虐殺者の称号を持つ戦士が元公爵令嬢に雇われました

オオノギ

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螺旋編 五章:螺旋の戦争

破壊工作

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 グラドが率いる突入部隊は、目的の一つである魔導人形ゴーレム製造施設を発見する。
 地下の大扉が僅かに開いた先に広がる膨大な光景は、兵士達は固唾を飲ませた。

 グラドもその光景を目にし、驚きながらも周囲を見る。
 そして小型索敵機レーダーを持つ第四部隊に視線と右手で指示しながら、左手を左耳に付けながら通信機で喋り掛けた。

「――……箱舟ふね、聞こえてるか? こちら、第一部隊。都市北部の地下で、第二目標の魔導人形ゴーレム製造施設を発見した。……聞こえないのか?」

「……確認して来ます」

「ああ、頼む」

 グラドは通信機で箱舟ノアに連絡を取ろうとするが、反応は無い。
 それを傍で聞いていた副官は戦車の方へ走り、操縦席に着いている兵士に通信を試みさせる。
 しかし通信が届かず、また地上部隊とも連絡が取れない事をグラドに伝えた。

「……ダメです。箱舟ふねと地上部隊に、連絡が取れません」

「地上で何かあった、と思うべきか?」

「いえ、先程まで通信は出来ていました。……原因があるとすれば……」

「……あの魔導人形ゴーレムを作ってる施設か」

「施設から発せられる高魔力に、通信が妨害されている可能性が。……恐らくこの鉄扉は、それを防ぐ為に分厚く作られていたんでしょう」

「ふむ……」

 グラドは副官と話しながら状況を確認し、通信が繋がらない理由を推察する。

 二人の推察は正しく、製造施設の中央に設けられた赤い魔力薬液エーテルは高い魔力を有していた。
 同盟国軍で用いられている通信機は箱舟ノアに備わる魔導器の魔力反応を媒介に、魔力周波数を利用して通信が行える。

 それを妨害できる程の魔力周波数が間近にあれば、必然として通信機から飛ぶ魔力周波数は阻害されてしまう。
 施設から発せられる魔力の影響を受けた状態では、中継している箱舟ノアや地上からも離れた位置で、通信機を使う事は出来なかった。

 グラドはこの状況で、ある選択を思考に浮かべる。
 この突入部隊で製造施設を破壊するか、地上に戻り状況を知らせてから地上部隊も率いて破壊するか。

 二つの選択を浮かべたグラドは、兵士達の顔を見ながら命じた。

「――……時間が惜しい。第四部隊の半数は、リフトで戻り地上部隊と箱舟ふねに状況を伝えろ。そして地上部隊に、いつでも突入できるよう備えさせてくれ。これ以上、戦力を増やすと撤退する時に詰まりそうだしな」

「了解」

「他は俺達と一緒に、施設内部に侵入。内部の状況を把握し、破壊する設備を選定。第五部隊は各設備へ時限爆弾を取り付けろ。時間は、全て一時間後に設定だ」

「了解……!」

「不穏な状況だと感じたら、すぐに知らせて撤退しろ。爆弾の取り付けに失敗した場合は、地上部隊と合流して全兵力で施設を破壊するぞ」

 グラドはそう指示し、第四部隊の兵士を数名だけ戻らせる。
 それと同時に戦車二台と第三部隊の一部をその場に残し、第三から第五部隊の混合班を編成して施設内部に侵入させた。

 グラドやケイルもその中の一班に加わり、互いに別れて施設内部に侵入する。
 そして赤い光に照らされた製造施設内に、全ての班が散らばった。

 各班が探った結果、製造施設内部は大きく分けて四つの区画に分けられている事が判明する。

 一つ目の区画では、各製造機が自動的に魔導人形ゴーレムを構成する部品が製造されていた。
 その生産量は数分だけで軽く千を超えており、そこを確認した班の兵士達を困惑させるに十分な状態となっている。

 二つ目の区画では、製造された部品が運搬装置コンベアで流され、それを固定された魔導人形が幾つもの腕を使い、素早く部品を組み立てて数多くの機器を作り出す。
 同じ機器を数十体という魔導人形ゴーレムが並びながら作り、違う運搬装置コンベアに載せる作業を見た兵士は、その凄まじい生産力と工程に寒気を感じさせた。

 三つ目の区画では、組み立てられた各機器が集合し、同じように固定された魔導人形ゴーレム達が作られた機器を使いある物を組み上げていく。
 それは新型の魔導人形ゴーレムとなり、一定数が完成すると大型の運搬装置コンベアに運ばれた。
 その光景を見た班の兵士達は、戦闘用とは異なる製造用と運搬用の魔導人形ゴーレムを見て、驚愕で表情を強張らせる。

 最後の、四つ目の区画。
 そこが最も広大な区画であり、それを見たグラドを始めとした兵士達は、血の気を引かせた表情で呟いていた。

「――……馬鹿な……ッ」

「そんな……」

「これほどの数が……!」

「しかも、全て新型だ……」
 
 グラド達が見たのは、新型と言われている球体型と飛行型の魔導人形ゴーレム
 銀色を帯びた鋼鉄で覆われた外装が壁と地面に一面として並び立ち、その数は数える事も諦めてしまう程だった。

 各班はそれを物陰に隠れながら覗き、絶望的な光景に顔を伏せる。
  
 今まで辛うじて撃退できていた敵の魔導人形達ゴーレムは、本当に極一部だけ。
 このまま魔導人形の製造を放置すれば、この数が地上へ降り立って残る人類を絶滅させる。

 それが容易に想像できる程の規模であり、また今現在も各国が攻め込まれている事を聞いている兵士達は、互いに頷きながら決意の言葉を口にした。

「――……ここは、絶対に破壊するんだ……!」

「ああ……!」

魔導人形ゴーレムの死角を移動しながら、目に見える設備は全て爆弾を取り付けよう」

「了解」

 各班長はそう指示し、隠れながら移動して設備の見え難い位置に時限爆弾を取り付ける。
 時間を一時間後に設定しタイマーを起動させて別の場所に移動すると、新たな設備へ移動した。

 そして最も破壊すべきと理解できるのは、中央の設備。

 赤い魔力薬液エーテルに満ちた巨大容器の内部をよく見れば、小さな魔石が散りばめられて浮かぶ光景が見える。
 それが魔導人形ゴーレムの核である魔石を生産している設備だと理解したグラドを含めた各班は、魔導人形の視界を掻い潜りながら辿り着き合流した。

「――……爆弾の設置は?」

「目ぼしい設備には、取り付け完了です」

「よし。……残るは、中央設備コイツだけか」
 
「動力源の魔石これさえ無くなれば、魔導人形ゴーレム外装からだは動けません」

「そうだな。――……ッ」

「将軍? どうなさいました?」

「……いや。歳のせいか、フラついただけだ」

「……高い魔力を発している施設です。もしかしたら、魔力を長く浴びると人体に害を与えるのかもしれません」

「なるほどな。……なら、さっさと取り付けを終わらせておさらばだ」

「ハッ」

 姿勢を戻したグラドはヒューイを含めた第五部隊の兵士達に指示し、背負う鞄から爆弾を取り出して設置させていく。

 まずは周囲の設備に複数の爆弾が取り付けられ、それぞれ顔を見合わせながらタイマーを合わせて起動させる。
 それから中央の設備に爆弾を取り付けようとして各兵士達が手を触れた瞬間、赤く光っていた魔力薬液エーテルが突如として青く輝き始めた。

「――……!!」

「な、なんだ……!?」

 突然の変化に兵士達は僅かに動揺し、思わず手を離してその場から退く。
 グラドとヒューイも同じように下がり、動揺しながらも周囲に目を向けた。

 そして周囲にも起こっている変化を、グラドやヒューイを含んだ兵士達は確認する。

 今まで単一動作をしていた組み立て用の魔導人形ゴーレムが、魔力薬液エーテルと同様に単眼を青く輝き始めた。
 それと同時に、全ての魔導人形ゴーレムが中央設備に顔を向ける。

 その動作と状況に悪寒を感じたグラドは、すぐに兵士達に命じた。

「――……早く、コイツにも爆弾を取り付けろッ!」

「!」

「気付かれたッ!!」

 グラドの叫ぶような指示に兵士全員が表情を強張らせ、急いで中央設備に爆弾を取り付ける。
 それと同時に製造施設の四方にある壁の一部が切り抜かれたように開け放たれると、新型の球体魔導人形ゴーレム達が転がりながら出て来た。

 そして回転が途中で止まると、以前のように五メートル強の人型形態に変形する。
 それを確認したグラドは爆弾の取り付けとタイマーの設定が完了した事を確認し、焦りながらもはっきりとした口調で伝えた。

「すぐに撤退だ!」

「は、はい!」

「壁回りはダメだ! 中央を突っ切るしかないッ!!」

 グラドは完全に取り囲まれた事を察し、中央突破で撤退する事を選ぶ。
 兵士達もその命令に従い、隊形を整えて各銃火器を構えながら出入り口の大扉に向けて真っ直ぐ走り出した。
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