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革命編 六章:創造神の権能

その手に欠片を

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 二年間の修練で高めた自身の実力ちからを明かすケイルは、決闘したエリクを完封して見せる。
 そして共に戦う仲間としてエリクに認めさせ、マギルスを含む三人でウォーリスと戦う事を決断した。

 それから三人は同じ貨物室の床を踏み、向かい合うように立つ。
 すると決意を新たに共闘する事を承諾したエリクは、改めて二人に自身の秘密を告げた。

「――……改めて、ケイルにも伝えておく。……俺は自分の寿命いのちを代価にして、今のちからを得ている」

「なに……!?」

「俺は弱い。だから強い相手と戦えるようになる為には、自分の寿命いのちを使うしかないと思った」

「……アリアが言ってた、『誓約』と『制約』ってやつか?」

「そうだ。俺は自分に『誓約ちかい』を立て、今の俺では届かない強さを使えるようにしている。……その『制約ルール』で支払う代価が、俺の寿命いのちだ」

「……未来で戦ってた時から、ずっとか?」

「そうだ」

「……馬鹿なことしやがって……ッ」

 エリクは自分に施した『制約《ルール》』をケイルにも明かし、今まで見せていた異常な強さの秘密を教える。
 それを聞いたケイルは怒鳴りそうな勢いを押し殺し、苦々しい表情を浮かべながら顔を逸らして悪態を漏らした。

 するとマギルスは、改めてエリクに問い掛ける。

「で、実際どれくらい残ってるの? おじさんの寿命いのち

「……多分、百年も残っていない」

「!?」

「うわっ、九割も使っちゃってるの?」

「未来で、あの赤いコアを破壊した時。そして今回の事態で倒した合成魔獣キマイラや、ウォーリスと戦った時。それでほとんどを消費して、残っているのはそれくらいだ」

「……それって、おじさん戦えるの?」

 改めてエリクに残された寿命いのちの残量を聞いたマギルスは、首を傾げながら問い掛ける。
 それに対してエリクは、二人に対して自分が今まで抱いていた決意を明かした。

「アリアは、俺達を助ける為に自分を犠牲にし続けた。……だったら俺も、アリアを助けられれば、自分を犠牲にしてもいいと思っている」

「……馬鹿野郎ッ!!」

 エリクの決意を聞いたケイルが、ついにせきるように怒鳴りながら胸倉を掴み掛かる。
 それに抵抗する様子を見せないエリクは、改めて自身の見解を述べた。

「……だが、それでもウォーリスには勝てない」

「!」

「奴と実際に戦って、分かった。……俺の命を使い果たしても、奴を倒す事は出来ない。……だからせめて、お前達がアリアを助けて逃げるまでの間、俺が時間稼ぎをしようと思った」

「……そういう事かよ……。……ったく、お前等は……揃いも揃ってよ……」

 自身の真意を伝えたエリクは、ケイルにアリアの保護を頼んだ理由を明かす。
 それを聞いたケイルは怒りの感情を通り越して深い呆れを見せながら胸倉を掴んでいる右手を離し、少し離れながら腕を組んでエリクを睨んだ。

 そして改めて、エリクは二人に対して頼むように伝える。

「俺には、その方法以外の手段を考えられなかった。……だから、お前達の考えを聞きたい。どうやったらウォーリスを倒して、アリアを助けられる?」

「うーん……」

「……少し、順番を変える必要があるかもな」

 エリクの問い掛けに悩む様子を見せる二人だったが、その中でケイルが不意に言葉を漏らす。
 それを聞いたエリクはケイルに視線を向け、その内容について聞いた。

「順番を変える?」

「そもそも、ウォーリスって奴は到達者エンドレスなんだろ? だったら、同じ到達者エンドレスでしか殺せないはずだ。ただの聖人や魔人のアタシ等が束になって掛かって、倒せるのかって話になる」

「……だが『やつ』は、ウォーリス倒す為に俺達を集めたと言っていたぞ」

「ああ。だから『やつ』には、到達者エンドレスを倒す算段があるんだろ。だからアタシ等と一緒に、ウォーリスの相手をすると言ってるはずだ。……お前の話を聞くまでは、そう思ってたんだがな……」

「?」

「『やつ』はさ、お前の強さには寿命いのちの代価が必要だと知ってるのか? ……もしそうじゃなかったとして、『やつ』がウォーリスを倒す為にお前の力を頼りにしてるとしたら。そこで既に、大誤算が発生してる事になる」

「……なら、『やつ』にも話しておくか?」

「もしそれで『じゃあ無理だ』って言われたら、どうするつもりだよ? 大人しく引き返すか?」

「それは……」

「もう状況的に、引き返すのは無理だ。仮に引き返したとしても、ウォーリスが創造神オリジン権能ちからってのを手に入れて、アタシ等の世界を好き勝手できるようになる。……そうなったら、もうアタシ等では打つ手が無い」

「……なら、どうすれば……」

「もしお前を頼らずに、ウォーリスを倒せる可能性が高まる人材がいるとしたら。……多分、アタシ等が知る中で一人だけだ」

 改めながらそう話すケイルは、自身の思考に浮かんだ一人の人物について伝える。
 それを聞いたエリクとマギルスは僅かに考えた後、互いに同じ人物を思い浮かべて目を見開きながら聞いた。

「……まさか?」

「そう、一人いるだろ。到達者エンドレスっぽい奴を倒した実績がある奴が」

「……アリアか?」

「そうだ。そして、今回は優先順位を切り替える。――……最初にアリアを助けて、ウォーリスを倒す為に協力させる。それならどうだ?」

「!」

 ケイルの簡潔な策を聞いた二人は、それが『青』の作戦を崩す対案だと察する。
 その案に対して、アリアを助けたいと強く思っているエリクは反対しようとはしなかった。

 しかしマギルスは首を傾げながら不満気な表情を浮かべ、ケイルに問い掛ける。

「でもさぁ。今のアリアお姉さんって、記憶を失くしちゃってるんだよね? 僕達に協力するどころか、前みたいに自分の能力ちからを使えるのかな?」

「そういえば、お前等は見て無かったのか。……記憶は知らないが、アリアは自分の能力ちからを取り戻してるらしい」

「え?」

「先に箱舟ここへ乗り込んでたアタシ達は、帝国が襲撃されてた記録映像を見た。そこでウォーリスの野郎と戦ってるアリアの映像も見たんだよ。その時には、アタシ達と旅をしていた頃……いや、それ以上の能力ちからを使えていたように見えた」

「へぇ、そうなんだ?」

「戦力としてなら、今のアリアは十分にてになる。ましてや記憶を失う前に、到達者エンドレスもどきの『神兵《ランヴァルディア》』も倒してるんだ。もしかしたら到達者エンドレスじゃなくても、到達者エンドレスを倒す方法を知ってるかもしれない」

「!」

「だから最初に、アリアを見つけて助ける。そしてアイツにも協力させて、ウォーリスを一緒に倒す。……お前の寿命いのちを使い潰す前にウォーリスを倒すには、その手段と可能性に賭けるしかない。エリク」

「……」

 エリクの寿命いのちを使い捨てずに、更にウォーリスを倒す可能性がある策として、ケイルはその方法を伝える。
 それを聞いたエリクは自身が望む状況を叶える策を支持するように頷き、改めて二人へ頼むように伝えた。

「……俺は、その方法がいい。……二人共、力を貸してくれ」

「いいよー!」

「結局、アイツ頼りになっちまうけどな……」

 二人はエリクの頼みに応じる様子を見せたが、それでもケイルは自身の伝えた策がアリア頼りである事を懸念している。
 それでもエリクは、ケイルに顔を向けながら口元を微笑ませて感謝を伝えた。

「俺では、そういう事を考え方を出来なかった。……ありがとう、ケイル。やっぱり、お前が居てくれて良かった」

「グ……ゥ……ッ」

「どうした?」

「う、うるせぇッ!! ……ったく……」

「何処へ行くんだ?」

艦橋うえに居る人等にも伝えるんだよ。もしかしたら、側近とやらの傍にアリアがいるかもしれないからな。もしそうなったら、アタシ等じゃなくてあの他の人等がアリアを助けた方が早いってこともあるんだ」

「そうか。じゃあ、俺も一緒に……」

「来なくていい。お前が来ると、話がややこしくなる」

「そ、そうか。……ケイル、頼んだ」

「ああ。そういう交渉は、アタシに任せろ」

 ケイルは複雑な表情を隠しながら貨物室から出て行き、艦橋ブリッジに居る者達にアリアの救出を最優先するように頼むよう伝えに向かう。
 それを見送る形となったエリクとマギルスは、貨物室で待機した。

 それから十分後、箱舟ふね全体に警報音が鳴り響く。
 それは天界エデンへ到着した事を知らせる音であり、ウォーリス達との決着を告げる合図でもあった。
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