい物がたくさんだったね、つい時間を忘れてしまったよ」


 歩きながら隆人がそう呟き苦笑いを浮かべる。自由時間を利用して隆人はいくつかの食事処を廻っていた。食べ物巡りは今や隆人の趣味と言えるほどになりつつある。
 もちろん行けたのは広い王都のほんの一区画ではあるがそれでもたくさんの食事処に出会った隆人は、興味の湧くままその数々に手を出した。
 そして気づけば辺りは暗くなり始めていたのである。


「もうすぐ日暮れ、夕食どきだね、これなら何とか間に合いそうかな」


 隆人が手元にある紙を見ながら言う。実は隆人達の今夜泊まる宿を提供した来たのはアゾートである。隆人達がまだ今宵の寝床を決めてないと聞くや否や、有無を言わせず自分のおすすめを推してきたのだ。そしていつのまにか宿泊予約がされていたのだ。隆人の紙にはその宿の場所が地図状に描かれている。


 辺りは暗くなり始めているがまだ夕食の時間には間に合う、隆人の足取りも急いではいるが焦ってはいない。


 そんな中、『それ』はいた。


「ん?」


 早歩きのような速度で進んでいた隆人が突如その足を止める。そしてその視線をある一方へと向けた。


「あの人……」


 隆人の視線の先にはボロ布のようなフード付きの外套を被った人がゆっくりと歩いている。外套のせいで男女の判別はできない。だが少し身なりが貧しいがそれ以外に特におかしい点もなく、ただの旅人にしか思えない。しかし


「おかしい……。


 何の変哲もないその姿、それが逆に隆人に警戒心を抱かせる。ゆったりと歩いていながらもその実全くと言って隙のない進み、この距離でもわかる無駄の無い体捌き。にも関わらず、その者から感じられる気配は穏やか、いや無に近い。まるで波一つない海のようである。


 その違和感が隆人の足をその者の進む後ろへと続かせた。




 それから数分、隆人は音や気配を消しながらその外套の者の後ろを少し遠くからつける。隆人の知覚能力と身体技術をフルに使い、相手に知覚されないであろう距離からゆっくりと追いかける。
 外套の者はゆったりだが止まることなく一直線に王都を進む。やがて路地に入り人気が完全に消える。そして外套の者が立ち止まった。そして振り返る。


「おい。何の用だ、小僧?ずっと付いてきやがって」


  ビクン


 隆人が肩を揺らす。振り向いた外套の者は気配を断ち隠れる隆人の方を向いている。
 声から男だとはわかったが、暗がりのせいでフードの中は伺えず顔は見えない。だがその目は隆人の方を見つめているのだと理解できた。


「参ったな、見つかったね」
「関心しねえな、気配を消してひとの後ろを尾行するたぁ」


 姿を現した隆人に、外套の男が不機嫌そうに言葉をこぼす。隆人の方は軽い口調であるがその内心では焦りを浮かべていた。
 何せ尾行は隆人の全力の隠形である。もちろん本職の高ランク斥候スカウトには及ばないが、気配を完全に操る技術と、無音での移動、それをこの距離で見破られたのだから。


 そんな隆人の内心を、知らずに外套の男が言葉を続ける。


「まぁ悪気があった訳ではないみたいだし咎めはしないが、ちょいとお仕置きしとくか、な」
「ーーっ!」


 隆人の身体が突然ピシリと強張る。今外套の男から放たれたのは「殺気」である。
 軽い口調とは裏腹にその殺気は恐ろしい程に鋭利である。今まで幾多の殺気をその身に受けた隆人ですらその動きを止めてしまうほどに。


「(今、斬られた……?)」


 一瞬の硬直から解放された隆人が、自ら身体を触る。先程の殺気、あまりに洗練されたそれは、まるで胴が切り裂かれたかのような錯覚すら抱かせたのだ。もちろん現実は斬られてはおらず痛みもない。


 戦慄を露わにする隆人と対する外套の男はこちらも驚愕をにじませる。


「驚いたぜ、並みの奴ならこれで意識を失うか一目散に逃げるかなんだが。何ともないたぁ小僧、思ったよりやるみたいだな」
「お褒めに預かりどうも」


 賞賛を送る外套の男に、隆人が皮肉げな表情でもって返す。男から感じる圧倒的な余裕と、それを裏付けるに値する先程感じた殺気。飄々としているがこの者が相当な修羅場をくぐってきたのだと理解させられる。
 光の加減で一瞬だけ見えた男の口元が愉しげに歪む。


「正直、あまり乗り気じゃなかったんだがな。小僧には期待が持てそうだ。他にも何人か面白そうな奴がいるみたいだし、これは久しぶりに戻ってきたのは正解だったみたいだぜ」
「……何のことかな?」
「なんでもねぇよ。それより、小僧も大闘祭に出るんだろ?じゃあそれまでしばしの別れだ」


 唐突に男が隆人に背を向けその場を後にする。隆人を逃さぬと追いかけようとするが、次の瞬間にはその姿は幻のように消えていった。


 まるで嵐のようにかけていったその男。


「なんだったんだろう、一体」


 取り残されたような隆人の呟きが闇に響いた。




(今回、雑に展開するわ地の文ばっかりだわで見づらいかもしれません……意味深なキャラが出ましたがお察しの通り今章に大きく関わってきます)
しおりを挟む
感想 33

あなたにおすすめの小説

処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。  だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。 かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。 だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。 「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。 国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。 そして、勇者は 死んだ。 ──はずだった。 十年後。 王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。 しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。 「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」 これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。 彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様

コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」  ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。  幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。  早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると―― 「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」  やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。  一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、 「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」  悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。  なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?  でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。  というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!

クラス転移して授かった外れスキルの『無能』が理由で召喚国から奈落ダンジョンへ追放されたが、実は無能は最強のチートスキルでした

コレゼン
ファンタジー
小日向 悠(コヒナタ ユウ)は、クラスメイトと一緒に異世界召喚に巻き込まれる。 クラスメイトの幾人かは勇者に剣聖、賢者に聖女というレアスキルを授かるが一方、ユウが授かったのはなんと外れスキルの無能だった。 召喚国の責任者の女性は、役立たずで戦力外のユウを奈落というダンジョンへゴミとして廃棄処分すると告げる。 理不尽に奈落へと追放したクラスメイトと召喚者たちに対して、ユウは復讐を誓う。 ユウは奈落で無能というスキルが実は『すべてを無にする』、最強のチートスキルだということを知り、奈落の規格外の魔物たちを無能によって倒し、規格外の強さを身につけていく。 これは、理不尽に追放された青年が最強のチートスキルを手に入れて、復讐を果たし、世界と己を救う物語である。

ダンジョンに捨てられた私 奇跡的に不老不死になれたので村を捨てます

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
私の名前はファム 前世は日本人、とても幸せな最期を迎えてこの世界に転生した 記憶を持っていた私はいいように使われて5歳を迎えた 村の代表だった私を拾ったおじさんはダンジョンが枯渇していることに気が付く ダンジョンには栄養、マナが必要。人もそのマナを持っていた そう、おじさんは私を栄養としてダンジョンに捨てた 私は捨てられたので村をすてる

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

帰国した王子の受難

ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。 取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。

復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜

サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」 孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。 淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。 だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。 1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。 スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。 それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。 それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。 増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。 一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。 冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。 これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。

処理中です...