【完結】異世界転移した私がドラゴンの魔女と呼ばれるまでの話

yuzuku

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泉の谷

森の守り人

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精霊がいる森までは小さな町をいくつか経由した。
どの町も賑やかで、宿屋も充実していた。
しかし、森に近づくにつれ町は無くなり、不自然なほどに静かになった。
「精霊の森のせいかもしれないね。他の者を寄せ付けない力があるのかもしれない」
深い森を進んでいくと木が生い茂り行き止まりのようなところまで来た。
するとアイルが地図を指差す。
「ここが、泉の谷への入口なんだ」
風が吹いて、木が揺れて、さわさわと音がする。
それに混じって鈴のような音がした。
その鈴に混ざって何か聞こえるが、何を言っているかまでは分からない。
「リビ、どう?声は聞こえるかい?」
「鈴と、声のような何かは聞こえますが、何を言っているかは分かりませんね」
ソラを見てみると、同じように首を傾げている。
ソラも駄目みたいだ。
「すみません、やはり魔法がまだ弱いのかもしれません」
「うん、じゃあまずはこの声を聞こえるようにするしかないね。微かに聞こえてるってことは可能性はあるってことさ。それが分かっただけでも大きな一歩じゃないか」
明るく言ってくれるアイル先生のおかげで私は気持ちをすぐに切り替えることができた。

よし、魔法を強くしないと。

「でも、どうやって魔力を強くするんですか?今までも魔法は使っていますけど、あまり魔法が強くなってる実感はないですね」
「魔法への意識を変える必要があるのかもしれないね」
「意識、ですか?」
その時、森がザワッと動く。
何事かと見渡せば、私達が入ってきた方向からすごいスピードで近付いてくる何者かがいる。
地面の落ち葉を巻き上げて私とソラ、アイルの前に現れたのは狼の獣人だった。


「リビさん、ソラさん、アイル先生でお間違いないですか」
「え、はい、そうですが。あの、あなたは」
「それは後ほど。今は時間がありません、先生は馬に、リビさんはソラさんに乗って、早く!!」
彼に急かされ、私達は理由もわからず言う通りにするしかない。
「先生はそのまま出口に走って、ソラさんは空へ!」
アイルの馬が走り出すのと同時。
ソラが羽ばたいて地面から浮くと、そのソラの足を掴むように無数の黒い手が地面から生えてきた。

なにあれ!?!?

地面にいた彼が鋭い爪で薙ぎ払うと、その黒い手はゆらゆらと揺れている。
物理攻撃が効かないのか、黒い手がソラの足を掴もうとまた追ってくる。
私も麻痺の魔法をと手を翳すが、効いている気がしない。
どうしよう、と焦っているとソラ口から吹雪を出してその黒い手を追い払った。
自然魔法が有効なのか?
私とソラは森の入口に待っているアイルの元へと降り立った。
「アイル先生!大丈夫ですか?」
「私はなんともないよ。というより、何があったのか分かってないんだけど」
そこに森から彼が走って出てきた。
「ここまでくれば問題ありません。私はヒサメ様の命により護衛に参りました。シグレと申します」
「ヒサメ様の?あの、さっきの黒い手はなんですか?」
「あれは森を守る守り人です。侵入者を阻むためにいるのでしょう」
シグレが説明するとアイルは首を横に振る。
「あたしは何も見えなかったけど」
「先生にはエルフの血が流れていると聞いてます。そのせいかもしれません」
それを聞くとやはりアイル先生は泉の谷へ入れるのかも。
「ここだけに限らず精霊の住まう森には守り人がいる場合がほとんどです。奴らに物理攻撃は効きませんし、魔法でも一時的に退けることしかできません。捕まった場合は、前後数時間の記憶を消されて森から追い出されます。死なないだけ良心的ですね」
そうですね、と頷いておく。
思ってなくてもとりあえず。
「状況から察するに精霊の声は聞こえなかったようですね。魔力強化をするなら実践が一番です。私が協力致しましょう。アイル先生」
「ん?なにかな」
「アイル先生は泉の谷へ入ったあと、交渉のお手伝いをして頂けるということでお間違い無いですか?」
「それは、今あたしがいると邪魔ってことかい?」
シグレは人好きそうな顔で微笑むと頭を下げる。
「私はヒサメ様の部下であり、兵の教育係も務めさせて頂いております。その特訓内容は門外不出でして、国外の者に見せることはできない決まりなのです。ご理解ください」
「それは、そうだろうね。分かった、あたしは一度太陽の国に戻るよ」
「お一人で大丈夫ですか?なんなら私が先生を担いで送り届けても良いですが」
アイルは首を横に振り、馬に跨がった。
「あたしは弱くないから家にくらい一人で帰れるさ。それよりリビとソラを頼むよ」
「承りました」
颯爽とかけていくアイルを見送って、私とソラとシグレは広い原っぱへと移動した。
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