【完結】異世界転移した私がドラゴンの魔女と呼ばれるまでの話

yuzuku

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夜明けの国

立ちはだかる壁

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私とベルへは朝日の光が入る廊下を歩いていく。
「ヒサメ様の騎士を勧誘したと知れたら怒られてしまうかもしれませんね。できれば、私とリビさんだけの秘密にして頂けないでしょうか。」
ベルへはそう言って人差し指を口元に当てた。
ヒサメ様はそんなことでベルへさんを怒らないと思うけど。
そう思いながらもとりあえず頷くことにした。


休憩場所に二人で戻ると、ヒサメが体を起こしてこちらを見た。
「ベルへ。」
「はい、どうなさいましたか。」
ヒサメに呼ばれたベルへはヒサメに近寄って耳を傾ける。
そうしてすぐにこちらに戻ってきた。
「水を取ってきますね、リビさんも要りますか?」
「あ、私も行きますよ。ハルさんたちも要るだろうし。」
そうしてついて行こうとすると、ベルへに制された。
耳を貸してと言われ、囁かれる。
「何故かヒサメ様に勧誘したのがバレました。水は全員分持ってくるので、ヒサメ様を宥めておいてください。」
ベルへはそう言うとそそくさと行ってしまった。
ヒサメの方を見れば、こちらを流し見る自分の主と目が合う。
尻尾をぽふぽふと動かして早く来いと言われている気がする。
私は周りの皆を起こさないように静かにヒサメの隣に座った。
その瞬間、尻尾に体をなぎ倒された。
もちろん、手加減はされているが驚いた。
「いきなりなんですか。」
「少しくらい睡眠を取れ。休んでいないから魔力の回復が遅い。」
「鑑定で見ましたね?駄目ですよ、鑑定士でもないのに使ったら。」
「使わせるキミが悪いんじゃないか?鑑定されないように自己管理はちゃんとするものだ。」
小声の言い合いに終止符を打つようにヒサメの尻尾が顔にもふっと乗る。
「朝日避けをしておいてやるから眠れ。」
そう言われて私は目を閉じる。
魔力を使う鑑定を使えたということは少しは回復してるってことだ。
良かった・・・。
安心したのか、私はすぐに微睡みの中へ落ちていった。


名前を呼ばれて目が覚めれば、ソラの可愛い笑顔とハルの呆れたような顔が同時に見えた。
「キュキュ!」
おはよう、と言ってくれるソラにおはようと返そうとする。
ふと、私は何かの上質なクッションを抱き枕にしていることに気づく。
「ありえない。国王の尻尾を枕にして寝るなんてどんな図太い神経してるの?」
ハルの言葉にヒメも頷いている。
見上げればヒサメが涼しい顔をして見下ろしている。
「よく眠れたようだな。快適だったか?」
「ええ・・・、それは、はい。」
私はおそるおそる尻尾を放す。
私が抱き着いていた部分がボサボサになっていて、大変心苦しく思っている。
「リビ、俺も子供のときヒサメ様の尻尾で寝たから気にするな。」
フブキにフォローのようなことを言われたが、フォローか?それ。
「ああ、あったな。あの頃のフブキは本当に可愛くて今も可愛いんだが。」
「言わなくていいです、ヒサメ様。」
フブキとヒサメのやり取りは、どことなくベルへとヒサメのやり取りに似ている。
やはり、ヒサメはベルへと似てる部分が結構あるんだな。
そんなことを考えているとベルへに櫛を渡された。
「ヒサメ様の尻尾をふわふわに戻して差し上げてください。」
そう言われても大変困る。
ブラッシングなんてしたことがない。
こういうのって結構技術が必要な気がする。
毛が抜けたらどうしよう。
「ヒメ。」
「無理。」
助けを求めて呼んだのに即答された。
「ソラ。」
「キュ?」
私はソラに全てを託すことにした。
ソラはそんな私の意志を汲んでくれて、ソラはヒサメのところに行ってくれた。
「ソラ殿が梳かしてくれるのか?助かる。」
「キューキュ!」
存外器用なソラに梳かされる尻尾がつやつやに戻ってきた。
私は安堵しつつ、周りを見回した。
探していた人物はすぐに見つかり、私は彼に声を掛けた。
「モナさん、少しよろしいでしょうか。」


私はモナを加えて、今後の話合いをすることにした。
モナは私と同様に転移した闇魔法の人間だ。
「モナさんは確か、建築業に携わっていたんですよね。その技術をお借りして、教会建設に力を貸して欲しいんです。」

堕ちた悪魔を封印するにあたって加護の魔法陣を描くために教会が必要だ。

「力を貸したいのは山々ですが、この魔獣の混乱で建設の人手を集められるとは思えません。魔獣騒動が収まったとしても、壊された建造物の建て直しが先行される可能性があります。」

堕ちた悪魔の封印について理解してくれる人はかなり少ないはずだ。
神の誓約に関わることを下界に住む者たちが知ろうとすることはない。
ここにいる神官たちが半信半疑にも堕ちた悪魔の存在を知ろうとしてくれたのは、目の前でシュマを見たという事実。それから、転移者であるモナとヒバリ、そして私と関わったことがある人たちばかりだからだ。
「モナさんがこの世界に来てから出会った建築の方々に事情を説明して、教会を作ってもらうことは出来ませんか。転移者であるモナさんと深く関わっていた彼らであれば、堕ちた悪魔の存在を理解してくれるかもしれません。」
「彼らに頼んでみることは出来ると思います。ですが、この魔獣が蔓延る中、手紙を出すことも会いに行くことも困難です。彼らの住む場所もきっと、襲われているでしょうから。」
「魔獣をなんとかするのが先、ということですね。」
負の魔力によって苦しみ、暴走している魔獣を止めなければ封印の作業に着手すらできない。

「ブルームーンドラゴンの力を借りるというのはどうでしょうか。」

私の提案に周りの皆はハテナを浮かべている。
「どういうことよ。ソラも魔獣と戦ってはいたけど、やりづらそうだったじゃない。」
ハルの反論に私は頷いた。
「確かにソラの氷魔法は魔獣に当てるのが難しそうでした。でも、黄金の国でソラは、国を凍らせているんです。人間は避けて、建物や道、城の水をすべて。これは、当てる氷魔法とは違うと思いませんか。暴走の一歩手前とはいえ、ソラは生き物は避けて凍らせることが出来ているんです。光の加護も相まって強くなっていたとはいえ、コントロールが出来ている。つまり、魔獣だけの動きを封じることも可能なのではないかと思っているんです。」
ソラ、もといブルームーンドラゴンの魔法は対象に直接当てるものと、空間すべてに適用される魔法があることになる。
これは、戦争を止めた時の魔法そのものだ。
世界を凍らせたその魔法で、下界に生きる者が生き残っているのは凍っていないからだ。
「魔獣だけを選ぶなんて、そんなことできるのか?」
「できるかも、しれません。」
ヒサメの疑問に答えたのはヒメだった。
「黄金の国のときも、ソラは生物の魔力を避けて凍らせたのかも。だったら、イレギュラーな負の魔力が入った魔獣なら、避ける対象にならないかも、です。」
「一理ある。ただ、ソラ殿はあの魔法を随時使用できるのか?」
ヒサメに問われたソラは困った顔をする。
「キュ。」
やってみると言わんばかりに、体を振るわせればソラの座っている地面から徐々に凍っていくのが見えた。
だが、あの黄金の国の時とは明らかに威力が違う。
じわじわと広がる凍った地面。この神殿を凍らせるのは時間がかかりそうだ。
「やはりあの時は、負の魔力が上がり、光の加護のアシストがあって一国を凍らせたということだな。光の加護がある国ではもう少し魔法は強くなるかもしれないが、それ以外では魔獣の行動を制限するのは難しいかもしれない。」
「そうなんです、負の魔力と光の加護で一国。まだまだ子供のソラがこの力を持っているのなら、大人だったらどうです?」
私の問いかけにヒサメの耳は立ち、ハルは眉を顰め、アルは微笑んだ。
「リビ嬢はまさか、他のブルームーンドラゴンの手を借りようって思ってる?」
「そのまさかです。ソラの母親ほどの魔法を持ったドラゴンはいない、という話でした。それでも、ブルームーンドラゴン自体が、強い魔法を持っているのは事実です。他のドラゴンはまだ全滅していないはずです。全滅していたとしたら、もっと魔獣やモンスターに動きがあってもおかしくないと思うんです。魔獣はもっと堕ちた悪魔を警戒したはず。勿論仮定の話ではありますが、まだ生き残っているであろうブルームーンドラゴンを保護しつつ、彼らの魔法で魔獣の動きを止められないでしょうか。」

氷で動きを封じることさえできれば、その国の騎士でも対処できるはずだ。
殺すとしても、檻に入れるとしても、その隙を作ることが重要なのだ。
「それに、私が他のブルームーンドラゴンと行動を共にすれば囮になれます。闇の神が言っていたように、封印の場へ誘き出すための餌としてはうってつけです。」

私とドラゴンが一石二鳥で殺せるチャンスがある。
堕ちた悪魔にとって、無視できないはずだ。

ヒサメは腕を組んで、それから私を流し見る。
「ブルームーンドラゴンが何頭いるかは定かではないが、リビ殿は彼らを説得し魔獣の鎮静化を試みたいということだな。それに伴って、堕ちた悪魔がリビ殿に接近する恐れもあり、誘導する足掛かりになる可能性もある。キミは今から神々の頂へ向かい、ブルームーンドラゴンを探すということか?」
私はヒサメのまとめてくれた分かりやすい言葉に頷いた。
「はい、私とソラでブルームーンドラゴンの探索へ向かいます。説得が出来たらまず、モナさんの知り合いがいるところへ向かい、教会建設の協力を仰ぐのが先決かと。」
「ドラゴンの説得が終わり次第、まずこの夜明けの国へ戻ってこい。オレはここで世界の状況を確認しながらリビ殿たちを待つ。」
ヒサメはそう言うと、二人に声をかけた。
「ヒメ、アル殿。魔力感知の力を貸してくれ。」
「はい、ヒサメ様。」
「いいよ、ヒサメ国王。世界を見るとなると骨が折れそうだけどね。」

ただでさえ魔力感知は疲れるという話だ。
そして普段は感知しない負の魔力に酔いそうだとも言っていた。
疲労困憊の予感しかしない。

「それなら私は魔力回復薬でも作っておくわ。傷薬でも、なんでも調合できる。この夜明けの国に留まるのなら少しくらい貢献しないとね。」
そう言ったハルの袖を私は引っ張った。
「なによ、どうしたの。王子様に睨まれてるわよ。」
小声で言ったとしてもヒサメには聞こえてしまう。
だから、こそこそ話は意味がないので普通に言うことにした。
「黄金の国で飲んだあの薬、作っておいてくれませんか?」
「はぁ?あれは劇薬よ。そう何度も飲むものじゃないの。馬鹿なの?」
ハルはそう言って思いっきり顔を顰めた。
「あれを飲んだおかげでかなり私の魔力は上がってます。絶対飲むわけじゃないので、作るだけ作っておいてもらえませんか?」
ハルは深いため息をついて、それから私の首に手を触れた。
「一度の服薬でこれだけ酷い傷を負ったのよ。二度目に生き残れる保障はどこにもない。私、白銀の国王に殺されるなんてごめんだわ。」
「死ぬつもりはないですよ。ほんとに、本当です、ヒサメ様。」
ヒサメがあまりに視線を向けるので彼に向かって念を押した。
ヒサメは耳をこちらに向けて、口元を緩めた。
「ああ、キミが止めるなら殺さない。」
止めるような事態になったときに、生きてそこにいろという意味ですね。知ってます。
「作りたくないわ・・・。」
「そこをなんとかお願いします。世界のために。」
そんなことを言った私にハルはデコピンした。結構痛い。
「私はヒバリと添い遂げるんだから、こんなところで死ねないわ。お嬢さんも、飲まないで済むようにしてちょうだい。」
ハルはそう言うと夜明けの国の医者と共に薬草調合に行ったようだ。



ソラは出発前にフブキに抱き着いている。
本当にソラはフブキに懐いている。
「ヒサメ様はまだ万全じゃないでしょうから、フブキさんお願いしますね。」
「分かった、見ておく。神々の頂は危険なんだろう?リビもソラも気を付けてな。」
フブキはそうやっていつもこちらを気に掛けてくれる。
だからこそ、ソラはフブキのことがお気に入りなのかもしれない。
「そうだ、万が一に助けが必要になったとき。SOSの信号を教えておく。一応な。」

そうして水晶のSOSの信号を教わって、私とソラは神々の頂へと飛び立った。
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