【完結】異世界転移した私がドラゴンの魔女と呼ばれるまでの話

yuzuku

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宝石山

三人の兵士

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ソラが飛び立ち、私とフブキは洞窟を進む。
採掘の道具や人がいたであろう形跡はあるものの気配はしない。
半分まで来たところでフブキが血痕を見つけ、静かに、と人差し指を口許に当てた。

声がする。

ゆっくりと歩を進めるとそこには、血をしたたらせ怪我した腕を押さえる男性一人。
そして、それを囲む三人の男の頭には黒いふさふさの耳があった。
「だからぁ、宝石山を明け渡してくれたら殺さないって言ってんだろ」
「で、できません。この山は太陽の国の王から直々の名で採掘されている場所なのです。あなた方、白銀の国に渡すなどもってのほか」
私とフブキは岩陰に隠れ会話を聞いていたが、私はその国の名前に覚えがあった。
フブキの顔を見れば、怒りに震え歯を噛み締めている。
白銀の国はフブキの故郷、そしてフブキを追放した最悪の過去だ。
黒い耳を持った三人は鋭い爪を男性に向けた。
「人間が鉱石持ったところで正しく使えねぇだろうが!まさに宝の持ち腐れ、闇の王も泣いてるだろうな」
闇の王?
闇の加護を授けている方のことだろうか。
血を流す男性は近づいてくる三人から離れようとして尻餅をつく。
「な、なんと言われようと渡せません!我々は光の神のもと、鉱石の悪用を許すことは」
「あー、うっせぇ。じゃあ体3等分な」
振りかぶった腕には鋭い爪が3本。
勢いよく下ろされたその瞬間フブキは既に走り出していた。
私は速すぎて見えなかった。
鋭い3本の爪を受け止めたのも、鋭い銀色の3本の爪だった。
「お前ら、王の命令か」
「!銀色の毛並み、はっ、お前、生きてたのかよ」
勢いよく後ろに下がった黒い耳の男に、二人の黒い耳も駆け寄った。
「兄貴、知り合いですか」
「あ?お前らは知らねぇのか。こいつ、国を追放されたフブキだよ」
「え、フブキって、あの?」
三人の口振りはフブキのことを知っているらしい。
国からの追放だったから有名だったのかな。
「喧嘩負け無し豪腕の?」
「絶対零度の眼差しで有名な?」
「そうそう、鉄仮面銀狼のフブキな」
散々な言われようだが、フブキの表情は動かない。
「俺の話はどうでもいい。要塞の鉱石が壊れそうなんだろ、だからって今度は別の国から強奪すんのか」
「話が早えな、そうだよ。そろそろ国を囲んでる鉱石の寿命が来る。余所者を入れないようにしてあるあの鉱石が壊れたらどうなるか。国を追い出されたお前にだって想像出来るよな」
「他の国が攻め込んでくる、って言いたいのか。そんなもの好き勝手に生きてきた報いだろう」
「お前それ、中で生きてる一般の国民に言えんのか?何も知らない女も子供も、平和に暮らす家族が何万と住んでるその国の連中に言えんのかよ」
どの国も、ただ暮らしている人がいる。
何も知らない子どもたちが遊び、何も知らない大人たちが働いている。
報いを受けるべき人がいたとしても、それ以外が被害を被ることになるのは目に見えている。
「国民が大切だからといって、他所の国の、この人たちを傷つけていい理由にはならない」
「わかってねぇなぁぁ!!」
男は洞窟の中に響くほど大声を上げた。
「俺にはあの国の中に家族がいる。こいつら2人にも親や兄弟が、あの国にいんだよ。王の命令は絶対に守らなければならない。例え何人殺すことになっても、俺が死ぬことになったとしても。あの国に生きてる家族を守るためにはそれしかない。今までそうやって生き抜いてきた。あの国から解放され、家族もいないお前には分からねぇだろうがな!!」
振り下ろされた爪は先程よりもずっと重い。
でも、爪よりももっと、言われた言葉のほうがずっしりと重い痛みを伴っていたはずだ。

明らかに押されているフブキを横目に、私は採掘者の男性に駆け寄った。
「走れるならこの洞窟を出て下さい」
「で、ですがあなた方は」
「警備隊を呼んでます、貴方は彼らと合流して。私達は三人をなんとかします」
そうして走り出した採掘者を守るように私は洞窟の真ん中に立った。
麻痺の効果を三人に付与する。
そう思って手を翳したが、動きが速くて定まらない。
一人に絞って麻痺魔法を当ててみたが、笑われてしまった。
「お姉さん魔法弱いねぇ。そうじゃなくても俺ら獣人はそういう魔法に強いのさ」
フブキがリーダーらしき人と戦っている中、私は残りの二人をなんとか足止めしたかった。
ルリビを取り出して、どうするか迷う。
もはや、これを投げつけたほうが効果があるのでは?
「げ、お前それルリビじゃん。でも残念、食わせなければ効果なしだよ」
「うん、そうなんだよね」
私は肯定しながらルリビを口に入れてもぐもぐと飲み込んだ。
二人はぽかん、としたアホ面で私を見てる。
効果は下がるけど食べさせることが出来ないならこれしかない。
本来は致死だけど、魔力の無さのせいで腹痛くらいかもしれない。
でも、やらないよりまし!
私の致死の魔法は二人にあたったが、勿論死ななかった。
「なんか、吐き気する」
「俺は目眩する」
やった、効果はあった!
喜びも束の間、体調が悪くても私を追いかける元気はあるようで走ってこちらに向かってきた。
「待てやこらぁ!!」
「嫌です」

私が洞窟の出口に向かって走っていると光が見えてきた。
ようやく出れると思ったとき、襟を掴まれて後ろに倒された。
顔が青ざめた二人が私に鋭い爪を向けている。
振り下ろされる、そう思ったとき出口の光から冷たい冷気が入ってきた。
それは次第に強まって、轟轟と音を立て二人に襲いかかる吹雪のようだった。
「うおっ、なんだこれ凍っていく!」
「足が、動かねぇ!」
カチコチになっていく二人を見上げる私に聞こえたのは聞き慣れた声だった。
「キュウ!」
「ソラ!?」
走ってこちらに向かってくるソラは警備隊を引き連れている。
「ソラが、やったの」
私が問いかけると、ソラは口から雪の結晶をフッと出して見せた。
魔法が使えるようになったってこと?!
そんな驚きは今はおいといて、私達は警備隊と共に奥へと戻った。
そこにはジャーマンスープレックスを決めるフブキと、気絶する黒耳の男がいた。
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