【完結】異世界転移した私がドラゴンの魔女と呼ばれるまでの話

yuzuku

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組織の調査1

太陽の国の謎

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私とヒサメは中央の噴水広場付近へと戻ってきた。
分かったことはあれど、ドクヘビの目的も居場所も突き止めることは出来ていない。
むしろ、別の謎まで増え続けていて混乱しそうだ。

英語で書かれた魔法陣があることから、ドクヘビが転移者である可能性があること。

ヒカルが私よりも記憶欠如が進行していること。

太陽の国が転移者の対応に慣れていること。

私はそのことを考えながらひとつの可能性を思いつく。
「太陽の国って、闇魔法の人間への差別を禁止している数少ない国ですよね。それって、転移者だと気付いたことがきっかけだったりしませんか。」
「そうか!闇魔法の人間が恐れられていた理由は言語が違うことも一つの要因とされていた。太陽の国に先に来ていた光魔法の人間がその言語を理解出来れば、同じ世界から来たことを証明できる。何より、別世界からきた光魔法の者は優秀だったため、同じように別世界からきた闇魔法も有益だと考えられるようになったのかもしれない。」
「転移者は稀な上に、同じ時期に転移することはもっと珍しい。その上、私の世界では国ごとに言語が異なっている場合が多いんです。母国語が違えば意思疎通が出来ない。同じ世界から来たと証明するには、お互いが同じ国である必要がある。その希少な瞬間が、今回私とヒカルにも起こったことになる。」
処刑が禁止されたときにも、私とヒカルのように言語をお互いに理解できる者がいたのかもしれない。
光魔法を持つ者はこの世界の共通言語を学ばずに会得している。
それとは反対に闇魔法を持つ者は学びによってこの世界の言語を会得しなければならないのだとしたら。
そこに、記憶欠如の問題が関係しているのだろうか?

いや、光魔法は何から何まで恵まれていたはずだ。

僻みにもなってしまうが、私は光魔法のヒカルが羨ましいと何度も思ったのだ。
迷いの森で彷徨うこともなく、すぐに衣食住を確保できて、言語も分かって、将来は聖女様。
至れり尽くせりで何不自由のないその環境は、ヒカルのために用意されたものだと思っていた。
でも、それが間違いなのかもしれない。
高度な光魔法を持つ者が、神官様や聖女様になるための近道を用意されている。
祈りを捧げるため、心穏やかであるために記憶が邪魔だとしたら。
これではまるで、そうさせるために誘導されてるみたいだ。

これが、神の思し召しというやつか。

元居た世界ならばバカバカしいと言えたのに、この世界ではそうもいかない。
この世界に神は実際に存在する。
だとしたら、私がこの世界に来た理由も神にとって都合のいいものということなのか。
手のひらの上で踊らされているかもしれないという事実に頭痛がする。
こうやって私が行動していることのどこまでが私自身の意思で、どこまでが誘導なのだろう。
真剣に考えていた私の顔にヒサメの尻尾がモスッと当たる。
「もう、なんでいつも顔にぶつけるんですか。」
「険しい顔をしているからだ。リビ殿は思考の海に沈みやすい。オレの声も聞こえなくなるだろう。」
確かに集中すると、周りの音が消える。
「たくさん考えてしまうのは分かるが、一人では良くない方向へ思考することもある。オレがいるのだから、ちゃんと話せ。」
ヒサメにそう言われた私は、そういえば、と続ける。
「闇の加護をする場合の神官様もいるはずですよね?そっちなら私たちも会えるのではないですか?」
ヒサメは少し考えると、立ち上がる。
「闇の加護の神官様は光の加護の神官様とはかなり違うぞ。勤めている場所もそれぞれの国の神殿や教会ではなく、一つの国のような場所がある。ここからそれなりに距離があるから、行くのなら明日の方が良いだろう。」
歩き出すヒサメを後ろから早足で追いかける。
「どこに行くんですか。」
「リビ殿は頼まれているのだろう?魔力制御に関することで困っている子供を探してほしいと。シグレから話は聞いているから、それとなく町の人に聞いてみよう。」


私たちの情報収集は難航していた。
忘れていた訳ではないが、闇魔法の私の顔は知られている。
そうして、狼獣人はまだまだ警戒対象だ。
子供に話しかけるどころではなく、親御さんもいい顔はしてくれない。
普通に話してくれる太陽の国の王様、ヴィントやエルデ、レビン先生はイレギュラーな存在なわけで。
それから、仕事とはいえ平等に接してくれるお店の店員さんが凄いのだ。

「差別を禁止していても、気持ちまで動かすことは出来ないですね。」
「当然だ。差別という行為を禁止されていることで、余計に意識が向いてしまっている可能性もある。人の心を動かすのなら、それ相応の行動が必要なのだ。大抵、良いことよりも悪いことの方が目立って、記憶にも残りやすい。10の善行よりも1の悪行がその人の印象を決める。そして、その主語は大きくなる。一人の狼獣人の悪行なのに、狼獣人全体が悪いように見える。良い印象に変えるというのはそれだけ難しい。」

差別は無くならない。
そうだとしても、今はその主語が大きすぎる。
闇魔法を持っているから嫌い、怖い。
狼獣人だから危ない、恐ろしい。
その中で、闇魔法の人に助けてもらったとか、狼獣人の友達がいるとか、そんなことが積み重なって一人一人の認識が少しずつでも変わってほしい。
「やらなきゃいけないことが山積みですね。情報収集しやすくするためにも私が普通の人間だと認識してもらわないと。」
「着実に増えているとは思うがな。聖女になる予定のヒカル殿と親しいことや、王宮の騎士と友人であること。それに、この世界の守り神であるソラ殿がリビ殿を慕っている。それを知っている太陽の国の者は少なからず、リビ殿のことを邪険にすることはないはずだ。」
「そういうものでしょうか。」
「心が動くのは存外単純なことだったりする。それに、信頼に値する者の近しい人は同じく信頼に足る人のように見えるものだ。」
言っていることは分かる気がする。
私はフブキと先に出会っていたから、その後に出会ったヒサメのことも警戒心を解くのが早かった気がする。
殺されかけたというのにだ。
まぁ、あの一度だけだったしフブキという地雷だけを踏まなければヒサメは冷静で気遣いの出来る男だと知ってからは軽口をたたけるまでになってしまった。
相手は王族だということを改めて認識しないと、そろそろツッコミを入れてしまいそうだ。
「白銀の国においては、リビ殿は人間代表だ。頼むぞ。」
「それは、はい、やれるだけのことは頑張ります」
責任重大すぎるとか、プレッシャーかけないでほしいとか、言いたいことは山ほどあるが飲み込んだ。
白銀の騎士の制服を脱げない私に逃げる権利はない。
それを分かってて人間代表とか言ってくるこの王様はやはり、前王の血を引いている。
言えば嫌がりそうだから言わないが。

そうして私たちは太陽の国を出て、闇の神官様に会いに行くことになった。
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