虐殺者の称号を持つ戦士が元公爵令嬢に雇われました

オオノギ

文字の大きさ
514 / 1,360
螺旋編 五章:螺旋の戦争

爆弾の威力

しおりを挟む

 シルエスカ達が地下の大自然で、子供達がいる遺跡の町を発見した頃。
 アズマ国とフォウル国の増援によって助け出されたグラドやヒューイを含んだ同盟国軍二百名前後の兵士は、箱舟ノアがある都市東部を目指していた。

 グラドは負傷した身体をアズマ国の忍者シノビが容易した即席の担架に預けながら運ばれ、ヒューイ達も干支衆の強さを頼りに魔導人形ゴーレムの包囲網を突破する。
 そうした中で焦る様子を見せる兵士達の先頭を走るヒューイは、それ等を世話する役目になった干支衆『兎』のハナに荒い息を吐き出しながら伝えた。

「――……あ、あと十分で……! 地下の、爆弾が……!!」

「爆発するんだよね。私達が守ってあげるから、みんな急いで逃げよう」

「は、はい……!」

 長く白い髪を靡かせながら微笑む可愛らしいハナの声に、疲弊している兵達も応じる。
 戦車に乗せ固定された重傷の負傷兵達が振動で呻き声を漏らしていたが、そうした者達を守るように干支衆『虎』のインドラと『牛』のバズディールが追跡し襲おうとする魔導人形ゴーレム達を蹴散らし、更に道を塞ぐ場所を怪力と斬撃で切り開いてヒューイ達の退路を確保していた。

「――……チッ、手応えがねぇな! もっと強いヤツはいねぇのかよ!」

「居れば、彼等は全滅している。幸いと言うべきだ」

「お前はいっつもそれだな、バズディール! この平和野郎め!」

「貴様が好戦的過ぎるだけだろう、インドラ。無駄な戦いは、しない方が良いに決まっている」

 そんな口論を交えながらもインドラとバズディールは互いに新たに出現する魔導人形ゴーレムを瞬く間に蹴散らし、同盟国軍の撤退を見守る。
 アズマ国の増援もグラドから爆弾の話を聞き、すぐに魔導人形ゴーレムを迎撃しながら工場地帯の都市北部から東部へ移動し、箱舟ノアとの合流を目指していた。

 グラドは口から痛みを漏らす声を抑えながら仮面を付けた黒装束の忍者シノビに担架で運ばれ、その隣を並走している当理流とおりりゅう師範のブゲンに横目と声を向ける。

「――……あ、あと五分くらいだ……」

「合い分かった。少々手荒く運ぶが、我慢せよ」

「これくらい、慣れてるんでね……。……助かったぜ。あの巨人型デカブツを、頭から真っ二つにしちまうなんてな……」

「一刀両断とはならず。三度みたびも斬らねばならなかった。まだまだ、親父殿には程遠い」

「……アンタの親父って、どんだけ強かったんだよ……」

「ふむ。何せそれがしの父は、東一アズマいちの武芸者なのでな。面目上、儂も愚息として強くなくてはいかん」

「アズマで、一番強いってことか……?」

「『茶』の七大聖人せぶんすわんと言えば、分かるであろう?」

「……あ、アンタ。『茶』の七大聖人セブンスワン、ナニガシの息子なのか……?」

「うむ。親父殿の世継ぎは儂しか居らぬ故、強く在るしかないのだ」

「……ハ、ハハ……。ゥ、イテテ……ッ」

「?」

「いや、ちょっとな。……本当、俺は普通にんげんで良かったぜ……」

 グラドはそう言いながら笑みを浮かべ、ブゲンは首を傾げながらも視線を逆方向へ向ける。
 すると一人の仮面と黒装束を被った忍者シノビが建物を跳び越すように現れ、ブゲンの隣の並び走った。

「――……親方様、戻りました」

「トモエか。それで、どうだった?」

「はい。腑抜けていたので、一喝しておきました」

「そうかそうか。息災だったか?」

「はい。それと親方様の予想通り、あの子も至れていたようです」

軽流やつほどの才であれば、至れるも通り。もし成っておらねば、修行を怠っていた証拠。儂が鍛え直せばならぬところよ」

 ブゲンはそう言いながら笑みを浮かべ、トモエも仮面の下で笑みを浮かべる。
 互いに懐かしい愛弟子ケイルの気配がある事を悟り、その姿と健在振りを確認できた事で愛弟子に対する心残りを晴らした。
 そうして各々が、都市北部の工場地帯から脱出する。

 そして爆発の時間に至った時、工場地帯の中心部から地鳴りが唸り出す。
 崩れた瓦礫や建物が大きく揺れると同時に、コンクリートの地面に大きな亀裂が走り、その隙間から炎の光が見えた。

 そして次の瞬間、その亀裂が裂けて数十メートル以上の巨大な火柱と衝撃が工場地帯の中央から広がる。
 工場地帯を脱していた同盟国軍やそれぞれの増援部隊がそれを遠くから見上げ、驚きの表情を浮かべた。

 フォウル国の増援とヒューイが居る同盟国軍側では、その火柱を見上げて全員が様々な驚きを見せている。

「――……うわぁ、すっごい大きい……」

「デカい花火だなぁ!」

「花火というより、火山の噴火だろう。……あの箱舟ふねといい、爆弾といい、同盟国も侮れんな」

 感心するように呟き見上げるフォウル国の干支衆に対して、同盟国軍もまた全員が驚いている。
 それは仕掛けた張本人である第五部隊にも言えた事で、自分で仕掛けた爆弾の威力に兵士達は驚いていた。

「ヒュ、ヒューイ隊長。爆弾って、あんなやばい威力だったんですか……?」

「……予想より、凄すぎるな……」

「えっ。……隊長は爆弾の威力を、知ってたんじゃ……?」

「あの爆弾は、局長クロエ殿が『とても威力がある爆弾』としか言わずに持たせた物だ」

「え、えぇ!?」

「な、なんで前もって威力確認をしてないんですか!?」

「地下で威力実験をやって万が一があれば全滅しかねんし、地上でやったら魔導国にバレるだろうからと……」

「……」

 クロエに渡された爆弾が威力検証もされず、またそれを本番で仕掛けさせられた兵士達は生唾を飲み込む。

 もし仮に爆弾が不発に終われば、今までの行動が全て無為になっていた。
 しかし爆発しても威力が弱ければ、施設の完全破壊など出来るはずがない。
 逆にこれほど威力が高すぎれば、自分達が逃げても間に合わず巻き込まれて死んでいた可能性もある。

 そうした不安と悪寒が一気に押し寄せた兵士達は鳥肌を立たせ、クロエの理不尽さに再び恐怖させられた。

 一方その頃、アズマ国の増援とグラドも同じ火柱を別の場所から見上げる。
 忍者シノビ達が仮面の下で動揺にも似た驚き方をしているのが分かり、同じく忍者シノビの頭領トモエや当理流師範ブゲンもまた目を見開いた後に笑みを浮かべた。

「――……ほぉほぉ、尋常ならざる火薬を使用したと見える」

「同盟国の兵装が、ここまでとは驚きですね……」

「……あの局長め。とんでもないモン、渡してやがったもんだな……」

 驚きと感心を示すアズマ国の面々に対して、グラドは轟音で掻き消えそうな声でそう呟く。
 そして火柱の一つが小さくなったかと思えば更なる火柱が出現し、地下に設置した百を超える時限爆弾が次々と連鎖的に爆破していった。

 その威力は工場地帯の中心から全体の八割強に及び、中心部は爆発と火柱で跡形も無く吹き飛ぶ。
 その周囲や外周付近も生み出される亀裂に建物達が崩れながら沈み、地盤が完全に崩れて都市北部は完全に崩壊した。

 そうした被害の広がりを察知したそれぞれが、更に遠くへ避難する為に走り出す。
 そして十数分後にアズマ国とフォウル国によって救助された同盟国軍は、無事に都市東部で合流を果たした。
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

【完結】男爵令嬢は冒険者生活を満喫する

影清
ファンタジー
英雄の両親を持つ男爵令嬢のサラは、十歳の頃から冒険者として活動している。優秀な両親、優秀な兄に恥じない娘であろうと努力するサラの前に、たくさんのメイドや護衛に囲まれた侯爵令嬢が現れた。「卒業イベントまでに、立派な冒険者になっておきたいの」。一人でも生きていけるようにだとか、追放なんてごめんだわなど、意味の分からぬことを言う令嬢と関わりたくないサラだが、同じ学園に入学することになって――。 ※残酷な描写は予告なく出てきます。 ※小説家になろう、アルファポリス、カクヨムに掲載中です。 ※106話完結。

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

【完結】政略婚約された令嬢ですが、記録と魔法で頑張って、現世と違って人生好転させます

なみゆき
ファンタジー
典子、アラフィフ独身女性。 結婚も恋愛も経験せず、気づけば父の介護と職場の理不尽に追われる日々。 兄姉からは、都合よく扱われ、父からは暴言を浴びせられ、職場では責任を押しつけられる。 人生のほとんどを“搾取される側”として生きてきた。 過労で倒れた彼女が目を覚ますと、そこは異世界。 7歳の伯爵令嬢セレナとして転生していた。 前世の記憶を持つ彼女は、今度こそ“誰かの犠牲”ではなく、“誰かの支え”として生きることを決意する。 魔法と貴族社会が息づくこの世界で、セレナは前世の知識を活かし、友人達と交流を深める。 そこに割り込む怪しい聖女ー語彙力もなく、ワンパターンの行動なのに攻略対象ぽい人たちは次々と籠絡されていく。 これはシナリオなのかバグなのか? その原因を突き止めるため、全ての証拠を記録し始めた。 【☆応援やブクマありがとうございます☆大変励みになりますm(_ _)m】

もしかして私ってヒロイン?ざまぁなんてごめんです

もきち
ファンタジー
私は男に肩を抱かれ、真横で婚約破棄を言い渡す瞬間に立ち会っている。 この位置って…もしかして私ってヒロインの位置じゃない?え、やだやだ。だってこの場合のヒロインって最終的にはざまぁされるんでしょうぉぉぉぉぉ 知らない間にヒロインになっていたアリアナ・カビラ しがない男爵の末娘だったアリアナがなぜ?

転生の水神様ーー使える魔法は水属性のみだが最強ですーー

芍薬甘草湯
ファンタジー
水道局職員が異世界に転生、水神様の加護を受けて活躍する異世界転生テンプレ的なストーリーです。    42歳のパッとしない水道局職員が死亡したのち水神様から加護を約束される。   下級貴族の三男ネロ=ヴァッサーに転生し12歳の祝福の儀で水神様に再会する。  約束通り祝福をもらったが使えるのは水属性魔法のみ。  それでもネロは水魔法を工夫しながら活躍していく。  一話当たりは短いです。  通勤通学の合間などにどうぞ。  あまり深く考えずに、気楽に読んでいただければ幸いです。 完結しました。

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!

ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。 退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた! 私を陥れようとする兄から逃れ、 不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。 逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋? 異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。 この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?

【完結】断罪された悪役令嬢は、本気で生きることにした

きゅちゃん
ファンタジー
帝国随一の名門、ロゼンクロイツ家の令嬢ベルティア・フォン・ロゼンクロイツは、突如として公の場で婚約者であるクレイン王太子から一方的に婚約破棄を宣告される。その理由は、彼女が平民出身の少女エリーゼをいじめていたという濡れ衣。真実はエリーゼこそが王太子の心を奪うために画策した罠だったにも関わらず、ベルティアは悪役令嬢として断罪され、社交界からの追放と学院退学の処分を受ける。 全てを失ったベルティアだが、彼女は諦めない。これまで家の期待に応えるため「完璧な令嬢」として生きてきた彼女だが、今度は自分自身のために生きると決意する。軍事貴族の嫡男ヴァルター・フォン・クリムゾンをはじめとする協力者たちと共に、彼女は自らの名誉回復と真実の解明に挑む。 その過程で、ベルティアは王太子の裏の顔や、エリーゼの正体、そして帝国に忍び寄る陰謀に気づいていく。かつては社交界のスキルだけを磨いてきた彼女だが、今度は魔法や剣術など実戦的な力も身につけながら、自らの道を切り開いていく。 失われた名誉、隠された真実、そして予期せぬ恋。断罪された「悪役令嬢」が、自分の物語を自らの手で紡いでいく、爽快復讐ファンタジー。

【完結】回復魔法だけでも幸せになれますか?

笹乃笹世
恋愛
 おケツに強い衝撃を受けて蘇った前世の記憶。  日本人だったことを思い出したワタクシは、侯爵令嬢のイルメラ・ベラルディと申します。 一応、侯爵令嬢ではあるのですが……婚約破棄され、傷物腫れ物の扱いで、静養という名目で田舎へとドナドナされて来た、ギリギリかろうじての侯爵家のご令嬢でございます……  しかし、そこで出会ったイケメン領主、エドアルド様に「例え力が弱くても構わない! 月50G支払おう!!」とまで言われたので、たった一つ使える回復魔法で、エドアルド様の疲労や騎士様方の怪我ーーそして頭皮も守ってみせましょう!  頑張りますのでお給金、よろしくお願いいたします!! ーーこれは、回復魔法しか使えない地味顔根暗の傷物侯爵令嬢がささやかな幸せを掴むまでのお話である。

処理中です...