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革命編 六章:創造神の権能

魂の導き

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 創造神オリジン権能ちからを手に入れようとするウォーリス達の目論見を阻む為に、エリクとその仲間達を乗せた箱舟ノアは『天界エデン』へ向かう。
 そして箱舟ふねの内部で警報音サイレンが鳴り響く少し前、その視点は『天界エデン』に移った。

 四方全てが青い空に覆われている世界で巨大な大地となって浮かぶ白い神殿に辿り着いたウォーリス達は、魔鋼マナメタルの黒い塔を着地させる。
 すると黒い塔の天辺てんじょうが四方に開かれると、その内部からウォーリスと悪魔騎士デーモンナイトザルツヘルムが飛翔しながら出て来た。

 ウォーリスは身綺麗な黒い礼服を身に着け、何も持たない状態でいる。
 対象的にザルツヘルムは背中に悪魔の羽を生やしながら飛翔し、その両腕にはアルトリアとリエスティアの二人を抱えた状態だった。

 アルトリアは呪印の影響で衰弱している為、まともな抵抗も出来ていない。
 もう一人のリエスティアも、精神と魂を失っている為に最低限の生体反応以外は無反応のままだった。

 それを確認したウォーリスは微笑を浮かべた後、開かれた黒い塔へ視線を戻し、内部なかで見上げている側近アルフレッドに声を向ける。

「――……アルフレッド、留守を任せたぞ」

「お任せください」

 互いに微笑みの言葉を向けた後、ウォーリスはザルツヘルムと共に中空を飛びながら巨大な白い神殿の出入り口を目指す。
 その途中、ウォーリスは周囲を見渡しながら呟いた。

「ここが創造神オリジンの神殿……いや、宮殿と呼ぶべきか。……しかし、これほど巨大な大陸を浮かせているとなると……。……まさかこの宮殿、全て魔鋼マナメタルか?」

 巨大な白い神殿を上空から見渡すウォーリスは、それが魔鋼マナメタルで浮いているのだと察する。
 しかし自分達の知る魔鋼マナメタルと色合いが違う事に疑問を抱き、訝し気な表情を浮かべた。

「しかし、白い魔鋼マナメタルか。……魔鋼マナメタルそのものは巨大な魔力の集合体だが、まさか魔石と同じように属性付与させているのか? ……興味深いな、創造神オリジンの技術は」

 魔鋼マナメタルの使い方に関して未知なる技術がある事を感じ取り、したたかな微笑みを色濃くさせる。
 対象的にザルツヘルムの左腕に抱えられているアルトリアは、苦々しい面持ちを色濃くさせながら神殿を見て奇妙な既視感と郷愁を強めていた。

「何なのよ、これ……。……私は、この神殿ばしょを知ってる……?」

「……」

 そうした対象的な二人の声が聞こえながらも、ザルツヘルムは周囲に注意を向けながら悪魔の羽で飛び続ける。
 すると神殿の中腹まで辿り着いた時、アルトリアが何かを思い出すようにしながら声を大きく張り上げた。

「……ちょっと、止まりなさいっ!!」

「!」

「む?」

 突如として止まるよう声を上げるアルトリアに、ザルツヘルムとウォーリスは互いに驚きの表情を浮かべる。
 しかし二人は飛翔しながら進むことを止めないまま、次の瞬間には奇妙な感覚に襲われた。

「ウォーリス様、これは……」

「……どうやら、神殿そのものに仕掛けがあるらしい。……飛翔フライが継続できないな」

 二人は奇妙な感覚に襲われた直後、飛行高度が意識しないまま落ちた事を察する。
 すると素早く身を引かせながら影響の及ばない中空に留まり、この先へ進む為には飛翔できない事を悟った。

 しかしウォーリスは、その仕掛けを知るように警告したアルトリアへ注目を向ける。

「アルトリア嬢。何故、こんな仕掛けがある事を知っていた?」

「……ッ」

 問い掛けに答えず顔を逸らしたアルトリアを見て、ウォーリスは僅かに思考する。
 するとアルトリアが仕掛けを警告した意味を、自身の推論として述べた。

「……なるほど、君は創造神オリジンの魂を持つ生まれ変わりだ。どうやらその魂には、自分の創造物にどんな仕掛けを施しているか覚えているらしい。……ザルツヘルム、降りるぞ」

「ハッ」

「アルトリア嬢。君は是非、神殿ここの道案内を御願いするとしよう」

「……誰が……!」

 自身が抱く郷愁と既視感の理由について、ウォーリスの推測が当たっている可能性をアルトリアは察してしまう。
 その反発心から睨みと刺々しい拒絶の言葉を口にしたアルトリアに、ウォーリスは黒い微笑みを向けながら降下を続けた。

 神殿の出入り口まで舗装されている道に、ウォーリスとザルツヘルムは着地する。
 そして悪魔の羽を閉じるように背中へ収納したザルツヘルムの左腕から、ウォーリスは奪うようにアルトリアの身体を引き抜いた。

「ッ!!」

「我々のような客人ゲストを招くのは、城主あるじとしての役目だ。……もし逆らえば、お前の手足を引き千切って持ち易くさせてもらおう」

「……ッ」

「無駄な抵抗は止めておけ。お前を助けてくれる者など、天界ここには来ないのだから」

 ウォーリスの脅迫おどしを耳元で聞かされるアルトリアは、嫌悪の表情を浮かべながらも僅かな抵抗をめる。
 そして衰弱した身体で立たされた後、ウォーリスはザルツヘルムに声を向けた。

「ザルツヘルム、呪印くさりを少し弱めておけ。……ここからは、彼女自身の手も借りながら歩いてもらおう」

「承りました」

「アルトリア嬢、もし疲れたらすぐに言いたまえ。私が優しく抱えて、歩いてあげよう」

「……大きな、御世話よ……っ」

 白々しい程の笑みで優し気な声を向けるウォーリスに、アルトリアは嫌悪の意識を向ける。
 そして弱まっている身体に僅かながらもちからが戻り、立ったまま歩ける状態まで体調が戻った。

 しかし身体に巻かれるように刻まれている呪印が解けたわけではなく、魔法などもまだ使えない。
 それでも自分の意思あしで動けるようになった状況は、アルトリアにとっては好都合に思えた。

 アルトリアに先導させるウォーリスとザルツヘルムは、神殿へ向かいながら緩やかに歩き始める。
 それから三十分程の時間が経った頃、黒い塔の内部に待機しているアルフレッドに場面は戻った。

 開かれた天井や周囲を投影する映像を見ていたアルフレッドは、『天界エデン』の状況を確認しながら監視を続ける。
 そして上空に形成されている光の通路みちへ視線を向けた時、アルフレッドは瞳を見開きながら光の中を凝視した。

「……!」

 見開いた瞳から僅かに奇妙な音が鳴った後、何かに気付いたアルフレッドは投影した操作盤を操り始める。
 そして周囲に映し出している映像を全て確認し、更に自身ので捉えている光の通路みちを再確認しながら表情を強張らせた。

「……そうか、そういう事かッ!!」

 アルフレッドは操作盤で黒い塔を制御し、その攻撃機能システムを動かす。
 塔の表層を変化させながら数多の黒い棘を作り出したアルフレッドは、その先端から細くも強力な魔力砲撃を光の通路みちへ放った。

 その一つの砲撃が何かを掠め、空の景色が僅かに歪む。
 それを確認したアルフレッドは憤りに近い表情を向けながら、唸るような声で呟いた。

「やはり、こちらの機能システム介入ハッキングしていたな……!! 【魔王】と名乗っていた者の仕業かっ!!」

 怒りに震える声を向けながら、アルフレッドは歪んだ空の景色に向けて再び魔力砲撃を放つ。
 すると次の瞬間、その歪んだ景色の偽装なかから現れる箱舟ふねの姿を確認した。

 そして姿を見せた箱舟ノアは放たれた魔力砲撃を浴びながらも、それを逸らすように張られた強力な結界がそれを周囲に逸らし散らす。
 その箱舟ノア内部では警報音サイレンが鳴り響くと同時に、船内に『青』の声が響いた。

『――……こちらの偽装があばかれたっ!! これより、強行突入を行う!』

「!?」

「また、未来あのときみたいに突入なのっ!?」

『全員、傍にある物に掴まっていろ!』

 設置している通信器を通じて警告を向ける『青』に応じ、貨物室にいるエリクとマギルスは傍にある壁や扉に掴まる。
 すると箱舟の後部に備わる魔導機関エンジン全力フル稼働し、凄まじい魔力を噴射しながら箱舟ノアが急加速を始めた。

 箱舟ノア全体がその加速によって振動が生じ、中に居る者達に圧力を加える。
 それを撃墜すべく、アルフレッドの操る黒い塔は魔力砲撃が数多に襲い掛かった。

 こうして『天界エデン』の神殿へ上陸したウォーリス達は、その最奥を目指すべくアルトリアに案内をさせる。
 そしてついに『天界エデン』へ到着した箱舟ノアは、第一の障害であるアルフレッドの迎撃を潜り抜けようとしていた。
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