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革命編 八章:冒険譚の終幕
親しい友に
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国名や情勢が変わった故郷へ戻ったエリクは、そこで黒獣傭兵団の面々と再会する。
彼等は自分達の手で懸けられていた冤罪を解き、共和王国の王都にて広い拠点を持つことも可能ほどの立場を得ていた。
エリクは訪れた拠点にてワーグナーとマチスに再会すると、改めて彼等に感謝を伝える。
それから団員も含めた黒獣傭兵団の面々は、団長であるエリクの帰還と再会を祝して食堂内で酒を用いた宴を始めた。
その際、食堂内の誰も座っていない五つの椅子が一つの机をかこんでいる。
更に机の上に五つの木製器をワーグナーが置き、酒瓶を傾けて満ちるように注いだ。
エリクはそれを見て、ワーグナーに問い掛ける。
「それは?」
「死んだ連中の分だ。アイツ等も、この宴を楽しみにしてたからな」
「そうなのか。……俺にも、注がせてくれ」
「おう。お前に注がれたら、アイツ等も喜ぶさ。ー……ありがとよ、お前等……」
死んだ団員達に弔いの酒を注ぐ役目を、エリクは自ら申し出る。
それを喜ぶワーグナーは、共和王国に潜入した時に死んだ五人の団員達に改めて感謝を伝えてると、彼等が溢れるまで注がれた木製器を持ちながら笑っている姿が見えた気がした。
こうして開始された賑やかな宴は夜まで続き、それぞれが満足する表情を見せたまま食堂内で倒れるように眠る姿が見える。
するとそうした惨状の食堂内にて、酒を飲みながら起きているワーグナーが団員達の醜態に飽きれる様子を浮かべ、隣に座るエリクに話し掛けた。
「――……まったく。何年経っても、コイツ等は変わらねぇな。情けねぇ」
「そうか?」
「酒に飲まれない量を把握してないようじゃ、まだまだ一人前じゃねぇってことさ。――……と言っても、俺もつい最近になって分かって来たんだがな」
そう言いながら酒が注がれた硝子製の器を机に置くワーグナーは、酒気を帯びた赤い頬を浮かべながら微笑みを浮かべる。
すると改めてエリクの方を見て、こうした提案を伝えた。
「酔い覚ましだ。ちょっと、庭に出ようぜ」
「ああ」
椅子から立ち上がり庭に出る事を提案するワーグナーに、エリクは特に理由も聞かずに応じる。
そして二人は床に倒れて寝ている団員達を上手く避けながら食堂を出て、渡り廊下を通り庭へ足を踏み入れた。
するとワーグナーは星が見える夜空を見上げながら、隣に立つエリクに話し掛ける。
「――……エリク。俺の伝言、聞いてるんだろ?」
「俺に、使節団を任せたいという話か?」
「そうだ。……実はその話、まだ団員達にも言ってない」
「!」
「アイツ等に言うと、まだまだやれるでしょとか言うだろうからな。……俺も、もう歳だ。最初はやる気満々だったんだが、各国を行き来すんのがかなりしんどくなってきたんでな。……いい加減、腰を落ち着けなきゃと思ってる」
「……」
頭を掻きながら弱々しい言葉を漏らすワーグナーを見るエリクは、改めて彼の年齢が五十を超えているだろうことを思い出す。
傭兵としての日々で鍛え抜かれた肉体は皺が増えて徐々に痩せ細り、髪も地毛の茶色よりも白が目立っていた。
初老を迎えるその姿は以前のような覇気が薄まり、隣に立つエリクと比べても弱々しく見える。
そんな彼の視線に気付くワーグナーも、微笑みを浮かべながら話を続けた。
「団員も良い歳だし、使節団を任せちまって良いと思ってはいるんだが。……ただ頼もしい奴が付いてねぇと、何か遭った時に不安なんだ」
「……だから、俺にか」
「ああ。お前が戻って来たって聞いて、頼めねぇかなってさ。王様を通して、ローゼン公に伝えさせたんだ」
「……黒獣傭兵団を辞めて、引退したら……どうするんだ?」
「共和王国の、ある村に行こうと思ってる」
「村?」
「マチルダが居た村だよ」
「!」
ワーグナーはそう話し、黒獣傭兵団を去った後の身の振り方を教える。
その行先を聞いたエリクは驚きを浮かべると、それを選んだ理由を彼は話した。
「俺達が二年前に、あの村の生き残りを見つけたって話は聞いたか?」
「ああ」
「その中には、あの村の関係者も居たんだ。……その中に、マチルダの息子がいた」
「!」
「あの村で事件が起こった時には、長男だった息子は別領地で農作物の勉強をしてたらしい。それで事件に巻き込まれずに済んだんだが、故郷の事件を聞いて戻ったら、ウォーリスの手下になってる兵士に捕まって。あの村の連中と一緒に、北の領地へ送られてたんだとよ。……殺されてなかっただけ、幸いだ」
「……そうなのか」
「息子は村の連中から事実を聞いて、黒獣傭兵団が無実だって事を知ったようだったが。……でも、俺達があの村の連中を……アイツの母親や父親、そして妹と弟を守れなかった事に変わりはない」
「……」
「息子は今、村の連中と一緒にあの村に戻ってる。そして家を建て直して畜産や農作業をしてるよ。……別に父親代わりなんかするつもりは無いがよ、その村でマチルダの息子がどう暮らすか見届けてぇ。残りの寿命が、許す限りな」
「……そうか」
ワーグナーは虐殺が起きた村の生き残りと、想い人の息子がいる村へ行く事を伝える。
それを聞いたエリクはその理由に納得して短い言葉を返すと、ワーグナーは改めて頼んだ。
「俺の頼み、受けてくれるか? エリク」
「……」
ワーグナーの頼みを改めて聞いたエリクは、夜空を眺めながら暫しの沈黙を浮かべる。
その沈黙が考えているからこそだと察しているワーグナーは、そのまま答えが返って来るのを待った。
すると二分ほどの沈黙を終え、エリクは答えを返す。
「……すまない」
「そうか、駄目か」
「ああ。……今は、駄目なんだ」
「今は?」
「……アリアがまだ、何かやろうとしている」
「?」
「多分、また世界を巻き込むような問題が起きるようだ。……俺はそれを解決する為に、アリア達と一緒に行くつもりだ」
「そうなのかよ。だったら、使節団なんかやってる暇は無いか」
「すまない。……ただ、その問題も解決できたら。やってみたいとは思う」
「ほぉ。なら、どのくらいで終わりそうだ?」
「問題が起きるのがいつかも、俺にも分からない。……だから、答えられないな」
「……そっか。……分かった!」
エリクの返答を聞いたワーグナーは、それに納得しながら笑みを浮かべる。
そして腕を組みながら改めて元相棒を見ると、改めてこう言い放った。
「それにしても、お前がそんだけあの嬢ちゃんに首ったけとはな。前もそうだったが、意外っつぅか……いや。お前も立派に、成長してるってことだな」
「お前も、成長していると思うぞ」
「ハッ、俺のは老いたっつぅんだよ。最近、馬車とか馬とかに乗ると腰が痛くなって堪らねぇぜ」
「そうなのか。アリアに治してもらうか?」
「別にいいよ。……そういや、治すと言えば。お前、アスラント同盟国ってとこに親友を作ったって?」
「親友?」
「使節団で同盟国に寄った時に、グラドっつぅ男の兵士に会ってな。俺達が黒獣傭兵団だって聞いて、エリクの事を聞いて来た事があった」
「!」
「昔、お前とあの嬢ちゃんに家族ぐるみで世話になったってな。お前とは親友だからって、同盟国に寄る度に顔を会わしてよ。団員達とも気が合って、よく一緒に酒飲んでお前の話をしてるぜ。……お前が戻ったら、また一緒に食事したいってよ。家族でな」
「そうか。……グラドは、元気そうだったか?」
「元気だったぜ。今は同盟国の軍で箱舟を飛ばす部隊を率いてるらしい。あちこち回ってるという意味では、俺達と同じような立場かもな」
「そうか。なら、良かった」
ワーグナーからグラドの話を聞いたエリクは、新旧の親友が出会いこうした繋がりを築いている事に奇妙な嬉しさを感じる。
そしてそれから二人は夜空の下で積もる会話を続け、これまで自分が経験した出来事や体験を話し合った。
それから一夜が経ち、共和王国は朝を迎える。
すると団員のほとんどが二日酔いに悩む様子を見せる中で、拠点に訪問者が訪れた。
それを出迎えるワーグナーは、エリクが休む客室に訪れる。
「――……エリク、起きてるか?」
「ああ。どうした?」
「実は、お前に会いたいっつぅ人が来ててな。良いか?」
「誰だ?」
「ほら、夜に話したろ。俺達が随分と世話になってた男だ。今は、国王の相談役になってる」
「……まさか?」
そう言いながら腰を下ろす寝台から立ち上がったエリクは、扉を開けたワーグナーの後ろに立つ人影に気付く。
するとワーグナーは扉の道を譲るように身体を横へズラし、髪を隠す帽子を深々と被る人物を目にした。
そしてその人物は帽子を脱ぎ、改めてエリクの前に素顔と金の髪色を晒す。
それを見たエリクはその容姿に既視感を覚えると、その人物は不敵な微笑みを見せながら声を向けた。
「――……こうして顔を合わせるのは、初めてになるか」
「……お前は、アリアの父親か?」
「ふっ。まぁ、そうだがな。今はただのクラウスだ。……娘が随分と世話になったようだな。傭兵エリク」
部屋の中でエリクが向き合うのは、アルトリアやその兄セルジアスと同じ金髪碧眼の容姿を持つ壮年の男性。
あのローゼン兄妹の父親であり、生死と身分を偽って現国王の補助している、クラウス=イスカル=フォン=ローゼンだった。
彼等は自分達の手で懸けられていた冤罪を解き、共和王国の王都にて広い拠点を持つことも可能ほどの立場を得ていた。
エリクは訪れた拠点にてワーグナーとマチスに再会すると、改めて彼等に感謝を伝える。
それから団員も含めた黒獣傭兵団の面々は、団長であるエリクの帰還と再会を祝して食堂内で酒を用いた宴を始めた。
その際、食堂内の誰も座っていない五つの椅子が一つの机をかこんでいる。
更に机の上に五つの木製器をワーグナーが置き、酒瓶を傾けて満ちるように注いだ。
エリクはそれを見て、ワーグナーに問い掛ける。
「それは?」
「死んだ連中の分だ。アイツ等も、この宴を楽しみにしてたからな」
「そうなのか。……俺にも、注がせてくれ」
「おう。お前に注がれたら、アイツ等も喜ぶさ。ー……ありがとよ、お前等……」
死んだ団員達に弔いの酒を注ぐ役目を、エリクは自ら申し出る。
それを喜ぶワーグナーは、共和王国に潜入した時に死んだ五人の団員達に改めて感謝を伝えてると、彼等が溢れるまで注がれた木製器を持ちながら笑っている姿が見えた気がした。
こうして開始された賑やかな宴は夜まで続き、それぞれが満足する表情を見せたまま食堂内で倒れるように眠る姿が見える。
するとそうした惨状の食堂内にて、酒を飲みながら起きているワーグナーが団員達の醜態に飽きれる様子を浮かべ、隣に座るエリクに話し掛けた。
「――……まったく。何年経っても、コイツ等は変わらねぇな。情けねぇ」
「そうか?」
「酒に飲まれない量を把握してないようじゃ、まだまだ一人前じゃねぇってことさ。――……と言っても、俺もつい最近になって分かって来たんだがな」
そう言いながら酒が注がれた硝子製の器を机に置くワーグナーは、酒気を帯びた赤い頬を浮かべながら微笑みを浮かべる。
すると改めてエリクの方を見て、こうした提案を伝えた。
「酔い覚ましだ。ちょっと、庭に出ようぜ」
「ああ」
椅子から立ち上がり庭に出る事を提案するワーグナーに、エリクは特に理由も聞かずに応じる。
そして二人は床に倒れて寝ている団員達を上手く避けながら食堂を出て、渡り廊下を通り庭へ足を踏み入れた。
するとワーグナーは星が見える夜空を見上げながら、隣に立つエリクに話し掛ける。
「――……エリク。俺の伝言、聞いてるんだろ?」
「俺に、使節団を任せたいという話か?」
「そうだ。……実はその話、まだ団員達にも言ってない」
「!」
「アイツ等に言うと、まだまだやれるでしょとか言うだろうからな。……俺も、もう歳だ。最初はやる気満々だったんだが、各国を行き来すんのがかなりしんどくなってきたんでな。……いい加減、腰を落ち着けなきゃと思ってる」
「……」
頭を掻きながら弱々しい言葉を漏らすワーグナーを見るエリクは、改めて彼の年齢が五十を超えているだろうことを思い出す。
傭兵としての日々で鍛え抜かれた肉体は皺が増えて徐々に痩せ細り、髪も地毛の茶色よりも白が目立っていた。
初老を迎えるその姿は以前のような覇気が薄まり、隣に立つエリクと比べても弱々しく見える。
そんな彼の視線に気付くワーグナーも、微笑みを浮かべながら話を続けた。
「団員も良い歳だし、使節団を任せちまって良いと思ってはいるんだが。……ただ頼もしい奴が付いてねぇと、何か遭った時に不安なんだ」
「……だから、俺にか」
「ああ。お前が戻って来たって聞いて、頼めねぇかなってさ。王様を通して、ローゼン公に伝えさせたんだ」
「……黒獣傭兵団を辞めて、引退したら……どうするんだ?」
「共和王国の、ある村に行こうと思ってる」
「村?」
「マチルダが居た村だよ」
「!」
ワーグナーはそう話し、黒獣傭兵団を去った後の身の振り方を教える。
その行先を聞いたエリクは驚きを浮かべると、それを選んだ理由を彼は話した。
「俺達が二年前に、あの村の生き残りを見つけたって話は聞いたか?」
「ああ」
「その中には、あの村の関係者も居たんだ。……その中に、マチルダの息子がいた」
「!」
「あの村で事件が起こった時には、長男だった息子は別領地で農作物の勉強をしてたらしい。それで事件に巻き込まれずに済んだんだが、故郷の事件を聞いて戻ったら、ウォーリスの手下になってる兵士に捕まって。あの村の連中と一緒に、北の領地へ送られてたんだとよ。……殺されてなかっただけ、幸いだ」
「……そうなのか」
「息子は村の連中から事実を聞いて、黒獣傭兵団が無実だって事を知ったようだったが。……でも、俺達があの村の連中を……アイツの母親や父親、そして妹と弟を守れなかった事に変わりはない」
「……」
「息子は今、村の連中と一緒にあの村に戻ってる。そして家を建て直して畜産や農作業をしてるよ。……別に父親代わりなんかするつもりは無いがよ、その村でマチルダの息子がどう暮らすか見届けてぇ。残りの寿命が、許す限りな」
「……そうか」
ワーグナーは虐殺が起きた村の生き残りと、想い人の息子がいる村へ行く事を伝える。
それを聞いたエリクはその理由に納得して短い言葉を返すと、ワーグナーは改めて頼んだ。
「俺の頼み、受けてくれるか? エリク」
「……」
ワーグナーの頼みを改めて聞いたエリクは、夜空を眺めながら暫しの沈黙を浮かべる。
その沈黙が考えているからこそだと察しているワーグナーは、そのまま答えが返って来るのを待った。
すると二分ほどの沈黙を終え、エリクは答えを返す。
「……すまない」
「そうか、駄目か」
「ああ。……今は、駄目なんだ」
「今は?」
「……アリアがまだ、何かやろうとしている」
「?」
「多分、また世界を巻き込むような問題が起きるようだ。……俺はそれを解決する為に、アリア達と一緒に行くつもりだ」
「そうなのかよ。だったら、使節団なんかやってる暇は無いか」
「すまない。……ただ、その問題も解決できたら。やってみたいとは思う」
「ほぉ。なら、どのくらいで終わりそうだ?」
「問題が起きるのがいつかも、俺にも分からない。……だから、答えられないな」
「……そっか。……分かった!」
エリクの返答を聞いたワーグナーは、それに納得しながら笑みを浮かべる。
そして腕を組みながら改めて元相棒を見ると、改めてこう言い放った。
「それにしても、お前がそんだけあの嬢ちゃんに首ったけとはな。前もそうだったが、意外っつぅか……いや。お前も立派に、成長してるってことだな」
「お前も、成長していると思うぞ」
「ハッ、俺のは老いたっつぅんだよ。最近、馬車とか馬とかに乗ると腰が痛くなって堪らねぇぜ」
「そうなのか。アリアに治してもらうか?」
「別にいいよ。……そういや、治すと言えば。お前、アスラント同盟国ってとこに親友を作ったって?」
「親友?」
「使節団で同盟国に寄った時に、グラドっつぅ男の兵士に会ってな。俺達が黒獣傭兵団だって聞いて、エリクの事を聞いて来た事があった」
「!」
「昔、お前とあの嬢ちゃんに家族ぐるみで世話になったってな。お前とは親友だからって、同盟国に寄る度に顔を会わしてよ。団員達とも気が合って、よく一緒に酒飲んでお前の話をしてるぜ。……お前が戻ったら、また一緒に食事したいってよ。家族でな」
「そうか。……グラドは、元気そうだったか?」
「元気だったぜ。今は同盟国の軍で箱舟を飛ばす部隊を率いてるらしい。あちこち回ってるという意味では、俺達と同じような立場かもな」
「そうか。なら、良かった」
ワーグナーからグラドの話を聞いたエリクは、新旧の親友が出会いこうした繋がりを築いている事に奇妙な嬉しさを感じる。
そしてそれから二人は夜空の下で積もる会話を続け、これまで自分が経験した出来事や体験を話し合った。
それから一夜が経ち、共和王国は朝を迎える。
すると団員のほとんどが二日酔いに悩む様子を見せる中で、拠点に訪問者が訪れた。
それを出迎えるワーグナーは、エリクが休む客室に訪れる。
「――……エリク、起きてるか?」
「ああ。どうした?」
「実は、お前に会いたいっつぅ人が来ててな。良いか?」
「誰だ?」
「ほら、夜に話したろ。俺達が随分と世話になってた男だ。今は、国王の相談役になってる」
「……まさか?」
そう言いながら腰を下ろす寝台から立ち上がったエリクは、扉を開けたワーグナーの後ろに立つ人影に気付く。
するとワーグナーは扉の道を譲るように身体を横へズラし、髪を隠す帽子を深々と被る人物を目にした。
そしてその人物は帽子を脱ぎ、改めてエリクの前に素顔と金の髪色を晒す。
それを見たエリクはその容姿に既視感を覚えると、その人物は不敵な微笑みを見せながら声を向けた。
「――……こうして顔を合わせるのは、初めてになるか」
「……お前は、アリアの父親か?」
「ふっ。まぁ、そうだがな。今はただのクラウスだ。……娘が随分と世話になったようだな。傭兵エリク」
部屋の中でエリクが向き合うのは、アルトリアやその兄セルジアスと同じ金髪碧眼の容姿を持つ壮年の男性。
あのローゼン兄妹の父親であり、生死と身分を偽って現国王の補助している、クラウス=イスカル=フォン=ローゼンだった。
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