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神々の頂
魂の所在
アシャレラの言葉に耳を疑った。
「何を言ってるんですか?」
「俺が聞きたいよそんなの。どう見ても人間なんだけど、まさか違うの?」
どうして人間か否か、こんなにも確認されるんだ。
「生まれてからの認識はずっと人間ですね。まぁ、一度死んでるんですけど。」
アシャレラもドウシュも私も全員転移者なので、みな一度は死んでいることになる。
転移先が上界か下界か、というところが相違点だ。
「正真正銘の人間だとしたら考えられるのは二つ。既に契約を誰かと交わしていて、その魂を預けている。もしくは、奪われている。」
「契約はしていないので、一択ですかね。」
そんな返事をする私に、ドウシュとアシャレラは疑いの目を向ける。
「本当か?きみは考え無しにすぐ契約を結ぼうとする。ドラゴンしかり、悪魔しかり。それと同様に契約を交わし魂を渡したんじゃないか?」
「リビちゃんひどい、俺のこと誘惑して唆したくせに、もう誰かのものだったんだね。」
ドウシュは呆れた顔をして、アシャレラは泣きまねをする。
「人聞きが悪いです。さすがに魂を渡そうとしたのは今回が初ですよ。悪魔の儀式も初めてだし、だいたい悪魔以外に誰が魂を欲するんですか?」
生きるものは魂を持っている。
転生するために魂が必要で、アシャレラは転生したくて魂を望んでる。
でも、そんな話はこの場で初めて聞いたことだ。
今まで魂の話は誰ともしていない。
すると、急にアシャレラが苦悶の表情を浮かべた。
冷たかった瞳が焦り、悪魔に似つかわしくない冷や汗までかいている。
「リビちゃん、変なこと聞くけどさ、自分の名前言える?」
「はい?リビですよ。」
「そうじゃなくてさ、本当の。」
そう言われた瞬間、私は初めて名前を聞かれた太陽の国を思い出した。
「思い出せませんね。リビは自分でつけた名前です。」
「だよな、そういうことだよな。ああ、最悪。」
アシャレラは項垂れながら髪を乱す。
綺麗なオールバックだったのに、前髪が垂れてきている。
「リビちゃん、確認させて。あなたは転移前の記憶を維持していますか?」
「はい。名前以外は問題ありません。」
「・・・あなたは神から授かった魔法を持っていますか?」
「はい、持ってますね。」
「・・・・あなたは闇の神の愛し子ですか?」
「はい、そう言ってましたね。」
質問をするたびにアシャレラの声の元気がなくなっていく。
敬語のせいで、某ゲームみたいな問答になっている。
アシャレラは俯いたのち、前髪を後ろに掻き上げた。
「俺の考察が正しければ、リビちゃんの魂は十中八九太陽の神が持ってる。」
私は予想していなかった名前に驚いている。
「太陽の神には、会ったことないですよ。質問からして、闇の神に取られたのかと思ったんですが。」
「闇の神のこと聞いたのは、それが一番要因に近いからだよ。」
魂を取られる要因に、闇の神と太陽の神が関わっているということだろうか。
「リビちゃん、太陽の神と闇の神は性格が合わないんだ。」
深刻そうな表情で言うアシャレラだが、そこに意外性は特にない。
光と闇なんだし、意気投合していると言われた方が驚く。
「特に太陽の神は難しい性格の持ち主で、強い力を持った一人しかいない神だから周りの神はあまり進言すらできないらしい。」
「一人しかいない?しかし、光の加護って確か、太陽の神が与えているんですよね?闇の加護って魔法陣が消えたり神が堕ちたら交代する制度がありますけど、光の加護は交代しないんですか?」
「そこに大きな勘違いが生じてる。いいか、下界の光の神官が見ている神は、太陽の神じゃない。太陽の神と呼ばれる彼らは月の神なんだよ。」
私の頭は混乱している。
太陽の神と呼ばれてるけど月の神なの?
「普段下界の奴らの祈りを受け、願いを聞き入れているのは月の神。太陽の神の姿は下界の人間たちは見たこともないはずだ。だが、光の神全体の決定権は太陽の神にある。それが誓約にあるために下界の人間は太陽の神だと思い込んでる。神と会話も出来ない人間たちは確かめることもできないしな。だから当然交代もある。太陽の神ではなく、月の神が交代させられ堕ちるやつがいる。」
アシャレラはそう言って、長のドラゴンを見た。
「それじゃあここからは、月の神を交えて話そうか。太陽の神については、彼女の方が詳しいだろ。」
アシャレラは契約したことにより、魔法陣の黒い枠から出てきた。
とはいっても実体はないらしい。
私とドウシュ、それからアシャレラは長のドラゴンとソラの近くにきた。
情報収集のため悪魔を呼び出し契約したことを話して、それから魂を太陽の神が持っているところまで説明した。
ブルームーンドラゴンは光属性のドラゴンだ。
ドラゴンは神が堕ちた姿なのだから、当然長のドラゴンは光側の神になる。
月の神の加護を受けていると聞いていたが、月の神そのものが堕ちた姿だったというわけだ。
『悪魔と契約を?太陽の神がリビさんの魂を?この短時間でどうしてそのようなことになるのです?』
「成り行きです。長のドラゴンは神だったときの記憶があるんですよね?アシャレラさんは太陽の神が私の魂を持ってるって言うんですけど、有り得そうですか?」
長のドラゴンは頭をもたげる。
『残念なことですが、有り得ます。リビさんは闇の神の愛し子でしょう。だからこそ、魂を取られたのかもしれません。太陽の神と闇の神は、相性が悪いのです。』
性格が合わないだの、相性が悪いだの、嫌厭の仲なのか?
『リビさんは光魔法の人間と闇魔法の人間がどうしてこうも違うのかと考えたことはありませんか?』
そんなことはこの世界に来た時から常に思っている。
はじめは何もかも優遇されている光魔法への妬み僻み劣等感。
憎悪や怒りにも変わりそうだったが、光魔法だって同じ穴の狢だと気付かされた。
違う部分は勿論あれど、闇魔法も光魔法も現状を変えなければならないのは同じだったのだ。
「転移したときの場所、共通言語の会得方法、生前の記憶の減少の差、あとは死因とかですかね。」
『それらに違いがあるのは、神の管轄が違うせいです。そして、神の考え方が違うせいです。』
長のドラゴンの話にソラも真剣に耳を傾けている。
私よりソラの方が理解してそう。
『太陽の神はこの世界で安寧に暮らしていくためには前の記憶は不要だと思っているのです。もう会うことが出来ない両親や友のことを思い出すことは悲しくて苦しいだけだろうと。その太陽の神の影響を強く受ける光魔法の人間の記憶は早く消えていく。それとは反対に、闇魔法の人間は闇の神に気に入られているほどそれが遅くなる。』
私と、転移してから100年は経過しているヒバリの記憶がまだあるのはそのせいか。
『言語も同様に、太陽の神はこの世界に馴染むために早く生前の言葉を忘れさせたいがために、共通言語をはじめから与えています。その影響を受けられない闇魔法の人間は学びから言語を取得するしかない。ですが、学んで得た闇魔法の方々はおそらく母国語を忘れることはないでしょう。』
はじめは言語が分からないというのは絶望でしかなかった。
だけど今となっては母国語を忘れなくて良かったという気さえする。
『問題はどうしてリビさんの魂が太陽の神に奪われているかということですが、理由は二つあります。一つは死因です。』
「光魔法の人間は事故死、闇魔法の人間は自殺で転移してるってやつですか?」
『ええ。転移するときの死因は、人間の性質に引っ張られることにより決まります。リビさんは元から闇の性質を持っている。だから、自殺で転移するのが当然です。』
「でも、堕ちた悪魔の出現により世界の均衡を保つための魔法の適正があった私がいち早くこの世界に来る必要があった。だから、闇の神によって私は事故死によって転移した。」
『おそらく太陽の神は、それが気に入らなかったのです。』
長のドラゴンは深いため息をつく。
『闇の神は世界の均衡のために臨機応変に対応をした。けれど、太陽の神はそれが許せなかった。いや、受け入れる考えがなかった、というのが正しいかもしれません。』
受け入れる考えがない、というのはどういうことだろう。
『太陽の神は、誰よりも神らしい。平等、博愛、誓約主義。融通が利かないし、人の考えも理解できません。事故死したリビさんは誓約上は光側なのに、太陽の神の影響をまったく受けないことを受け入れられないのです。だからその結果、魂を持っていかれてしまったということです。』
「名前も太陽の神が奪ったんですか?」
『魂とはその者すべてを刻むもの。在り方を奪われたリビさんは自分の名前を思い出せないのでしょう。』
長のドラゴンの説明に頭を悩ませる。
太陽の神は、闇の神の影響で思い通りにならない私の存在が受け入れられない。
だからって魂をとってどうしたいんだ。
「苦手なんだよな、太陽の神。自分の考えがみんなの考えだと思ってたり、相手を可哀想だと勝手に決めつけたりする。平等なのが素晴らしいとか言ってそもそも少ない魔力を分割したり、苦しい方が助け合うことができるだのなんだの平然と言ったりする。善意や優しさをはき違えてるようにしか思えないな俺は。」
アシャレラはそう言うと、また冷たい瞳をする。
「というか、太陽の神から魂を取り返さないと、アシャレラさんに渡せませんね。太陽の神って会えるんでしょうか。」
『難しい問題ですね。ですが、今回堕ちた悪魔を封印し、世界の均衡を元に戻すことが出来れば太陽の神自らリビさんの前に現れるかもしれません。そこまで成し遂げた貴女たちの記憶を奪うために。』
「「え??」」
『今までも悪魔の封印をしてくれた人たちはいます。ですが、それが語られないのは太陽の神のせいです。誓約に触れる数々の出来事を引き継がないために太陽の神は記憶を操作しています。誓約通りにしか動けない神なのです、あれは。だから、今回も同じようにするはずです。』
今まで堕ちた悪魔のことも、ドラゴンが堕ちた神であることも、封印のことも何一つ下界の人が知らないのは、太陽の神による記憶の操作のせい。
命をかけて戦ってくれた獣人王と聖女が知られていないのも、なにもかも。
『リビさんの魂を取った二つ目の理由は、記憶の操作をしやすくするためです。リビさんは太陽の神の影響をうけにくい。魂を奪わなければ対抗することが出来ないほどに、あなたは闇の神に気に入られている。記憶を消したいが、世界の均衡を保ってもらわなくては困る。だから全てが終わった後、太陽の神は現れるはずです。』
そこまで聞いた私は、隣に立つ悪魔に告げた。
「アシャレラさん、魂は取り返すので契約はこのまま続行でいいですか?」
「続行も何も、契約は破棄できないよ。リビちゃんが死ぬまで、俺はきみだけの悪魔だ。」
「そうですか、じゃあ太陽の神の鼻っ柱をへし折るまで付き合ってください。」
アシャレラは悪い笑みを浮かべると、私の肩に手を置いた。
「リビちゃんの思うままに。俺も一発くらい殴りてぇわ、太陽の神。」
堕ちた悪魔を封印して、現れた太陽の神から名前と魂を取り戻す。
そのためにまず、魔獣の暴走を止めつつ囮になる。
傷のドラゴンが3体のドラゴンを連れて戻って来ている。
私が今すべきことは、ドラゴンの保護と協力。
「血の契約、しましょうか。」
「何を言ってるんですか?」
「俺が聞きたいよそんなの。どう見ても人間なんだけど、まさか違うの?」
どうして人間か否か、こんなにも確認されるんだ。
「生まれてからの認識はずっと人間ですね。まぁ、一度死んでるんですけど。」
アシャレラもドウシュも私も全員転移者なので、みな一度は死んでいることになる。
転移先が上界か下界か、というところが相違点だ。
「正真正銘の人間だとしたら考えられるのは二つ。既に契約を誰かと交わしていて、その魂を預けている。もしくは、奪われている。」
「契約はしていないので、一択ですかね。」
そんな返事をする私に、ドウシュとアシャレラは疑いの目を向ける。
「本当か?きみは考え無しにすぐ契約を結ぼうとする。ドラゴンしかり、悪魔しかり。それと同様に契約を交わし魂を渡したんじゃないか?」
「リビちゃんひどい、俺のこと誘惑して唆したくせに、もう誰かのものだったんだね。」
ドウシュは呆れた顔をして、アシャレラは泣きまねをする。
「人聞きが悪いです。さすがに魂を渡そうとしたのは今回が初ですよ。悪魔の儀式も初めてだし、だいたい悪魔以外に誰が魂を欲するんですか?」
生きるものは魂を持っている。
転生するために魂が必要で、アシャレラは転生したくて魂を望んでる。
でも、そんな話はこの場で初めて聞いたことだ。
今まで魂の話は誰ともしていない。
すると、急にアシャレラが苦悶の表情を浮かべた。
冷たかった瞳が焦り、悪魔に似つかわしくない冷や汗までかいている。
「リビちゃん、変なこと聞くけどさ、自分の名前言える?」
「はい?リビですよ。」
「そうじゃなくてさ、本当の。」
そう言われた瞬間、私は初めて名前を聞かれた太陽の国を思い出した。
「思い出せませんね。リビは自分でつけた名前です。」
「だよな、そういうことだよな。ああ、最悪。」
アシャレラは項垂れながら髪を乱す。
綺麗なオールバックだったのに、前髪が垂れてきている。
「リビちゃん、確認させて。あなたは転移前の記憶を維持していますか?」
「はい。名前以外は問題ありません。」
「・・・あなたは神から授かった魔法を持っていますか?」
「はい、持ってますね。」
「・・・・あなたは闇の神の愛し子ですか?」
「はい、そう言ってましたね。」
質問をするたびにアシャレラの声の元気がなくなっていく。
敬語のせいで、某ゲームみたいな問答になっている。
アシャレラは俯いたのち、前髪を後ろに掻き上げた。
「俺の考察が正しければ、リビちゃんの魂は十中八九太陽の神が持ってる。」
私は予想していなかった名前に驚いている。
「太陽の神には、会ったことないですよ。質問からして、闇の神に取られたのかと思ったんですが。」
「闇の神のこと聞いたのは、それが一番要因に近いからだよ。」
魂を取られる要因に、闇の神と太陽の神が関わっているということだろうか。
「リビちゃん、太陽の神と闇の神は性格が合わないんだ。」
深刻そうな表情で言うアシャレラだが、そこに意外性は特にない。
光と闇なんだし、意気投合していると言われた方が驚く。
「特に太陽の神は難しい性格の持ち主で、強い力を持った一人しかいない神だから周りの神はあまり進言すらできないらしい。」
「一人しかいない?しかし、光の加護って確か、太陽の神が与えているんですよね?闇の加護って魔法陣が消えたり神が堕ちたら交代する制度がありますけど、光の加護は交代しないんですか?」
「そこに大きな勘違いが生じてる。いいか、下界の光の神官が見ている神は、太陽の神じゃない。太陽の神と呼ばれる彼らは月の神なんだよ。」
私の頭は混乱している。
太陽の神と呼ばれてるけど月の神なの?
「普段下界の奴らの祈りを受け、願いを聞き入れているのは月の神。太陽の神の姿は下界の人間たちは見たこともないはずだ。だが、光の神全体の決定権は太陽の神にある。それが誓約にあるために下界の人間は太陽の神だと思い込んでる。神と会話も出来ない人間たちは確かめることもできないしな。だから当然交代もある。太陽の神ではなく、月の神が交代させられ堕ちるやつがいる。」
アシャレラはそう言って、長のドラゴンを見た。
「それじゃあここからは、月の神を交えて話そうか。太陽の神については、彼女の方が詳しいだろ。」
アシャレラは契約したことにより、魔法陣の黒い枠から出てきた。
とはいっても実体はないらしい。
私とドウシュ、それからアシャレラは長のドラゴンとソラの近くにきた。
情報収集のため悪魔を呼び出し契約したことを話して、それから魂を太陽の神が持っているところまで説明した。
ブルームーンドラゴンは光属性のドラゴンだ。
ドラゴンは神が堕ちた姿なのだから、当然長のドラゴンは光側の神になる。
月の神の加護を受けていると聞いていたが、月の神そのものが堕ちた姿だったというわけだ。
『悪魔と契約を?太陽の神がリビさんの魂を?この短時間でどうしてそのようなことになるのです?』
「成り行きです。長のドラゴンは神だったときの記憶があるんですよね?アシャレラさんは太陽の神が私の魂を持ってるって言うんですけど、有り得そうですか?」
長のドラゴンは頭をもたげる。
『残念なことですが、有り得ます。リビさんは闇の神の愛し子でしょう。だからこそ、魂を取られたのかもしれません。太陽の神と闇の神は、相性が悪いのです。』
性格が合わないだの、相性が悪いだの、嫌厭の仲なのか?
『リビさんは光魔法の人間と闇魔法の人間がどうしてこうも違うのかと考えたことはありませんか?』
そんなことはこの世界に来た時から常に思っている。
はじめは何もかも優遇されている光魔法への妬み僻み劣等感。
憎悪や怒りにも変わりそうだったが、光魔法だって同じ穴の狢だと気付かされた。
違う部分は勿論あれど、闇魔法も光魔法も現状を変えなければならないのは同じだったのだ。
「転移したときの場所、共通言語の会得方法、生前の記憶の減少の差、あとは死因とかですかね。」
『それらに違いがあるのは、神の管轄が違うせいです。そして、神の考え方が違うせいです。』
長のドラゴンの話にソラも真剣に耳を傾けている。
私よりソラの方が理解してそう。
『太陽の神はこの世界で安寧に暮らしていくためには前の記憶は不要だと思っているのです。もう会うことが出来ない両親や友のことを思い出すことは悲しくて苦しいだけだろうと。その太陽の神の影響を強く受ける光魔法の人間の記憶は早く消えていく。それとは反対に、闇魔法の人間は闇の神に気に入られているほどそれが遅くなる。』
私と、転移してから100年は経過しているヒバリの記憶がまだあるのはそのせいか。
『言語も同様に、太陽の神はこの世界に馴染むために早く生前の言葉を忘れさせたいがために、共通言語をはじめから与えています。その影響を受けられない闇魔法の人間は学びから言語を取得するしかない。ですが、学んで得た闇魔法の方々はおそらく母国語を忘れることはないでしょう。』
はじめは言語が分からないというのは絶望でしかなかった。
だけど今となっては母国語を忘れなくて良かったという気さえする。
『問題はどうしてリビさんの魂が太陽の神に奪われているかということですが、理由は二つあります。一つは死因です。』
「光魔法の人間は事故死、闇魔法の人間は自殺で転移してるってやつですか?」
『ええ。転移するときの死因は、人間の性質に引っ張られることにより決まります。リビさんは元から闇の性質を持っている。だから、自殺で転移するのが当然です。』
「でも、堕ちた悪魔の出現により世界の均衡を保つための魔法の適正があった私がいち早くこの世界に来る必要があった。だから、闇の神によって私は事故死によって転移した。」
『おそらく太陽の神は、それが気に入らなかったのです。』
長のドラゴンは深いため息をつく。
『闇の神は世界の均衡のために臨機応変に対応をした。けれど、太陽の神はそれが許せなかった。いや、受け入れる考えがなかった、というのが正しいかもしれません。』
受け入れる考えがない、というのはどういうことだろう。
『太陽の神は、誰よりも神らしい。平等、博愛、誓約主義。融通が利かないし、人の考えも理解できません。事故死したリビさんは誓約上は光側なのに、太陽の神の影響をまったく受けないことを受け入れられないのです。だからその結果、魂を持っていかれてしまったということです。』
「名前も太陽の神が奪ったんですか?」
『魂とはその者すべてを刻むもの。在り方を奪われたリビさんは自分の名前を思い出せないのでしょう。』
長のドラゴンの説明に頭を悩ませる。
太陽の神は、闇の神の影響で思い通りにならない私の存在が受け入れられない。
だからって魂をとってどうしたいんだ。
「苦手なんだよな、太陽の神。自分の考えがみんなの考えだと思ってたり、相手を可哀想だと勝手に決めつけたりする。平等なのが素晴らしいとか言ってそもそも少ない魔力を分割したり、苦しい方が助け合うことができるだのなんだの平然と言ったりする。善意や優しさをはき違えてるようにしか思えないな俺は。」
アシャレラはそう言うと、また冷たい瞳をする。
「というか、太陽の神から魂を取り返さないと、アシャレラさんに渡せませんね。太陽の神って会えるんでしょうか。」
『難しい問題ですね。ですが、今回堕ちた悪魔を封印し、世界の均衡を元に戻すことが出来れば太陽の神自らリビさんの前に現れるかもしれません。そこまで成し遂げた貴女たちの記憶を奪うために。』
「「え??」」
『今までも悪魔の封印をしてくれた人たちはいます。ですが、それが語られないのは太陽の神のせいです。誓約に触れる数々の出来事を引き継がないために太陽の神は記憶を操作しています。誓約通りにしか動けない神なのです、あれは。だから、今回も同じようにするはずです。』
今まで堕ちた悪魔のことも、ドラゴンが堕ちた神であることも、封印のことも何一つ下界の人が知らないのは、太陽の神による記憶の操作のせい。
命をかけて戦ってくれた獣人王と聖女が知られていないのも、なにもかも。
『リビさんの魂を取った二つ目の理由は、記憶の操作をしやすくするためです。リビさんは太陽の神の影響をうけにくい。魂を奪わなければ対抗することが出来ないほどに、あなたは闇の神に気に入られている。記憶を消したいが、世界の均衡を保ってもらわなくては困る。だから全てが終わった後、太陽の神は現れるはずです。』
そこまで聞いた私は、隣に立つ悪魔に告げた。
「アシャレラさん、魂は取り返すので契約はこのまま続行でいいですか?」
「続行も何も、契約は破棄できないよ。リビちゃんが死ぬまで、俺はきみだけの悪魔だ。」
「そうですか、じゃあ太陽の神の鼻っ柱をへし折るまで付き合ってください。」
アシャレラは悪い笑みを浮かべると、私の肩に手を置いた。
「リビちゃんの思うままに。俺も一発くらい殴りてぇわ、太陽の神。」
堕ちた悪魔を封印して、現れた太陽の神から名前と魂を取り戻す。
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