虐殺者の称号を持つ戦士が元公爵令嬢に雇われました

オオノギ

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螺旋編 五章:螺旋の戦争

合成魔人

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 黒い金属に飲まれ分断されたエリクとマギルスは、互いに別々の場所へ辿り着く。
 そして場面はマギルスへ移り、魔力薬液エーテル漬けにされた合成魔人キメラ製造施設に入り込んでいた。

「……うへぇ。これもしかして全部、合成魔人キメラかぁ」

 マギルスは施設内を歩き、幾千と並び置かれた容器入りの合成魔人キメラを眺めながら歩く。
 以前に見た皇国の基地施設以上の数と、それ以上の改造が施され怪物モンスターと化している合成魔人キメラは、あのマギルスにすら気味の悪さを感じさせていた。

 しかし数分も歩く頃にはその光景にも慣れ、マギルスは周囲も眺めながら施設内を探索する。
 そして高い位置にある天井が例の金属である事を知ると、マギルスなりにここに至った経緯を推測した。

「……あそこから、落ちて来たのかな? でも、エリクおじさんは何処だろ?」

 マギルスはそう考えながら歩き、エリクが居ないかも探す。
 そしてそれらしい姿も無く、施設の駆動音や自分の鳴らす足音以外に音が発せられていない事から、エリクはここに居ないのだと考えた。

 その状況で、マギルスはクロエと話した予言を思い出す。

『――……ねぇねぇ』

『ん?』

『僕がおじさんと一緒に行くと、どうなるの?』

『んー……。多分、マギルスは途中まで一緒に行くと思う。でも、やっぱりエリクさんとは別れちゃうだろうね』

『そっかぁ。じゃあ、おじさん死んじゃうのかな?』

『どうだろうね。……少なくとも私が視たエリクさんの未来は、死の可能性が大きい。それを変えられるとすれば……ケイルさん、そしてマギルス。二人が作戦の成功に必要な条件を満たせば、それを回避できるかもしれない』

『!』

『二人が担う役目を終わらせてエリクさんと早く合流できれば、その死を防ぐ事が出来るかもしれない。……私が二人に言えるのは、ここまでかな』

『うーん。エリクおじさん、いつも僕と遊んでくれたし。死んでほしくないなぁ』

『マギルスが頑張ったら、エリクさんは死なないかもね』

『そっかぁ。じゃあ、ちょっと頑張ろうかな!』

 以前にクロエが述べた予言が実現し、一緒に居たマギルスとエリクは別れてしまう。
 そしてそれが、エリクが死ぬ可能性がある未来となる事も示唆していた。

 それを思い出したマギルスは、少し唸りながら考える。
 そして自分なりに出した結論として、背負う大鎌を右腕で引き出し構えた。

「――……よし! 施設っぽいのは、全部ぶっ壊しちゃおう! それで、おじさんと合流できたら合流かな!」

 思い付いた事を実行するマギルスは、大鎌に青い魔力を溜める。
 そして周囲にある設備と容器を、合成魔人キメラごと青い魔力の斬撃を飛ばしながら大鎌を振り回して斬り裂いた。

 半径百メートル以内の容器と設備が瞬く間に複数の青い斬撃を浴び、破壊されていく。
 笑みを浮かべながら斬っていたマギルスだったが、驚愕する光景が混ざっている事に気付いた。

「――……えっ!?」

 マギルスが驚いたのは、切断されていく設備や容器ではない。
 切断したつもりだった容器内の合成魔人キメラ達が、斬り裂かれずに原型を保っていたからだった。

 裂けた容器から魔力薬液エーテルと共に漏れ出た合成魔人キメラ達は、小さな穴が空いた鉄床に流れ出る。
 そして魔力薬液エーテルは床に備えられた排水溝に流され、無傷の合成魔人キメラだけがその場に残った。

「……僕の魔力斬撃こうげきで、斬れない……?」

 マギルスは傷一つ無い合成魔人キメラ達に驚き、破壊の手を止める。
 その不気味さも相まってマギルスの勘が今の状態になって初めて警戒を鳴らし、大鎌の柄を握る手の力を強めた。

「……!」

 マギルス自身の勘は、次の瞬間に当たっていた事を悟らされる。
 容器から出た合成魔人キメラ達が同時に動き出し、腕を這わせ脚に力を込めながら立ち上がり始めた。

 それを見たマギルスは大鎌を構え直し、起き上がる合成魔人《キメラ》の一匹に素早く飛び掛かり攻撃を加える。
 しかし首を狙った大鎌の刃を、合成魔人キメラが無造作に振った太い腕によって防がれた。

「!?」

「――……ァア……」

 合成魔人キメラは低く呻き、防いだ腕を豪速と剛腕で振るいながらマギルスの身体を弾き飛ばす。
 それに動揺しながらもマギルスは身を翻し、両足で着地し屈みながら合成魔人キメラ達を見た。

「……僕の攻撃かまが通らない……!? ……あれは……!」

 マギルスは驚きながらも目を凝らし、合成魔人キメラを見る。

 三十年前の皇国で作られた合成魔人キメラは、繋ぎ合わせた魔獣の臓器と肉体の影響で筋力などが強化され、術師によって操られていた人形だった。
 しかし目の前で対峙している合成魔人キメラは、ただ人間の肉体と魔獣の肉体を繋ぎ合わせただけではない。

 その身体からは魔力が漲るように立ち昇り、その全員が以前に魔人化した赤鬼エリクと同等かそれ以上に魔力を放っている。
 それが強化された肉体を更に強め、マギルスの魔力を弾き、大鎌の刃さえ通らない強靭な肉体を維持していた。

「……コイツ等、前に戦った合成魔人よわいのとは違う……!」

 目を凝らして魔力感知で探ったマギルスは、改めて目の前に居る合成魔人キメラが別物だと悟る。
 そして容器から出て立ち上がった合成魔人キメラは瞳を開け、明確に『敵意』という意思を持ってその視線をマギルスに集めた。

「……ッ!!」

「――……アアァァアアアアアッ!!」

 その瞬間、合成魔人キメラ達が雄叫びを上げて体内の魔力を放出させる。
 その凄まじい放出量は以前に感じた赤鬼状態のエリクと匹敵し、マギルスの震撼を寒からしめた。

 それは同時に、マギルスにとって久しく喜びの感情を生み出される。
 それは魔人として戦いを欲する本能であり、恐怖と同時に沸き起こる喜びの感情だった。

「――……いいね、いいね! 思いっきり戦える相手だ!」

 マギルスは恐怖しながらも喜びを浮かべた笑みで、大鎌を構えながら立ち上がる。
 それと同時に解き放たれた合成魔人キメラは、一斉にマギルスに襲い掛かった。

 マギルスはこうして、魔導国が作り出した新型合成魔人キメラと遭遇する。
 それを窮地と感じながらも喜ぶマギルスは、数十体の合成魔人キメラと対峙した。
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