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見習い騎士
見習い騎士 ➂
しおりを挟む男がカナリヤのところに走ってきて剣を振りかざす。けれど、カナリヤはスルリとかわす。
「動くの遅いぞ」
男はよろめきながらもまたカナリヤに向かう。たしかに実力はまあまあ上だ。ちゃんと相手を見て動いている。剣捌きも上手だ。
「お前名前なんて言うんだ?」
「なぜ言わなきゃいけない」
「あっそ、言わないなら別にいいよ。じゃあ私の好きなように呼ぶね」
「勝手にしろ」
二人は剣を当てあう。なかなか決着がつかない。
「めんどくさいな」
ボソッと一言言ってからカナリヤの攻撃が増した。男は耐えるのに精一杯で反撃ができていない。カナリヤは攻撃を止めない。男は舌打ちをしてカナリヤの不意をついた。
しかしカナリヤはそれをすぐに交わした。そして男のお腹を足蹴りした。男はよろめいてその場で左膝を地面につけた。
「私の勝ちかな」
「…蹴るのはないだろ」
「そんなルール聞いた覚えない」
お腹を押さえて蹌踉めきながらたちあがる。
この俺が負けた…自分より年下のしかも女に…相当な実力を持っている…俺の本気が全然通用しなかった。それに、あいつは本気を出していない。俺にはわかる。俺は遊ばれていたのか。
「それじゃあ約束通り私の言うことを聞いてもらうわよ」
「…お前どうやって剣術を学んだ…」
「……何で言わなきゃいけないの」
カナリヤは男に近づいていく。目の前で立ち止まり男を見上げ
「これからよろしくね。負け犬さん」
そっと頬あげていう。
コンコン
「どうぞ」
「失礼します。マリヤ様。マリヤ様に会いたいと言う方がいらっしゃるのですが…」
侍女はゴニョゴニョと喋っていてよく聞こえない。
「どうしたの?それじゃあそのかたこちらに呼んで」
それでもチラチラと廊下の方を見ている。いったい何なんだと疑問に思いながらドアから廊下を覗こうとすると目の前にカナリヤが現れた。
「カ…カナリヤ…」
「どうも久しぶり。マリヤ」
「…何の用」
「そんな冷たく突き放さないでよ。一緒に遊んだ仲じゃない」
「あなたはもう下がっていいわよ」
侍女はペコリと頭をさげその場を立ち去った。
「あなたに聞きたいこと上がるからきた」
「何?」
「ドアの前で話すことじゃないから中に入っていい?」
「…どうぞ…」
嫌々マリヤはカナリヤを中に入れた。
「それで何の用」
「人を罪人にしておいて何よその態度」
マリヤはギョッとして俯いた。まさか、気づかないとでも思ってたのか?あんなの誰だってお前がやったことだって分かるわ。
「お前確か違う世界から来たんだろ?その時アイってやついなかった?」
その名前を聞いた途端マリヤは顔をガバッと上げカナリヤを見た。
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