【完結】異世界転移した私がドラゴンの魔女と呼ばれるまでの話

yuzuku

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組織の調査2

煮るなり焼くなり

黄金の国の騎士が私に会いに来た。
ヒサメは会うかどうかと問いている。
「ああ、ローザさんですかね。会います。」
「いいのか?」
私の即答に何故かヒサメはもう一度確認する。
「何か、会うことに問題がありますか?」
懸念点があるのなら聞いておきたい。
そう思ったが、ヒサメは温かい眼差しを私に向けた。
「リビ殿に命をかけさせたのは他でもない、あの騎士だ。国王殿に並々ならぬ想いがあるのは、あの場にいる誰もが分かった。そして、キミが魔力が少ないと理解しているはずなのに、国王殿を救うことを懇願した。オレはあの時、あの騎士を黙らせようかとも思った。何故ならあの悲痛の叫びを、リビ殿が無視できるはずもないと知っているからだ。」

確かにそうだ。
ローザは私の魔力が底を尽きそうなことを誰よりも理解していた。
私に魔法を使うなと釘を刺しておきながら、彼は最終的に私に魔法を使わせることを選んだ。

「仕方ないですよ、そんなの。」

私がそう言うと、ヒサメとシグレとボタンの耳がぴこんっと動いた。
「ローザさんにとってグウル国王は家族なんです。誰だって、他人より家族の命を優先したいはずでしょう。それに私、地下牢に落とされて放置されていたら死んでいました。ローザさんが薬や食料を持ってきてくれたおかげで今ここにいられる。命の恩人ですよ。」

ローザが私を救ったのは、グウル国王に人殺しになって欲しくなかっただけかもしれない。
何かを知っていそうな私を生かしておかなければと思ったのかもしれない。
どんな理由があろうとも、パンや薬、毛布のおかげで脱出することができたのだ。

ヒサメは一瞬目を伏せて、そうして頷いた。
「分かった。黄金の国の騎士を入れろ。」



ローザは扉から入ってくるなり膝をついて頭を深く下げた。
ベッドにいる私からは後頭部しか見えない。
「この度は国王の命を救って頂き本当にありがとうございます。騎士一同心より、御礼申し上げます。ですが、私の不条理な願いを押し付け、貴女を追い詰めたことも事実。私を如何様にもして下さって構いません。どうか、リビ様のお好きなように。」
「えっと・・・?」
私が心底戸惑った顔でヒサメを見れば、真顔で口を開く。
「煮るなり焼くなりご自由にってことだ。騎士としての心得が出来ているようで何よりだ。」
「何より、じゃないですよ。ローザさん、顔上げてください。この位置からだと何にも見えないんですよ。」
ローザはすぐさま立ち上がるととても丁寧なお辞儀の姿勢で固まった。
「失礼致しました、リビ様。」
「あの、ローザさんには命を救って頂きました。ですので、貴方個人にして欲しいことは特にないです。」
「いえ、私は貴女の脱出を手助けすることが出来ませんでした。それに私は、貴女に無礼な態度を取ってしまった。貴女に言われた言葉に動揺し、それが事実だと認めることが怖かったのです。」

騎士って国王に黙って従うだけの仕事なんですね。

この言葉がそんなに致命傷になるとは思っていなかった。
確かにあの時の私は国王の対応にも、その周りの騎士の態度にも苛ついていたからそんなことを言ったわけだが。
「私は脱出できたし、今回は誰も死んでないので問題ありません。だいたい、お好きなようになんて言うもんじゃないですよ。貴方騎士団長でしょうが。」
「ですから、団長である私が自ら責任を取るのが筋でしょう。嫁入り前の貴女にこんな傷を残させてしまいました。私にその償いをさせて欲しいのです。」
きっちりとしたお辞儀のまま動かない彼は結構頑固だ。
「じゃあ、いくつかお願いがあるんですけど。」
「はい、どのようなことでも仰ってください。」
「これから道を踏み外そうとするグウル国王にローザさん含め、騎士が進言できるようになること。」
「え?」
頭を上げたローザがきょとんとした顔をしている。
私はそれをおかまいなしで続ける。
「今回は操られてのことだったけど、国王が何か血迷ったことを言った時に誰もそれに反論出来ないようじゃ困ります。一番側にいる貴方がた騎士が、国王が転ぶ前に助けてあげる必要があるでしょ。処刑のシステムだって、騎士を脅すために設けられてる制度じゃないんだから、そんな横暴な制度に怯える方が間違っています。間違っていることは間違っていると言えるような国がいいと思います。」
ローザは瞬きをすると、再び頭を下げる。
「精進致します。」
「次に、黄金の国ってどんな風に亡くなった人を弔うんですか?」
話ががらりと変わったせいか、またローザが頭にはてなを浮かべている。
「黄金の国では埋葬が一般的です。そこには宝石の原石に名前を掘った石を置くことになっています。」
「なるほど。ボタンさん、私の鞄の中から小さな紙を取ってもらえますか。」
ボタンは私の鞄から、ボロボロの紙を手渡してくれた。
「ありがとうございます。ローザさん、黄金の国の城の下、水底にたくさんの人の骨が沈んでいます。彼らを、黄金の国の皆と同じように弔って欲しいんです。石にはこの文字を刻んで下さい。」
「承知しました。必ず、そのように致します。」
「以上です。」
私が言い終わると、何故だかローザは言いにくいような表情を浮かべ、懐からあるものを取り出した。
「この度、リビ様とソラ様に多大なる無礼、非道、殺人未遂、心的外傷を与えてしまったお詫びに、グウル国王がどうしても受け取って欲しいと・・・こちらを・・・。」
ローザが何故言い出しづらかったのか、それを見て良く分かった。
私が王に渡されて、ローザに投げ返した宝石だった。
「今度は顔面にめがけて投げろ、ということですか?」
「あの、弁明をさせてください!今回の国王は決して金で解決したいという意味でこちらを渡したわけではありません。ただ、怪我の治療や魔力の回復を早めるためにはお金が必要なはずです。命を救ってくれたリビ様を少しでも手助けがしたいというだけの国王のお気持ちなのです。」

お気持ちの大きさの宝石じゃないんだよな。
シグレに貰った水晶よりも大きいのはおかしいだろう。
あ、そういえば水晶壊したんだった。

余計なことを思い出しながら、私は首を横に振る。
「私にこの宝石は分不相応です。大金なんて持ってたら、山賊とかに襲われかねないし。」
この世界はキャッシュレスという以外にも最先端な技術があるが、どの世界だろうが金を奪おうとする輩はいる。
そんなことを言えば、シグレが口を挟む。
「山賊ごときに屈するような訓練をしているつもりはないのですが。」
「シグレさん、その話はまた別件なのであとで。」
シグレを黙らせると、ローザが食い下がる。
「国王としては、きっとリビ様に何をしても足りないと思うのです。ですから、何かしら受け取って頂かないと私もおいそれと帰るわけにはいきません。山、はどうですか?家も建てますよもちろん。」
「山と家はオレが渡すことになっている。別荘というのなら、許可してやっても良いが。」
「では、別荘ということで。」
何故かヒサメがローザに受け答えしてしまっている。
「黄金の国の所有する山はどこだ?見晴らしがよく、魔獣の少ない山が好ましいな。」
「我が国は、宝石の取れる山の他に人が踏み入れない山を所持しております。もしかしたら、温泉が湧く可能性があった山なのですが、リビ様に受け取って欲しいとグウル国王が仰っておりまして。」
「なるほど、温泉か。悪くないな。」
二人が勝手に話を進めている中、そういえばお風呂入りたいんだったと考えていると、ボタンが手をあげた。
「ヒサメ様、リビさんは目覚めたばかりなので、そろそろ休憩をさせてあげてください。」
「ああ、そうだったな。ローザ殿。外で話そう。」
「承知致しました。それではリビ様、ご検討頂きますようお願い申し上げます。」
扉から出ていくローザ、それからヒサメは少し振り返る。
「山のことはオレに任せろ。良い条件で受け取れるように交渉しておくからな。リビ殿はしっかりと休め。」
そう言って出て行ってしまった。
いつの間にか、山を受け取る方向で進んでいる。

シグレも出て行こうとするので、私が引き止めた。
「シグレさん、水晶のことでお話が・・・」
「知っています。何をどうすれば水晶が粉々に壊れるのか、お聞きしたいですね。」
「すみませんソラを助けるために窓に投げつけましたごめんなさい。」
「別に怒ってませんよ。新しい水晶を用意するので待っててください。」
シグレはやれやれと困った顔をして扉を出て行った。

「リビさん、ソラさん、お風呂に行きましょうか。」
ボタンのそんな言葉で大浴場に来たが、貸し切りだった。
「時間を設けて貸し切らせてもらいました。リビさんは傷を見られたくないでしょうし、ソラさんは周りがびっくりしてしまうでしょうから。」
優秀すぎるボタンのおかげで私たちは3人でお風呂に入る。
傷口がピリピリと沁みる。
お湯の熱さのせいか、それとも温泉の成分のせいか。
「お風呂、入って良かったんですかね。お湯が血で汚れてしまうかも。」
「お湯は常に入れ替わっているらしいです。それに、清掃に入る直前にしてもらったから、大丈夫ですよ。」
手際が良すぎるボタンのおかげで気兼ねなく湯船に入れる。
ソラも尻尾を振ってご機嫌になっている。
「私、いつヒサメ様から山を貰うことになったんですかね。」
そんな問いかけにボタンは自信満々に答える。
「勿論それは要塞の鉱石浄化に貢献したことですよ!あれほどの偉業を成し遂げたんですから、胸を張って下さい!」
「でもあれは、職人の皆さんのおかげですから。」
「ヒサメ様は、職人の皆様にもそれ相応の交渉をなさっていますよ。それに、ヒサメ様は褒賞を与えるのがお好きなんです。努力した者、見合う働きをした者が認められることが重要だと考えてらっしゃるので。ですから、山を受け取って下さるとヒサメ様が喜びますよ。」
意気揚々と言うボタンだが、貰うものが山だからか気乗りはしない。
国王たちのプレゼントのトレンドって山なの?
そう考えると訳が分からなくて頭痛がしてきた。
「ソラ、ヒサメ様が山をくれるかもしれないってさ。」
「キュッキュ!」
やったーと言わんばかりにお湯をパシャパシャするその姿がかわいい。
そんな単純に嬉しそうなソラが羨ましくなった。

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