【完結】異世界転移した私がドラゴンの魔女と呼ばれるまでの話

yuzuku

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組織の調査1

天使の翼

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夜明けの国を出た私たちは小さな町に泊まることになった。

食堂で食事をすることになり、私とヒサメは向かい合って座る。
よくよく考えれば、ベルへと私の会話はヒサメに聞こえていたのかもしれない。
そうだとしたら、私、何か余計なことを言ったのでは。
しかし、目の前のヒサメは普段通りの表情でご飯を頬張っている。
何も言ってこないから、セーフか?
そんなことを考えながら炒飯を食べていると、ヒサメが口を開く。
「リビ殿は神官様たちの話を聞いてどう思った?何か気づいたことがあれば教えてくれ。オレとリビ殿とではおそらく見方が異なるだろう。二人の意見をすり合わせて情報を整理しよう。」

食堂はそれなりに賑わっており、町の人たちの会話が聞こえてくる。
私たちの席は端の方で、多少ざわついていることで話し合いもしやすい環境だ。

「ひとつ思ったのですが、この世界の闇魔法の人間は多分全員転移者だと思います。もしかしたら、光魔法の人間もそうなのかも。闇魔法の人間が違う言語を話していたのはそのせいで、それを含めて恐れられていたなら納得です。この世界の人間は皆自然魔法しか使えない。だから、彼らにとってそれ以外の人間は異質すぎる。どんな魔法を使えるかも分からない恐怖の対象になる。」
「その意見には同意だ。そもそも闇魔法を持っている狼獣人や人魚の一族は戦争以来恐れられているが、それよりももっと前は、そもそもすべての獣人族や人魚、というか人間以外、人間とは全く異なる存在として嫌厭されていた。住む場所は今よりももっときっちりと分かれていて、今もその名残がある。戦争が起こったことによって、人間も人間以外も協力せざる負えない状況になったことで、そのきっちりとした境界が緩和された。自然魔法を持っている人間以外の種族は次第に差別が薄れ、そうして闇魔法の種族の恐れが残った。まぁ、言語の違う竜人族やエルフの一族がまだ、異なる存在とされているんだが、それはまた別の話だ。」

風上の村で出会った竜人族の親子がいた。
風上の村人の様子からして、言語がお互い通じないのが当たり前のような反応だった。
それに、かなり遠いところに竜人族の国はあるらしかった。
言葉の壁があることにより、自分とは違う生物だという差別があるのだろう。

ヒサメは少し考えてから話を続ける。

「闇魔法はどんな魔法を使えるか分からない。反対に、光魔法は治癒魔法であることが明確だ。つまり、光魔法は相手に攻撃することができないということが唯一はっきりしている。だからこそ、狙われやすく誘拐されやすい。光の神殿が厳重なのはそのせいだ。」
「光魔法の人は、身体を鍛えることでしか自衛できないということですね。それに、加護の力をたくさん与えられて暴走したとしても治癒の効果しかない。そういえば、神官様や聖女様は天使の翼を授けてもらえるって話でしたけど、それは攻撃魔法を持たない光魔法保持者のために、神様が逃げる手段を与えてくれたってことなんですかね。」
「どうだろうな。」

ヒサメは少し黙ったあと、声を潜めて私の方に顔を近づける。

「これはただの空想話として聞いてほしいんだが。光の神官様と聖女様はその職に就いたら最後、辞めることは許されない話はしたな。あの神殿の中で祈り続け、外に出るときは限られた者としか話せない。人を癒すために、祈りを捧げ続けるために、心穏やかに過ごし続けるそんな日々。オレならば、頭がおかしくなりそうだ。」
「同意です。」
「だろ?そんな神官様や聖女様が弱音を吐けるのはただ一人、祈りを捧げる神様だ。そんな神様に助けてと願った者がいたとしたら?天使の翼は、一体何から逃げるためのものなのか。」

誰かを癒すために、祈りを捧げるために。
そんな自分の立場から逃げるために与えられる翼だとしたら。

「え・・・、あれって空を飛ぶことが出来る翼、なんですよね?」
「ある意味飛べるだろう、その翼で上界に行けるなら。」

上界に暮らす天使はもともと、神官様や聖女様だったということなのか?
いや、そうなると下界が出来てから上界が出来たことになってしまう。
上界は下界で発生する負と正の魔力を糧としているのだから、その順番で出来てもおかしくはないか?
いやいや、そもそも悪魔と天使は神様に近しい存在とされているはずだ。
そんな認識をされているのに、下界よりも後に出来ることがあるか?

「もしも、その翼が天使になるためのものだとしたら、どうして周知されてないんでしょうか。神官様や聖女様はいずれ天使になる尊い存在なのだと広めてしまえば、もっと貴重な存在になるのでは?」
「さきほどの仮定の話を真実だとしよう。彼らはこの縛られた下界から上界へ逃げるのだ。誰も干渉することのできない上界へ。そうなってしまえば、治癒できる人間が大幅に減ることになる。天使の持つ光魔法は下界に与えられることはない。つまり、下界にいてもらわなくては困るわけだ。」

光魔法を持つ者は他人のためだけに生きていかなくてはならない、ということか。

「しかし、そんな定められた生き方をしなさいと言われても、彼らは人間ゆえに耐えられない。そこで、神官様や聖女様はその魔力の高さゆえに天使の翼を授けて貰えるという逃げ道を用意されている。というのがオレの考えだ。彼らを縛り付けたい者にとってそれは邪魔なものでしかない。だからこそ、天使になれるというのが広まるのは不都合だ。」



神官様や聖女様が自分の役割から逃げるためには神様にお願いして天使になるしかなかった。
しかし、それを不都合に思う存在たちが、天使の翼の本当の意味を隠すようになる。
祈りを捧げ、魔力を高め続ければいずれ、きっと天使の翼を授けてもらえる。
そんな希望をちらつかせることによって、今日も神官様や聖女様は祈りを捧げ続けている。
いつか、その翼で自由になれる日が来ることを願って。


はじめのうちは神官様や聖女様だって、人々の役に立てることは喜ばしいことだと思うはずだ。
彼らの心は美しく、人々に寄り添いたいと考えるような人ばかりだろうから。
傷を癒し、人々に感謝され、自分の職を誇りに思うだろう。
だけど、それが自分の幸せに直結するかといえばそうではない。
限られた空間と限られた人に囲まれた生活。
心穏やかであるためにはそうしなければならないとがんじがらめになった決まり。
そうしてそれが、自分が死ぬまで終わらない。
特別だ、希少な存在だと持ち上げられて、その結果他者のためだけに生きていくことを強制されている。
でも、彼らはその職を放棄して逃げることなどできない。
苦しんでいる人々を救えるのは光魔法を持っている自分しかいないと言われ続けているから。
そんな人々を見捨てて自由になることがとてつもなく悪いことだと思わされているから。
彼らの心はとても美しいから、彼らが逃げ出せないことをみんなが分かっている。
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