【完結】異世界転移した私がドラゴンの魔女と呼ばれるまでの話

yuzuku

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黄金の国

副作用

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外にいた騎士の頭上をソラが飛びぬける。
螺旋階段を物凄い勢いで降りていき、目が回りそうだ。
後ろから騎士が追いかけて来ている音はするものの攻撃はされていない。
ドラゴンを傷つけようとは思っていないからだろう。
階段が終わり、白い長い廊下が見え他の騎士の間をすり抜ける。

「次のところ左。」

私の後ろからふいに声が聞こえ、ソラが左に曲がる。
「ヒメ、後ろに乗ってます?」
「乗ってる。次右。」
ヒメの指示でソラはどんどん城の中を進んでいき、何やら声が聞こえてきた。

「貴殿は話が通じないようだ。オレの部下を返してくれという簡単なお願いが何故分からない?」
「あの者たちは私の客人だからですよ。それに、このように急に来られてはこちらも困る。」
「ほう、貴殿は客人に危害を加えるのか。オレを欺けるとは努々思わないことだグウル国王殿。この場にある血痕の匂いが誤魔化せていないぞ。」

この城の作りのせいか、離れた廊下を進んでいる私たちにも会話が聞こえる。
すると、後ろに乗っているであろうヒメが小さな声で呟く。
「ヒサメ様結構怒ってる。このままだと殺しそう。」
「え、それは困ります。ヒサメ様!!」
私が叫ぶと、シグレとヒサメと目が合った。
そうしてようやく王の間に到着する寸前。
グウル国王が何かを手に持ったのが分かった。
それは小さなガラスの瓶でコルクを開けて、口に持っていくのが見える。

「国王、それ毒です!!」

私の声に一番に反応したのはローザだった。
ローザの風魔法で国王の持っていた瓶は弾き飛ばされたが、国王は少量を飲んでしまった後だった。
「毒…だと?」
グウル国王はそう呟くと苦しそうに椅子から落ちる。
「グウル王!!」
ローザが駆け寄って声を掛けるが国王の意識は朦朧とし始めている。
「リビ殿!状況を説明できるか?」
ヒサメがこちらに駆け寄ってきて私はソラから飛び降りる。
「グウル王は操られていた可能性があります。彼が今飲んだものはおそらく、クレタさんが飲んだものと同じはず。あの毒の解毒薬になるようなものって存在しますか!?」
白銀の国の医療チームは静寂の海で毒蛇の毒を目の当たりにしている。
医療技術が発達している白銀の国なら、毒蛇のことだって知っているのではないかと思ったのだ。
そんな私の問いにヒサメは顔を歪める。
「そういうことか、把握した。しかし、状況は最悪だな。」
「すぐには用意できない薬ってことですか?私の魔法でも無理です?」
「無いんだ、薬なんて。」
ヒサメの答えに私は息を飲む。
「毒蛇自体、稀な生物でな。それの対処法は確立していないんだ。あらゆる薬の可能性が広がったあの植物図鑑にさえ、毒蛇の解毒になる植物は載っていない。」

私は倒れているグウル王と叫び続けるローザを見る。
「医者を呼べ!!それから、解毒とされている薬品をかき集めろ、早く!!」
ローザは周りにいる騎士に命令を出し、私の方を向いた。
「貴女は何を知ってる!?これが毒だと言うのなら助けて下さい、お願いです!!リビ様、どうかお願いします!!」
切羽詰まるその叫びに私は声が出てこない。
「この度の非礼は私の命に代えてもお詫び致します、ですからどうかグウル王だけは、この方だけは助けて下さい!お願いです、お願いします、兄上を、どうか……!!」


ローザの悲しい叫びに胸が裂かれるほどに苦しくなる。
でも、解毒する方法なんて知らない。
もっと早く、毒を持っているかもしれないことを伝えるべきだった。
どんな毒なのか伝えるべきだったんだ。
操られているのか否かなんて考えてる場合じゃなかったんだ。
私じゃ、救えない。
私の判断が、国王を殺してしまうんだ。


「リビ殿、魔力がかなり減っている。この国を出るんだ」
ヒサメが私の肩を掴んで優しく諭す。
「できません、グウル王が…」
私の体はどうしようもなく震えて、それでもその場から離れるわけにはいかなかった。
「ここにいても、彼が死にゆくさまを見るだけだ。リビ殿が悪いわけではない」
ヒサメはグウル王が見えないように私の前に立った。
「ヒサメ様、私はまた、何も出来ないんですか…」
「リビ殿」
「私のせいで死なせてしまうのにですか」
私が自分のことばかり考えていたから、国王のことを後回しにしてしまったから、毒のことをもっとちゃんと考えておけば。

「リビ様…」

瞳から大粒の涙を流すローザと目があった。
どうして助けてくれないのですか。
ローザがそんなことを思っているかどうかは分からない。
だけど、己にのしかかる人を救えない恐怖がそう思わせた。

「…解毒効果のあるとされている薬草を集められるだけ集めて貰えませんか。お願いです、ヒサメ様」
私が顔を上げるとヒサメは真剣な表情で頷いた。
「シグレ、準備しろ」
「はい!」
「黄金の国の騎士もだ、解毒の効果のある薬草を用意しろ!!」
「は、はい!!」
ヒサメの気迫にその場の騎士が一斉に動き出そうとした。


その時。


城の入口から一人の背の高いローブを身に纏う者が私に近付いてきた。
ヒサメが私を庇おうとするより先に、その者は私の目の前にいた。
「お嬢さん、命をかける覚悟はあるかしら。」
見覚えのあるその姿は、太陽の国の収穫祭で出会った占い師だ。
「あなたは・・・あのときの」
「あの国王を本気で救う気があるかって聞いてるのよ。」
ドスのきいたその声に気圧されながらも私は頷いていた。
「あります、教えて下さい!」
「それならまずこれを飲みなさい。強制的に魔力を暴走させる劇薬・・・」
私は占い師から薬品を貰った瞬間に飲み干した。
隣りにいたヒサメはそれに驚き、言葉をなくしている。
それを構いもせず占い師は続ける。
「次は鞄を開けて“アサヒの花”を出して。」
「え?海熱病の、ですか。」
「そう、貴女は静寂の海で2輪受け取った内1輪のみ使用した。あと1輪残ってるでしょ。」
私はそう言われ、乾燥させている植物の中にアサヒの花があることを思い出す。
取り出した花は押し花のように保存してある。
「もうすぐ魔力が一気に上昇する。その瞬間にアサヒの花の副作用だけを国王に付与するのよ、分かった?」
「副作用、だけをですか!?」
「熱を下げる効果は邪魔なのよ、しっかりやりなさい、チャンスは一度しかないわ。」


占い師に手を引かれ、グウル国王の目の前に来た。
「騎士の坊や邪魔よ、離れてなさい。」
占い師に睨まれたローザは後退りして国王から離れる。
「意識をちゃんと保って、副作用だけに集中して。いいわね?」
占い師にそう言われて頷きながら体が徐々に熱くなるのを感じる。
少量しか残っていないはずの魔力が沸騰して吹きこぼれるように、その魔力が上にあがってくるようなそんな感覚がする。
手が震える、目の前がぐらぐらとして気持ち悪い。
でも、私がやらなくてはならない。
私しかやれないことをやり遂げなくてはいけない。

「始めます!!」

魔力が上がりきった瞬間にグウル国王に魔法をかけた。
その瞬間、グウル国王にかけられていた魔法が解けるのが分かった。
劇薬で上がった私の魔法が、かけられていた魔法よりも上回ったということだ。
「まだ終わってないわ、集中しなさい!!」
隣に立つ占い師の声が頭の中で鳴り響くようで頭痛も酷くなる。
副作用だけを付与しないと。
視界が歪みながら、激しい頭痛に苛まれながら魔法をかけ続ける。
地面に立つ足の感覚が無くなり、不安定な雲の上にでも立っているかのような感覚に襲われよろけると、占い師が体を支えてくれる。
「まだ意識飛ばすんじゃないわよ!気合入れなさい!」
魔法の黒い光が徐々に大人しくなり、そうして国王が口から血を吐いて大きく息を吸いこんだ。
「よし、毒は出せたわ。医者は来てる!?今吐いてる血は全部吐かせて。それからしばらく流動食にしたほうが良いわ。」
的確に指示を出していく占い師は、私を抱き上げてソラに乗せる。
「貴女は早く光の加護から出なさい。これ以上は本当に死ぬわよ。」
体に力が入らない。
占い師に聞きたいことは山ほどあるのに口すらも動かせなかった。
ソラが飛び立って城を出る瞬間、私の意識は無くなっていた。
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