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終章:エピローグ
新たな問題児
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【始祖の魔王】と繋がるメディアの口から、五百年前の出来事に関わる『少女』の詳細が語られる。
それは創造神の大樹と融合した【始祖の魔王】が生み出したマナの実によって、本物の創造神が生まれ変わった出来事でもあった。
しかも創造神の生まれ変わりである『少女』が模倣された権能を七つ全て得た事で、『世界の歪み』が起きてしまう。
推測でしかなかったその情報をメディア本人から伝え聞いた一行は、改めて『世界の歪み』を起こさない為に魔大陸の各勢力との交渉が必要であると理解し、目的を果たす意思を見せた。
するとメディアは一行に同行するのを辞退し、狼獣族エアハルトを同伴させることを勧める。
しかしその発言は、代わりに倒れている本人が動かす口と言葉によって遮られた。
「――……ふざ……けるな……」
「!」
「貴様の、言うことなど……聞く気はない……」
エリクの新技を受けて重傷のままだったエアハルトは、薄く瞼を開けながら操縦席に座るメディアを睨む。
それを聞いたメディア自身は、少し考えた後にある話を聞かせた。
「うーん。君、強くなりたいんだよね? そして【魔獣王】達に認められたい。違う?」
「……それが、なんだ」
「だったら良い事を教えてあげる。――……彼等が向かおうとしている『少女』には、【魔獣王】も認めた半狼獣族が一人居る」
「!」
「彼はエルフ族と狼獣族の混血児で、『少女』の幼馴染でもある。彼が眠っている彼女を守ってるせいで、私は接触が出来なかったんだ。あの実力は、はっきり言って魔大陸の王者達と遜色はない」
「……そいつ、は……」
「彼は到達者ではないけれど、【魔獣王】から直々に修練を施されている。魔大陸の各王者達とも互角以上に渡り合える、無名の強者。その一人だよ」
「魔獣王様から……!」
「彼に会った時に認められるくらい強くなれば、君自身も【魔獣王】から興味を持たれるかもね。何より魔大陸の各地を旅すれば、君自身の実力を更に向上させることにも繋がる。それでも、この旅に同行する価値が無いと思うかい?」
「……ッ」
メディアはそう述べ、同行に反発するエアハルトに興味を持たせる話すを向ける。
しかしそうした話を遮るように、ケイルが反対の意思を見せた。
「テメェ等で勝手に決めんなっ!!」
「おや、反対かな?」
「当たり前だろっ!! エアハルトはエリクに因縁をつけてるんだぞ。一緒の飛行船に乗せて旅なんぞ出来るか、危険過ぎる!」
「いいじゃない、緊張感が無い旅をするよりもさ」
「なにっ!?」
「魔大陸では一秒だって気を抜いちゃいけない。眠る時も用を足す時にだって、常に周囲への緊張感を崩しちゃいけないんだ。なのにアルトリアったら、こんな飛行船を作っちゃうんだもん。安全だと思うような場所を作るのは、逆に危機の対処を遅らせるだけだよ」
「……っ」
「これは一応、魔大陸を行き来した経験者の助言だと思って欲しいね。それに魔大陸の各勢力と協力するなら、魔獣王とも交渉が必要になる。同族が混じっていれば、少しは交渉の滑りも良くなるんじゃない?」
笑いながら提案するメディアの言葉を聞きながら、ケイルの表情に僅かな怒りと不信感が宿る。
すると二人の会話を聞いていたアルトリアが、腕を組みながら言葉を吐き出した。
「……はぁ。……いいわ、エアハルトも連れていきましょう」
「おいっ!?」
「別にいいじゃない、一人増えるくらいなら問題ないし。それに狼獣族の嗅覚は魔力も辿れるから、確かに船内に積み込んでる探査装置より便利よ。何か遭った時に役立つわ」
「……知らねぇぞ、どうなっても」
「分かってる。どっちにしても、同行するかどうかはそこの寝っ転がってる奴が決めることよ。――……どうするの? 一緒に来るんだったら、問題さえ起こさなきゃ認めるわ」
ケイルと話すアルトリアは、改めて推薦されるエアハルトの能力を鑑みて同行を認める。
そして本人にその意思があるかを問い掛けると、視線だけ向けていたエアハルトは考えるように瞼を閉じ、それから瞳を見せて答えを呟いた。
「……いいだろう。……だが、貴様等と慣れ合う気はない。……そこにいる男には、騙し討ちなどせん。俺が正面から打ち倒す、それを忘れるな」
「はいはい。……というか、なんでコイツこんな重傷なの?」
「今更かよ」
エアハルトは同行の意思を示し、アルトリアはそれを了承する。
すると改めて重傷の状態になっているエアハルトに首を傾げると、隣に立つケイルが突っ込みを入れた。
一連の会話を聞いたメディアは、重傷のエアハルトを見下ろしながら突飛な行動を始める。
それは自身の右手首を左手の指で斬り、赤い血を溢れさせた。
「!?」
「お前、何して――……!!」
自身を攻撃し血を溢れさせるメディアに、一同は驚愕を浮かべる。
しかし次の瞬間、彼等はメディアの血液から膨大なエネルギーを感じ取った。
するとメディアは操縦席から腰を離して床に片膝を着けると、エアハルトの口部分に血が溢れる右手首を近付けて告げる。
「さぁ、飲みなさい」
「貴様、何を――……ぐ、が……っ!!」
自身の血を飲むよう強要するメディアに対して、エアハルトは間近で感じる異様なエネルギーに驚愕しながら拒否しようとする。
しかし左手で強制的に口を開かされたエアハルトは、そのままメディアの流れる血を口に含まされた。
更にメディアは開けた口を閉じ、左手で口と鼻を覆いながら頭を押さえ付ける。
そして暴れようとするエアハルトの首部分を修復させた右手で掴み押さえ、見下ろしながら威圧の表情と言葉を向けた。
「いいから、飲みなさい」
「……ッ!!」
脅迫でしかないその言葉を受けながら、エアハルトは血を吐き出す事も出来ない。
すると諦めるようにエアハルトは瞼を閉じ、そのまま口内にある血を飲み干した。
しかし数秒後、エアハルトは大きく瞳を見開く。
その瞬間、エアハルトの肉体が赤い輝きを放ち始めた。
それを見た一同の中で、エリクとケイル、そしてマギルスが覚えのある状況に反応を示す。
「これは……!!」
「エリクの時と同じっ!?」
「あっ、そっか。あの身体ってマナの実なんだよね。じゃあ――……」
エアハルトに起きる異常な光景に、三人はそれぞれの記憶から結論を導き出す。
しかしアルトリアも腕を組んだまま、その光景に驚く様子も無いまま見守っていた。
更に数秒後、エアハルトの肉体に変化が起こる。
新技を受けた傷だらけの身体は瞬く間に修復していき、折れ砕けた右腕や左足は元の形へ戻った。
しかも切断されて失われていたエアハルトの左腕に、赤い光が集いながら腕の形を形成し始める。
すると皮膚で覆われた切断面から、瞬く間に左腕が伸び生えた。
そうした修復が終わった後、エアハルトの身体から赤い発光を失われる。
すると荒い息を零した後、意識を覚醒させたエアハルトは瞼を開いて跳び起きるように床へ両足を着けた。
「!」
「――……な、なんだ……コレは……。……何故、俺の左腕が……!?」
完治したエアハルトは自身の肉体を確認し、傷どころか失っていた左腕が蘇っている事に唖然とした様子を浮かべる。
それを傍で見ているメディアは、簡素な説明を向けた。
「やっぱり、君なら耐えられると思ったよ」
「……俺に、何をしたっ!?」
「私の血というか、身体はマナの実で出来てるからね。常人なら触れただけで溶けちゃうんだけど、ある水準の相手ならこういう修復も出来るんだ。いやー、推薦した手前。死ななくて良かったよ」
「……!?」
「左腕、戻って良かったね。これで万全だ。――……さて、アルトリア。私も行くから、後は君達で頑張ってみなさい」
「オ、オイッ!!」
左腕すら修復されたエアハルトが状況を理解するより前に、メディアはそう告げる。
すると笑顔を向けながら転移で姿を消し、その場から去ってしまった。
消えるメディアにエアハルトは怒鳴りながらも、その声を向けるべき相手は既に居ない。
そうして取り残されたエアハルトに対して、マギルスは笑いながら声を掛けた。
「良かったね、エアハルトお兄さん。左腕も治ってさ!」
「……クッ!!」
素直にそう述べるマギルスの言葉に、エアハルトは苛立ちの眼光を向ける。
するとケイルも睨みながら踏み込み、怒りを宿す声を向けて来た。
「それで因縁つけた左腕は戻ったろ? もうエリクに絡むな」
「……例え左腕が戻っても、失った時の屈辱は忘れん」
「だったら、エリクの前にアタシが相手になってやる。……姉貴のことで、お前には借りがあるようだしな」
「……ッ!!」
そう言いながらエリクの前に立つケイルは、身構えた姿勢でエアハルトと対峙する。
するとケイルの姉であるレミディアの話題をされたエアハルトは、僅かに表情を渋らせながらも苛立ちの表情を戻した。
そうした状況を見ていたアルトリアは、その場で両手を叩きながら大きな炸裂音を鳴らして二人の諍いを止める。
「止めなさい、アンタ達。やるなら後で訓練場でも作るから、そこで気がするまでやりなさいよ」
「……チッ」
「ッ」
仲裁する言葉に対して、二人は互いに不服そうな様子で顔を背ける。
そんな二人を見るアルトリアは、溜息を漏らしながらマギルスの隣で呟いた。
「まったく、また問題児が増えたわね。この先も苦労しそうだわ」
「それ、アリアお姉さんが言っちゃう?」
「何よ、文句あるの?」
「別にぃ。それより、お姉さんの母親は何処に行ったの?」
「魔大陸よ。私達とは違う場所に行くんですって」
「別の場所?」
「魔大陸に居る元七大聖人が集まってる場所があるらしいわ。そこに顔を出すとか言ってたわね」
「へー」
「まぁ、元々から貴方達に一人が追加する予定にはなってたんだから。その代役がコイツになっただけと考えましょ」
「訓練場、早く作ってね。エアハルトお兄さんとも久々に遊ぶんだ!」
「はいはい」
「……」
そう話すアルトリアとマギルスの話を聞きながら、エリクはその状況を静かに見据える。
それは魔大陸に赴く一行の旅に、狼獣族エアハルトが新たな同行者として加わった瞬間でもあった。
それは創造神の大樹と融合した【始祖の魔王】が生み出したマナの実によって、本物の創造神が生まれ変わった出来事でもあった。
しかも創造神の生まれ変わりである『少女』が模倣された権能を七つ全て得た事で、『世界の歪み』が起きてしまう。
推測でしかなかったその情報をメディア本人から伝え聞いた一行は、改めて『世界の歪み』を起こさない為に魔大陸の各勢力との交渉が必要であると理解し、目的を果たす意思を見せた。
するとメディアは一行に同行するのを辞退し、狼獣族エアハルトを同伴させることを勧める。
しかしその発言は、代わりに倒れている本人が動かす口と言葉によって遮られた。
「――……ふざ……けるな……」
「!」
「貴様の、言うことなど……聞く気はない……」
エリクの新技を受けて重傷のままだったエアハルトは、薄く瞼を開けながら操縦席に座るメディアを睨む。
それを聞いたメディア自身は、少し考えた後にある話を聞かせた。
「うーん。君、強くなりたいんだよね? そして【魔獣王】達に認められたい。違う?」
「……それが、なんだ」
「だったら良い事を教えてあげる。――……彼等が向かおうとしている『少女』には、【魔獣王】も認めた半狼獣族が一人居る」
「!」
「彼はエルフ族と狼獣族の混血児で、『少女』の幼馴染でもある。彼が眠っている彼女を守ってるせいで、私は接触が出来なかったんだ。あの実力は、はっきり言って魔大陸の王者達と遜色はない」
「……そいつ、は……」
「彼は到達者ではないけれど、【魔獣王】から直々に修練を施されている。魔大陸の各王者達とも互角以上に渡り合える、無名の強者。その一人だよ」
「魔獣王様から……!」
「彼に会った時に認められるくらい強くなれば、君自身も【魔獣王】から興味を持たれるかもね。何より魔大陸の各地を旅すれば、君自身の実力を更に向上させることにも繋がる。それでも、この旅に同行する価値が無いと思うかい?」
「……ッ」
メディアはそう述べ、同行に反発するエアハルトに興味を持たせる話すを向ける。
しかしそうした話を遮るように、ケイルが反対の意思を見せた。
「テメェ等で勝手に決めんなっ!!」
「おや、反対かな?」
「当たり前だろっ!! エアハルトはエリクに因縁をつけてるんだぞ。一緒の飛行船に乗せて旅なんぞ出来るか、危険過ぎる!」
「いいじゃない、緊張感が無い旅をするよりもさ」
「なにっ!?」
「魔大陸では一秒だって気を抜いちゃいけない。眠る時も用を足す時にだって、常に周囲への緊張感を崩しちゃいけないんだ。なのにアルトリアったら、こんな飛行船を作っちゃうんだもん。安全だと思うような場所を作るのは、逆に危機の対処を遅らせるだけだよ」
「……っ」
「これは一応、魔大陸を行き来した経験者の助言だと思って欲しいね。それに魔大陸の各勢力と協力するなら、魔獣王とも交渉が必要になる。同族が混じっていれば、少しは交渉の滑りも良くなるんじゃない?」
笑いながら提案するメディアの言葉を聞きながら、ケイルの表情に僅かな怒りと不信感が宿る。
すると二人の会話を聞いていたアルトリアが、腕を組みながら言葉を吐き出した。
「……はぁ。……いいわ、エアハルトも連れていきましょう」
「おいっ!?」
「別にいいじゃない、一人増えるくらいなら問題ないし。それに狼獣族の嗅覚は魔力も辿れるから、確かに船内に積み込んでる探査装置より便利よ。何か遭った時に役立つわ」
「……知らねぇぞ、どうなっても」
「分かってる。どっちにしても、同行するかどうかはそこの寝っ転がってる奴が決めることよ。――……どうするの? 一緒に来るんだったら、問題さえ起こさなきゃ認めるわ」
ケイルと話すアルトリアは、改めて推薦されるエアハルトの能力を鑑みて同行を認める。
そして本人にその意思があるかを問い掛けると、視線だけ向けていたエアハルトは考えるように瞼を閉じ、それから瞳を見せて答えを呟いた。
「……いいだろう。……だが、貴様等と慣れ合う気はない。……そこにいる男には、騙し討ちなどせん。俺が正面から打ち倒す、それを忘れるな」
「はいはい。……というか、なんでコイツこんな重傷なの?」
「今更かよ」
エアハルトは同行の意思を示し、アルトリアはそれを了承する。
すると改めて重傷の状態になっているエアハルトに首を傾げると、隣に立つケイルが突っ込みを入れた。
一連の会話を聞いたメディアは、重傷のエアハルトを見下ろしながら突飛な行動を始める。
それは自身の右手首を左手の指で斬り、赤い血を溢れさせた。
「!?」
「お前、何して――……!!」
自身を攻撃し血を溢れさせるメディアに、一同は驚愕を浮かべる。
しかし次の瞬間、彼等はメディアの血液から膨大なエネルギーを感じ取った。
するとメディアは操縦席から腰を離して床に片膝を着けると、エアハルトの口部分に血が溢れる右手首を近付けて告げる。
「さぁ、飲みなさい」
「貴様、何を――……ぐ、が……っ!!」
自身の血を飲むよう強要するメディアに対して、エアハルトは間近で感じる異様なエネルギーに驚愕しながら拒否しようとする。
しかし左手で強制的に口を開かされたエアハルトは、そのままメディアの流れる血を口に含まされた。
更にメディアは開けた口を閉じ、左手で口と鼻を覆いながら頭を押さえ付ける。
そして暴れようとするエアハルトの首部分を修復させた右手で掴み押さえ、見下ろしながら威圧の表情と言葉を向けた。
「いいから、飲みなさい」
「……ッ!!」
脅迫でしかないその言葉を受けながら、エアハルトは血を吐き出す事も出来ない。
すると諦めるようにエアハルトは瞼を閉じ、そのまま口内にある血を飲み干した。
しかし数秒後、エアハルトは大きく瞳を見開く。
その瞬間、エアハルトの肉体が赤い輝きを放ち始めた。
それを見た一同の中で、エリクとケイル、そしてマギルスが覚えのある状況に反応を示す。
「これは……!!」
「エリクの時と同じっ!?」
「あっ、そっか。あの身体ってマナの実なんだよね。じゃあ――……」
エアハルトに起きる異常な光景に、三人はそれぞれの記憶から結論を導き出す。
しかしアルトリアも腕を組んだまま、その光景に驚く様子も無いまま見守っていた。
更に数秒後、エアハルトの肉体に変化が起こる。
新技を受けた傷だらけの身体は瞬く間に修復していき、折れ砕けた右腕や左足は元の形へ戻った。
しかも切断されて失われていたエアハルトの左腕に、赤い光が集いながら腕の形を形成し始める。
すると皮膚で覆われた切断面から、瞬く間に左腕が伸び生えた。
そうした修復が終わった後、エアハルトの身体から赤い発光を失われる。
すると荒い息を零した後、意識を覚醒させたエアハルトは瞼を開いて跳び起きるように床へ両足を着けた。
「!」
「――……な、なんだ……コレは……。……何故、俺の左腕が……!?」
完治したエアハルトは自身の肉体を確認し、傷どころか失っていた左腕が蘇っている事に唖然とした様子を浮かべる。
それを傍で見ているメディアは、簡素な説明を向けた。
「やっぱり、君なら耐えられると思ったよ」
「……俺に、何をしたっ!?」
「私の血というか、身体はマナの実で出来てるからね。常人なら触れただけで溶けちゃうんだけど、ある水準の相手ならこういう修復も出来るんだ。いやー、推薦した手前。死ななくて良かったよ」
「……!?」
「左腕、戻って良かったね。これで万全だ。――……さて、アルトリア。私も行くから、後は君達で頑張ってみなさい」
「オ、オイッ!!」
左腕すら修復されたエアハルトが状況を理解するより前に、メディアはそう告げる。
すると笑顔を向けながら転移で姿を消し、その場から去ってしまった。
消えるメディアにエアハルトは怒鳴りながらも、その声を向けるべき相手は既に居ない。
そうして取り残されたエアハルトに対して、マギルスは笑いながら声を掛けた。
「良かったね、エアハルトお兄さん。左腕も治ってさ!」
「……クッ!!」
素直にそう述べるマギルスの言葉に、エアハルトは苛立ちの眼光を向ける。
するとケイルも睨みながら踏み込み、怒りを宿す声を向けて来た。
「それで因縁つけた左腕は戻ったろ? もうエリクに絡むな」
「……例え左腕が戻っても、失った時の屈辱は忘れん」
「だったら、エリクの前にアタシが相手になってやる。……姉貴のことで、お前には借りがあるようだしな」
「……ッ!!」
そう言いながらエリクの前に立つケイルは、身構えた姿勢でエアハルトと対峙する。
するとケイルの姉であるレミディアの話題をされたエアハルトは、僅かに表情を渋らせながらも苛立ちの表情を戻した。
そうした状況を見ていたアルトリアは、その場で両手を叩きながら大きな炸裂音を鳴らして二人の諍いを止める。
「止めなさい、アンタ達。やるなら後で訓練場でも作るから、そこで気がするまでやりなさいよ」
「……チッ」
「ッ」
仲裁する言葉に対して、二人は互いに不服そうな様子で顔を背ける。
そんな二人を見るアルトリアは、溜息を漏らしながらマギルスの隣で呟いた。
「まったく、また問題児が増えたわね。この先も苦労しそうだわ」
「それ、アリアお姉さんが言っちゃう?」
「何よ、文句あるの?」
「別にぃ。それより、お姉さんの母親は何処に行ったの?」
「魔大陸よ。私達とは違う場所に行くんですって」
「別の場所?」
「魔大陸に居る元七大聖人が集まってる場所があるらしいわ。そこに顔を出すとか言ってたわね」
「へー」
「まぁ、元々から貴方達に一人が追加する予定にはなってたんだから。その代役がコイツになっただけと考えましょ」
「訓練場、早く作ってね。エアハルトお兄さんとも久々に遊ぶんだ!」
「はいはい」
「……」
そう話すアルトリアとマギルスの話を聞きながら、エリクはその状況を静かに見据える。
それは魔大陸に赴く一行の旅に、狼獣族エアハルトが新たな同行者として加わった瞬間でもあった。
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