【完結】異世界転移した私がドラゴンの魔女と呼ばれるまでの話

yuzuku

文字の大きさ
36 / 169
泉の谷

闇魔法の学者

そうして私とソラはアワン族長に付いて行くことになった。
泉に行くまでに私は少し気になっていたことを聞いてみた。
「以前にも闇魔法の学者さんが来たとおっしゃっていましたが、闇魔法の人ならばここに入ることを許可していたってことですか」
前を歩くアワン族長は杖をついて小石の転がる広い道を進む。
「闇魔法の中でも、毒が効かない者だけじゃ。というのもな、その学者さんが来るまでは、どうしてエルフ以外は体調が悪くなるのか分からんかった。エルフは無意識に水魔法で体内浄化することができるし、泉の治癒のおかげで問題がなかった。あるとき突然その学者さんが訪ねてきて、〈原因不明の体調不良は植物の可能性がある〉と言ってきた。それなら調べてくれと頼んだわけじゃ」
「あの、守り人がいるのにその人は泉の谷に入れたんですか」
アワン族長は高らかに笑う。
「その学者さんは守り人を手懐けおった。後にも先にもあんな特殊な人間は初めてじゃ。その当時の族長も驚いておったよ。しかしな、その学者さんは有名人じゃったから、族長も植物の調査を頼んだんじゃ」
「有名人、ですか?」
「リビは植物に詳しいから知っとるかもしれん。植物図鑑を描いたヒバリ先生じゃ。エルフは草花が好きじゃからなぁ、ヒバリ先生がいらっしゃって皆喜んでおったよ。思っていたよりも若くて、物腰の柔らかい好青年って感じじゃった。エルフの女性はほとんど色めきだっておった。いや、エルフの男性もだったかもしれんのぉ。そう思わせるような不思議な魅力を纏う学者さんじゃった」

ヒバリって、100年前に植物図鑑を出しているあの?
もしかしたら、日本からの転移者かもしれないと思っていた人だ。

「あの、ヒバリさんがこの泉の谷に来たのはいつですか」
「いつじゃったかの・・・。アズが泉の谷を飛び出した後だから、70年前くらいかの」
「あの、確かヒバリさんが出してる植物図鑑は100年前のはずなんです。それだと、少なくとも描いた当時が10代だとしても40歳より上ってことになるんですけど。本当に若かったですか?」
「そう言われてみれば、そうじゃな。エルフは見た目が若いから気づかなんだが、よくよく考えてみるとおかしな話じゃ。どう見ても20歳半ばの若者じゃった。でも人間なのは確かじゃ。」
どうなっているんだ?
私はヒバリに会いたいと一度は思った。
しかし100年前に生きていた人ならばもういないと諦めていたのだ。
もしかしたらまだ生きているのだろうか。
いや、今の情報だけじゃ、やっぱり死んでいるかもしれない。
「それ以降、ヒバリさんは泉の谷には来ていない、ですか」
「その一度だけじゃ。泉の周りに咲く花に毒があるから気を付けてと警告して、解毒に有効な植物を教えてから泉の谷を出ていった。図鑑には載っていないものじゃったから、新しい名前まで付けてくれてのぉ。」
「名前、ですか」
広くて大きな泉が見えてきて、その水面がキラキラと光る。
それに照らされて真っ赤な花が燃えるように咲いていた。
「”アカツキの花”赤くて綺麗だからと言っておったが、アカツキとはどこの言葉なのか、聞いたこともない。リビは知っておるか?」

もちろん、知っている。
知らないはずはない。

「知っています。とても似合う名前だと思います」
日本語を話す機会はかなり減っている。
そんな中でひとつの明かりのように示されるそれは、何を意味しているのか。
日本名を付けたかっただけなのかな。
あの図鑑のおかげでこの世界の言葉を勉強するときに大いに役立った。
彼が散りばめている日本語が私を救っているのは偶然か、必然か。
意図しないところで勝手に助かっているだけだとしても、私はヒバリさんに感謝している。
「私もヒバリさんに会いたかったです」
「そうじゃな。リビは気が合うかもしれん。ヒバリ先生は”食べた植物の効果を正確に把握できる”と言っておった。リビにそっくりじゃろ。」
その魔法を使って植物図鑑を完成させたというわけか。
通りであの図鑑、詳細が事細かに書かれているわけだ。
「さて、それじゃあ泉の精霊様を呼んでみようかの」
アワン族長は泉の手前で手を合わせる。
「この泉の谷をお守り下さりありがとうございます。本日も皆が健やかに過ごしております」
広い泉の真ん中に波紋が広がり、そこから何かが顔を出す。
「あの方が泉の精霊様じゃ」

「え」

私は目を疑っていた。
そこには、イルカがいたからだ。

あなたにおすすめの小説

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

【完結】異世界に召喚されたので、好き勝手に無双しようと思います。〜人や精霊を救う?いいえ、ついでに女神様も助けちゃおうと思います!〜

月城 蓮桜音
ファンタジー
仕事に日々全力を注ぎ、モフモフのぬいぐるみ達に癒されつつ、趣味の読書を生き甲斐にしていたハードワーカーの神木莉央は、過労死寸前に女神に頼まれて異世界へ。魔法のある世界に召喚された莉央は、魔力量の少なさから無能扱いされるが、持ち前のマイペースさと素直さで、王子と王子の幼馴染達に愛され無双して行く物語です。 ※この作品は、カクヨムでも掲載しています。

無尽蔵の魔力で世界を救います~現実世界からやって来た俺は神より魔力が多いらしい~

甲賀流
ファンタジー
なんの特徴もない高校生の高橋 春陽はある時、異世界への繋がるダンジョンに迷い込んだ。なんだ……空気中に星屑みたいなのがキラキラしてるけど?これが全て魔力だって? そしてダンジョンを突破した先には広大な異世界があり、この世界全ての魔力を行使して神や魔族に挑んでいく。

アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。 ふとした事でスキルが発動。  使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。 ⭐︎注意⭐︎ 女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。

アラフォー幼女は異世界で大魔女を目指します

梅丸みかん
ファンタジー
第一章:長期休暇をとったアラフォー独身のミカは、登山へ行くと別の世界へ紛れ込んでしまう。その場所は、森の中にそびえる不思議な塔の一室だった。元の世界には戻れないし、手にしたゼリーを口にすれば、身体はなんと6歳の子どもに――。 ミカが封印の箱を開けると、そこから出てきたのは呪いによって人形にされた大魔女だった。その人形に「大魔女の素質がある」と告げられたミカは、どうせ元の世界に戻れないなら、大魔女を目指すことを決心する。 だが、人形師匠はとんでもなく自由すぎる。ミカは師匠に翻弄されまくるのだった。 第二章:巷で流れる大魔女の遺産の噂。その裏にある帝國の侵略の懸念。ミカは次第にその渦に巻き込まれていく。 第三章:異世界で唯一の友人ルカが消えた。その裏には保護部屋の存在が関わっていることが示唆され、ミカは潜入捜査に挑むことになるのだった。

ダンジョン・イーツ! ~戦闘力ゼロの俺、スキル【絶対配送】でS級冒険者に「揚げたてコロッケ」を届けたら、世界中の英雄から崇拝されはじめた件~

たくみさん
ファンタジー
「攻撃力ゼロのポーターなんて、配信の邪魔なんだよ!」  3年尽くしたパーティから、手切れ金の1万円と共に追放された探索者・天野蓮(アマノ・レン)。  絶望する彼が目にしたのは、ダンジョン深層で孤立し、「お腹すいた……」と涙を流すS級美少女『氷姫』カグヤの緊急生放送だった。  その瞬間、レンの死にスキルが真の姿を見せる。  目的地と受取人さえあれば、壁も魔物も最短距離でブチ抜く神速の移動スキル――【絶対配送(デリバリー・ロード)】。 「お待たせしました! ご注文の揚げたてコロッケ(22,500円)お届けです!」  地獄の戦場にママチャリで乱入し、絶品グルメを届けるレンの姿は、50万人の視聴者に衝撃を与え、瞬く間に世界ランク1位へバズり散らかしていく!  一方、彼を捨てた元パーティは補給不足でボロボロ。 「戻ってきてくれ!」と泣きつかれても、もう知らん。俺は、高ランク冒険者の依頼で忙しいんだ!