【完結】異世界転移した私がドラゴンの魔女と呼ばれるまでの話

yuzuku

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最終章

黄金の国

人生において体験したことがない大地震に見舞われた世界。
歴史を遡れば幾度となく起こっているらしいその災害の原因は不明だ。
誰かの魔法によるものなのか。
自然現象によるものなのか。
はたまた、到底理解することのできない人知を超えた何かなのか。
頭を悩ませたとしても、答えが出るはずもない。

「グウル王、西地区の塀の再建が終わりました。これで、モンスターの侵入は無くなる事でしょう。」
「そうか、それは良かった。此度の地震によって多くの建物が壊れてしまった。そのせいで魔獣もモンスターも国内への侵入を許してしまったが、白銀の騎士がいてくれたおかげで被害は最小限に済んだと言ってもいい。」

類を見ない大地震のせいで、下界に生きる生物は異変を感じ取ったことだろう。
そのせいで魔獣が暴れだし、モンスターも人が多くいる国内へと入ってきてしまった。
白銀の騎士は、白銀の国王を筆頭に各国の援助を申し出てくれた。
壊れた建物による被害、外傷を負った国民への治療、壊れた門から侵入するモンスターの対処。
白銀の騎士がいてくれなければ、どれだけの犠牲者が出ていたか計り知れない。

「以前であれば恐ろしい白銀の国の者たちに手を借りようなどと思うはずもないが、今は感謝してもしきれないほどに信頼している。国民の命を救われたのだ、国王として誠意を見せなければ。」
グウルはそう言うと、中庭で遊んでいる子供のエルフを見下ろした。
「白銀の国王から、裏の売買を根絶やしにする協力をしてくれないかと申し出があった。今まで私は、私が金を出しさえすれば、違法で取引された魔獣やエルフたちを解放してやれると思っていた。そうすれば、話を聞きつけた闇の商売人は必ず私の元に集まる。そうすることで、より多くのエルフたちを解放できるのではないかと思っていたんだ。ローザ、お前のように。」
グウルの優しい笑みに、ローザは息を飲む。
「はい。先代王の、いえ、お父様に救われた時から私は、兄上と、お父様に恥じない生き方をしようと心に決めて過ごして参りました。私は、あなたたちに出会ったおかげで苦しむことも、自分の人生に嘆くことも、憂いたこともありません。私は全てを、黄金の国王様に捧げる。そうしたいと思わせてくれた兄上とお父様に感謝しているのです。」
「分かっている。ローザ、お前は私の大切な弟だ。これまでも、これからもそれは決して変わらない。だが、私たちのやってきた方法では、本当の解放にはなり得ないのだとちゃんと、どこかでは分かっていた。」

黄金の国は、他国と比較すると小さな国だ。
所有していた山が鉱山で、宝石が採れたおかげで富を得た小国。
流行が好きで、あらゆる商売を受け入れていたのは確かだが、その噂に尾ひれはひれがついてしまった。
黄金の国は金で相手を黙らせる。
そんな悪評をそのままにしていたのも、裏の売買を黄金の国でさせるためだ。
どうせ売られてしまうのなら、黄金の国であれば解放してあげられる。
そんな、上っ面の救いをずっと続けてきた。

「白銀の国王の手を取ろうと思う。魔獣たちが平穏に暮らせるように、エルフが捕まえられて家族と離れ離れになるなんてことを無くすために。一緒に、やってくれるか?」

今までローザはグウルの商談の場には入らせてもらえなかった。
裏の売買によって売られるエルフの残酷な話を、ローザに聞かせないためだった。
だがグウルは、闇の売買からエルフを救うためにローザに手を貸して欲しいと頼んだのだ。
これからはもう、守られるだけの弟ではないと兄はそう言ってくれているんだ。

「勿論です、兄上。私も白銀の国王を信頼しております。まだ出会って間もないというのに、何故かそう思うのです。」

それはグウルも感じていたことだった。
もっと大きな出来事があったはずなのに、そのことだけぽっかりと無くなってしまったそんな気がしてならない。

「そうだな。それに、ドラゴンの騎士にも感謝せねばならない。」
「ええ、白銀の国王の部下の一人ですね。」

大地震のあった日。
神々の頂で会った女性はおそらく、ドラゴンの騎士だったのだろう。
失礼をしてしまったとローザは謝ったことがあるのだが、彼女は首を横に振っただけだった。

「彼女が連れているドラゴンと意思疎通を図れるおかげで、大いに助かっています。崩れそうだった建物を凍らせたり、大きな丸太の運搬を手伝ってくれたりと貢献して下さっています。それに、彼女は薬草の知識もあって、患者の治療にもあたってくれていました。」
「白銀の国王が狼獣人以外を部下に持っているという話は聞いたことがなかったが、彼女を見ているとそれが至極当然のように思えてくる。しかも、近衛騎士とは歴史が動いた瞬間を今まさに見せてもらっているようだ。白銀の国との交流の一歩目として、彼女の絵を描かせてもらうのはどうだろうか?」

グウルが突然そんなことを言い出してローザは少し戸惑う。

「絵、と言いましても彼女は仮面を被っており素顔を晒したことはありません。それに、私たちとの会話も最小限で、できるだけ関わらないようにしているように見受けられます。絵を残したいと言って、了承してもらえるでしょうか。」

神々の頂で出会った彼女と同一人物であれば、彼女は傷だらけだった。
だからこそ、その素顔を晒したくはないのだろう。

「確かにそうだな。だが、何故かどうしても彼女を忘れてはいけない気がするのだ。」

いつか心に誓ったその思いだけは、消えていない。

「グウル国王、ローザ騎士団長。白銀のドラゴンの騎士が到着致しました。患者への薬品の提供だそうです。」
定期的に訪れるドラゴンの騎士は調合した薬品を各国に届けて回っている。
今回の大地震による被害を一刻も早く収束させたい、そんな思いからだそうだ。
そうして、届けるスピードの速いブルームーンドラゴンに乗っている彼女がその任を務めている。

「ローザ、頼むだけ頼んでみよう。それに、白銀の国王と今後の話をせねばならない。」
「はい、では参りましょう。」
ローザは少し考えてから、もう一度口を開いた。
「グウル王。画家に心当たりがございます。大地震の日、同じく調査に来られていた方のお孫さんなのですが・・・。」


ドラゴンの騎士には、自分は傷だらけで絵に残すような容姿でもないと断られた。
だが、どうしてもと頼み込み、ブルームーンドラゴンと共に仮面をつけたまま描くことを渋々許可された。
それ以降、黄金の国の広間にはドラゴンとその騎士の絵が飾られることになる。
定期的に開かれる国民に向けてのパーティーではその絵を見ることができ、子供でも知っている名称の絵となっていく。
白銀の国との交流の証として、その絵は代々引き継がれていくことになるのだった。

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