1,270 / 1,360
革命編 八章:冒険譚の終幕
削り合う命
しおりを挟む天界で激突したエリクとログウェルの戦闘は、地上の人々にも映像として見せられる。
その勝敗が自分達の命運を決めることを知り、人々は二人に対してそれぞれの信仰を向けた。
信仰は到達者であるエリクとログウェルの肉体に宿り、力へと変わる。
彼等が振るう剣に自然と力が増し始め、その余波が魔鋼で覆われた地面を徐々に意図も容易く砕き始めた。
「――……ッ!!」
「ほっほぉっ!!」
ケイルと同じ『霞の境地』へ至り始めるエリクは、相手の動作によって迫る長剣の軌道を把握し始める。
そして徐々に反撃が行えるようになり、大剣のみならず大剣を囮とした格闘で攻撃も始めた。
対するログウェルは徐々に速くなる相手の動作と反撃に、喜々とした笑みを浮かべて対応する。
それ等の反撃すら一度として掠らないログウェルは、更に戦士の成長を促す為に剣戟を激しくさせ続けた。
その周囲は徐々に崩壊し、二人の足場は不安定になっていく。
すると次の瞬間、右足で踏み込んだログウェルの足場が僅かに沈み込み、安定していた姿勢が崩れた。
「!」
「ガァアッ!!」
エリクはその隙を見逃さず、凄まじい膂力と速度で振った大剣を右手で薙ぎ向ける。
そしてコンマ一秒にも満たぬ速度で迫る大剣に、ログウェルは右手に持つ長剣と左腕での防御に入った。
その瞬間、エリクの大剣が防御している長剣へ激突する。
するとログウェルはその場から大きく吹き飛ばされ、その先に在る建築物跡へ激突した。
「!!」
「おぉっ、やったかっ!?」
遠く離れた位置に置く起動戦士の操縦席に居るバルディオスとユグナリスは、戦況に変化が及んだ事に驚く。
そしてログウェルが吹き飛ばされた場所を映像で拡大すると、崩れた建築物跡から舞う粉末煙から立った姿の影が浮かび上がった。
それは吹き飛ばされたログウェルであり、長剣と共に防御した左腕の袖が大きく破れている。
しかし左腕や右手に握る長剣が折れている様子は無く、バルディオスはそれに驚愕の声を零した。
「む、無傷なのか……。アレを受けて……」
「ログウェル……ッ」
魔鋼すら容易く破壊できるようになったエリクの全力を、ログウェルは完全に防いでみせる。
それはログウェルの耐久力が魔鋼すら凌駕している事を意味し、その硬度を最も知るバルディオスに寒気を感じさせた。
するとログウェルは粉末煙から出て来ると、エリクの方へ歩み寄りながら微笑みの声を向ける。
「――……ほっほっほっ。良い感じじゃのぉ、傭兵エリク」
「……さっきのは、ワザとか?」
「だったら、どうするね?」
「……」
敢えてそう答える老騎士に、全身から流血するエリクは表情の渋らせる。
そんな戦士に微笑んだ表情を僅かに引かせた後、ログウェルは細めた視線と共に声を向けた。
「さて、準備運動はこれくらいで良いかね?」
「!」
「お前さんの望み通り、ここからは本気としようか。――……『生命の風』」
「……ッ!!」
ログウェルはこれまでの戦闘を準備運動だと言い放ち、自身の纏う生命力を『生命の風』に変える。
それと同時にその場から消えた瞬間、エリクの視線が微かに動きながら無拍子で大剣を振り薙いだ。
すると次の瞬間、二十メートル以上は離れていた二人が衝突する程の距離で互いの剣を激突させる。
『生命の風』を纏わせたログウェルの移動速度は先程より遥かに速く、エリクは勘に頼った迎撃で辛うじて防ぐ事が出来た。
しかし激突したログウェルの長剣にも、『生命の風』が纏わされている。
それはエリクの纏わせている生命力を削り飛ばし、右手に持つ大剣の刃を欠けさせ、右腕を切り刻み流血を起こさせた。
「ッ!?」
「さぁ、コレはどうするかねっ!!」
「クッ!!」
『生命の風』が初見であるエリクにとって、ログウェルが大剣や両腕を削り切る能力に驚愕を浮かべる。
しかし先程以上の速度で斬り込まれるログウェルの剣戟に、その能力を解明する暇すら与えられない。
今度は防御ではなく最小限の動きで長剣を避けたエリクだったが、纏わせている『生命の風』が再びエリクの正面を傷付ける。
それによって間近での防御と回避が不可能である事を理解し、何かを思い付いたエリクは大きく後方へ高く飛び退いた。
それを見たログウェルは鋭い眼光を見せ、『生命の風』を身体に纏わせた。
「逃げるのは――……いかんのぉっ!!」
「っ!!」
中空に飛び退いたエリクにログウェルは再び迫り、互いの武器を衝突させる。
それによりエリクの大剣は再び欠け、それを持つ両腕を再び切り裂いた。
しかしその痛みに耐えるエリクは、それを待っていたかのように雄叫びを上げる。
「オォオオッ!!」
「む!」
次の瞬間、腕力を高めたエリクは大剣を薙いでログウェルを地面側へ弾くように叩き出す。
それにより地面へ押し出されたログウェルを見ながら、自身の大剣に膨大な生命力と鬼神の魔力を一瞬で集めた。
更にログウェルの着地直前、エリクは大剣から鬼神斬撃を放つ。
しかもその斬撃範囲は広く、ログウェルが着地する瞬間の硬直をエリクは狙った。
するとログウェルは微笑みを強め、素早く背中を地面側に向け、右手で握る長剣の刃先をエリクに向ける。
それと同時に左手をエリクに向け、『生命の風』で生み出した弓と弦に、自身の長剣を矢に見立てて右手で引いた。
「――……『天を射抜く矢よ』っ!!」
「っ!?」
弦を引き終わった長剣の矢は右手から離れ、凄まじい加速と『生命の風』を纏わせながら押し寄せる鬼神斬撃へ向かう。
そして二つの攻撃が衝突した瞬間、エリクの放った鬼神斬撃をログウェルの長剣が貫通した。
更に貫通した長剣は中空に留まるエリクに向かい、彼自身の肉体を貫こうとする。
それを一早く勘で察したエリクは、大剣の腹を盾にしながら矢を防ぎ止めた。
しかし防御した大剣の腹に亀裂が入り、エリクが表情を歪める。
それで咄嗟に身体を捻り、長剣の威力を防ぐのではなく受け流すことで辛うじて回避に成功した。
それと同時に地面へ向かっていた鬼神斬撃も着弾し、その場に凄まじい衝撃波を生み出す。
天を穿つ光と地面を砕く光が同時に発生し、その場を視認できぬ程の粉末煙で満たした。
数秒後、破壊された地面へ一つの影が落下する。
それは中空に居たエリクであり、その左腕部分は抉れるような傷と流血を生じさせていた。
そんなエリクが見ている方角にもまた、一つの人影が見える。
それは地上に着地していたログウェルであり、その様子は衣服こそボロボロながらも、老人とは思えぬ鍛え抜かれた肉体には流血すら無い微細な傷しか見えなかった。
「――……ハァ……ハァ……ッ!!」
「――……ほっほっほっ、良い斬撃じゃったのぉ。傷を付けられたのは、久し振りじゃわい」
互いに傷を負いながらも、その度合いは全く異なる。
同じ到達者である為に二人の傷の治癒や回復が出来ない中で、エリクの損傷はログウェルと比べても圧倒的に多かった。
それでもエリクは戦意を衰えさせず、大剣を支えにしながら立ち上がる。
しかし次の瞬間、支えとしている大剣の腹に入った亀裂が広がり、嫌な音を響かせた。
「……!!」
大剣の亀裂は左右の幅を満たすように届き、そこから砕け折れる。
地面に落ちる大剣の刃先と破片を見て唖然とした様子を浮かべるエリクに対して、ログウェルは真上を見ながら僅かに足を退かせた。
するとログウェルの直上から、彼自身が放った長剣が降り注ぐ。
それを回避し地面に刺さった長剣の柄を右手で握ったログウェルは、大剣を失ったエリクと向かい合った。
「お前さんの大剣、砕けてしまったのぉ」
「……っ」
「じゃがな、戦いを止める気は無いぞい」
「……くっ!!」
大剣の大半を失いながらも残る部分となる柄と根元を握るエリクは、それでも身構える。
それを見るログウェルは口元を微笑ませ、再び『生命の風』を身体と長剣に纏わせた。
こうして老騎士との戦いの最中、エリクは自身の大剣を破壊される。
それでも止まらぬ二人の死闘は、自らの命を削る決着へ進み続けた。
0
あなたにおすすめの小説
まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?
せいめ
恋愛
政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。
喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。
そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。
その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。
閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。
でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。
家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。
その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。
まずは亡くなったはずの旦那様との話から。
ご都合主義です。
設定は緩いです。
誤字脱字申し訳ありません。
主人公の名前を途中から間違えていました。
アメリアです。すみません。
積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。
【完結】追放された子爵令嬢は実力で這い上がる〜家に帰ってこい?いえ、そんなのお断りです〜
Nekoyama
ファンタジー
魔法が優れた強い者が家督を継ぐ。そんな実力主義の子爵家の養女に入って4年、マリーナは魔法もマナーも勉学も頑張り、貴族令嬢にふさわしい教養を身に付けた。来年に魔法学園への入学をひかえ、期待に胸を膨らませていた矢先、家を追放されてしまう。放り出されたマリーナは怒りを胸に立ち上がり、幸せを掴んでいく。
悪役令嬢の兇器はドス黒い鈍器《パイプ椅子》です ~前世は病弱、今世は物理最強。魔法もチートも私には勝てません~
みやもと春九堂@月館望男
ファンタジー
【通称:パイプ椅子令嬢/本編完結】
前世で病弱のまま人生を終えた少女は、異世界で辺境伯令嬢レヴィーネとして転生した。
二度目の人生で彼女が選んだ生き方は、「誰よりも強く、自由であること」。
魔法が支配する世界で、彼女が最も信頼する武器は――鍛え上げた肉体と、ドワーフ謹製の黒鋼製パイプ椅子だった。
学園での陰謀、洗脳国家、地下闘技場、鎖国する和風国家、そして大陸規模の経済と交通網。
あらゆる理不尽を前にして、レヴィーネは一切の迷いなく“物理”で道を切り拓いていく。
相棒となる元聖女アリス、実務を一手に引き受ける秘書ミリア、そして個性豊かな仲間たち。
筋肉と再生と経済――三つの力が噛み合ったとき、彼女たちの行く先は国家の枠を超えていく。
これは、悪役令嬢という役割を“ヒール”として引き受けた一人の少女が、
世界を相手にリングへ上がり続けた物語。
爽快さとスケールを両立した、長編ファンタジー。
婚約破棄のその場で転生前の記憶が戻り、悪役令嬢として反撃開始いたします
タマ マコト
ファンタジー
革命前夜の王国で、公爵令嬢レティシアは盛大な舞踏会の場で王太子アルマンから一方的に婚約を破棄され、社交界の嘲笑の的になる。その瞬間、彼女は“日本の歴史オタク女子大生”だった前世の記憶を思い出し、この国が数年後に血塗れの革命で滅びる未来を知ってしまう。
悪役令嬢として嫌われ、切り捨てられた自分の立場と、公爵家の権力・財力を「運命改変の武器」にすると決めたレティシアは、貧民街への支援や貴族の不正調査をひそかに始める。その過程で、冷静で改革派の第二王子シャルルと出会い、互いに利害と興味を抱きながら、“歴史に逆らう悪役令嬢”として静かな反撃をスタートさせていく。
もしかして私ってヒロイン?ざまぁなんてごめんです
もきち
ファンタジー
私は男に肩を抱かれ、真横で婚約破棄を言い渡す瞬間に立ち会っている。
この位置って…もしかして私ってヒロインの位置じゃない?え、やだやだ。だってこの場合のヒロインって最終的にはざまぁされるんでしょうぉぉぉぉぉ
知らない間にヒロインになっていたアリアナ・カビラ
しがない男爵の末娘だったアリアナがなぜ?
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
【完結】政略婚約された令嬢ですが、記録と魔法で頑張って、現世と違って人生好転させます
なみゆき
ファンタジー
典子、アラフィフ独身女性。 結婚も恋愛も経験せず、気づけば父の介護と職場の理不尽に追われる日々。 兄姉からは、都合よく扱われ、父からは暴言を浴びせられ、職場では責任を押しつけられる。 人生のほとんどを“搾取される側”として生きてきた。
過労で倒れた彼女が目を覚ますと、そこは異世界。 7歳の伯爵令嬢セレナとして転生していた。 前世の記憶を持つ彼女は、今度こそ“誰かの犠牲”ではなく、“誰かの支え”として生きることを決意する。
魔法と貴族社会が息づくこの世界で、セレナは前世の知識を活かし、友人達と交流を深める。
そこに割り込む怪しい聖女ー語彙力もなく、ワンパターンの行動なのに攻略対象ぽい人たちは次々と籠絡されていく。
これはシナリオなのかバグなのか?
その原因を突き止めるため、全ての証拠を記録し始めた。
【☆応援やブクマありがとうございます☆大変励みになりますm(_ _)m】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる