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王への復讐
王への復讐 ⑦
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「久しぶりだな。カナリヤ」
微笑みながら言う。真っ白な髪の毛が揺れている。
「予感はしてた。あんたが現れるっていうのは」
「そうか…うまくいったようだな」
「まだまだよ。張本人を罰するには」
ライトブルーの瞳はどこか寂しそうだ。
「それで?あのアイって奴の話をしに来たんじゃないの」
「…君に隠し事はできないな」
フッと笑っている。
「アイって奴もマリヤと同じ世界から来た奴だろ」
「ああ」
「それでそいつも何か力が使える。それを使ってアンリー王国を支配してんだろ」
カナリヤはペラペラと話す。シャリングの話を聞いてすぐにピンときた。もしそうだとしたら辻妻が合う。この世界では不思議な力を使うものはほとんどいない。
ほとんどだから数人いるくらいだろう。しかしそんな力を使っていいる者は見たことがない。ほんとうに存在するかも有耶無耶なところだ。
だからアイは違う世界からきたとわかる。
「この世界にそんな力が使えるものがいるわけないもんな」
男を見る。男は何か言いたそうだ。黙ってないでハッキリしゃべってほしいと思い少し切れ気味で聞いた。
「何か言いたいことでも?」
「もし…もしその力を君が持っているとしたら?君が本当の聖女だとしたらどうする?」
カナリヤは目を見開く。そんなわけない。だって何一つ魔法もなんにも使ったことがない。有り得ない。
「…まずそんなことを考えたことがない。聖女がこんな自己中なことをするわけないでしょ。それにこの国には神殿のようなものがありません。神様に使える者もいないこの国に聖女なんて降り立つわけないでしょ」
鼻で笑う。
この男が何を言いたいのかは分からない。けれどもし…もし不思議な力を手に入れられたら、私からすべてを奪ったものに復讐したい。それが終わったら…
「そんな力ほしいとも思わない。私は結局は死ぬでしょ。国王を侮辱したり皇太子に毒をもったりと色々としでかしたし。だったらもっと国民思いの人に力を渡した方がいい。私なんかがもらうものじゃない」
いつもの威嚇してくるカナリヤではなく落ち着いて声も小さい。これは本心か。
カナリヤは本当は誰よりも国民思いだ。それを自覚していない。自分が聖女であることも…
今私と話せているのも聖女だからだ。神に認められたものはその人にあった能力を授ける。私がカナリヤに力を渡したのはこの子なら大丈夫だと思ったからだ。
昔はこの力をつかって人々を苦しませたものがいた。それに怒った神々は力を奪い取った。それから神はほとんど人間に関心を持たず力も渡さなかった。
だが、さすがにかわいそうだと思った一人の神が二人に力を渡した。
それが間違いだった。一人がその力を悪用してしまった。その被害者だったカナリヤに力を託した。この子なら止めてくれると。
それなのに何もこの子は分かっていない。気づかせようと何回もしたがダメだった。
しかしこのまま知らない方がいいのかと思った。この子のためにも。
カナリヤが授かった力。
それは「聖なる力」
微笑みながら言う。真っ白な髪の毛が揺れている。
「予感はしてた。あんたが現れるっていうのは」
「そうか…うまくいったようだな」
「まだまだよ。張本人を罰するには」
ライトブルーの瞳はどこか寂しそうだ。
「それで?あのアイって奴の話をしに来たんじゃないの」
「…君に隠し事はできないな」
フッと笑っている。
「アイって奴もマリヤと同じ世界から来た奴だろ」
「ああ」
「それでそいつも何か力が使える。それを使ってアンリー王国を支配してんだろ」
カナリヤはペラペラと話す。シャリングの話を聞いてすぐにピンときた。もしそうだとしたら辻妻が合う。この世界では不思議な力を使うものはほとんどいない。
ほとんどだから数人いるくらいだろう。しかしそんな力を使っていいる者は見たことがない。ほんとうに存在するかも有耶無耶なところだ。
だからアイは違う世界からきたとわかる。
「この世界にそんな力が使えるものがいるわけないもんな」
男を見る。男は何か言いたそうだ。黙ってないでハッキリしゃべってほしいと思い少し切れ気味で聞いた。
「何か言いたいことでも?」
「もし…もしその力を君が持っているとしたら?君が本当の聖女だとしたらどうする?」
カナリヤは目を見開く。そんなわけない。だって何一つ魔法もなんにも使ったことがない。有り得ない。
「…まずそんなことを考えたことがない。聖女がこんな自己中なことをするわけないでしょ。それにこの国には神殿のようなものがありません。神様に使える者もいないこの国に聖女なんて降り立つわけないでしょ」
鼻で笑う。
この男が何を言いたいのかは分からない。けれどもし…もし不思議な力を手に入れられたら、私からすべてを奪ったものに復讐したい。それが終わったら…
「そんな力ほしいとも思わない。私は結局は死ぬでしょ。国王を侮辱したり皇太子に毒をもったりと色々としでかしたし。だったらもっと国民思いの人に力を渡した方がいい。私なんかがもらうものじゃない」
いつもの威嚇してくるカナリヤではなく落ち着いて声も小さい。これは本心か。
カナリヤは本当は誰よりも国民思いだ。それを自覚していない。自分が聖女であることも…
今私と話せているのも聖女だからだ。神に認められたものはその人にあった能力を授ける。私がカナリヤに力を渡したのはこの子なら大丈夫だと思ったからだ。
昔はこの力をつかって人々を苦しませたものがいた。それに怒った神々は力を奪い取った。それから神はほとんど人間に関心を持たず力も渡さなかった。
だが、さすがにかわいそうだと思った一人の神が二人に力を渡した。
それが間違いだった。一人がその力を悪用してしまった。その被害者だったカナリヤに力を託した。この子なら止めてくれると。
それなのに何もこの子は分かっていない。気づかせようと何回もしたがダメだった。
しかしこのまま知らない方がいいのかと思った。この子のためにも。
カナリヤが授かった力。
それは「聖なる力」
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