【完結】異世界転移した私がドラゴンの魔女と呼ばれるまでの話

yuzuku

文字の大きさ
108 / 169
真実の追究1

堕ちる

しおりを挟む
 太陽の国から出たところで会ったのはレビンだった。
 魔法学校の教師であり、魔法陣についての情報をくれた人。
 そして、神の御言葉について調べてくれていたはずだ。
 レビンは私とソラを見ると、お辞儀をした。
「国の中が騒がしくなり、王宮にリビさんが来ていると耳にして、こちらでお待ちしていました。お時間よろしいでしょうか。」
「勿論です、レビン先生。」


「神に近しい存在が現れ私たちに神の御言葉を授けて下さったように、悪魔にも同じことが出来れば悪魔の儀式の魔法陣について説明がつく。私はそのことを中心にして、文献や神の御言葉について調べました。神の御言葉には、人の在り方について、生きていく上で必要なものについて、道徳的な教えが多くありました。慈悲の心を持ち、慎ましやかに生きていれば神様は見て下さる。そして、我々下界の者の声を聞いて下さると書いてあります。」

神の御言葉に関しては、現代で聞いたことがあるような話でもある。
しかし、下界の者の声を聞いてくれるというのはこの世界だからこそだ。
その声を聞いて、神は国に加護を施すのだろう。
そして、こちらの願いに対し、肯定か否定を示す。
ヒサメの魔法が王族で引き継がれているのは、闇の神がそれを肯定した結果だ。

「神というのは平等であることが揺るぎない誓いのため、そうではないものは神ですらいられない、という話をしましたね。私はこのことについてなんの疑問も抱いていなかったのですが、ひとつ気になったのです。神ですらいられない存在となった場合、どうなるのか。あらゆる文献を読んで、神の御言葉を繰り返し読んで、分かったことは一言だけ。 ”そうでないものは堕ちる” これがどういう意味を持っているのか、私には分からないのです。」

堕ちる、と聞いて真っ先に思い浮かんだのは堕天使だ。
現代においての堕天使とは、天使が堕落し神に見放されたことによってなるものだったような。
そして、その堕天使が悪魔とされているはずだ。
しかし、この世界においては天使と悪魔は明確に違う種族として扱われているような気がする。
負の魔力を糧とする悪魔と、正の魔力を糧とする天使。
そして、真実は不明だがドウシュの言葉も気になっている。
残虐な死を与えた者は死んだら悪魔に、理不尽な死を迎える子供は天使に。
これが正しいと仮定すると、結局はどちらも元は死んだ人間ということにはなる。

違いは罪の重さだろうか?

「神が神ですらいられない状態があるなら、それと同等とされている上界も同じような条件があるかもしれないってことですよね。」
私の問いにレビンはゆっくりと頷く。
「その可能性はあります。神様だけに条件が課されているとはどうしても思えない。となるとおそらく、悪魔も天使も”そうでないものは堕ちる” はずです。しかし、それがどのような条件でなるのか。そして、堕ちればどうなるのか。それが分かりません。」

何も真実が明らかにならないことにレビン先生は落胆しているようだが、私はかなり重要なことを聞かされたような気がした。
「レビン先生、もしかしなくてもこれは、かなり重要なことだと思います。神様が神ですらいられない存在になるなら、悪魔と天使もそうではない存在になるという新しい事実じゃないですか。」

宗教という固定観念があるなかで、レビン先生は当たり前のことに疑問を持ってくれた。
だからこそ、その事実を知ることが出来ているのだ。
そういうものだ、と思っている状態ならば新しい発見は得られない。
疑問を持つことが、あらゆる事実を明確にしていく。

「いい線いってるわね。」

その声がすぐ後ろから聞こえて振り向けば、そこには占い師がいた。
「え、あ、あなた、なんで。」
戸惑う私の肩を掴む占い師は、私の顔を覗き込む。
「やっぱり傷残っちゃったのね。でもそれは貴女の覚悟の証だもの。誇りなさいね。」
占い師の顔はベールに隠れて見えないが、口元は微笑んで見えた。
そうして占い師は、レビンを見て手を雑に振った。
「悪いけどお嬢ちゃん、私はこの子に用があるの。これ以上話すこともないでしょう?お家に帰りなさいな。」
そう言われたレビンは目を丸くして、それから口調を強める。
「お嬢ちゃんだなんて、どういうつもりでそのようなことを。リビさんとはどういうお知り合いなのですか?私とリビさんは今、大切なお話を。」
「真実に辿り着くことはできないわ。だって、そういうものだから。」
「どういう意味です・・・?」
占い師は私の背中を押して、歩くように促してくる。
そうして、占い師はレビンに振り向いた。

「下界って、そういうものなのよ。」

私は占い師を押しのけて、レビンの前に戻ってくる。
「レビン先生、調べてくれてありがとうございます。あの、あの人悪い人じゃないんで、多分。でも、正直よく分からない人なんですけど。」
私がしどろもどろになっていると、レビンは優しい表情に戻っていた。
「私はまだまだ、調べが足りなかったみたいです。真実に辿り着けないなんて言われて引き下がるような教師ではありませんので。リビさんの何かの役に立てるように調査を続けていきます。どうか、お気を付けて。」
私はレビンの言葉に頷いて、占い師の元へと駆けていく。



「どこへ行くつもりですか。」
そんなことを問えば、占い師は大きな樹木を指さした。
「お嬢さんを待ってる子がいるのよ。まずはその子に会いに行きましょう。」
大きな樹木の下。
そこにいたのは黒羽鳥だった。
「え、どうしてここに!?」
駆け寄るとそれは、いつも私を乗せてくれていた黒羽鳥だった。
よく見れば何かを乗せていて、そこには手紙も入っていた。


リビさんへ
ソラさん専用の飛行用ベルトが完成しました。
直接お渡しできないのは残念ですが、お受け取り下さい。
まだヒサメ様はお戻りではないのですが、リビさんのことはお伝えしております。
どうか、何卒ご覚悟を。
ボタンより


その文面を見て、ご覚悟とは、と首を傾げる。
それから黒羽鳥の頭を撫でた。
「届けに来てくれてありがとうございます。いつも、本当に助かってます。」
そんなことを言えば黒羽鳥は、立ち上がった。
『どういたしまして。』
そんな声が聞こえて、私は二度見した。
「え、しゃべった?」
私の問いかけに黒羽鳥は答えるでもなく、飛んで行ってしまった。
すると、占い師が後ろから話し出す。
「魔法の力が上がってるのよ。ようやくここまで来たわね。長かったわ。」
呆れたようなその素振りに私は少しむっとした。
「どういう意味ですか。そもそも、あなた誰なんです。」
そう問いかければ占い師は、紫のベールを外して微笑んだ。
「私はハル。お嬢さんの魔法が強くなるまでずっと観察していたのよ。」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

【完結】異世界に召喚されたので、好き勝手に無双しようと思います。〜人や精霊を救う?いいえ、ついでに女神様も助けちゃおうと思います!〜

月城 蓮桜音
ファンタジー
仕事に日々全力を注ぎ、モフモフのぬいぐるみ達に癒されつつ、趣味の読書を生き甲斐にしていたハードワーカーの神木莉央は、過労死寸前に女神に頼まれて異世界へ。魔法のある世界に召喚された莉央は、魔力量の少なさから無能扱いされるが、持ち前のマイペースさと素直さで、王子と王子の幼馴染達に愛され無双して行く物語です。 ※この作品は、カクヨムでも掲載しています。

目立ちたくない召喚勇者の、スローライフな(こっそり)恩返し

gari@七柚カリン
ファンタジー
 突然、異世界の村に転移したカズキは、村長父娘に保護された。  知らない間に脳内に寄生していた自称大魔法使いから、自分が召喚勇者であることを知るが、庶民の彼は勇者として生きるつもりはない。  正体がバレないようギルドには登録せず一般人としてひっそり生活を始めたら、固有スキル『蚊奪取』で得た規格外の能力と(この世界の)常識に疎い行動で逆に目立ったり、村長の娘と徐々に親しくなったり。  過疎化に悩む村の窮状を知り、恩返しのために温泉を開発すると見事大当たり! でも、その弊害で恩人父娘が窮地に陥ってしまう。  一方、とある国では、召喚した勇者(カズキ)の捜索が密かに行われていた。  父娘と村を守るため、武闘大会に出場しよう!  地域限定土産の開発や冒険者ギルドの誘致等々、召喚勇者の村おこしは、従魔や息子(?)や役人や騎士や冒険者も加わり順調に進んでいたが……  ついに、居場所が特定されて大ピンチ!!  どうする? どうなる? 召喚勇者。  ※ 基本は主人公視点。時折、第三者視点が入ります。  

喪女なのに狼さんたちに溺愛されています

和泉
恋愛
もふもふの狼がイケメンなんて反則です! 聖女召喚の儀で異世界に呼ばれたのはOL・大学生・高校生の3人。 ズボンを履いていた大学生のヒナは男だと勘違いされ、説明もないまま城を追い出された。 森で怪我をした子供の狼と出会ったヒナは狼族の国へ。私は喪女なのに狼族の王太子、No.1ホストのような武官、真面目な文官が近づいてくるのはなぜ? ヒナとつがいになりたい狼達の恋愛の行方は?聖女の力で国同士の争いは無くすことができるのか。

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

辺境ぐうたら日記 〜気づいたら村の守り神になってた〜

自ら
ファンタジー
異世界に転移したアキト。 彼に壮大な野望も、世界を救う使命感もない。 望むのはただ、 美味しいものを食べて、気持ちよく寝て、静かに過ごすこと。 ところが―― 彼が焚き火をすれば、枯れていた森が息を吹き返す。 井戸を掘れば、地下水脈が活性化して村が潤う。 昼寝をすれば、周囲の魔物たちまで眠りにつく。 村人は彼を「奇跡を呼ぶ聖人」と崇め、 教会は「神の化身」として祀り上げ、 王都では「伝説の男」として語り継がれる。 だが、本人はまったく気づいていない。 今日も木陰で、心地よい風を感じながら昼寝をしている。 これは、欲望に忠実に生きた男が、 無自覚に世界を変えてしまう、 ゆるやかで温かな異世界スローライフ。 幸せは、案外すぐ隣にある。

異世界で家をつくります~異世界転移したサラリーマン、念動力で街をつくってスローライフ~

ヘッドホン侍
ファンタジー
◆異世界転移したサラリーマンがサンドボックスゲームのような魔法を使って、家をつくったり街をつくったりしながら、マイペースなスローライフを送っていたらいつの間にか世界を救います◆ ーーブラック企業戦士のマコトは気が付くと異世界の森にいた。しかし、使える魔法といえば念動力のような魔法だけ。戦うことにはめっぽう向いてない。なんとか森でサバイバルしているうちに第一異世界人と出会う。それもちょうどモンスターに襲われているときに、女の子に助けられて。普通逆じゃないのー!と凹むマコトであったが、彼は知らない。守るにはめっぽう強い能力であったことを。 ※「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています。

処理中です...