【完結】異世界転移した私がドラゴンの魔女と呼ばれるまでの話

yuzuku

文字の大きさ
84 / 169
白銀の国3

孫娘の結婚相手

白銀の国の城へと入り、大きな広い部屋へと通される。
そこには長テーブルがいくつも置いてあり、その上には大皿に乗った料理が並べられている。
ビュッフェ形式でとるようになっていて、周りには座れる場所もある。
まるでどこかのパーティ―会場のようだ。
奥には区切られた場所があって、そこではヒサメと交渉人が仕事の話をしている最中だ。
私が周りを見渡すと、ザッフィロがこちらに手を振った。
その隣のソファ椅子にソラが眠っている。
「ザッフィロさん、ソラのことありがとうございます。」
「構わねぇよ。あんたも何か料理を取ってきたらどうだ?」



ザッフィロにそう言われ、私は長テーブルに近づいた。
お皿にパンやハムを乗せていると、ビルがこちらに駆け足で近づいてきた。
なんだか困り果てているという感じだ。
「リビさん、ちょっと助けてください。」

そうしてビルについていくと、そこにはアワン族長とフジャンが椅子に座り、その向かいにシグレが立っていた。
「孫娘のビルのことを、どう思っとるか聞かせて欲しいだけじゃ。」
「ですから、私はただの護衛であり、仕事上のパートナーですよ。」
涼し気な顔で答えているシグレだが、この様子だと何度も質問されているようだ。
「おばあちゃん、あんな感じでシグレさんを困らせているんです。おばあちゃんが納得するような説明ってどうすればいいんでしょうか。」
孫娘がいくら説明しても聞いてもらえず、私に頼みに来たのだろう。
しかし、私が言ったところでアワン族長が納得するかどうか。
私はとりあえず、二人に自然に話しかけた。

「アワン族長、フジャンさん、お久しぶりです。」
「おお、リビではないか。送ってくれた手紙に孫の元気な様子を書いてくれて助かった。ソラは寂しがっておったがのう。」
「ソラのことありがとうございます。トゥアさんにもたくさんお世話になったそうで、本当に助かりました。ありがとうございます。」
挨拶を済ませて、私はシグレを横目に見る。
「アワン族長、シグレさんとお話し中でしたか。」
「うむ。孫娘とのことを聞こうと思ったんじゃが、ただの仕事だと一点張りでのぉ。」
「ビルさんは今、白銀の国で職人として働いており、シグレさんはその護衛です。現段階でそれが揺らぐことはないと思います。ビルさんの護衛はヒサメ様の命でもあります。その命を反故にするようなことを、この真面目で堅実な騎士がするはずありません。騎士にとっての一番は国王ですから。」
アワン族長は私の言葉に考えが揺れているようだ。
あと一押しだろうか。
「今白銀の国は変わろうとしています。今回の要塞の鉱石浄化はそのうちの一つです。まだまだ、目標達成へ向かう途中で、ビルさんもそして泉の谷の皆さんの力もこれからの白銀の国に必要です。そんな大切な交流に水を差すような騎士は、この国にはいませんよ。」
「勿論、騎士の仕事への誠実さを信用しておらん訳ではないんじゃ。リビの言うことも分かる。じゃが、孫への心配も分かるじゃろう?」
アワン族長の娘は既に亡くなっている。
その娘が残した孫二人を心配しない訳がない。
「アワン族長、ビルさんは確かに彼を特別に思っていますが、ビルさんが今一番したいことは、自分と同じように困っている子供を助けることです。それを実現させるために谷を出て、職人になり、情報収集に努めています。彼女がその他のことに目を向ける余裕が今はありません。アワン族長の悩みは、ビルさんがもう少し大人になってからだと思いますよ。」
「そうか、それなら今は、仕事のパートナーということで納得するしかないのぉ。」
私は心の中でガッツポーズを取りつつ、フジャンに目で合図した。

フジャンは何かを察したように、アワン族長に話しかける。

「それじゃあ族長。せっかく白銀の国の方々が食事を用意して下さったんですから、食べましょう!」
「そうじゃなぁ。頂くとしようか。」
フジャンとの連携により、なんとかこの場を収めることに成功した。
ビルは私にぺこぺこと頭を下げる。
「リビさん助かりました!シグレさんも本当にすみません!」
そんな様子にシグレはニコッと笑顔を見せる。
「族長さんのお気持ちは分かりますので、構いませんよ。ビルさんも今日は、ご家族と過ごされてはいかがですか?本日は他国のお客様が大勢いるので騎士の警備は万全です。お部屋も、族長さんがたと同じ部屋をご用意しますよ。」
「何から何まで、ありがとうございます。私、おばあちゃんのところに行ってきますね。」
ビルはそう言うと、料理を選んでいるアワン族長とフジャンの元へと走って行った。



シグレはそれを見届けると、私に目配せして大きなガラス扉を開けてバルコニーへ出た。
「弁解して頂き助かりました。私の言葉では信用して頂けなかったので。」
シグレは先ほどの笑顔を崩し、疲労を見せる。
思っていたよりも困っていたようだ。
「シグレさんなら上手い切り抜け方が出来そうですけど。」
「あまり上手い切り抜け方をしても、心配を増やすと思ったんです。以前トゥアさんに詐欺師と言われてしまいましたし。」
気にしてたのか。結構繊細な人だな。
「正直な話、言いくるめることは得意な方ですよ。詐欺師のような口八丁ができない訳ではありません。でも、私のこの立場だからこそ何を言っても駄目なときもある。リビさんが代わりに言って下さったおかげでそれが真実になります。」
「真実?」
「大切な交流に水を差す騎士はこの国にはいない。この国の出身ではない貴女が言うからこそ意味がある。それを真実にするためにも、部下を指導する私にも身が入りますよ。」
シグレさんの部下の皆さんご愁傷さまです。
と思ったが、まさか私も入ってないだろうな。
横目でシグレを見たが、町を見下ろしていてこちらを見てはいなかった。

あなたにおすすめの小説

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

【完結】異世界に召喚されたので、好き勝手に無双しようと思います。〜人や精霊を救う?いいえ、ついでに女神様も助けちゃおうと思います!〜

月城 蓮桜音
ファンタジー
仕事に日々全力を注ぎ、モフモフのぬいぐるみ達に癒されつつ、趣味の読書を生き甲斐にしていたハードワーカーの神木莉央は、過労死寸前に女神に頼まれて異世界へ。魔法のある世界に召喚された莉央は、魔力量の少なさから無能扱いされるが、持ち前のマイペースさと素直さで、王子と王子の幼馴染達に愛され無双して行く物語です。 ※この作品は、カクヨムでも掲載しています。

アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。 ふとした事でスキルが発動。  使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。 ⭐︎注意⭐︎ 女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。

アラフォー幼女は異世界で大魔女を目指します

梅丸みかん
ファンタジー
第一章:長期休暇をとったアラフォー独身のミカは、登山へ行くと別の世界へ紛れ込んでしまう。その場所は、森の中にそびえる不思議な塔の一室だった。元の世界には戻れないし、手にしたゼリーを口にすれば、身体はなんと6歳の子どもに――。 ミカが封印の箱を開けると、そこから出てきたのは呪いによって人形にされた大魔女だった。その人形に「大魔女の素質がある」と告げられたミカは、どうせ元の世界に戻れないなら、大魔女を目指すことを決心する。 だが、人形師匠はとんでもなく自由すぎる。ミカは師匠に翻弄されまくるのだった。 第二章:巷で流れる大魔女の遺産の噂。その裏にある帝國の侵略の懸念。ミカは次第にその渦に巻き込まれていく。 第三章:異世界で唯一の友人ルカが消えた。その裏には保護部屋の存在が関わっていることが示唆され、ミカは潜入捜査に挑むことになるのだった。

ダンジョン・イーツ! ~戦闘力ゼロの俺、スキル【絶対配送】でS級冒険者に「揚げたてコロッケ」を届けたら、世界中の英雄から崇拝されはじめた件~

たくみさん
ファンタジー
「攻撃力ゼロのポーターなんて、配信の邪魔なんだよ!」  3年尽くしたパーティから、手切れ金の1万円と共に追放された探索者・天野蓮(アマノ・レン)。  絶望する彼が目にしたのは、ダンジョン深層で孤立し、「お腹すいた……」と涙を流すS級美少女『氷姫』カグヤの緊急生放送だった。  その瞬間、レンの死にスキルが真の姿を見せる。  目的地と受取人さえあれば、壁も魔物も最短距離でブチ抜く神速の移動スキル――【絶対配送(デリバリー・ロード)】。 「お待たせしました! ご注文の揚げたてコロッケ(22,500円)お届けです!」  地獄の戦場にママチャリで乱入し、絶品グルメを届けるレンの姿は、50万人の視聴者に衝撃を与え、瞬く間に世界ランク1位へバズり散らかしていく!  一方、彼を捨てた元パーティは補給不足でボロボロ。 「戻ってきてくれ!」と泣きつかれても、もう知らん。俺は、高ランク冒険者の依頼で忙しいんだ!

無尽蔵の魔力で世界を救います~現実世界からやって来た俺は神より魔力が多いらしい~

甲賀流
ファンタジー
なんの特徴もない高校生の高橋 春陽はある時、異世界への繋がるダンジョンに迷い込んだ。なんだ……空気中に星屑みたいなのがキラキラしてるけど?これが全て魔力だって? そしてダンジョンを突破した先には広大な異世界があり、この世界全ての魔力を行使して神や魔族に挑んでいく。