虐殺者の称号を持つ戦士が元公爵令嬢に雇われました

オオノギ

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革命編 七章:黒を継ぎし者

翔ける二人

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 五百年前に起きた創造神オリジンの計画が再稼働し、世界は再び破壊される危機を迎える。
 そうした最中、敵対していたウォーリスとアリアはマナの大樹における循環機構システムの制御権を取り戻す為に、一時的に協力の姿勢を見せた。

 そしてウォーリスが提案する方法を用いて、二人はこの事態に対処しようとする。
 更にそれには、ある二人の協力も必要としていた。

『――……腹の底に沈んでる、力を引き出せっ!!』

「ガァアアッ!!」

 そうした状況の中、マナの大樹付近にて視点は移る。
 マナの大樹から生み出されるウォーリスの姿をした『神兵』達を相手にするエリクは、夥しい数の戦闘を繰り広げていた。

 恐ろしい戦闘能力を有する数多くの『神兵』と一人で戦う事を可能としていたのは、鬼神じぶん能力ちから
 そして能力それを操る術を教え導く、鬼神フォウルの呼び掛けでもあった。

 それに応じる形で動き学ぶエリクは、一つの黒角を額から生やし、赤膚になった状態で黒い大剣を振るう。
 すると凄まじい轟音が鳴り響くと同時に、振られた正面に赤い魔力マナ生命力オーラの奔流によって作り出された斬撃が放たれた。

 それを浴びる『神兵』達は赤い斬撃に飲まれ、肉体を修復できずに消滅する。
 たった一撃で何人もの『神兵』を倒せるようになっていたエリクは、右目の眼球だけを白くさせた状態で理性を保ちながら乱れた息を吐き出していた。

「ハァ……ハァ……ッ!!」

『ヘバるのはまだはえぇ。――……また来るぞっ!!』

「ク……ッ!!」

 顔を伏せながら息を吐き出すエリクに、フォウルの声は新たな危機を伝える。
 包囲していた『神兵』達を殲滅し終えたエリクだったが、それを補充するようにマナの大樹は再び『神兵』達を吐き出し始めた。

 ある一定数の『神兵』を生み出すマナの大樹は、まるでエリクを危険視するように襲わせ続けている。
 既にそれ等を幾度も退け殲滅していたエリクは、自分の意思で鬼神フォウル能力ちからを扱う事で少しずつ慣れ始めていた。
 
「……ガァアアッ!!」

 エリクは変貌した姿から赤い魔力マナ生命力オーラを放ち、それを肉体に留めながら身に纏う。
 すると襲い掛かって来る『神兵』達と正面から向き合い、凄まじい跳躍と加速で瞬く間に彼等の肉体を真っ二つに切り裂いた。

 それと同時に『神兵』達の肉体が赤黒い炎で燃え盛り、肉体を再生できぬままに消滅していく。
 更に遠距離から魔力と生命力の混合砲撃を放つ『神兵』達に対しては、赤い斬撃を飛ばす事で砲撃ごと相手を消滅させていた。

 遠距離と近距離で襲撃して来る『神兵』達に対応できるようになったエリクは、まさに鬼神フォウルを彷彿とさせる戦闘を見せる。
 しかしそれは、この状況を膠着させる手段にしかなれていなかった。

「……クソッ、また……っ!!」

『あのマナの大樹をどうにかしねぇと、キリがねぇな』

「なら、あの大樹を壊すしか……!!」

『馬鹿が! それをやっちまったら、この世界は滅びるんだよっ!!』

「だが、このままでは……!」

 幾度も殲滅した『神兵』達が再びマナの大樹から生み出される光景を見上げながら、エリクとフォウルは互いに意見を衝突させる。

 無限に生み出される『神兵』達を倒し続けても、この事態を進展させる事には繋がらない。
 逆に『神兵』を生み出し続けているマナの大樹を破壊すれば、世界を巡る様々な循環が停止し、世界は滅びを辿ってしまう。

 この状況で耐え忍ぶ事しか出来ないエリクにとって、自分が出来る事は鬼神フォウル能力ちからを使って『神兵』を破壊することだけ。
 しかし強い徒労感を抱くエリクは、自分自身でこの事態を解決できる方法を考え続けていた。

 そうして再び生み出された『神兵』達が、エリクに向かいながら襲い掛かって来る。
 再びそれを迎撃しようと身構えた瞬間、エリクの思考にフォウルの声が響いた。

『……なんだ、一匹だけ違う姿をしてやがる。……あの姿は……!』

「!?」

 エリクを通してフォウルが確認した『神兵』の一人が、今まで模っていたウォーリスとは異なる容姿をしている事に気付く。
 それを自分でも確認したエリクは、その姿を見て両目を見開きながら驚きを浮かべた。

 それは他の『神兵』と同じく銀色の髪と白い肌ながらも、ウォーリスのような短髪と男性の肉体ではない。
 エリクにとってその姿は、見慣れた女性の姿を模しているように見えた。

 すると次の瞬間、その女性の姿を模した『神兵』が異なる動きを見せる。
 自分エリクに向かって行く『神兵』達に魔力を用いた魔法攻撃を行い、彼等の攻撃を妨害するような光景を見せた。

 それを確認したエリクは、驚きを浮かべながらも確信を得たように呟く。

「……まさか、アレは……アリアなのか……!?」

神兵やろう共の肉体を使って、自分の肉体を作り出したのか。……しかし、何やってんだ。あの女!』

 エリクとフォウルは異なる姿で出現した『神兵』を、マナの大樹に侵入したアリアだと断定する。
 しかし『神兵』を襲いながらある場所へ目指すように飛び向かうアリアは、自分エリクとの合流を目指そうとしていない事に気付いた。

 すると突如として、エリクに向かっていた『神兵』達がアリアに向けて視線を動かす。
 それを追うように飛翔し駆け始めた『神兵』達の急な動きに、迎撃しようとしていたエリクは驚愕した表情を浮かべた。

「なんだ、どうした?」

『……神兵やろう共、目標を切り替えやがった』

「なに? だが――……まさかっ!!」

『決まってるだろ。あの嬢ちゃんだよっ!!』 

 自分にしか襲い掛かって来なかった『神兵』の目標が、新たに出現したアリアに振り向いた事をエリクとフォウルは察する。
 そして肉体能力を最高潮に高めたエリクは、凄まじい速度で駆けながらアリアが居る場所へ向かった。

 すると『神兵』達が、アリアに襲い掛かりながら夥しい攻撃を浴びせ始める。
 それを辛うじて回避し結界で防ぐアリアだったが、接近した『神兵』の一人に生命力の剣で切り払われながら地面まで吹き飛ばされた。

「――……クッ!!」

 肉体を切り刻まれる事は防ぎながらも、アリアは飛翔していた状態から地面へ叩きつけられてしまう。
 それでも起き上がろうとするアリアに、『神兵』達は生命力と魔力を混ぜ合わせた混合砲撃を放とうとしていた。

 『神兵』達の攻撃を防ごうと両腕を掲げて結界を形成するアリアに、ある光景が飛び込む。
 それは赤い閃光と共に放たれる巨大な斬撃が、『神兵』を瞬く間に赤黒く燃やし消滅させる光景と、自分を呼ぶように叫ぶエリクの声だった。

「――……アリアッ!!」

「エリク!」

 二人は名前を呼び合い、互いに意思を持っている事を確認し合う。
 互いに風貌が変化した姿となっていながらも、それでも人格を残している様子は僅かな安堵を浮かべさせた。

 しかし追撃するように押し寄せる『神兵』達を見上げながら、エリクはアリアに問い掛けるように叫ぶ。

「アリアッ!! この状況は、どういうことなんだっ!?」

創造神オリジンの計画よっ!! それが再起動して、また世界を滅ぼそうとしてるのっ!!」

「なにっ!?」

「それを止める為には、創造神オリジンがマナの大樹を掌握するしかない! 私が創造神オリジンの肉体に入って、精神なかで眠ってる私を叩き起こしに行くわっ!!」

「それは……!?」

 状況を端的に教えたアリアは、事態を解決する為に自分が行おうとしている事を明かす。
 それを知ったエリクは、改めてアリアが向かおうとしている先に創造神オリジンが居る事を理解した。

 しかしアリアが実行する行動を知ったエリクは、表情を強張らせながら躊躇う様子が見える。
 その方法を使えば死者であるアリアの魂がどうなるか、エリクには予想も出来なかったのだ。

 しかしその答えを問い掛ける事も待たず、アリアに襲い掛かろうとする『神兵』達をエリクは一薙ぎの斬撃と切り込みで抑え込む。
 そうした間に再び立ち上がったアリアは、肉体を浮遊させながら伝えた。

神兵やつらは、創造神オリジンを害そうとする者を守ろうとしているっ!! だから、私と貴方を襲って来るのっ!!」

「俺が、創造神オリジンを害するっ!?」

「貴方、鬼神フォウル能力ちからを使ってるでしょっ!! 多分、創造神オリジンと鬼神フォウルは過去に戦った事があるのよ。その記録に反応して、『神兵』達は防衛行動をしてるんだわっ!!」

「なにっ!?」

『――……ケッ。確かに俺は、ジュリアの野郎と殺し合った事もあるからな』

「!」

 突如として出現した『神兵』達が襲って来た理由を知り、エリクは微妙な面持ちを浮かべてしまう。

 自分を生かす為に生命力へ転換させていた鬼神フォウルの魔力に反応し、『神兵』が襲って来ていたのだ。
 更に自分が強く鬼神の能力ちからを振るい続ける事で、『神兵』達の防衛行動は衰える事の無い。

 奇しくも助けられていたはず鬼神フォウル能力ちからがこうした状況を作り出している事を知ったエリクは、それでも悪態を漏らすことなく『神兵』達を叩き切り続けた。
 そんなエリクに、アリアは再び叫びながら伝える。

「エリクッ!! 貴方は私を援護して、『神兵あいつを倒し続けてっ!!」

「アリアッ!?」

「私は、創造神オリジンのところまで行くわっ!!」

 そう伝えたアリアは飛翔しながら押し寄せる『神兵』達の攻撃を掻い潜り、その先へと向かう。
 そこには結界を張った創造神オリジンとケイルが意識も無いまま横たわり、その周囲には数多くの『神兵』達が守るように囲んでいる光景が見えた。

 エリクはそれを確認しながら後方うしろから迫る『神兵』達を薙ぎ払いつつ、アリアを援護する為に創造神オリジンがいる場所まで走る。
 こうして二人はこの事態を解決させる為に、自分がやるべき事を目指しながら突き進むのだった。
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