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6章 大闘祭

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(久々に冒頭からこんばんわ、今回も説明会の部分が多くなるかもしれないです(大会の流れとか……))




 王都にきて2日目、隆人達4人の姿はとある巨大な建造物の前にあった。そこには彼らだけではなくわらわらと数えきれぬ程の人々が集まっていた。


「ティナ、ここが?」
「はい、大闘祭の会場となる『王国総合闘技場』です。建国当初からある建築物で普段は観光名所として人気だそうですよ」


 ティナが手にした紙に視線を落としながら、声で隆人の問いに答える。その紙は観光用の小冊子、つまりパンフレットである。昨日の自由時間、ロロノと行動していたティナは、街を回りながら王都や大闘祭の情報を集めていた。
 何せ隆人達4人は物の見事に全員が王都初上陸であり、異世界転生者に奴隷、森を出たことのないエルフである。元公爵令嬢で箱入り娘のはずのティナが(誤差程度で)一番詳しいという時点でお察しである。


 そこで、「自分が案内役をしなければ!」とティナが張り切ったというわけである。この小冊子は情報収集の途中で、見つけた観光案内所のような場所で配られていた。王国最大都市だけあり足を運ぶ人も多い、その対応も万全なのである。
 この話を昨夜宿で聞いた隆人は思わず「真面目だなぁ……」と呟いていた。


 ちなみに、昨夜は謎のフード外套の男のせいで、結局隆人は宿での集合に間に合わなかった。ティナ達もかなり心配したようで、隆人が着くや否や安堵をみせながらもこっぴどく叱りつけた。
 流石に隆人も悪いと思っていたようでティナの怒りが収まるまで正座でお叱りを受け続けいた。


 原因については、道に迷った、と適当にごまかしている。隆人自身もよくわかっておらず無闇に話して心配させる必要はないと思ったのだ。
 その後、一晩色々と考えてみたがあの男に着いては何の結論も得られなかった。


 
「……ていうか、これーー」


 だがそんな些細なことはもうどうでもよい、隆人の意識は今、全て目の前の建物に集中していた。
 王国総合闘技場、それは白い巨大な円筒形闘技場で、円周部にはアーチ型の入り口が無数に開いており。そして何より、闘技場の上部のおよそ半分が。そう、


「ーーコロッセオ、だよね。どう考えても」


 呆れが多分に込められた苦笑いを浮かべながら隆人が言葉を漏らす。


 地球という世界で最も有名な建造物の一つである「コロッセオ」。ローマ帝国が築いた円形闘技場であり、毎年世界中から観光客が訪れる名所。
 このグランザムにある王国総合闘技場はそンなコロッセオに非常によく似ている。というよりも、明確に模倣したのであろう。


 しかもご丁寧に、本当に使われていた当初の完璧な姿ではなく、解体され一部が損失した現在の姿で、である。
 ここまでくると完全に狙ってやったとしか考えられない。


「なるほど、確かに建国王様達が築いたこの闘技場は異世界にある似たような建築物を参考にしたと言われていますからね。見た目によらず強度はあのこの街を囲う壁と同程度、他にも様々な効果が付加さ れた最高クラスの魔法建造物でもあるようです」
「これ程の建築達に魔法を施すとは、建国王という者は途方もないのだな」


 ネタに全力を尽くす。ティナの話からそんな気概がありありと浮かぶ。その横ではシルヴィアとロロノが壮大な建築を目を丸くしながら眺めている。
 そうして雑談をしつつ、隆人達は総合闘技場の中へと足を踏み入れた。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「ーーへぇ、これは中々……」
「リュート様、受付はあそこみたいですよ」


 ティナが一方を示す。たしかにそこには大闘祭参加者受付の札がかかっている。やはり最終日という事もあり並んでいる列はまばら……というかほぼ0である。
 周りにはたくさんの人がいるが、その者達は難しい顔で受付を睨みつけているだけで動く様子がない。並んでいないのなら、と隆人達は受付に向かう。



「大闘祭の申し込み希望の方でしようか?」
「うん、そのつもりなんだけど」
「かしこまりました。ではどちらの級への申し込みをご希望ですか?」
「級?」


 返された受付嬢の質問に疑問符を浮かべる隆人と後ろ3人に得心がいった様子で受付嬢が答える。


「なるほど、皆さまは初めての方でしたか。それでは説明させて頂きますね?大闘祭にはいくつか区分がございます。冒険者カードやステータス欄に"job"という箇所がありますよね?その区分に応じた大会があるのですよ。例えば戦士級や魔法使い級と言った具合ですね。一般には職別級と呼ばれています。各jobごとに少しずつルールが違っていて、例えば戦士級なら開始時の間合いが近かったりするんです。そのjobがもっとも実力を発揮できるように決められているんですよ。ーー」


 長文が淀みなくスラスラと受付嬢の口から語られる。おそらくこの類の質問を受けるのは珍しい事ではないのだろう。
 そのまま、一息に言葉を続けていく。


「ーーそしてもう一つ、"無差別級"という級がございます。こちらは名称の通り無差別、つまりjobに関係なく出場できる大会です。世界中から猛者が集い最強を決める大闘祭の本番と言えますね」


 そこまで言い切って受付嬢がほぅと一息吐く。


「以上がおおまかな説明となりますが、もう一度説明致しましょうか?
「いや、大丈夫だよ。それじゃあ無差別級の方に参加申請してもらえるかな?」
「無差別級ですか!?たしかに、参加に関しては制限など設けていませんが……。失礼ながら大闘祭の参加が始めてという事でしたら、職別級の方がいいと思います!無差別級は本当に危険なのですよ。いくら武器は歯を潰したもので、闘技場の加護もあるとは言え、怪我をする人も珍しくないんです」



 まくし立てるように受付嬢がつぶやく。その勢いたるや隆人も少したじろぐほどである。たしかに隆人は見た目だけで言えば線は細く、鋭さもない、平たく言えば強そうには見えない。しかも大会のルールも知らないのだ、客観的に見れば観光目的でやってきた青年がノリで参加しようとしている、そう思われても仕方ない。
 むしろ後ろのティナやシルヴィアの方が冒険者としての風格は持ち合わせているかもしれない。


 熾烈な戦いが行われるであろう大闘祭、しかも無差別級となれば恐らく剣に魔法にスキルに、様々な攻撃が入り乱れるのであろう。
 そんな中に隆人を送りたくないというのもなんとなく理解できる。それにもしこれで参加した隆人が大怪我を負うものならそれこそ寝覚めも悪いだろう。


 そんな中、場の流れを変えたのはーー


「大丈夫ですよ、リュートくんにはそんな心配はいりません」


 突然後ろから投げかけられた一声であった。
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